SH-101を再現するAIRA SYSTEM-1のPLUG-OUTを使ってみた!

6月25日に発売されて、大きな話題になっているRolandのシンセサイザ、AIRA SYSTEM-1。DTMステーションでも即日、レポートしたわけですが、その時点では、まだSYSTEM-1が持つ機能の半分しか発揮することができませんでした。しかし7月25日に解禁になるPLUG-OUTなるソフトの登場によって、SYSTEM-1は大きく変身します。とくにDTMユーザーにっては、ある意味、革命といえるような強力な機能を持つシンセサイザへと進化するのです。

そのPLUG-OUTを一足早く入手し、SYSTEM-1と連携させて試すことができましたので、これがどんなものなのか、何ができるのか、どう革命なのかを紹介していこうと思います。

AIRA SYSTEM-1をSH-101 PLUG-OUTと連携させて使ってみた

PLUG-INではなくてPLUG-OUT。聞きなれない言葉だし、どういう意味なのか、ピンと来ない人がほとんどだと思います。私も、AIRAについては、何度もRolandにインタビューして聞いてきたつもりではいたのですが、PLUG-OUTについては今ひとつ掴み切れていなかった、というのが正直なところです。でも、実物に触れてみると、その謎は一気に解けました。これ、とにかくスゴイです!


Logic X上で動かしたSH-101 PLUG-OUT 

今回リリースされるソフト、正確には「SH-101 PLUG-OUT Software Synthsizer」(以下SH-101 PLUG-OUT)というもので、非売品。SYSTEM-1のユーザーであれば、製品に同梱されているダウンロード・クーポンを利用し、専用WEBサイトから無償でダウンロードできるようになっています。

Windows版、Mac版それぞれがあるのですが、PLUG-OUTといいつつ、実はVSTインストゥルメント(VSTi)、Audio Units(AU)に対応したPLUG-INのソフトシンセなのです。

WindowsのCubase 7.5上でもSH-101 PLUG-OUTが同じように動く

名前からもわかる通り、これはRolandの往年の名機、1983年発売のSH-101をソフトシンセとして復刻したものであり、VST3やAudioUnitsに対応したCubaseLogic、……といった各種DAWで使うことができる音源です。SH-101は個人的にも、思い出深いシンセなのですが、懐かしいと思う方も少なくないと思います。


設定によって赤いSH-101にすることもできる

このソフトシンセ、そのSH-101と見た目がソックリであり、当時あったカラーバリエーションであるグレー、レッド、ブルーが用意されているのも楽しいところ。でも、見た目だけでなく実際の音もソックリなのは、本家であるRolandならでは、というところ。そう、ここには以前も紹介したACB(Analog Circuit Behavior)というRolandオリジナル技術が採用されており、アナログの回路レベルから、当時のSH-101をしっかりとモデリングしているんですよね。


青バージョンもある。こちらはWindows版

モノフォニックのシンセではありますが、1VCO→1VCF→1VCA、1LFOというシンプルな構成なだけに、音作りはしやすいし、それでいて、かなり太い、カッコイイ音が出てくれるのが特徴の音源。とりあえず、このSH-101 PLUG-OUTをインストールした時点では、一般的なVSTiやAUのPLUG-INと何も変わらないし、SYSTEM-1がない環境でも、まったく問題なく使うことができます。

でも、MacやWindowsにSYSTEM-1をUSBで接続し、この状態でSH-101 PLUG-OUTを起動させるとSYSTEM-1とSH-101 PLUG-OUTが有機的に接続され、従来のPLUG-INではありえなかった、不思議なことが可能になるのです。


SH-101 PLUG-OUTに搭載されている「PLUG-OUT」ボタン

SH-101 PLUG-OUTには「PLUG-OUT」というボタンがありますが、これをクリックするとSYSTEM-1へUSB経由でPLUG-OUTのプログラムが転送されると同時に8つの音色パッチが転送されます。


PLUG-OUTボタンをクリックすると、確認のダイアログが表示され、OKすると、SYSTEM-1へ転送される

これにより、今までまったく反応しなかったSYSTEM-1のPLUG-OUTボタンを押すと、これが光るようになります。そして、SYSTEM-1はSH-101へと変身するとともに、8つのプリセットボタンを押すと、SH-101 PLUG-OUT上の音色がSYSTEM-1上で再現することができるのです。ちなみに、その左にあるSYSTEM-1ボタンを押すと、従来のSYSETM-1に戻る仕掛けになっています。

一度、このようにPLUG-OUTを行うと、PCの電源を切っても、USB接続を切り離しても、SYSTEM-1単独で、SH-101 PLUG-OUTの音を再現することができるのです。


SYSTEM-1のPLUG-OUTボタンを押すと、SYSTEM-1はSH-101へと変身する

従来、PLUG-INのソフトシンセを使って、いい音が出せたとしても、この音をライブで使うとか、外のスタジオに持ち出して使いたいといった場合、なかなか困難でした。利用するにはPCのほか、オーディオインターフェイス、MIDIキーボードなど、さまざまなものを持ち運ぶ必要があります。また起動するのに時間はかかるし、ふとしたことで動作が不安定になったり、うまく使えなくなるリスクもあり、どうしても機動性が低かったのです。

