DTMステーションでもこれまで何度か紹介してきたZOOMのコンパクトなデジタルミキサー兼マルチトラックレコーダ、LiveTrakシリーズ。その中でも、カバンにすっぽりと収まる最小サイズとして多数のユーザーに利用されているLiveTrak L6の上位モデルとなるLiveTrak L6maxが新登場し、発売が開始されています。
LiveTrak L6は非常に便利な機材でしたが、マイク入力が2つであったため、用途によっては入力数が足りない場面がありました。しかし今回登場したLiveTrak L6maxは、マイク入力が4つに増強されたほか、ライブ演奏時のモニター環境を改善する新たな出力系統や、配信に役立つAIノイズリダクション、音楽制作をサポートする機能などが追加されるなど、ユーザーの細かな要望に応える進化を遂げています。価格は47,900円(税込)と、コストパフォーマンスに優れているのもポイント。実際に試してみたので、DTM環境での活用法を含めて詳しく紹介していきましょう。
マイク入力が4系統に倍増しPADスイッチ搭載で計12入力に対応
まずは基本となる入力を見ていきましょう。最大の進化ポイントとして目を引くのが、マイクプリアンプを搭載した入力端子が4系統に増強された点です。これらの入力端子はXLRと標準フォンの両方に対応するコンボジャックを採用しており、+48Vのファンタム電源の供給も可能です。チャンネル1と2はギターやベースを直接接続できるHi-Z入力にも対応で、楽器録音の利便性も確保されています。
これらに加えてステレオ入力も4系統備わっており、合計12入力が可能です。ステレオ入力はインピーダンスバランス型のTRSフォンジャックを採用し、ステレオ入力であるチャンネル5/6/7/8には-20dBのPADスイッチを搭載。
ステレオ入力の最大入力レベルは通常時で+4dBuですが、PADスイッチを使用することで最大+24dBuまで対応できるようになりました。これにより、ヴィンテージシンセや大音量を出力するPAミキサーなども音が割れることなく直接接続することが可能となっています。またMONOスイッチを活用すれば、モノラル出力の楽器を接続した際にも音が片側に偏ることなく、しっかりとセンターに定位させることができます。
そして、後半のステレオチャンネルである7と8は、アナログ入力とUSB入力をスイッチ一つで切り替えることが可能。これにより、DAWソフトからのクリック音と伴奏トラックをそれぞれ独立したチャンネルに立ち上げてミックスするといった、同期演奏のシステム構築などもスムーズに行える設計になっています。
ライブ同期や配信に威力を発揮する豊富な出力系統とSUB-OUT
入力に続いて、出力系統の強化もLiveTrak L6maxの強力なアップデートポイントです。メインのMASTER出力、そのMASTERの音を常に手元で確認できるヘッドホン用のモニターアウト、2系統のモノラル出力であるAUX SEND端子、そして新たにSUB-OUTというステレオ出力端子が搭載されました。
モニターアウトは、最終的なミックスバランスをヘッドホンで正確に確認するためのもので、そして注目のSUB-OUTには、出力する音声をMASTERと同じものにするか、それとも完全に独立した別のサブミックスにするかを選択できる切り替えスイッチが搭載されています。
たとえば、ライブでパソコンから伴奏データを流しながら生演奏を行う同期演奏において、ドラマーには伴奏に合わせてクリック音を聴かせる必要があります。しかし、客席に流すメインの音には絶対にクリック音を混ぜるわけにはいきません。これまでは複雑な設定が必要でしたが、LiveTrak L6maxのSUB-OUTをサブミックスに切り替えることで簡単に解決可能になりました。
PAエンジニアには伴奏とボーカルだけをMASTERから送り、ドラマーの手元のミキサーには伴奏とクリック音を独自のバランスでステレオのSUB-OUTから送るというルーティングが簡単に作れますよ。
デュアルADコンバータと32-bit float録音でゲイン調整の手間を排除
