DTMステーションでもこれまで何度か紹介してきた、インド・ムンバイに拠点を置くプラグインメーカー、Pitch Innovations(ピッチ・イノベーションズ)。コードからコードへのベンディングを実現するFluid Chordsをはじめ、スケールに沿ったピッチベンドを可能にするFluid Pitch、さらにGroove ShaperやEternal Arpsなど、常に斬新なプラグインを生み出してきた同社から、新製品Loop 2 Kitが発売されました。
このLoop 2 Kitは、手持ちのオーディオファイルを読み込むだけで、高度なオーディオ解析によって自動でスライスおよびグループ化を行い、そのまま演奏可能なキットに変換してくれるというサンプラー。手作業で行っていた面倒なマッピング作業を省けるだけでなく、似たような音をまとめて自然な演奏感を生み出すラウンドロビンまで自動生成してくれるという優れものとなっています。価格は通常22,880円(税込)ですが、現在期間限定でイントロプライスとして50%オフの11,440円(税込)で購入できるセールも実施中。実際どんな機能を持ったサンプラープラグインなのか、試してみたので紹介していきましょう。
手持ちのループ素材を瞬時にキット化するLoop 2 Kit
Loop 2 Kitの概要と実際の動作をまとめたデモとなっているので、まずはこちらの動画をご覧ください。
動画の冒頭をご覧いただくと分かる通り、操作はとってもシンプル。リズムループのオーディオファイルをLoop 2 Kitの画面中央にドラッグ&ドロップすると、一瞬にして波形が読み込まれて細かくスライスされ、画面上のパッドにキックやスネア、ハイハットといった形で自動的に割り当てられます。そしてすぐに、そのパッドを叩いてオリジナルのドラムキットとして演奏したり、円形のシーケンサを使ってまったく新しいリズムパターンを鳴らすことができるのです。
DTMにおいて、サンプル配信サービスなどからオーディオループをダウンロードして楽曲に組み込むのは、当たり前の制作手法となっています。とはいえ、ループ素材をそのまま貼り付けるだけではオリジナリティが出しにくく、かといってサンプラーに読み込ませて一音ずつスライスし、パッドに割り当てていく作業はかなりの時間と手間が掛かるものです。
そうしたサンプリング特有の面倒な作業を、独自のオーディオ分析エンジンによって瞬時に解決してくれるのが、今回登場したLoop 2 Kitというわけです。
Loop 2 KitはWindows 10以降およびmacOS 12以降の環境で動作し、VST、VST3、AAXの各プラグインフォーマットに対応するほか、Mac環境ではAUプラグインとしても利用可能。スタンドアロンのアプリケーションとしても動作し、MacにおいてはApple Siliconにもネイティブ対応しているため、最新の環境でも快適に動作する仕様となっています。
使い方は前述の通りとっても簡単で、Loop 2 Kitを起動して表示される画面の中央に、任意のオーディオファイルをドラッグ&ドロップするだけ。WAV、AIFF、FLAC、MP3、m4aといった主要なオーディオフォーマットに対応しており、画面内の「Browse Files」ボタンからファイルを選択して読み込むこともできるようになっています。
なお、手持ちのループ素材を使うだけでなく、最初から即使えるファクトリーライブラリが収録されているのも見逃せないポイント。画面上部のプリセットバーから好みのキットを呼び出せば、すぐにハイクオリティなリズムを鳴らすことも可能となっているため、手元にループ素材があまりないという人でも即戦力として使うことができます。
4つのモードで的確に自動解析しキット化
オーディオファイルをLoop 2 Kitに読み込ませると、プラグインがどのようにオーディオを解析し、グループ化するかを尋ねてきます。ここで用意されているのが、4つの異なる分析モードです。
まず「DRUMS」モードは、一般的なドラムループからキットを作成するためのモード。キック、スネア、ハイハットといったアタックの強い打楽器の音を的確に捉え、タイトなスライスを行います。
「PERCS SOLO」モードは、コンガやボンゴといった単発のパーカッション音に特化したモードで、音の隙間があるような素材を丁寧に解析してくれます。
