AIRAシリーズのPLUG-OUTシンセサイザとして、SYSTEM-100が誕生
DTMステーションでは、これまでも何度かPLUG-OUTという一連のソフトシンセについて紹介してきました。具体的にはSH-101、SH-2、そしてProMarsのそれぞれで、今回のSYSTEM-100が第4弾となるものです。

DAW上で使っているPLUG-INシンセサイザをSYSTEM-1へ転送して持ち歩けるのがPLUG-OUT
でも、それだけで終わらないのがPLUG-OUTです。RolandのAIRAシリーズとして存在するPLUG-OUTシンセサイザー、SYSTEM-1もしくはSYSTEM-1mを持っているユーザーの場合、このDAW上で動いているPLUG-INのシンセサイザーをハードウェア側へ「PLUG-OUT」=移行できるのです。
つまり、今回のSYSTEM-100の場合、SYSTEM-1もしくはSYSTEM-1mをSYSTEM-100に変身させることができ、そのままどこへでも持って行って演奏することができるのです。PCがないと動作しないDTM環境から解き放ち、普通の楽器として使えるようにできる面白い発想のシステムというわけなのです。この辺の詳細については、以前「PLUG-OUT対応の新コンセプトシンセ、AIRA SYSTEM-1を触ってみた」、「SH-101を再現するAIRA SYSTEM-1のPLUG-OUTを使ってみた!」といった記事でも解説しているので、そちらも合わせて読んでいただければと思います。
1975年発売の名機、SYSTEM-100は基本システムのModel101とオプションの拡張システムModel 102から構成されていた
さて、ではSYSTEM-100とはどんな音源なのでしょうか?冒頭でも述べた通り、これは1975年に発売されたアナログシンセであり、基本システムであるModel 101とそれを拡張するModel 102という2種類がありました。今回登場した製品はそのModel 101とModel 102の両方を組み合わせた構成になっています。
これらをAUDIO MIXERでミックスした上で、VCF、VCA、エフェクトと通って音が出る構成になっています。またエンベロープジェネレーターは2つ独立して存在し、1つがVCFへ、もう1つがVCAへ接続されて制御されています。
しかし、SYSTEM-100が、これまでのPLUG-OUTシンセサイザーと異なる最大のポイントは、これがパッチングができるモジュラーシンセサイザーである、という点です。そう、プリセットを見てみると、SYSTEM-100のパネル上に、グチャグチャとケーブルが飛び交っていますよね。これによって、非常に自由度の高い音色づくりが可能になっているのです。
たとえば、初期設定では使われていないLFO-2の出力をVCO-1のEXT CV INと接続するとVCO-1に対してビブラートをかけることができます。またこのLFOは普通はVCOやVCF、VCAに掛けるために存在するものですが、LFOの出力をそのままミキサーに突っ込んでしまうと、LFOによる低周波をそのまま聴くこともできます。周波数を下げればブチブチいうだけですが、これを上げていくとブーンという音になってきます。
このパッチングはコネクタからコネクタへとマウスをドラッグすれば簡単に接続できるし、接続されているケーブルを別のところへドラッグすれば切断することも簡単です。OUT同士やIN同士を接続するといった、誤った接続はできないようになっているし、変なところへ繋いでも壊れる心配がないというのも、安心して使える嬉しい点です。
なお、パネル上のコネクタをケーブルで接続していくという方法のほかにも、画面左下のマトリックスを使った接続というのも可能になっています。これはどの出力をどの入力へ接続するのか、全体を俯瞰しながら、論理的に接続していくという手段です。このマトリックス上にマウスカーソルを持って行くと、縦軸、横軸に項目が表示されるので、それを元に接続するわけです。
パッチングケーブルを使って操作しても、マトリックスを使って操作しても、できることはまったく同じだし、片方で操作すればもう片方でも反映されるのですが、人によってどちらが使いやすいかは違ってくるかもしれません。ただ、マトリックスでの項目表示の文字が小さいので、なかなか読みにくいのも事実。ここについては設定で、SYSTEM-100の表示自体を100%~200%の範囲でズームさせることができるので、この機能を使うことで見やすくなると思いますよ。
なお、PLUG-OUTした場合、SYSMTEM-1mであれば、パッチングが可能になっていますが、SYSTEM-1にはパッチング機能がないため、パッチングによる音作りは不可能です。そのため、パッチングをしたい場合は、まずDAW内のPLUG-INで操作をし、その音色を保存した上でPLUG-OUTすればいいわけですね。
またPLUG-OUTした場合、SYSTEM-1とSYSTEM-100/SYSTEM-100mではノブやボタンの配置が異なるため、どこにどのパラメータが割り振られているか、最初ちょっと分かりにくいかもしれません。そんな場合、PLUG-IN側の表示をSYSTEM-1風にすることもできるので、これなら戸惑うこともなさそうですね。
実際に音を出してみると分かりますが、まさにアナログシンセというサウンドで、低音がかなり野太い音が出るのを実感できます。また数多くのプリセットが入っており、それぞれ聴いてみるとサンプル&ホールドやアルペジエーターを効かせた、破壊的なサウンドもたくさんあって面白いですね。