豊富な入出力を備えるミキサーとしての基本性能に加え、レコーダーとしての機能も極めて強力です。従来モデルのLiveTrak L6でも好評だった32-bit float録音機能は、このLiveTrak L6maxにもしっかりと引き継がれています。これを実現するために、チャンネル1から4には小さな音用と大きな音用の2つの変換器を組み合わせたデュアルADコンバータ回路が採用されています。
通常、デジタル録音を行う際は、音が大きすぎてバリバリと歪んでしまう音割れを防ぐために、事前に入力レベルを慎重に調整する必要があります。たとえば、複数人でポッドキャストを収録する際、本番で話が盛り上がって突然大きな笑い声が起きたり、レコーディングでリハーサルよりも大きい音が鳴ったりして、結果的に録音データが歪んで使えなくなってしまったという失敗談は誰しもが経験するところだと思います。しかし、デュアルAD回路と32-bit float録音を組み合わせることで、事前のゲイン調整という面倒な作業を省くことができます。繊細な音から突発的な大音量まで、クリップを気にすることなく録音に集中できるのです。
ちなみに録音フォーマットはWAV形式の48 kHz、32-bit floatに対応しています。記録メディアにはClass 10以上のmicroSDHCまたはmicroSDXCメモリーカードを採用し、12の入力チャンネルとマスター左右チャンネルの合計14トラックを同時に録音することが可能です。パソコンを使わずに本体だけでマルチトラック録音が行えるため、ただ録音ボタンを押すだけで常に完璧なクオリティでレコーディングが行えますよ。
さらに、本体レコーディングで追加されたのがBOUNCE機能です。これは昔ながらのMTRに搭載されていたピンポン録音と同じ仕組みで、すでに録音されている複数のトラックの音を混ぜ合わせて、別のトラックに新しい録音データとして書き出す機能。
バウンス先のトラックに既存のデータがあった場合は上書きされる仕様ですが、複数の録音済みトラックを任意のトラックにまとめることで元のトラックを空け、新たな録音を重ねていくことが可能となり、本体の操作だけで実質的に無制限のダビングが行えます。バウンス操作には、直前の操作を取り消して元の状態に戻すUNDO機能も搭載。コーラスを何十回も重ねて壮大なハーモニーを作るといった楽曲制作が、パソコンなしで完結させることができますよ。
OLEDディスプレイとSOUND PADによる直感的な操作と拡張性
これらの高度な録音機能やミックスを直感的に操るためのインターフェースも洗練されています。LiveTrak L6maxを操作する上で見逃せないのが、本体に搭載されたOLEDディスプレイとLED付きロータリーエンコーダの存在です。
録音の経過時間や設定状態を明瞭なディスプレイで確認でき、各チャンネルの音量操作はダイヤルを回して数値を変更するエンコーダ方式を採用しています。物理フェーダの場合、設定を呼び出した際に実際のフェーダの位置と内部の数値にズレが生じ、操作した瞬間に音量が急変してしまう問題がありますが、ロータリーエンコーダは現在の数値を周囲のLEDで視覚的に表示するため、音量の急変を防ぐことができます。また本体には最大4つまでミキサーの設定を記憶させておけるシーンメモリ機能があり、専用のボタンを押すだけで瞬時に設定を切り替えることが可能です。
そして本体内部には各入力チャンネルに本格的な3バンドEQ(HIGH 10 kHz / ±15 dB シェルビング、MID 100 Hz ~ 8 kHz / ±15 dB ピーキング、LOW 100 Hz / ±15 dB シェルビング)が搭載されており、本体の画面とエンコーダの組み合わせによって、パソコンに頼ることなく直感的に細かな音作りが行えるよう設計されています。
さらに、ジングルや効果音を任意のタイミングで鳴らせる4つのSOUND PADも備わっています。ここにはあらかじめ音声データを割り当てておくことができ、ボタンを押すだけで指定した音声を再生する、いわゆるポン出しが行えます。
