DTMを先生についてしっかりと習いたい」と思っている人は少なくないと思います。確かにネット上にさまざまな情報はあるけれど、その中から正しい情報を見つけ出すのは大変だし、それぞれの情報を系統立てて勉強していくのは難しいところです。もちろん本で勉強するのもいいのですが、読んでもなかなか理解できないというケースも少なくないでしょう。

そうした中、主に高校を卒業した人たちに向けてDTM・レコーディングに関するカリキュラムを用意している音楽系の専門学校があるほか、社会人を相手に休日や夜間などに授業を展開している学校も存在しています。年末にたまたま知ったJBG音楽院という学校。「ぜひ一度どんな授業なのか見てほしい」と言われて先日の日曜日の朝9:30~12:45という2コマの授業を見学してきたところ、思いのほか面白かったので、その一部を紹介してみたいと思います。


社会人向けのDTM学校、JBG音楽院の授業に潜入!
JBG音楽院は東京校と大阪校(大阪校は昨年秋よりスタート)の2か所で展開する、主に社会人を対象としたDTMと作曲・作詞を学ぶための学校。 バークリー音楽大学で学んだ講師が監修している「世界標準の最新音楽制作カリキュラム」なるものを軸に、授業が構成されているとのこと。「音楽は日々常に進化し続けている」をモットーに、リアルタイムでのヒット曲を題材に、カリキュラムは随時アップデートしている……なんて話を事前に聞いてはいたのですが、あまり状況もわからないまま、日曜日の午前中の授業を見に行ったのです。

その日の授業をしていたのは、ベース奏者で作曲家でもある荒木健先生。JBG音楽院のサイトにあるプロフィールを読むと、なかなか面白い経歴のようですが、大学卒業後、メーカーやラジオ局で勤務をしつつバンド活動をしてから、渡米してバークリー音楽院に入っているのだとか……。そのバークリーで身に着けた教育プログラムを元に、このJBG音楽院のカリキュラムが作られているそうです。

JBG音楽院の講師4人中の1人、侘美秀俊先生が書いた書籍が大ヒット中

ちなみに、現在東京校には先生が4名いるそうで、そのうちもう1人の侘美秀俊先生は、昨年末Twitterでバズっていた、リズム譜早見表が裏表紙にあった本、「できる ゼロからはじめる楽譜&リズムの読み方 超入門」(リットーミュージック)の著者ですね。


音符のリズムを言葉で覚えさせる発想は、すごい斬新で面白く、もう増版がかかるなど、ベストセラーになっているみたいですよ。


今回の授業での講師はバークリー音楽大学出身のベーシスト、荒木健先生


さて、東京・表参道にある新宿副都心を一望できるビルの一室である教室に入ると、荒木先生と男性生徒4人が揃い、まさに授業がスタートするところ。


教室の窓からは新宿副都心が一望できる

普段ならもう一人女性の生徒がいるそうですが、当日は欠席だったので、まさに少人数授業。もっともJBG音楽院での授業は生徒数6人以下で行うようにしているとのことでしたから、普段からこんな感じなんでしょうね。


最初に配布された荒木先生耳コピによる譜面

 
席に着くと、すぐに配布されたのが荒木先生が耳コピで作成した冨田ラボさん作曲の「都会の夜 わたしの街」の楽譜。かなりマニアック?なコード進行のJ-POPというイメージですが、授業中にこの楽曲を再生しながら、この譜面を見ながら荒木先生と4人の生徒によるメロディーとコードの分析が始まりました。

ここはベースにEがあって、このメロディーなのでF#/Eだよね。そこからSUS4に展開した後、ここはB7の変形だけど、このコードはイトウ君なんですか」、「う~ん、B aug /Eですかね……」「そう正解、ここではトライトーンは鳴らさないから、こういうコードになるわけだです。その先Emで9th、11thの音が入ってきた後に、F#/Dなんてのが来る。なかなか分かりにくいよね……」とサクサク授業は進んでいくのですが、そんな難しいコードは、さっぱり頭に浮かんでこない私は、ややポカーンと聞いていた感じでしたが、みなさん頷きながら、真剣にメモを取っています。


