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音楽制作を体験し学べる場でもあった、初音ミク「マジカルミライ 2025」TOKYO イベントレポート

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今年も初音ミクたちのライブ&企画展である初音ミク「マジカルミライ 2025」が開催されました。8月1日~3日はSENDAI(仙台サンプラザ・仙台駅周辺)、8月9日~11日はOSAKA(インテックス大阪)、そして8月29日~31日はTOKYO(幕張メッセ)というスケジュールで行われ、TOKYO会場へ取材に行ってきました。ここでは、初音ミクたちバーチャルシンガーが出演するライブが盛大に盛り上がる一方、企画展のほうにも数多くのブースが出展 したりセミナーやステージが行われ、数多くの人が訪れていました。

この初音ミク「マジカルミライ 2025」は、”初音ミクたちをハブ(きっかけ)として、「創作」というキーワードで繋がる場所、その楽しさを体感できる場所”というイベント趣旨が掲げられていることもあり、DTMに関連する企業6社がブースを出していたのも注目すべきポイントでした。具体的にはSONICWIRE、Steinberg、iZotope、Ableton、ディリゲント、フックアップというDTMステーションでもおなじみの6社。実際、初音ミク「マジカルミライ 2025」の会場でどんなものが展示されていたのかなど、DTM関連にスポットを当ててレポートしてみたいと思います。

仙台、大阪、東京(千葉)の順でマジカルミライ2025が開催された

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音楽制作への入り口として注目される企画展エリア

初音ミク「マジカルミライ 2025」は、初音ミクを中心としたバーチャルシンガーのライブコンサートと企画展が一体となったイベントです。ライブ会場のほうを覗いてみたところ、すごい盛り上がりに圧倒されたというのが正直なところ。若い世代が中心だったように見えましたが、幅広い年齢の人たちが参加していたし、海外からの参加者も多かったように見え ました。

膨大な人が詰めかけ、大盛況となったライブ

多くの来場者がそのライブを目当てに訪れる中、企画展にも膨大な人が集まっていました。その企画展の中にはDTM関連企業が集まる一画が設けられ、ここが今回の記事の舞台となります。

ライブ会場の隣の企画展の会場も大盛況。実は入場制限もあって、外には長い待機列も

特徴的なのは、楽器の展示会などと異なり、来場者の多くがクリエイターではなく、初音ミクたちバーチャルシンガーのファンであるリスナーが中心だということです。各社の担当者からは「他の楽器系イベントとは明らかに違う客層」「DTMをやったことがない人が6~7割」という声が聞かれました。しかし、だからこそ「新規の掘り起こし」として大きな可能性を秘めている、と期待していたようです。

企画展の一角にDTM系6社のブースが集まるとともに、セミナー会場も設置されていた

6社共同の「DTMカード」で音楽制作への第一歩を支援

今回最も注目すべき取り組みが、SONICWIRE、Steinberg、iZotope、Ableton、ディリゲント、フックアップの6社が共同で実施した「DTMカード」の配布です。

6社の各ブースにおいて、「DTMカード」なるものが無料配布されていた

これは6社のブース共通で無料配布されていたもので、これを受け取り、そこに掲載されている情報を元に、SONICWIRE経由で登録することによって、各社が提供するソフトウェアの無料版や体験版をまとめて入手できるという嬉しい企画でした。

Steinberg: Cubase 14 LE
iZotope: Ozone 11 Elements
SONICWIRE: 初音ミクNT 39日間体験版
その他各社: エントリーグレードの製品や体験版の案内

これにより、これまで音楽制作に縁がなかった人でも、帰宅後すぐにDTMを始められる環境が整うという仕組みです。各社の担当者からは「意欲の高い人が多く、これでDTM人口がある程度増えるのでは」という手応えの声が聞かれました。

満席続出のセミナープログラム – 実践的な音楽制作を体験

企画展内には専用のセミナースペースが設けられ、3日間にわたって各社による音楽制作関連のセミナーが開催されました。各回約30分、定員120名程度で予約不要という形式で行われたこれらのセミナーは、各回で満席となる盛況ぶりを見せました。

セミナースペースのタイムテーブル

Abletonによる「Ableton Live 12で行う初音ミク楽曲制作 by 歩く人」は、 実際に活動するボカロPを招いての実践的な楽曲制作セミナーで、TOKYOだけでなくOSAKA会場でも満席になったとのことです。来場者にとって、普段動画でしか見ることのないクリエイターの の楽曲制作プロセスを間近で見られる貴重な機会となったようです。

