そして、そのPLUG-OUT製品の第3弾として、先日PROMARSがリリースされたのです。パっと見から、「あれ、これってJUPITERシリーズ?」なんて思う方も少なくないと思いますが、これはJUPITER-8が出る直前の1979年にリリースされたシンセサイザであり、JUPITERの系譜を引くアナログシンセサイザなんです。実際、そのサウンドはJUPITERシリーズに近いもので、SH-101やSH-2の図太いサウンドとはちょっと違うもの。そこでPROMARSとはどんなアナログシンセだったのか、どうしてPROMARSを復刻させたのかについて考えてみたいと思います。
SYSTEM-1のPLUG-OUTについてはこれまでも「PLUG-OUT対応の新コンセプトシンセ、AIRA SYSTEM-1を触ってみた」「SH-101を再現するAIRA SYSTEM-1のPLUG-OUTを使ってみた!」、「往年の名機、武骨なアナログシンセSH-2をRoland自ら忠実に復刻」といった記事で紹介してきたので、ここでは詳細を割愛しますが、一言でいえば、「VSTやAUのプラグインシンセをSYSTEM-1に転送することで、PC無しのスタンドアロンの音源として使うことができる機能」です。
そのPLUG-OUTの第3弾としてPROMARSがリリースされたわけですが、みなさんは、PROMARSというシンセサイザをご存じでしたか?これは1978年に発売されたJUPITER-4のモノフォニック版として、その翌年に発売されたシンセであり、まさにJUPITER-4の姉妹機種。当時の価格としてはJUPITER-4が385,000円、PROMARSが198,000円と、およそ倍の価格差になっていましたが、「COMPUPHONIC SYNTHESIZER」というネーミングされたシンセはこの2機種だけなんですよね。
1978年に発売された4音ポリフォニックのJUPITER-4
またこの2機種にはDELAY/BENDという、あまり見かけないセクションも搭載されています。これはLFOのスピードを調整するためのセクションであり、LFOスピードを超高速にすることで、リングモジュレータ的な効果を出したり、設定によってはノイズジェネレータ的にも使うことができるというもの。
JUPITER-4とも共通する、なかなかユニークなセクションであるDELAY/BEND
このLFOがVCO、VCFさらにはPWMにも掛けられるので、ほかのシンセにはないユニークな音作りが可能になっています。

JUPITER-6はJUPITER-8の低価格版として1983年に発売されている
そのPROMARSを、今回、Roland自慢のアナログ回路を再現する技術、ACBを用いてSYSTEM-1に復元しているんですね。ちょっと前置きが長くなってしまいましたが、そのPLUG-OUTしたPROMARSをちょっと弾いて音を出してみたので聴いてみてください。
どうですか?SH-101やSH-2などの「図太い音」とは明らかに違う、サウンドですよね。1番目、3番目に鳴らした音は、かなりきらびやかなサウンドだし、2番目の音は「キックドラム?」なんて感じに聴こえてしまうかもしれませんが、低音の出るスピーカーで聴くと、他ではなかなか出せないサウンドになっていることが分かります。
2015年4月時点でSYSTEM-1にバンドルされているPLUG-OUTのSH-101
SH-101、SH-2がリードやシンセベースなど得意とするのに対し、もっと幅広い楽器系で演奏するキーボーディスト向けのシンセサイザ。RolandによるとJUPITER-4やPROMARSは、当時、ストリングスやトランペットなどアコースティック楽器をシミュレーションしようとしていたシンセサイザであった、とのこと。まあ、音を聴くと、アコースティック楽器とはまったく違う音なんですけどね……、でもそれを目指したサウンドが、いい雰囲気を出しているんですよね。
SYSTEM-1がPCと接続された状態で、DAW側でPLUG-OUTボタンをクリックすると、 このようなメッセージが表示される
また、ここまで見てきたPROMARSのスペックや、JUPITER-4との違いから想像できるとおり、この回路をシミュレーションするには、かなりの演算処理能力を必要となるのも事実です。
とはいえ、すでにお気づきのとおり、これはかなりJUPITER-4に近いPROMARSなんですよね。まずはアルペジエイターを備えており、しかもSYSTEM-1のSCATTER機能により、さらに過激なフレーズを作り出すことが可能になっています。
もちろん、DAW上でVSTインストゥルメントやAUのプラグインとして使うこともでき、この場合にはさまざまなエフェクトを自由に掛けることができるし、複数トラックで立ち上げれば、実質的にポリフォニックサウンドも実現できますよね。
ちなみに、このプラグインの画面は、オリジナルのPROMARSとはレイアウトが違っています。パッ見て目立つアナログメーターはオリジナルにはないものですし、パラメータの配置も微妙に違っており、より扱いやすくなっているようです。また、SYSTEM-1で使いやすいようにしたパラメータ配置の画面モードがあるのはSH-101やSH-2と同じですね。
このPROMARSにはさまざまな音色=パッチが用意されており、そのパッチの数はトータル150にもなります。またその中には1979年当時のオリジナル版に入っていたパッチが搭載されているのも魅力の一つだと思います。そんな音色を呼び出しながら使ってみるのも楽しそうですね。
【関連情報】
Promars Compuphonic (MRS-2) 取扱説明書
JUPITER-4 オーナーズ・マニュアル