曲を聴きながら、譜面を見ながらコード解析をしていく

この1時間目の授業は、「作曲2」の中の「スタイル作曲演習4《J-Pop》」というカリキュラム。JBG音楽院のカリキュラムは作曲やDTMに関する基本的なことを一通り学ぶコアプログラムと、目的となることを学習するためのメインプログラムの大きく2つに分かれているのですが、この「作曲2」はメインプログラムの中のメニューで、すでに作曲1(全18コマ)をこなしてきた人が対象というものなので、だいぶ上級者向けみたい。


コースは大きくコアプログラム、メインプログラムと分かれている

ちなみに、このJ-Popの授業は3回に分かれていて、行ったのはその2回目。「キー・エリアの拡張で使えるフレーズを増やす、洋楽テイストを感じさせるボイシングをマスターする」というのが目的となった授業です。


授業を楽しみながらも、楽曲アナライズにみんな真剣


じゃあ、ここのコードは、山ちゃん!」「Bsus4/F#?」「そう、Bsus4/F#なんてコード、久しぶりに見ましたね。これはいわゆるスティーリー・ダン・コードだよね。そのあとの、ここはF#dim/Cかな……。かなり変だけど、まあそれ以外にいいようがないですよね。面白いのは、この先。下のパートを横山剣さんがハモるんだけど、これは本人かなり好きで歌ってるよね(笑)……


M-AudioのキーボードにLogicのソフト音源を接続して音を確認していく 

とテンポよく授業は進んでいきます。みんな、よくついてけるな…と感心しつつ、自分でも分かりそうで、ハッキリ答えられないもどかしさがあるだけに、「ちょっと真剣にコードの勉強しようかな……」なんて気にさせられます。

ちなみに、J-Popの別の授業では「普通のトライアドのコードの曲だと歌謡曲になってしまうので、ルートを左手で、その5度上のトライアドを右手で弾く形で展開するだけで、オシャレなJ-Popのハーモニーになることを教えたんですよ。そうしたら高校生の子が喜んで、次の日にはオリジナルを作ってきちゃいましたね」と荒木先生。こういう話って、やっぱりネットで検索していて身に着くワザじゃないので、面白そうです。

休憩の15分を挟んで、2時間目の授業がスタート。今度もメインプログラムですが、内容は大きく変わって「DTM2」というカリキュラム。今回の授業ではディレイ、リバーブといったエフェクトをどうつかうかというのがテーマなんですが、これもすごく面白い内容でした。

ここで題材に取り上げたのは、平井堅さんの「Plus One」という曲の冒頭のアカペラ部分。
 


すごく、今っぽい明るいサウンドになっていますが、ここにはディレイとリバーブがうまい組み合わせで入っているからなんです。これを参考にみなさんでも、これに近い音作りをしてみましょ」と荒木先生。

何をするのかと思ったら、ここで生徒のみなさんにUSBメモリーを配布。ここに平井堅さんのドライのボーカルが入っているのかと思ったら違いました。「12年前にハワイの政府観光局の仕事をした際、現地でレコーディングした声が入っているので、これを題材にして作業していきましょう」とのこと。

みなさんの机の上にはLogic Pro Xが入ったMacとM-Audioのキーボード、それにヘッドホンという比較的シンプルなDTMセットが置かれていて、これを使って作業していくのです。


まずは配布されたオーディオファイルをLogicのトラックに展開 

もともとマルチトラックのデータとしてなっていて、これをLogicに読み込む。テンポ情報などは何も入ってないから、ここで手探りでテンポを見つけます。本来はディレイもリバーブもBUSを設定して、センドすべきところですが、ここでは簡易的にインサーションでテスト。ショートディレイを組み込み、8分音符に設定した上でFeedbackレベルを7~10%あたりに設定すると、なんとなく音の雰囲気が近づいてきます。