OSAKA会場・TOKYO会場ともに、大きな反響があった、「Ableton Live 12で行う初音ミク楽曲制作 by 歩く人」

ディリゲントによる「スマホでボカロDJ」では、「DJって何をすることなのか知ってますか?」と挙手させるところからスタート。手を挙げていたのが若干名で、知らない人が大半でしたが、Djayというソフトとコントローラを使って、Apple Musicの曲のストリーミングを利用したDJプレイの仕方を披露すると、参加者みんな興味津々でした。

DJプレイの基本知識が紹介された「スマホでボカロDJ」

その他のセミナーも充実した内容となっており、フックアップの「How To EDM Shu’s Masterclass with FL Studio」では、FL Studioを使ったEDM制作のノウハウが紹介され、ヤマハミュージックジャパンの「Cubaseで始める!DTM初心者講座」は、文字通り初心者向けの内容で、DAW操作の基本から丁寧に解説。SONICWIREの「初音ミク NTの歌わせ方講座」では、Piapro Studioを使った歌声合成の世界を学べる内容となっていました。

また企画展内にはステージも設置されており、そちらではゲスト講師に原口沙輔氏を迎えたiZotope「はじめてみよう!音楽制作の世界」を実施。クリプトンの伊藤社長や佐々木氏らが登壇した「バーチャルシンガー製品関連ステージ」では、開発中の「初音ミク V6AI(仮)」の音声サンプルが披露されたほか、2025年10月リリース予定の「鏡音リン・レン NT」の情報も公開されました。

各セミナーとも満席や立ち見で大賑わいとなっていた

これらのセミナーやステージは、単なる製品紹介にとどまらず、実際の制作プロセスや操作方法を学べる実践的な内容となっており、「体験」というコンセプトを体現していました。セミナー後には「やってみたい」という声も多く聞かれ、DTMカードと合わせて新規ユーザー獲得の大きな推進力となっていたようです。

各社ブース紹介

SONICWIRE – バーチャルシンガーから最新鋭の照明システムまで

SONICWIREブース

SONICWIREブースでは、クリプトン・フューチャー・メディアが販売する各種バーチャルシンガー・ ソフトウェアがパッケージ販売されていました。ユニークだったのは、鏡音リン・レンをモチーフにした粗品タオルやSONICWIREのクーポン付きで提供されていたことです。「初音ミク NT 」や「PIAPRO CHARACTERS SUPER PACK 」といった製品が特によく売れていたとのことでした。

初音ミクなどのパッケージソフトが特価販売されるとともに、購入者にはSONICWIRE特製タオルも配布された

また、同社が開発中の照明制御プラグイン「COUGEN」のデモンストレーションも行われていました。これは、DAW上のMIDI信号をDMX信号に変換して照明を制御するというもので、配信や小規模ライブでの活用を想定しています。現在は技術展示という形での参考出品の段階ですが、個人クリエイターでも手軽にプロ仕様の照明演出が可能になる画期的なツールとして注目を集めていました。

鍵盤やパッドを押すと、DMX信号が生成され、ライトが光る「COUGEN」の展示もされていた

Ableton – ヨーロッパ発の使いやすいDAWを日本の若年層に

Abeletonのブース

Abletonブースでは、同社のDAW「Ableton Live」とハードウェア「Push」「Move」を展示していました。今回がマジカルミライ2回目の出展で、昨年は東京・大阪両方にブースを出していましたが、今年は東京のみブース出展、セミナーを両会場で実施という体制でした。

Ableton LiveやPush 3の展示がされていた

同社の日本担当者によると、「従来のヨーロッパ中心の電子音楽やDJ層だけでは広がりに限界があるのも事実です。今一番作曲に対するポテンシャルが高いボーカロイド界の若年層にアプローチして新しいLiveユーザーを増やしていきたいと思っています」とのこと。実際、来場者の反応は良好で、「好きなボカロPがAbletonを使っている」「Abletonが使いやすいって聞いた」といった理由で立ち寄る人が多かったそうです。

Moveも展示され、だれでもすぐに試せるようになっていた

iZotope – AI技術で初心者にも優しいオーディオ処理

iZotopeのブース

メディアインテグレーションが展開するiZotopeブースでは、同社のオーディオ処理ソフトウェアのエントリーグレード製品を中心に展示していました。今回が初出展となりましたが、「歌ってみた」界隈でのiZotope製品の認知度の高さに驚いたという声も聞かれました。

