譜面作成ソフトというと、FinaleとかSibeliusといったソフトが頭に浮かぶ人が多いと思います。でも、それらとはまったくアプローチの異なるNotion(ノーション)というイギリス生まれのソフトがあるのをご存じですか?これは譜面作成ソフトでありながら、演奏性に主眼が置かれた、いわばMIDIシーケンサ。Notionの標準MIDI音源と同時にVSTiプラグインで演奏させたり、そこに各種プラグインでエフェクトを掛けるなど、これ1本で打ち込みによる曲作りができてしまうのです。

しかも、iPad版のNotionもあり、これと連携も可能になっていたり、Notionで出来上がった曲は、Studio One形式でエクスポートできるというのも大きなポイントなんです。従来の譜面作成ソフトとは、明らかにコンセプトの異なる、この音楽制作寄りなNotionについて紹介してみましょう。


PreSonusの譜面作成ソフト、Notion。強力なMIDIシーケンサ機能も装備している
 
イギリス生まれのNotionというソフト、ヨーロッパでは結構有名なソフトだったようですが、これまで日本に輸入代理店がなかったこともあり、国内ではあまり知られていませんでした。でも、そのiPad版はAppleのCMなどでも取り上げられていたので、ご存じの方もいるかもしれませんね。


AppleサイトにあるiPad版Notionに関するページ

このiPad版NotionとPC版(Windows/Mac対応)のNotionは親子関係にあるソフトであり、そのコンセプト的なことはiPad版でも実感できるようになっています。そのNotionを開発する会社が、各種オーディオインターフェイスやDAWのStudioOneの開発元であるPreSonusに買収されたことにより、劇的な進化をしてきたのです。

単にこのソフトだけで完結するのではなく、StudioOneと連携してマスタリングまでできるようになったり、日本語化されて国内でも発売開始されるなど(発売元はPreSonus製品を扱うエムアイセブンジャパン、直販価格は17,500円)、国内DTMユーザーにとっても、注目せざるを得ない存在になってきているのです。


起動するとテンプレートの選択画面が現れる 

では、実際どうやって使うソフトなのでしょうか?ソフトを起動するとテンプレートなどが表示されるので、たとえば「ロックバンド」を選ぶとボーカル、エレピ、エレキギターの1、2、ベース、ドラムという譜面が現れます。


「ロックバンド」を選ぶと、このような譜面が出てくる。ここに音符を張り付けていくのが基本 

Notionは基本的には譜面作成ソフトですから、ここに音符を入力して譜面にしていくわけですが、入力はマウスを使って1つ1つ入れていってもいいし、画面下に鍵盤を表示させ、ここで入力してもOK。もちろんMIDIの入出力にも対応していますからUSB-MIDIキーボードなどから、ステップ入力もできますし、キーボードが弾ける人ならリアルタイムレコーディングしていくこともできますよ。


画面上に鍵盤、さらにはギターフレットを表示させての入力ができるのがポイント 

さらにユニークなのはギターフレットを表示しての入力です。ここでどこを押さえるかをマウスで指定して入力すると、「TABならわかるけど、五線譜の音符はどうも苦手で…」「キーボードって弾けないんで、ピンと来ないんだよね」という人でもギターが分かる人であれば、結構スムーズに入力できると思います。この際、1音1音入力することもできるし、フレットを押さえて、コードで入力することも可能です。この際、鍵盤を弾くのと違って、入力したデータはストロークで弾く感じで微妙な時間差も付けてくれるから、かなりリアルな感じになりますよ。この際、五線譜に入力していくことはもちろん、TAB譜で入力していくことも可能です。個人的には、「このギター入力だけでも買う価値がある!」と思えるものでした。


Windows8のタッチスクリーンにも対応している 

しかもWindows8で使っている場合は、マルチタッチでのディスプレイに対応しているから、フレットを手で押さえるというか、指定した上で、それを弾くということもできるので、従来の音符入力方法とはだいぶニュアンスも違うと思いますよ。

普通の譜面作成ソフトって、「音も出せるけれど、基本的には入力ミスがないかの確認用で、演奏するためのものではない」という一般的だと思います。でも、このギターのストロークの表現方法からも想像できるとおり、Notionはかなり演奏能力に力が入っているんですよね。


Notion音源としてさまざまな音色が用意されている 

その演奏能力において、重要になるのが音源です。Notionには専用のNotion音源というものがバンドルされており、ギターやベースはもちろん、ピアノ、バイオリン、フルート、トランペット、ドラム……と一通りの音源が揃っており、これで演奏することが可能です。


しかもVSTインストゥルメントまで利用できるので、かなり自由度の高い楽曲制作ができる


でも、VSTインストゥルメントをサポートしているので、手持ちの音源をそのままNotionで利用することができるのです。これって、もはや譜面作成ソフトというよりはDAWって感じですよね。


Notionにはかなり本格的なミキシングコンソールも搭載されている 

さらに驚くのは譜面作成ソフトだというのに、ミキシングコンソールが用意されていることです。Notion音源もVSTインストゥルメントの音源も、作成したトラックだけフェーダーが並ぶと同時に、バスがA~Hまで計8本あるので、ここへセンドで信号を送ることが可能。そして、各チャンネルごとにインサートでエフェクトを刺すことができるんです。