一方、さまざまな音が重なり合って密集しているようなパーカッションループを読み込む場合は、「PERCS HEAVY」モードを選択するのが最適。複雑に絡み合った音の中から、個別の打楽器成分を抽出してくれるのです。
そしてユニークなのが「MELODY」モードで、こちらは打楽器ではなく、音階を持ったメロディやトーンループを読み込むためのモードとなっています。音程ごとにスライスし、音楽的なグループ化を行ってくれるため、ボーカルチョップを作ったり、シンセのフレーズを再構築したりするのに威力を発揮します。
モードを選択すると、Loop 2 Kitは一瞬のうちにオーディオ内の音の立ち上がり部分を検出し、その箇所で波形をスライスを実行。画面上部には読み込んだオーディオの波形が表示され、検出されたスライスごとに異なる色で色分けされたマーカーが打たれているのが分かります。
ここで重要なのは、ただ波形を切り刻むだけでなく、スライスされた音の音色をプラグインが分析し、これはキック、これはスネアというように、似た音同士を自動的にグループ化してくれるという点。波形表示の横にはオンセットの検出感度を調整する「SENS」スライダーがあり、これを上げるとより細かい音までスライスされるようになります。また、グループの数を調整する「GROUPS」スライダーも用意されているため、自分のイメージに合わせてざっくりとグループ分けするか、細かく分類するかを直感的にコントロールすることが可能となっています。
ラウンドロビン自動生成と視覚的なSample Field
スライスされ、グループ化されたサウンドは、画面中央の「SAMPLE GROUPS」というパッドセクションに自動で割り当てられます。各パッドにはC3からB3までのMIDIノートがマッピングされており、MIDIキーボードを弾けば、その場ですぐにドラムキットとして演奏することができるようになっています。
パッドにはそれぞれプラグインが自動で判別した名前が付けられており、たとえばシンバルの音ならCymbal、クローズドハイハットならCHといった具合に名前が割り振られます。ただし、サウンドが重なっていると、自動でのネーミングはそこまで正確ではないので、後から自分で分かりやすいように変更したほうが扱いやすいですね。
そして、このパッドセクションの右側に表示されているのが「Sample Field」と呼ばれるレーダーのような画面です。ここは、スライスされたすべてのサンプルが、音のキャラクターに基づいて空間上にプロットされているというユニークな機能。同じグループに分類された音は同じ色で表示され、近い位置に集まっています。この画面を見ることで、プラグインがどのように音色を判断してグループ分けを行ったのかが視覚的に把握できるようになっています。
さらに、Loop 2 Kitの大きな特徴ともいえるのが、ラウンドロビンの自動生成機能です。ラウンドロビンとは、同じパッドを連続して叩いたときに、毎回少しずつ異なるサンプルを交互に再生することで、本物のドラムを叩いているような自然なニュアンスを生み出す仕組みのこと。
通常、このラウンドロビンを組むには手作業で複数のサンプルを割り当てる必要があり、かなり手間が掛かります。しかしLoop 2 Kitでは、同じグループに分類された複数のスライスを自動的にラウンドロビンのレイヤーとしてスタックしてくれます。パッドを選択して画面下部のエディターを開き、「ROUND ROBIN」を有効にするだけで、ループ素材から切り出された微妙にニュアンスの異なる音が次々と再生され、サンプラー特有の不自然な連続音を防いでくれるのです。
音作りを追求できる詳細なエディット機能とマスターFX
自動でキット化された後も、そのまま使うだけでなく、細かい音作りを追い込んでいくための充実した編集機能が用意されています。画面下部のエディターセクションでは、選択したパッドに割り当てられたサンプルごとの調整を行うことが可能。
ここには、ピッチの微調整や半音単位でのトランスポーズができる「PITCH」、音の立ち上がりや余韻をコントロールするアタック、ディケイ、サスティン、リリースの「ADSR」エンベロープが備わっています。さらに、20Hzから20.0kHzまでスイープ可能な「FILTER」、ボリュームとパンの調整を行う「AMP」、そしてトランジェントのシェイピングやサチュレーションによるドライブ感を付加できる「FX」セクションまで揃っています。