でも、SH-101 PLUG-OUTとSYSTEM-1の関係においては、DAW上で使っていた音源、音色をそのままハードウェアのシンセとして外に持ち出すことができるわけです。だからこそ、PLUG-OUTというわけなんですね。もちろん、その後、PC上でパラメータをいじった結果をSYSTEM-1へ転送することもできるし、反対にSYSTEM-1でエディットした結果の音色をSH-101 PLUG-OUTへ転送することも可能。この場合は、SH-101 PLUG-OUTにある「SEND」、「GET」というボタンをクリックすることで行えます。


SYSTEM-1のOSC 2やPITCHなどの機能はSH-101では使わないため消灯し、無効となる 

ところで、「そもそもSH-101とSYSTEM-1では、システム構成が異なるし、見た目のデザインも大きく違うではないか……」と指摘する人もいるでしょう。まさに、その通りなのですが、大は小を兼ねる、ということでSYSTEM-1の機能を制限してSH-101との互換性を実現しているのです。実際、PLUG-OUTボタンを押すと、いくつかのボタンが消灯していることに気付くと思います。具体的にいうと、OSC 2はすべて使えなくなっているし、OSC 1も波形は選択することができず、CROS MODなども機能せず、PITCHセクションも消灯していて使うことができません。また、SH-101はモノフォニックシンセなので、MONOボタンを解除してポリフォニックモードで使う…といったこともできませんね。


SH-101 PLUG-OUTの画面デザインをSYSTEM-1風にすると、使わない機能がグレーアウトされる 

これをわかりやすく示すために、SH-101 PLUG-OUTにはSYSTEM-1 Layoutという画面も用意されていますよ。これを見れば、SYSTEM-1として機能していないパラメータが一目瞭然です。ただし、PLUG-OUTのモードで動作させたとしても、SYSTEM-1の大きな特徴であるSCATTER機能は使うことができるので、SYSTEM-1ならではのプレイということはできますね。


PLUG-OUTボタンを押して、SYSTEM-1をSH-101の状態にしてもSCATTER機能は有効

実際にMac上のLogic Xにインストールして使ってみたり、Windows上のCubase 7.5にインストールして使ってみましたが、基本的には何ら違うことなく、使うことができました。PCのソフトシンセとして鳴らす場合の音も、SYSTEM-1単独で出す場合でも、その音質にまったく違いはありません。SYSTEM-1自体をUSBのオーディオインターフェイスとして使うことができるため、DAWから音を出す場合と、切り離して鳴らした場合で聴き比べることができ、その差が皆無であることが実感できますよ。


SH-101 PLUG-OUTはVST3対応なので、インストールするだけでDAWに認識される 

なお、VSTiの場合、VST3規格に適合したPLUG-INとなっているため、インストールした際、フォルダ指定などをする必要もなく、扱いも簡単です。しかし、Cubaseで使う場合、マニュアルにも書かれていないちょっとしたコツがあるので、最後に紹介しておきましょう。


「SYSTEM-1 CTRL(Unconnected)」と表示 されて、うまく動作しない場合は……

実はCubaseでSH-101 PLUG-OUTのPLUG-OUTボタンをクリックすると、エラーメッセージが表示され、PLUG-OUTを転送することができません。ここで、SETTINGボタンをクリックしてみると、MIDI Input:のところに「SYSTEM-1 CTRL(Unconnected)」という表示がされているんですよね。「これはどういうことなんだろう??」と最初、戸惑ったのですが、このSH-101 PLUG-OUTは、これ自身が直接SYSTEM-1とMIDIポートを通じてデータのやりとりをするんです。

とはいえCubaseではデフォルトの設定ですべてのMIDI入力がAll MIDI Inputsとして扱われてしまうため、それとバッティングして、SH-101 PLUG-OUT側でこれにアクセスすることができないのです。

そこで、All MIDI InputsからSYSTEM-1 CTRLの入力を除外する必要があるんですね。具体的には「デバイス設定」の「MIDIポートの設定」において、「イン」のほうの「SYSTEM-1 CTRL」において「All MIDI Inputs」のチェックを外せばいいのです。これでCubaseでもPLUG-OUTが使えるようになるはずですよ。


「イン」のSYSTEM-1 CTRLの「All MIDI Inputs」のチェックを外す

なお、Mac版のCubaseを使う際にも一つ注意点があります。それはSH-101 PLUG-OUTが64bit版であるため、Cubaseも64bit版として動作させる必要があること。32bitのエミュレーションモードで使うと、SH-101 PLUG-OUTが動作しないので、動かないと思ったら、確認してみてください。
以上、SH-101 PLUG-OUTとSYSTEM-1の関係について紹介してみましたが、だいたいご理解いただけたでしょうか?とりあえず、今のところ登場しているPLUG-OUTはSH-101のみですが、今後別のPLUG-OUTが登場する可能性もあるようなので、ここも期待したいところ。次はポリフォニックのPLUG-OUTが出るといいな、と思っているところです。
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