アナログシンセとPCとの間を取り持ってくれるKORGのSQ-1
デジタルな現在であっても、アナログシンセをコントロールする上でCV/GATEは今でも非常に重要であり、今回紹介するSQ-1はCV/GATEをフル活用できる貴重なツールともいえるので、まずはCV/GATEとは何かを簡単に紹介してみましょう。
このCVとGATEの仕組みを用いて、シンセサイザを自動演奏させちゃおうというのがシーケンサです。そして当初はアナログシーケンサなるものが使われていたんですね。今回紹介するSQ-1、昔のKORGのアナログシーケンサSQ-10を復刻したものなんですね。「アナログっていったって、自動演奏させるんだから、デジタルなんじゃないの?」と思った方もいると思いますが、昔のものはホントにアナログな仕組みなんですよ。もちろん、最新鋭の機材であるSQ-1はかなりデジタル機材ではありますけどね。
このSQ-1は基本的にスタンドアロンで動作してアナログシンセを演奏させる自動演奏マシンなわけですが、もっとも簡単な操作方法は、Aという上の段に並んだ8つの赤いボタンを使って、音を鳴らすステップを設定します。「ON,ON,OFF,ON,ON,ON,OFF,ON」なら「ピピッピピピッピ」と繰り返しなってくれます。その際の音程を決めるのが上のノブ。左に回せば低い音、右に回せば高い音となります。DAWのピアノロールを使うのとはずいぶん違う、原始的なものですよね。
MS-20miniのCV入力、GATE入力へ、SQ-1の出力を接続
と、さらっと2つのアナログシンセを同時に制御できたと書いてしまいましたが、実はこれ、かなり画期的なことなんです。というのも一言でCV/GATEといっても、CV側には2つの異なる規格が存在しているからです。MOOGやARP、Roland、そしてこのArturiaなどが採用しているのはV/Octという方式なのに対し、KORGのMS-20miniやYAMAHAのCSシリーズなどが採用しているのがHz/Vという方式。
V/Octは1オクターブを1Vとして音程を割り振る方式で1V上がると1オクターブ上がるのに対し、Hz/Vは周波数と電圧を対応させる方式で、音程が1オクターブ上がると電圧も倍になるというものなんですね。このSQ-1ではV/OctとHz/Vをモード切り替えで対応できるようになっていて、混在できてしまうのが凄いところ。しかもCVのレンジが通常の5Vだけでなく1V、2V、5VそしてHz/V専用の8Vと選べる柔軟さもすごい機材なんです。これを使うことで、大昔のシンセも含めてなんでも接続できちゃうんですから。
また、このSQ-1が有能なのはCV/GATEのコントロールだけではないという点です。ここにはMIDI OUTの端子があるので、これを使って現代のMIDI対応音源に接続すればシンセサイザだけでなく、電子ピアノだって鳴らせちゃうんです。さらにUSBまでついているから、これをDAW上で動くソフトシンセに送ると、ソフトシンセをアナログシンセさながらにコントロールできてしまうという意味では画期的ですよ。
SQ-1のUSB端子を通じてPCとMIDI信号のやり取りも可能。普段はバッテリー駆動だが、この際、USBからの電源供給となる
実際にテストしていたところ、ごく簡単にソフトシンセが鳴らせて驚きました。ただアナログシンセと違って、ずいぶん音程が安定しているなと思ったら、USBを通じてMIDIのNOTE ON/NOTE OFFが送られてきているからなんですね。
半音と半音の間のあいまいな音程信号が来るわけではないので、スッキリしているわけです。ちなみに、SQ-1側の設定でスケールを設定することで、その演奏をマイナーにしたりメジャーにしたりすることもできるようになっています。
一方で、SQ-1には同期用の端子もSYNC-IN、SYNC-OUTという2つが用意されています。これもアナログの端子なのですが、「プチッ、プチッ、プチッ、プチッ」という単純なクロック信号が流れることで、シーケンサ同士やドラムマシンなどと同期ができるようにしたものです。
KORG volcaシリーズやiPhone/iPadとの同期もラクラク
以前に「DAWとの連携でKORG volcaの実力を120%引き出そう!」で紹介したKORGのvolcaとも連動させることができるし、SyncKontrol for monotribeという無料のiOSアプリを使うとで、iPhoneやiPadの各種アプリとSQ-1を同期させることだってできるのです。
と、ここまではあくまでもSQ-1を中心にさまざまなシンセサイザをコントロールするという話でしたが、この記事の目的は、その逆。つまりPCのDAQから各種アナログシンセをコントロールするという話でした。実は、それもSQ-1を間に入れることでとっても簡単にできてしまうんですね。
一旦、SQ-1の自動演奏をストップさせると、SQ-1はPC用のCV/GATEインターフェイスへと変身してくれます。USBでPCと接続するとPCからはSQ-1がMIDIデバイスとして見えるようになっています。
Cubaseのほか、StudioOne、SONARでも確認してみましたが、いずれも出力先としてSQ-1 CTRL、SQ-1 MIDI OUTという2つのポートが見えます。
StudioOneでも同じように扱うことができた。フリーウェア版のStudioOne FreeでもOK
このうちSQ-1 CTRLがまさにCV/GATEをコントロールするものであり、MIDIの1chでA OUT、MIDIの2chでB OUTを出力することができます。もっとも、アナログシンセをコントロールするので、いずれもモノフォニックで和音を送ることができないのは注意点ですよ。
まあ今回試したMS-20miniもMicroBruteもMIDI IN、USBを整備した機材なので、SQ-1なしでも鳴らすことができるのは事実ですが、SQ-1のCVを介すことで、演奏情報だけでなく、VCFやVCAを制御するといったことも可能になるため、できることの幅が大きく広がるし、古い機材を含めDAWからなんでも接続できるようになるという点が嬉しいですよね。
【価格チェック】
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【製品情報】
KORG SQ-1製品情報
KORG MS-20mini製品情報