これらのパラメータはスライスごとに個別に設定できるため、キックの低域だけを強調したり、特定のハイハットだけを左右にパンニングしたりといった細かい作り込みが可能になっているのです。
また、左側のタブを「GLOBAL」に切り替えると、キット全体に作用するマスターエフェクトのコントロール画面が表示されます。ここでは、フェードタイムを調整する「FADE」の設定ができるほか、キット全体のアタック感やサスティンを調整するマスターの「ADSR」エンベロープで全体のノリを整えることも可能です。
さらに「CHARACTER」セクションでは、音にパンチを与えるトランジェントシェイパーのPunch、歪みを加えるSat、ビットおよびサンプルレートを粗くしてローファイな質感を作るLoFiのほか、トランジェントのミックスを行うTransやアタックおよびサスティンのゲインを調整するT.Atk、T.Susといった機能が並んでいます。
「SPACE」セクションでは、リバーブとディレイのセンド量を調整でき、ループ素材から作り出したドラムキットに空間的な広がりや奥行きを持たせることができます。もともとは単なる一つのオーディオループだったものが、これらのエフェクトを駆使することで、自分だけのオリジナルキットへと変貌を遂げる仕組みになっています。
直感的にグルーヴを生み出すラジアルシーケンサ
Loop 2 Kitのもう一つの大きな魅力が、独自のラジアルシーケンサです。画面を「SEQ」ページに切り替えることで現れるこのシーケンサは、一般的な横に流れていくタイプとは異なり、同心円状に配置されたリングが特徴的なインターフェースとなっています。
このシーケンサは、一つのリングが一つのグループのパッドに対応しています。DAWのテンポに同期して、時計の針のように中心から外側へと伸びたプレイヘッドが回転し、ステップ上に配置されたノートをトリガーしていく仕組みです。直感的にステップをクリックしてオンオフを切り替えられるため、視覚的にも楽しみながらリズムパターンを構築していくことができます。また、画面上部のペンマークをクリックすれば、一般的な横並びのステップシーケンサの表示に切り替えて使うこともできるため、使い慣れたスタイルでエディットしたいという方にも安心な設計となっているのです。
「ROTATION」機能を使えば、選択したリングのパターンをぐるぐると回転させて発音タイミングをずらすことができ、予期せぬポリリズムや新しいグルーヴのアイデアを生み出すことができます。「DENSITY」コントロールでは、アクティブなステップの数を一括して増減させることができ、曲の展開に合わせて徐々に音数を増やして盛り上げたり、逆に間引いて静かなパートを作ったりといった操作が瞬時に行えます。加えて、タイミングをずらしてノリを生み出す「SWING」パラメータも備わっているため、より人間らしいグルーヴを作り出すことが可能です。
さらに、作成したパターンは画面下部の「PATTERNS」セクションにスナップショットとして保存しておくことができます。これらはC1からG1のMIDIノートに割り当てられ、DAW側からMIDIノートを送ることで瞬時にパターンを切り替えることが可能です。同様に「FILLS」セクションにもバリエーションを保存でき、こちらはG#1からB1に割り当てられているため、ライブパフォーマンスのようにリアルタイムでフィルインを差し込むといった使い方も可能です。
以上、Pitch Innovationsのサンプラープラグイン、Loop 2 Kitについて紹介しました。Loop 2 Kitは、手持ちのオーディオループを解析し、面倒なスライスやマッピング作業を全自動で行ってくれる、まさに次世代のサンプリングツールでした。自動生成されるラウンドロビンによる自然な演奏感と、直感的なラジアルシーケンサを組み合わせることで、眠っていたループ素材から新たな可能性を引き出すことができます。サンプルベースで楽曲制作を行うクリエイターにとって、制作スピードと創造性を大幅に引き上げてくれる強力な武器になることは間違いないですね。冒頭にも書いたように現在イントロセール中で50%オフの11,440円(税込)でゲットできるので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか?
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