Studio One由来のエフェクトが搭載されているほか、VSTプラグインの利用も可能

そのエフェクトとしてはStudioOne搭載のものと内部的には同等のEQ、コンプ、リミッター、リバーブ、さらにディストーション、アンプシミュレータなどが標準で装備されています。そう、これらエフェクトを使うことで、かなり音を変えることができるのです。とくにギターなどの場合、ディストーションやアンプシミュレータを通すとまったく違う音になりますからね。いくらエレキギターの音源といっても、生音だとショボイ音でもアンプシミュレータやディストーションを通すことですごい迫力も出てくるし、これにディレイやリバーブなどを掛けると、かなり実績的なサウンドになってきます。


iPad版のNotion。機能的にはPC版には劣るものの、手軽に持ち歩いて入力できるのは便利

そして音源側と同様にエフェクトもVSTプラグインが自由に使えるようになっていますから、市販のプラグインでもフリーソフトでも使い放題。まさに音作りのほうは何でもできるといった感じですよね。

このようにしてPC版のNotionではDAWというかMIDIシーケンサの高性能版のような感じで楽曲を制作していきます。一方のiPad版のほうも、UIはPC版と非常によく似ていて、いつでもどこでもデータ入力できるという面では強力な味方となってくれます。ただし、使える音色が少なかったり、もちろんVSTなどのプラグインは使えないといった物足りなさはあります。でも、iPad版とPC版は連携させることができ、この足りない部分をPC側で補強することができるのです。


iPadで作成したデータをDropboxやメールなどでPCへ受け渡ことができる

つまり基本的な音符入力作業はiPadで行い、出来上がったものをDropboxやメール経由でPCへと送ると、PC版のNotionで開くことができるので、追加編集を行っていけばいいわけですね。このシームレスさはなかなか使いやすいですよ。

さて、Notionはこれだけ多種多様な機能を装備しているので、これで楽曲として完成させられるようにも思いますが、やはりNotion自体はDAWではないので、音楽制作全般でいうと、足りない機能があるのも事実です。


Notionにはオーディオ添付機能というものがあり、特定の音符のタイミングから再生できるWAVを張り付けられるが…… 

まずはオーディオトラックがないことでしょう。基本的にはMIDIの打ち込みツールでると割り切って使ったとしても、やはりボーカルを入れたりとか、生のギターの音を入れてみたい……といったことにはなりますよね。一応Notionにもオーディオ添付機能というのもありますが、やはりしっかりレコーディングするにはオーディオトラックが欲しいところです。

また、先ほど紹介したミキシングコンソールも使い勝手はいいけれど、オートメーション機能までは持っていないんです。つまりフェーダーやPANの位置は固定されてしまい、曲の再生中に動かしても、それを記録する手段がないんですよね。曲として完成させるには、最後のところで物足りない……と感じてしまうわけです。ところが、これをStudio Oneがサポートしてくれるのです。つまりiPad版からPC版へ持ってきたのと同様に、PC版からデータをエクスポートすることで、Studio Oneが引き継いでくれるんです(iPad版にはStudio One用のデータをエクスポートする機能はありません)。


オーディオのエクスポート機能でPreSonus Captureセッションを選択する 

これはオーディオのエクスポート機能で実現させるのですが、この際「PreSonus Captureセッション」というものを指定することで各トラックのWAVデータとともにCaptureセッションデータが生成されるので、Studio Oneから一発で開くことが可能になるのです。


NotionでエクスポートしたPreSonus CaptureデータをStudio Oneで読み込むことができる 

ちなみに、このStudio Oneは市販のStudio One Professional 2Studio One Producer 2はもちろんのこと、PreSonusのオーディオインターフェイスにバンドルされているStudio One Artistや初音ミクV3巡音ルカV4XなどにバンドルされているStudio One Artist Peapro Edition、さらにはStudio One Freeというフリーダウンロード版でも使えてしまうですから、太っ腹ですよね。

ところで、このNotionに関連して面白い情報を紹介しておきましょう。このNotionは、ほかの譜面作成ソフトと同様にMusicXMLのデータのインポート、エクスポートができるので、ネット上で公開されているさまざまな譜面データをインポートして利用することができます。たとえばオーケストラ楽曲をインポートした上で、自分なりのアレンジを加えていくというのも楽しいのではないでしょうか?


MusicXML形式で譜面を配布しているサイトも数多くある 

そしてもう一つ特筆すべきはGuiter Proのデータがインポートできるということです。Guitar ProはArobas Musicが開発するギター用TAB譜作成ソフトで現在国内でもGuitar Pro 6が発売されていますが、そのGuitar Proのデータ(Guitar Pro 5までのバージョンに対応)をそのまま読み込んで利用することができるのです。ご存じの方も多いと思いますが、このGuitar Pro、海外では結構利用されているようで、膨大なTAB譜データがネット上で公開されているんですよね。たとえば、guitarprotabs.orgやgprotab.netなどに行くと、著名楽曲なら何でもそろっているという感じです。著作権上どうなっているのか、怪しい感じもするので、取扱いには注意がいると思いますが、個人で楽しむという意味では、こうしたTAB譜データを入手した上で、自分でエディットしてみるというのも楽しそうですよね。


海外サイトで数多く配布されているGuitar Pro用のTAB譜データを入手して使ってみるのも手

以上、国内で正式発売されたばかりのNotionについて紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?従来の譜面作成ソフトとはちょっと違うソフトであり、しかも、DAWであるStudio Oneとも連携できるという意味で、新しい音楽制作ツールとして使えるのではないでしょうか?

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