イギリスのメーカー、EVAbeatが開発する作曲支援プラグイン、Melody Sauce 3。ジャンルとスタイルを選んでパッドをクリックするだけで、8小節のメロディとコード進行、ベースラインの3つを同時に、何度でも生成できるツールです。生成した結果はMIDIデータとしてDAWへドラッグ&ドロップできるので、手持ちのソフトウェア音源で鳴らすのも簡単。
今年3月に海外でリリースされ、5月からは国内でもクリプトン・フューチャー・メディアが運営するSONICWIREでの取り扱いがスタートしています。通常価格は約17,500円(税込)で、旧バージョンのユーザー向けにはアップグレード版も用意されています。開発元のEVAbeatは、2018年に初代Melody Sauceをリリースして以来、メロディ生成ツールを手掛けてきた音楽テック系のスタートアップ。同社によると、Melody Sauceシリーズはこれまでに5万人以上のプロデューサに使われてきたとのこと。とはいえ、AIでの音楽生成が当たり前になった今、気になるのはSunoのようなサービスと何が違うのか、そして本当に使えるフレーズが出てくるのか、というところ。実際どんなものなのか試してみたので、紹介していきましょう。
- 世界5万人が使うメロディ生成ツールの3代目。Melody Sauce 3とは
- SunoなどのAI音楽生成とは根本的に違う。MIDIで生成し、内蔵音源で鳴らす仕組み
- 使い方は簡単。ジャンルとスタイルを選んで、5×5のパッドをクリックするだけ
- 約1,000種類のコード進行を生成。クリック一つでコードを差し替えられる
- MovementとChord Fitでメロディの性格をコントロール。細部はピアノロールとPhrase Editorで
- 内蔵サウンドは300以上。ハーモナイズやグルーヴ調整、Wobbleエフェクトも搭載
- 手持ちのコード進行にメロディを付けるMIDIインポート。DAWとの連携も柔軟
- 実際に試して感じたこと。Melody Sauce 3の使いどころ
世界5万人が使うメロディ生成ツールの3代目。Melody Sauce 3とは
Melody Sauce 3は、その名の通りメロディを生成してくれるプラグインで、Melody Sauceの3代目です。初代Melody SauceがVST/AUプラグインとして登場したのは2018年。クリックするだけでメロディのアイデアを次々と提案してくれるツールとして人気を集め、2022年にはスタイルプリセットや内蔵音源を備えたMelody Sauce 2へと進化しました。
そして今回のMelody Sauce 3は、実は前バージョンの改良ではなく、ゼロから作り直された完全新設計。メロディだけでなくコード進行とベースラインまで生成するようになり、単なるメロディ生成器から、楽曲の土台を丸ごとスケッチできるツールへと役割を広げています。
前バージョンからの主な進化点をまとめると、以下の通りです。
| 機能・仕様 | Melody Sauce 2 | Melody Sauce 3 |
| メロディ生成 | 4小節 | 8小節 |
| コード進行の生成 | × |
約1,000パターン
|
| ベースラインの生成 | × | ◯ |
| ピアノロール・エディター | × | ◯ |
| MIDIインポート& コード自動検出 |
× | ◯ |
| Movement & Chord Fitコントロール |
× | ◯ |
| スタイルプリセット | 300 | 約350 |
| 内蔵サウンド | 約100 | 300以上 |
| 内蔵エフェクト | 3種類 | 4種類 |
単体で起動するスタンドアロンのソフトではなく、DAW上で起動させるタイプのプラグインとなっています。動作確認済みDAWとしてFL Studio、Ableton Live、Logic Pro、Cubase、Studio One、Reason、REAPER、Maschine、Bitwig Studio、MPC Beats、GarageBandがあり、主要なDAWは一通りカバーされています。得意とするのはTrapやEDMをはじめとするエレクトロニック系のジャンルで、スタイルプリセットと生成アルゴリズムは、各ジャンルの現場で活動するプロのプロデューサの協力のもとで開発されています。
SunoなどのAI音楽生成とは根本的に違う。MIDIで生成し、内蔵音源で鳴らす仕組み
ご存じの通り、昨今はSunoやUdioに代表されるAI音楽生成サービスが急速に広まっていますが、Melody Sauce 3はこれらとは考え方が根本的に異なります。Sunoなどが完成された音、つまりオーディオデータを出力するのに対し、Melody Sauce 3が生成するのはあくまでMIDIデータ。
そのMIDIをプラグイン内蔵の音源で鳴らし、音楽にしていくという構造になっています。そのため、気に入ったフレーズがあればMIDIとしてDAWに書き出して、手持ちのシンセサイザやピアノ音源に差し替えるのも自由自在。完成品を受け取るのではなく、楽曲の素材として普段の制作フローにそのまま組み込めるのです。
