オリオラスジャパンが輸入販売する、中国・深圳のオーディオブランド「NiPO(ライポ)」から、USB-C接続のポータブルDAC「A200PRO」(税込価格:89,980円)が登場しました。カセットテープ風デザインのA200PROは、iPhone/iPad、Android、そしてWindows/MacのUSB-Cポートに直結し、PCMは32bit/768kHz、DSDはNative DSD512まで対応するというコンパクトな機材です。
3.5mmのヘッドホン出力のほか、4.4mmバランス出力では最大1620mWという、ポータブルDACとしてはかなり余裕のある駆動力を持つのが特徴。そして何より注目したいのが、ヘッドホン再生だけでなく「ライン出力」と「S/PDIFの同軸デジタル出力」までこなせるという、ほかにはあまり見かけないユニークな機能を持っているのがポイントです。たとえばiPhoneに音源を入れてライブ現場やスタジオに行った際、音質劣化なく、ノイズの心配なしにPAシステムやレコーディングシステムに接続できるというわけです。ここでは手元にあったS/PDIF入力機材であるEDIROLのM-16DXやRMEのFireface UCXへ接続してみたので、その模様も含めてレポートしていきましょう。
カセットテープを思わせるレトロなデザイン
NiPOは2019年に設立された比較的新しいブランドですが、AIWAやPHILIPSで30年以上音響設計に携わってきたエンジニアが創業者ということもあり、ハイエンドDAP「N1」「N2」で高い評価を得てきました。今回登場したA200PROは、そのNiPOがスマートフォンをそのまま本格的な再生機に引き上げることを狙って開発したMagSafe対応のDAC/AMPで、前作「A100」の思想を継承しつつ、出力性能やクロック精度、RF耐干渉性能などを全面的にブラッシュアップしたモデルです。
カセットテープ風なデザインでブラックとゴールドの2色が用意されています。N52グレードのネオジム磁石でスマートフォンの背面へ吸着させて使う、いわゆるMagSafeスタイル。またMagSafe非対応のiPhoneケースや他社スマートフォンでも、付属のメタルシールを貼れば使用できるようになっているのも便利なところ。サイズは約94×60×11mm、重量は約112gと、スマホに重ねて持ち歩いても大きな負担になりにくいサイズ感です。
ちなみにホンモノのカセットテープと並べてみると、厚さはほぼピッタリ同じサイズですが、縦横は一回り小さいサイズとなっているようでした。
しっかりした駆動力と、充実したEQ・モード設定
DACにはAKM「AK4497SVQ」を採用。SGM8262を2基使ったアンプ部により、4.4mmバランス出力で最大1620mW(32Ω)、3.5mmアンバランスでも最大405mWを実現しています。SNRは125dB、DACフィルターは7種類、EQも6種類搭載。
本体前面の0.87インチ高輝度OLEDディスプレイでは、サンプリングレートやボリュームといった再生情報に加え、Low/Mid/Highのゲイン切り替え、7種のDACフィルター、EQモード、さらにはライン出力や同軸デジタル出力の切り替えまで、さまざまな設定をリアルタイムに確認・操作できるのも便利なポイントです。
また、USB伝送についてはUAC2.0の高音質モードとUAC1.0の互換モードを切り替えられるのも特徴です。UAC2.0モードでは非同期クロック伝送によりハイレゾ音源を安定して再生できる一方、UAC1.0互換モードに切り替えれば、ゲーム機や古いUSB機器などUAC2.0を認識しにくい環境でも接続しやすくなります。
バッテリーは3900mAhを内蔵し、最大約12時間再生。オーディオ用のUSB端子とは別に独立した充電ポートを備えているため、再生しながらの充電も可能となっています。
ヘッドホン出力の音質とDTM/モニター用途での印象
ここまではライン出力や同軸デジタル出力といった、デジタルトランスポートとしての機能面を中心に見てきましたが、A200PRO自体もヘッドホンアンプとして高い実力を持っています。手元のモニターヘッドホンやIEMをいくつか接続して試してみたところ、まず感じたのは4.4mmバランス出力の余裕のある駆動力です。感度の高いIEMはもちろん、比較的鳴らしにくいモニターヘッドホンを接続しても音量にゆとりがあり、ボリュームを上げても詰まった感じが出にくいのは、最大1620mWという出力スペックが数字だけのものではないと実感できるポイントでした。

出力ゲインの調整も可能で、かなりの出力パワーを発揮できるのも嬉しいところ
また、音像の見通しの良さも印象的で、各パートの定位がはっきりとつかみやすく、DTMのミックスチェックの際にもパン振りや音の重なり具合を確認しやすいと感じました。特定の帯域が張り出したり引っ込んだりする癖が少なく、フラットに近いバランスで鳴らしてくれる印象です。
トランジェントの表現についても、キックやスネアなど打ち込み系のアタックがなまることなく、比較的シャープに再現されており、リズムの解像度を確認したい場面でも扱いやすい印象を受けました。