ZOOM L6 Editorを使えば、Play modeやLevelなども一画面で調整することが可能です。
クリアな配信を実現するAIノイズリダクション
音楽制作だけでなく、配信者やビデオグラファーにとってありがたいのが、新たに搭載されたAIノイズリダクションです。これはエアコンの空調音や冷蔵庫などの周囲の環境ノイズを学習して、会話の音質を保ったままピンポイントでノイズを低減してくれる機能。自宅や屋外など、スタジオ以外の環境でもクリアな音声収録を行うことができます。
設定方法はシンプルで直感的。LiveTrak L6maxには6タイプから選べる内蔵エフェクトが搭載されていますが、このAIノイズリダクションもエフェクトの1つとして用意されています。本体のSELキーを押して内蔵エフェクトの選択を切り替え、AI Noise Reductionを選びます。そして、環境ノイズが鳴っている状態でTAPキーを押すと、本体が周囲の騒音を自動的に学習し、即座にノイズを消し去ってくれるのです。学習後に効果をオフにしたい場合は、再度TAPキーを押してランプを点滅状態にするだけで解除できます。
このAIノイズリダクションがMASTER出力へ送られる信号に対してのみ適用されるようになっており、microSDカードにマルチトラック録音される各チャンネルの独立したデータには、ノイズリダクションの効果は反映されません。つまり、ライブ配信やオンライン会議ではノイズのない綺麗な音声をリアルタイムでリスナーに届けつつ、手元の録音データは生の状態で保存されるため、後からDAWソフト上で好みのノイズ処理をじっくりと行うことができるようになっています。
さらに、ポッドキャストやリモート収録時に必須となるのが、通話相手の音声がループしてエコーが発生してしまうのを防ぐミックスマイナス機能です。LiveTrak L6maxはUSBオーディオインターフェースとして動作する際、パソコンからの音声をUSB入力に立ち上げ、ミックスマイナス機能をオンにすることで、通話相手には相手の音声を含まない安全なミックスを送ることも可能。これにより、配信現場での厄介なトラブルを未然に防ぐことができるようになっています。
DTM環境を劇的に拡張するUSB接続とZOOM L6 Editor
ここまでは主に単体での使用について触れてきましたが、自宅のDTM環境においても、LiveTrak L6maxは強力なツールとなります。パソコンやMacとUSB Type-Cケーブルで接続することで、14イン4アウトのオーディオインターフェースとして機能します。サンプリング周波数は48 kHzに対応しており、USB接続時でも32-bit floatの広大なダイナミックレンジを活かした音声データのやり取りが可能です。12の入力チャンネルとマスター左右チャンネルがDAWソフト上で個別の入力として認識されるため、ライブ現場で本体のmicroSDカードに録音するだけでなく、自宅で本格的なマルチトラック録音をパソコンへ直接行うことができます。
さらに、ZOOM L6 Editorを使用すれば、パソコンの大きな画面で本体の詳細なシステム設定が可能になります。アプリ上からは、内蔵されている6タイプのセンドエフェクトの細かなパラメータ調整が行えるほか、MONITORやSUB-OUT、AUXなどの各出力へ信号を送る分岐ポイントの設定変更に素早くアクセスできます。
3電源方式とユーロラック対応による優れた機動力
これらすべての機能をどこへでも持ち出せる機動力の高さも、LiveTrak L6maxの大きな魅力。電源はUSBモバイルバッテリ、単3電池4本、付属のACアダプタであるAD-17に対応した3電源方式を採用しています。USB接続時はパソコンからのバスパワーでも動作するため、外出先でノートパソコンを開いてサッと本格的な音楽制作環境を構築できるのは大きなメリットですね。電源の確保が難しい野外でのフィールドレコーディングや、ストリートライブなどでも、単体のミキサー兼レコーダとしてフル活用できます。
