フリーの音源から高性能な市販ソフトまで、ありとあらゆる音源がソフトウェアで実現されるソフトシンセ全盛の今、ここまでハードウェアのアナログシンセがブームになるとは、私自身、考えてもいませんでした。が、各社さまざまな形でアナログシンセに取り組んでおり、その勢いは止まらないようです。そんな中、Rolandが3月に発売することを発表しているのが、Roland SYSTEM-500 Complete Setというもの。

これから初めてユーロラックにチャレンジする人へのエントリー製品」という位置づけなんですが、実売価格が税別で25万円前後。気軽にポンと購入できる価格ではないけれど、「ユーロラックってカッコよさそうで気になる!」という方も少なくないはず。このSYSTEM-500は先日、記事で紹介したRoland A-01Kと接続することで、DTM環境に組み込んで楽しめるのも面白いところです。そこで、改めてユーロラックとは何なのか、このRoland SYSTEM-500 Complete Setとはどんなものなのか、A-01Kとどのように組み合わせることで、PCと融合可能なのか……といった点から少し紹介してみたいと思います。


ユーロラック対応のモジュラーシンセ、Roland SYSTEM-500 Complete SetとA-01Kで遊んでみよう

最近、いろいろなところで話題になるユーロラック(EuroRack)。小さなガレージメーカーから大手シンセメーカーまで、さまざまなところからユーロラックという規格に対応した機器が登場しており、それらを自由に組み合わせて自分オリジナルのアナログシンセのシステムが組めるというのが大きな魅力となっています。

もっともユーロラックが流行るようになったのは、ここ数年であり、規格自体が登場したのも90年代後半。もともとはドイツのDoepferというメーカーが作ったシンセモジュールの仕様を公開し、それに合わせてみんなが作ったことから、広まっていったんですね。


ユーロラックに組み込まれた形で3月に発売されるRoland SYSTEM-500 Complete Set  

モジュールは一般的に縦長な顔をしていますが、縦が3U(128.5mm)で、横幅は1/5インチ=5.08mmの倍数という決まりになっているので、ユーロラックケースにキレイに収まるようになっています。また、電源の接続もラック内部でフラットケーブルを使って接続するようになっているんですが、極性を間違えて接続すると「煙が出て、回路が壊れた……」なんて話も時々聞くのがちょっと怖いところ。


すべてはユーロラックのラックケースの中に収められている

そんな中、「とりあえず、これですぐに安心して使えるよ」という形で出てきたのが、Roland SYSTEM-500 Complete Setというわけなんです。これは、昨年12月から発売されているSYSTEM-500シリーズのモジュール5機種をユーロラックケース「SYR-E84」にマウントした上で、パッチケーブル、電源などをセットにしたというものなので、これなら失敗せずに使えそうです。


ユーロラックに組み込むモジュールは基板むき出し。Complete Setでは、ここに電源ケーブルがセットされている 

もちろん、すでに他社製を含め、なんらかのユーロラック対応機器を持っている人が、SYSTEM-500シリーズを組み合わせて使うのもいいし、まずはRoland SYSTEM-500 Complete Setからスタートして、後から他社製のモジュールを追加していく…なんてのもありですね。


SYSTEM-100Mの112=VCOをモデルにした512と、121=VCFをモデルにした521
 
そのSYSTEM-500は、デザイン面は、1976年にRolandが発売したSYSTEM-700を、サウンド面では、1979年に発売したSYSTEM-100Mをモチーフにユーロラックに対応させたという完全なアナログモジュラーシンセなんです。


521の右にあるのはSYSTEM-100M 130=VCAを元に作られた530

SYSTEM-100MにはVCOの112VCFの121VCAの130ENV&LFOの140、それにフェイズシフターやディレイなどの171…といったものがありましたが、今再現されたSYSTEM-500では下二ケタが同じ番号の512、521、530、540、572といった名称になっており、機能的には昔のものと同様になっているんです。


140=ENV/LFOを再現した540と172=エフェクト類を再現した572
 
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、Rolandでは昔の機器のマニュアルもPDFでダウンロードできるようになっているので、これらを入手すれば、そのまま利用可能というのも面白いところですね。