EVAbeat自身はMelody Sauce 3を大々的に「AI」とは打ち出していませんが、公式サイトにはAIを活用した生成アルゴリズムという記載があり、機械が無限にフレーズを提案してくれるという意味では、広い意味でのAI系ツールと捉えていいでしょう。
といっても、楽曲のオーディオデータを丸ごと学習して音を作り出す方式ではなく、あくまでMIDIに徹したアプローチ。そして重要なのが権利面。EVAbeatのライセンス規約には、生成されたメロディ、コード進行、ベースラインはロイヤリティフリーであり、商用リリースやストリーミング配信、映像作品への利用もできると明記されています。生成物を元に作ったオリジナル楽曲の著作権は、ユーザー自身に帰属するとの記載もあります。ただし、生成したMIDIやオーディオをそのままサンプルパックやループ素材として販売することは禁止されているので、その点だけは注意してください。
使い方は簡単。ジャンルとスタイルを選んで、5×5のパッドをクリックするだけ
では実際の使い方を見ていきましょう。まずは画面左上でジャンルを選びます。用意されているのはTrap、Hip-hop、RnB、Pop、Latin、EDM、House、Technoの8ジャンル。これにジャンルを限定しないFreeを加えた9つのボタンから選ぶ形です。
ジャンルを選ぶと、そのジャンルに合ったスタイルプリセットが選択可能になり、その数は全体で約350種類。スタイルは、メロディやコード進行の傾向など生成にかかわる設定を一括で呼び出すプリセットで、隣のDiceボタンをクリックすれば全ジャンルから1つがランダムに選ばれるため、思いがけない組み合わせに出会うきっかけにもなります。
キーは固定することも、生成のたびにランダムに選ばせることも可能。既存のプロジェクトに合わせたい場合は、キーを指定してKey Lockをオンにしておけば、以降の生成はすべてそのキーで行われます。
準備ができたら、あとは画面中央の5×5のパッドをクリックするだけ。パッドは縦軸がムード、横軸が複雑さを表しており、上のLight側ほど明るく、下のDark側ほど暗い雰囲気に、また左のSimple側ほど音数の少ないミニマルなメロディに、右のComplex側ほど音数の多い装飾的なメロディになりやすい、という仕組みです。
クリックするたびに、8小節のメロディとコード進行、ベースラインの3つがワンセットで生成され、内蔵シーケンサですぐに再生されます。DAWの再生とは独立して試聴できるので、プロジェクトを走らせなくても気軽にアイデアを聴き比べられるのがいいところですね。
生成したメロディは、画面右のMelody Bankにクリップとして自動保存されていきます。気に入ったものは星マークでお気に入りに登録したり、不要なものは削除したり。新しいアイデアを試すときは、Add New Clipで空のスロットを追加しておけば、既存のクリップを上書きせずに済みます。とにかく数を出して、よいものだけを残していくスタイルです。
約1,000種類のコード進行を生成。クリック一つでコードを差し替えられる
そして今回の目玉となる新機能が、コード進行の生成です。パッドをクリックするたび、メロディと音楽的にマッチしたコード進行が同時に作られ、その組み合わせは全ジャンル合わせて1,000通り近くに及びます。生成されたコード進行はピアノロール上部にコード領域として表示され、ここから自由に編集していけるのがポイント。
領域をクリックするとコード選択メニューが開き、選択中のキーに合ったコードが色分けされて並びます。明るい色のコードほど汎用性が高く、暗い色のコードは出番こそ少ないものの、進行にひとひねり加えたいときに効果的。Maj9やsus2、Dim7といった複雑なコードタイプにも対応しており、メニューにないコードはOtherから探せます。コード領域は端をドラッグして長さを変えたり、右クリックで分割・削除したりでき、1拍単位まで細かく区切ることも可能です。
そして便利なのがChord Lockです。コードを手動で編集したり、MIDIファイルをインポートしたりすると自動的にオンになる機能で、オンの間はパッドをクリックしてもコード進行はそのまま、メロディだけが新しく生成されます。よい進行を見つけたら固定して、それに合うメロディを探していく、という使い方ができるわけです。逆にMelody Lockをオンにすれば、メロディを保ったままコード進行だけをどんどん差し替えることもできます。
MovementとChord Fitでメロディの性格をコントロール。細部はピアノロールとPhrase Editorで
生成の方向性を決めるのが、今回新たに搭載されたMovementとChord Fitという2つのコントロールです。Movementはフレーズ間の音の跳躍量を決めるもので、Flowingにすれば跳躍の少ない滑らかなメロディに、Dynamicにすれば跳躍の多いドラマチックなメロディになりやすくなります。
一方のChord Fitは、メロディがコード進行にどこまで忠実に沿うかの設定。バランス型のBalanced、コードにかっちり沿うStrict、コードから離れる音も許容して歌心を優先するRelaxedの3段階で、Relaxedはメロディに緊張感が生まれやすい半面、コードとぶつかる音も出やすくなります。なお、この2つはあくまで新しく生成するメロディに効く設定で、生成済みのメロディには影響しません。