本体には外部機器と連携するための3.5ミリTRSフォンのMIDI入出力端子も備わっており、シンセサイザや外部のシーケンサと同期させるシステムの中核として機能させることもできます。
また、別売のユーロラックアダプタであるERL-6を使用すれば、モジュラーシンセの規格であるユーロラックに組み込むことも可能。
従来機L6や上位機種L12nextとの比較と使い分け
ここまでLiveTrak L6maxの多彩な機能を見てきましたが、導入を検討する上で重要なのは「自分の用途や制作スタイルにどのモデルが最適か」を見極めることです。DTMステーションでも以前「小さなボディーにすべてを詰め込んだ。爆音でも絶対失敗しない世界初の32bitフロート対応デジタルミキサー、ZOOM LiveTrak L6を試してみた」で取り上げたベースモデルのLiveTrak L6、そして「常識を覆す大ヒットとなったLiveTrak L-12の後継機種LiveTrak L12nextを試してみた」で紹介した上位機種のLiveTrak L12nextと比較しながら、それぞれの使い分けを整理しておきましょう。
| 製品名 | 価格(税込) |
| LiveTrak L6 | 39,900円 |
| LiveTrak L6max | 47,900円 |
| LiveTrak L12next | 84,900円 |
まず、世界初の32-bit float対応ミキサーとして話題を呼んだLiveTrak L6との比較です。L6はマイク入力が2系統という構成であり、ボーカルとギターの弾き語り録音や、1〜2人でのポッドキャスト配信など、入力数が限られるミニマムな用途であれば、極限まで小型化されたL6が現在でもベストな選択肢といえますね。
一方で、ゲストを複数招くトーク配信や、アコースティックバンドのセッション、自宅の使用時に機材を接続したままにしたいなどで「もう少し入力数がほしい」となる場面は少なくありませんよね。そうした現場の切実なニーズに応えたのがL6maxで、厚みはそのままに横幅を約6センチ拡張しただけで、マイク4系統入力と独立したSUB-OUTを獲得し、さらにAIノイズリダクション機能によって空調音などの環境ノイズを効果的に除去できるようになった点は、配信のクオリティを一段階引き上げる強力な武器となります。
また据え置き型の上位機種LiveTrak L12nextと比べると、L12nextは直感的な操作が可能な60mmストロークの物理フェーダを備え、マイク入力も8基搭載されています。リハーサルスタジオでの本格的なバンド一発録りや、簡易PA用メインミキサーなど、定位置に据え置いてシステムの中核を担う用途においては、やはりL12nextの独壇場です。
それに対し、L6maxの最大の強みは、やはりリュックの隙間に入れてどこへでも持ち運べる圧倒的な機動力にあります。専用のハードケースを用意して運搬する大型ミキサーとは異なり、L6maxは自宅やカフェでの作業から、屋外でのフィールドレコーディング、スタジオでの小規模セッションまで、あらゆる場所へ手軽に持ち出せる頼もしいモバイルスタジオとなっています。
以上、ZOOMのLiveTrak L6maxについて紹介しました。マイク入力が4つに増え、ライブでの利便性を高めるSUB-OUTが新たに追加され、便利なSOUND PADも引き続き備えながらも、コンパクトさと手頃な価格を維持している点は、ZOOMの優れた製品開発力によるものですね。据え置きのLiveTrak L12nextとは対照的なモバイル性能を持ちつつ、デュアルAD回路や32-bit float録音による確実なレコーディング環境、BOUNCE機能、AIノイズリダクション、そしてZOOM L6 Editorを活用したDTM連携など、音楽制作やライブ配信を行う上で必要な機能が凝縮されています。持ち運びに便利な高性能ミキサーを探している方や、DAWソフトと連携してスマートに制作環境を構築する手段を探している方は、ぜひこのLiveTrak L6maxの導入を検討してみてはいかがでしょうか?
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