昔のSYSTEM-100MシリーズのマニュアルはRolandサイトよりPDFで入手できる

ちなみに、このSYSTEM-500はRolandとアメリカのポートランドにあるMalekko Heavy Industry社との共同で開発したもの。そんなメーカー同士のタッグというのも面白いところですよね。


各モジュールはネジを外せば、簡単に取り外して交換することが可能

さて、そのSYSTEM-500はCV信号とGATE信号を入力することにより、外部からコントロールすることができます。どこで何をコントロールするかは自由に決められるのが面白いところではありますが、たとえばVCOにCV信号を入れることで、ピッチを変化させ、VCAにGATE信号を入れることで、音の鳴る長さを変えることを可能にします。


A-01のCV出力をVCOへ、GATE出力をVCAへと接続してみた 

そのための信号をA-01から入れることで、レトロなアナログシンセの世界と現代のデジタル社会をつなぐことが可能となります。ここではSYSTEM-500でのパッチング方法などについては割愛しますが、A-01のCV出力とGATEをSYSTEM-500のCV入力、GATE入力へとパッチングすれば、ハード的な接続は完了です。

この状態でA-01のキーボード(正確にいえばA-01に接続されたK-25mですね)を弾けばSYSTEM-500を演奏することができます。また、A-01にMIDI接続されたMIDIキーボードを弾くことでもSYSTEM-500を鳴らすことができるし、Bluetooth接続されたiPhoneやiPad上で動くMIDI鍵盤を弾いても鳴らすことができますよ。


計16パターンをメモリできる、A-01の16ステップのシーケンサ 

そしてA-01が本領を発揮するのは、ここから。A-01に内蔵されている16ステップのシーケンサにデータを入力してプレイすれば、それに合わせてSYSTEM-500の演奏がスタートします。さらにA-01をPCと接続した上で、PC上のDAWを起動させてA-01へMIDI信号を送れば、この状態でもSYSTEM-500を演奏することが可能です。ただし、SYSTEM-500はモノフォニックのシンセサイザですから、送る信号は単音になるように気を付けてくださいね。もちろん、和音を送っても壊れるようなことはありませんが、基本的には後から届いた信号が有効になるので、思った通りの演奏にならないと思います。


さまざまな機器とのHUBとなるA-01のシステム構成 (水色はA-01の内部)

先日の記事でも書いたとおり、A-01はCV/GATEやMIDI、さらにPCやiOSなどとのHUBとして機能する機材だけに、どの信号がどのように流れるのか混乱してしまいそうです。デフォルトの状態では、すべての入力がすべての出力に届くようになっていますが、設定によってこれをもっと細かく指定することが可能となります。


CV/GATEはMIDIの1chに設定 

たとえば、DAWからA-01へ送る際、MIDIの1chはCV/GATE接続のSYSTEM-500へ、2chはA-01の内蔵音源、3chはBluetooth接続したiPad上の音源、4chはA-01のMIDI OUT……のように細かく決めることができるので、この辺も面白いところですよ。


DAWのMIDIトラックの出力はA-01に設定する 

もちろん、SYSTEM-500のオーディオ出力をオーディオインターフェイスに突っ込み、それをそのままDAWへレコーディングしていけば、ほかのトラックと同期する形でオーディオ化していくことができます。つまり、モノフォニックでしか鳴らすことができないSYSTEM-500ではありますが、A-01Kを介してDAWと組み合わせれば、1トラックずつSYSTE-500の音をオーディオ化して重ねていくことができるため、最終的にSYSTEM-500だけで作り上げた音楽、というものも比較的簡単な手順でできてしまうわけですね。

それにしても、このA-01Kは、こうしたアナログシンセからMIDI音源モジュール、DAW上のソフトシンセ、iOS上の音源まで、メーカーを問わず、新旧含めたさまざまなシンセをシームレスに接続できるというのは便利ですね。個人的には、A-880というRolandの昔のMIDIパッチベイをいまだに使っているんですが、A-01は、まさに現代版MIDIパッチベイという表現がいいかもしれませんね。

以上、Roland SYSTEM-500 Complete SetとA-01を組み合わせた現代のアナログシンセ活用法について簡単に紹介してみましたが、いかがでしょうか? ある程度、値は張りますが、大人の遊びとして、いまアナログのモジュラーシンセにドップリとハマってみるというのも面白いと思いますよ。

【製品情報】
Roland A-01製品情報
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