細かい調整は、内蔵ピアノロールで行います。ここでは生成されたメロディのノートを上下左右にドラッグして、ピッチやタイミングを直接編集することが可能。メロディは同時に1音だけ鳴るモノフォニック仕様です。ちなみに、オレンジ色で表示されるコードと赤で表示されるベースのノートは参照用の表示のみで、直接の編集はできません。コードを変えたい場合は、前述の通りコード領域から操作します。またピアノロール上部をドラッグすれば、8小節のうち一部だけをループ再生する範囲指定もできるので、冒頭2小節だけを繰り返してフックの感触を確かめる、といった聴き方も便利です。
さらに面白いのがPhrase Editorです。ピアノロールでノートを選択してから使う編集機能で、選択した部分だけリズムを保ったままピッチを明るいものに差し替えるLight、暗いものに差し替えるDark、逆にピッチを保ったままリズムだけを差し替えるRhythmなど、フレーズ単位での部分的な作り直しが行えます。
ほかにもピッチシフト、ミュート、削除、コピー&ペーストが揃っており、たとえばクリップを複製してから後半4小節だけDarkで差し替えれば、AメロとBメロのような対比を持ったバリエーションも簡単に作れてしまいます。編集をやり直したくなったら、Undoのほか、生成直後の状態に一発で戻すRevertも用意されています。
内蔵サウンドは300以上。ハーモナイズやグルーヴ調整、Wobbleエフェクトも搭載
サウンド面も大幅に強化され、メロディ、コード、ベースの3つのレイヤーそれぞれに専用の内蔵音源が用意されており、その数は合計で300以上。ピアノ、リード、シンセ、ストリングス、プラックなど、カテゴリも幅広く揃っています。
メロディレイヤーでは、再生スピードをSlow、Medium、Fastの3段階で切り替えられるほか、Harmonise機能で低音、中音、高音、オクターブ下のハーモニーを重ねることも可能。エフェクトはリバーブ、ディレイ、コーラスに加えて、新搭載のWobbleの4種類です。さらにGrooveセクションでは、シンコペーションのオン・オフ、3連符化、スウィング、レガートといったリズムの表情付けが行えます。
コードとベースのレイヤーには、それぞれ140種類以上のリズムパターンが用意されており、ここを差し替えるだけでグルーヴの印象ががらりと変わります。コードは5〜6音のボイシングで鳴り、ベースは各コードのルート音を演奏する仕組み。各レイヤーは個別にオン・オフや音量調整ができるので、メロディとコードだけ、コードとベースだけといった組み合わせも自在です。しかもオーディオ出力は3系統のステレオペアに分かれているため、DAW側で3つのレイヤーを別々のオーディオトラックに立ち上げて、個別にエフェクト処理していくこともできるようになっています。
手持ちのコード進行にメロディを付けるMIDIインポート。DAWとの連携も柔軟
すでにコード進行ができていて、そこに乗せるメロディだけが欲しい。そんなときに活躍するのがMIDIインポート機能です。コードが入ったMIDIファイルをピアノロールへドラッグするだけで、キーとコード進行が自動検出され、Key LockとChord Lockが自動的にオンになります。
あとはパッドをクリックすれば、その進行にハマるメロディを次々と提案してくれるというわけです。対応するコードタイプは、メジャー、マイナー、セブンス、Maj9、sus2、sus4、Dim7など全13種類。これより複雑なコードは近い響きのコードに簡略化して認識されますが、その場合でも元のハーモニーに合うメロディを生成するとのこと。なお、検出の精度を高めるには3音以上のコードがきれいに並んだMIDIファイルを使うのがコツで、メロディやベースが混在したファイルは正しく検出されないことがあります。
生成結果をDAWへ持っていくのもとっても簡単で、クリップのドラッグアイコンをDAWのトラックへドラッグ&ドロップするだけ。メロディ、コード、ベースが別々のMIDIファイルとして書き出されます。事前にレイヤーのオン・オフを切り替えておけば、書き出す内容の取捨選択も可能。ただし1回のドラッグで1ファイルしか受け付けないDAWもあるので、その場合はレイヤーを1つずつオンにして書き出していきます。
MIDIの動作モードはInternal、MIDI In、MIDI Outの3つ。標準のInternalは内蔵音源で完結するモードで、MIDI Outにすると、生成したMIDIをDAW内のほかのソフトウェア音源へ送って鳴らせます。ちょっとユニークなのがMIDI Inで、このモードではMelody Sauce 3が生成エンジンを止め、DAWから送られてくるMIDIを内蔵音源で鳴らす音源モジュールとして動作します。
チャンネル1がメロディ、2がコード、3がベースに割り当てられているので、一度DAWに書き出したMIDIをDAW側でじっくり編集し、それを3つのチャンネルに分けてMelody Sauce 3へ送り返す、という運用ができるのです。