ディレイを8分音符の時間に設定

さらに、ここにプレートリバーブを設定します。プレートリバーブとは元々、鉄板の反射を用いたリバーブですが、パラメータにおいてはデンシティをとって乱反射をなくして、キンキンな音にするとともに、プリディレイをゼロに設定するのがポイント。またローカットする必要はあまりないけれど、リバーブを使うとどうしても低いほうにゴミが出るので、EQで少しカットするというワザを見せてくれ、先生の指示にしたがってみんなで音作りにチャレンジしていきます。


プレートリバーブを使った音作りをしていく

見ていると、先生からはポイントとなることは提示があるけれど、それ以外は生徒にまかされるため、ある程度、エフェクトの使い方に関するノウハウを身に着けていないと授業についていけないかもしれません。ただ、これもすでに基礎となるコアプログラムを終え、メインプログラムの「DTM1」の全18コマをこなしてきたからこそ、みんなできるわけですね。


18.9msecのショートディレイを設定しつつ、コンプ、EQを使ってしっかり厚みのあるボーカルにしていく 

さて、ここで飛び出したのが荒木先生による、不思議な裏ワザ。
以前にも授業で取り上げましたが、ショートディレイを1個使ってボーカルを厚くするワザ、覚えてますか?ハイ、サワダ君」「イッパクで18.9msecです」「そうですね

???さっぱり意味が分かりません。「この曲、テンポが120くらいだったから1拍=四分音符なら500msecなんじゃないの??」と私は混乱してしまいましたが、どうやらダジャレの暗記のようでイッパク=18.9と覚えるんだとか。

別に根拠があるわけじゃないけれど、ボーカルに18.9msecでショートディレイをかけると、いい感じに音が厚くなるんですよ。ぜひ試してみてください」と荒木先生。なんか騙されたような気もしますが18.9msec、今度さっそく使ってみようと思っているところです。


入学目的はみなさん、それぞれでしたが、すごく真面目に取り組んでいるのが印象的でした


授業の後、生徒のみなさんにも少し話を聞いたのですが、ここに入学した動機は、ホントにみなさん、ひとそれぞれ。「本職は塾の講師でして、趣味で一人でDTMをやっていたのですが、自分ひとりでやっていても、なかなか上達しないし、音楽に広がりが出てこないんです。もっといろんな曲を作りたいなと思って入学しました」「いま大学3年生で音楽系サークルに所属しています。もともとクラシック畑でピアノをやってきたのですが、包括的に音楽をしっかり勉強してみたい。その上で同人音楽などの世界で活躍できるスキルを身に着けたいと思って入りました」「友人とバンド活動をしてきたのですが、自分はアレンジが苦手。バンド内にもうまい人がいなくて、なんとかしたい、という思いで数年前に入学しました。今は会社員として仕事をしていますが、いつかは音楽に関する仕事に就けるといいなと夢見ているところです」……など。

みんながプロを目指して、というわけではないようですが、この数時間授業に出ただけでも、かなりノウハウが身についたり、勉強しなくちゃいけない世界がいろいろと見えた感じで、とっても刺激的でした。


これまでもテイラー・スウィフト、ブルーノ・マーズ、ケイティ・ペリーなどの楽曲を題材に取り上げてきたという

JBG音楽院では「最新かつ世界標準の音楽制作カリキュラム」というのをテーマにしていて、最新の世界ヒットにはこだわっているのだとか。実際これまでテイラー・スウィフト、ブルーノ・マーズ、ケイティ・ペリーといったグラミー賞でおなじみのアーティストたちの楽曲を取り上げて、アナライズしたり、曲の作り方についての授業展開をしてきたというから、面白そうですよね。

東京校は年4回、大阪校は年2回の募集で、体験授業などもおこなっているようなので、興味のある方は参加してみると楽しいかもしれませんね。

【関連情報】
JBG音楽院サイト
JBG音楽院の入学説明会