EQ設定も好みのものに変更することができる
モニター用途としての操作性の面では、OLEDディスプレイでゲインやEQ、フィルターの設定状況が一目で確認できるため、複数のヘッドホンやIEMを切り替えながらチェックする際にも迷わず設定を追い込めるのは実用的なポイントです。本記事ではライン出力や同軸デジタル出力に注目していきますが、ヘッドホンアンプ単体としても十分に実戦投入できる仕上がりといえそうです。
最大の注目ポイントは、ライン出力とS/PDIF同軸デジタル出力への対応
本体のメニューは、英語、日本語、中国語から選択可能となっています。設定画面を見てみると、通常のヘッドホン出力に加え、Lineoutをオンにすることでライン出力対応になります。また同軸出力をオンにすることで、S/PDIFの同軸デジタル出力が可能になるのです。
こうした機能を持つポータブル機器はスティック型DACなどでもなかなか見かけないため、ライブなど現場に持ち込んで使える製品として非常に興味深いものです。
また、多くのポータブルDACの場合、ヘッドホン出力をライン出力兼用で使うケースが多いですが、A200PROの場合、ラインレベルでの出力ができるので、音質面、ノイズ対策面においても非常に有利なのも間違いありません。
据え置き型のUSB入力を持たないDACや、長く愛用してきた名機に同軸デジタルで接続すれば、現代のスマホアプリの再生環境をそのまま組み込むこともできますし、真空管アンプへライン出力すれば、ニュートラルな再生に倍音豊かな味わいを加えるといった楽しみ方もできそうです。
実際にiPhoneから同軸デジタル出力してみた
そこで実際に、A200PROの同軸デジタル出力を試してみることにしました。使用したのは、3.5mmのTRRS端子をRCA端子に変換するPW Audio製アダプタ「Ref.1 OFHC 3.5mm TRRS to RCA」です。A200PROの3.5mm出力を同軸デジタルモードに設定した状態でこのアダプタを介してRCAケーブルに変換し、デジタルミキサーなどへ接続する、という流れです。
まずはiPhone標準のミュージックアプリなど、通常のプレーヤーアプリで再生してみました。この場合、出力される信号は44.1kHzになりますが、これをちょっと昔のデジタルミキサーで、いまも私が便利に活用しているEDIROLの「M-16DX」に同軸デジタルで接続したところ、しっかり44.1kHzでロックし、問題なく再生することができました。
一方、iOSにはハイレゾ音源をそのまま出力できるプレーヤーアプリもいろいろあります。試しにbismarkさん開発の「Scyllia」を使ってみたところ、M-16DXとの組み合わせで48kHzや96kHzといったハイレゾのサンプリングレートでもしっかり同期・ロックして再生することができました。
さらに、RMEの「Fireface UCX」に接続してみたところ、こちらでも44.1kHz、48kHz、96kHz、192kHzと、いずれのサンプリングレートでもノイズはまったくなく、安定して伝送できました。iPhoneというごく身近な機器から、これだけ幅広いサンプリングレートの信号を、S/PDIF経由で安定してデジタル伝送できてしまうのは、正直かなり驚きでした。
もちろん、現場によっては同軸デジタルの受けを用意していない場合もあるでしょう。そうしたケースでは、ライン出力モードに切り替えれば、アナログのミキサーやアンプへ直接接続することもできます。ヘッドホン再生用のDAC/AMPとしてだけでなく、モバイル環境から本格的な音響機材への「橋渡し役」としても使える点が、A200PROならではの大きな魅力といえそうです。単体でのヘッドホン再生でも十分な実力を持ちながら、必要な場面ではデジタルトランスポートとしても本領を発揮する、まさに一台二役のDAC/AMPといえるでしょう。
より小型・軽量なNiPOのDAC「COCOM1」
NiPOからは、A200PROとあわせて「COCOM1」という、よりコンパクトなDACも登場しています。COCOMは「Compact Companion Music」の略で、その名の通り、モバイル端末とともに使うことを前提にした、コンパクトさを追求したモデルです。
A200PROがバッテリー内蔵でより多機能・高性能なモデルであるのに対し、COCOM1はよりシンプルにヘッドホン再生を主眼とした位置付けです。重量はわずか28g、厚みも7mm以下という薄さで、装着していることを忘れてしまいそうなほどの軽さが特徴。特殊なフレキシブル基板を用いたOTGケーブルによって接続端子部も極小化されており、スマートフォンにつけたまま日常的に持ち歩くスタイルを想定しています。
A200PROのようなライン出力機能はありませんが、このCOCOM1にも同軸デジタルでの出力を備えているので同軸デジタル出力が目的であればこのCOCOM1でもその点はカバーできます。スペックはDACにAK4493SEQを採用し、PCM最大32bit/768kHz、DSD512まで対応。最大出力は500mW(32Ω)で、A200PROに比べるとやや控えめですが、その分、価格も47,300円とA200PROより手ごろになっています。マイクも内蔵しており、通話用途にも使える点はA200PROにはない特徴です。よりコンパクトに、ハイレゾ再生を楽しみつつ、デジタル出力も、というユーザーには面白い選択肢になりそうです。
【関連情報】
A200PRO製品情報
COCOM1製品情報
Ref.1 OFHC 3.5mm TRRS to RCA製品情報
【価格チェック&購入】
◎オリオラスジャパン公式ショップ ⇒ A200PRO
◎オリオラスジャパン公式ショップ ⇒ COCOM1
◎オリオラスジャパン公式ショップ ⇒ Ref.1 OFHC 3.5mm TRRS to RCA
◎宮地楽器 ⇒ A200PRO
















コメント
記事の内容も凄いですが、藤本さんがRolandの名器M-16DXを未だに現役で使われていることに感動しました。私も2台持ってますが、ほぼオフラインとなりました。
Shigerunさん
妙なところへのツッコミありがとうございます。
はい、いまだ現役で使っています。ここまでいろいろな機能のあるデジミキってなかなかなく(とくにS/PDIF)、いまだに便利に使ってます!