ノイズを簡単に除去できるRXは多くの来場者の関心を集めていた

特に注目されていたのは、ノイズ除去ソフト「RX」や、AI技術を活用したマスタリングソフト「Ozone」のElements版です。音楽制作経験がない来場者でも、「こんなことができるんだ」と驚く様子が見られ、DTMカードを通じて実際に製品を試してもらうことで、新規ユーザー獲得につなげたいとの意向でした。

iZotopeの各種ツールの位置づけなどの紹介もされていた

Steinberg – ボーカロイドと親和性の高いCubaseで体験重視

Steinberg/YAMAHAのブース

ヤマハグループのSteinbergブースでは、同社のDAW「Cubase」とVOCALOIDを組み合わせた展示を行っていました。ヤマハがVOCALOIDの開発元であることもあり、親和性の高さをアピールする内容となっていました。

VOCALOID 6が展示され、来場者が簡単に触って歌わせることができるようになっていた

来場者の多くがCubaseの画面を初めて見るという状況で、「動画で見たことはあるけど、実際に動いているところは初めて」という反応が多かったとのこと。「VOCALOID Editor」での簡単な歌詞入力から、録音したボーカルの音声変化まで、その場で体験できるデモンストレーションが好評で、「きっかけ作り」としての役割を果たしていました。

ヤマハとクリプトン・フューチャー・メディアのこれまでの歩みの年表も展示されていた

ディリゲント – ライブ体験をさらに豊かにする製品群

Dirigentのブース

ディリゲントブースでは、初音ミクとのコラボモデルである「Thunderplugs」ライブ用耳栓の販売と、スマートフォンで操作可能なHeruclesのDJコントローラーを展示していました。今回で6回目の出展となる同社ならではの、マジカルミライの特性を理解した製品選択が印象的でした。

初音ミクとのコラボ製品の耳栓、「サンダープラグ」

耳栓は、ライブの「爆音」から観る人の聴覚を保護することを目的とした実用的な製品です。一方、DJコントローラーはApple Musicと連携してストリーミングで楽曲を扱えるため、「楽曲を集める必要なくすぐに始められる」手軽さが来場者に好評でした。

DJコントローラも展示され、自分のスマホでDJプレイを楽しむことができるようになっていた

フックアップ – ギターとDAWの融合で新たな音楽体験

HookUpのブース

フックアップブースでは、同社が扱うDAW「FL Studio」を中心に、MIDIキーボードの新製品、Expressive EのOsmose、Nektarの新製品であるIMPACT LX MK3を初展示していたほか、ギターコーナーでは、IK MultimediaのTONE XシリーズやUniversal Audioのペダルエフェクトなどが展示されていました。

まだ国内正式発表前のNektarのMIDIキーボード、IMPACT LX MK3も展示されていた

今年で3年連続出展となったフックアップ。「ギターをやってみたいけど弾けるかわからない」という来場者に対し、アンプシミュレーターやエフェクトを使った手軽なギター体験ができる場を作っていました。また、FL Studioについては「ボカロP界隈では認知されている」とのことで、実際に触ってもらうことで新規ユーザーの獲得を図っていました。

ギター関連の製品も来場者に人気だった

来年以降の「マジカルミライ」への期待

今回の取り組みについて、SONICWIRE側は「来場者に音楽制作の楽しさを体験してもらいたい」という強い思いがあったと語っています。DTMカードの配布は今年が初の試みでしたが、各社からの反応も良く、来年以降も継続・発展させていく意向とのことです。

企画展の入り口に展示されていた初音ミク

マジカルミライという場の特性として、純粋な音楽ファンが多く、新しいことに対する興味や吸収力が高い来場者が多いことが各社共通の認識となりました。セミナーの盛況ぶりからも、単なる展示だけでなく、実際に体験し学べる機会への需要の高さがうかがえます。

企画展の入場入り口には数千人の列ができていた

初音ミクを中心としたバーチャルシンガー文化から生まれる新たなクリエイターたち。「マジカルミライ」は単なるライブと企画展の併催イベントという枠組みを超えて、音楽制作文化の裾野を広げる重要な役割を担っているといえるでしょう。来年の「マジカルミライ」でも、きっと新たな試みが待っていることでしょう。

【関連情報】
初音ミク「マジカルミライ 2025」ポータル公式サイト
SONICWIREサイト

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