VST3、AUに加えて、Logic Proユーザーには、AU MIDI FX版が用意されているのもポイントで、ソフトウェア音源トラックのMIDI FXスロットにMelody Sauce 3を挿せば、生成したMIDIが同じトラックの音源へダイレクトに流れるので、1つのトラック内で好きなシンセを鳴らしながら生成を繰り返せます。また、Melody Sauce 3は標準で8小節をループ再生する仕様のため、DAWと再生位置がずれると感じたら、設定メニューのOn DAW Play, Start from Bar 1をオフにしてみてください。DAWの再生ヘッドに追従するようになり、多くの同期の問題はこれで解決します。
ちなみに、DAW側のコードトラック機能との連携について。Melody Sauce 3の画面上に表示されているコード名がそのままDAWへ渡るわけではなく、あくまでMIDIノートとして書き出される形です。書き出したMIDIがコードとして認識されるかどうかは、各DAWの解析機能次第。この点は勘違いしやすいところなので、覚えておくといいでしょう。
実際に試して感じたこと。Melody Sauce 3の使いどころ
実際にさまざまなジャンルとスタイルで生成してみて印象的だったのは、破綻したメロディがほとんど出てこない点。この分野にはScalerやW.A. ProductionのInstaComposerなど競合ツールも多くありますが、Melody Sauce 3の生成結果は当たり外れの波が小さく、「こういうのもあるな」と思わせるフレーズが安定して出てきます。もちろん、一発で完璧なメロディが出てくる魔法の箱ではありませんが、そこから広げていく叩き台としては十分すぎる品質です。
使いどころとしてまず思い浮かぶのは、曲作りの取っ掛かりとなるアイデア出し。自分では選ばないコード進行や、思いもしないリズムのメロディが飛び出してくるので、手癖から抜け出すきっかけになります。なお、生成は8小節単位で、AメロやBメロといったセクションの概念はありません。1曲分を組み立てる場合は、気に入ったクリップをいくつも生成して、DAW側で構成していく形になります。Chord Lockでコード進行を固定したまま生成を繰り返せば、同じ進行の上に別のメロディを乗せたセクション違いも作りやすいですし、メインのメロディの裏で鳴らすオブリガートの素材探しにも向いていますね。
そのほか、Movement、Chord Fit、Grooveなどを全部自分で決めたい人は、Freeジャンルを選べばすべてのパッドと設定が開放されます。気に入ったクリップは設定メニューから専用形式で書き出して、別のプロジェクトで読み込み直すことも可能。画面表示は英語ですが、コントロールにカーソルを合わせると解説のツールチップが表示される親切設計。日本語のツールチップも準備中としています。
最後に改めて動作環境は以下の通りです。
| 項目 | Mac | Windows |
| OS | macOS 10.14以降 |
Windows 10以降
|
| CPU | Intel/ Apple Siliconネイティブ対応 |
Intel/AMDの64bit
|
| RAM | 4GB以上、8GB推奨 |
4GB以上、8GB推奨
|
| ディスク空き容量 | 1.5GB | 1.5GB |
| フォーマット | VST3、AU、AU MIDI FX | VST3 |
ライセンスのアクティベーションにはインターネット接続が必要で、冒頭にも書いたようにMelody Sauce 3の国内価格は17,567円(税込)で、SONICWIREが取り扱っています。海外での定価は99ドル。SONICWIREで扱う海外メーカー製品の価格は為替レートに応じて更新されるため多少前後する可能性があるので、購入時には最新の価格を確認してみてください。また、初代Melody SauceまたはMelody Sauce 2のユーザーは6,919円(税込)のアップグレード版を利用でき、アップグレードには旧バージョンのシリアルナンバーが必要です。購入から7日以内の返金保証も用意されているので、まず試してみたいという人も安心ですね。
以上、EVAbeatのMelody Sauce 3について紹介しました。パッドをクリックするだけでメロディ、コード進行、ベースラインが同時に生成され、それをMIDIとして自由に活用できる、アイデア出しの強い味方となるツールでした。ピアノロールやPhrase Editorでの編集、MIDIインポートによるコード自動検出など、前バージョンからの進化も多岐に渡ります。作曲の入り口としても、マンネリ打破の道具としても活躍してくれるはず。メロディ作りに悩んでいる人は、ぜひ一度チェックしてみてはいかがでしょうか?
【関連情報】
Melody Sauce 3 製品情報
【価格チェック&購入】
SONICWIRE ⇒ Melody Sauce 3

























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