スポンサーリンク

HOTONEが立ち上げたアナログアウトボード専門ブランド、DIADEM TONE。ビンテージ名機の復刻とオリジナル設計で挑む新たな挑戦

この記事は約10分で読めます。
この記事にはアフィリエイトなどPRが含まれています

2025年10月22日から25日まで上海新国際博覧中心で開催されたMusic CHINA 2025で、ギターエフェクターメーカーとして知られるHOTONEが、新たなブランド「DIADEM TONE」を発表しました。DIADEM TONEは同社がプロデュースするスタジオ向けのアナログアウトボード機器に特化したまったく新しいブランドです。今回発表されたラインナップは、1176、S社4000、LA-2Aといったビンテージコンプレッサーの名機を復刻したモデルに加え、完全オリジナル設計の真空管マイクプリアンプNeovox SS/TTなど、計8製品。

注目すべきは、オリジナル機種の約3分の1という価格設定で、初心者からプロまで幅広いユーザーがアナログサウンドを体験できることを目指しています。すべて完全アナログ回路で構成されており、デジタル処理は一切使用していません。中国国内では既に一部製品の販売が開始されていますが、日本を含む海外市場では近日中の発売を予定しています(日本国内の発売時期、販売価格は現在未定)。今回、DIADEM TONEの実質的なトップであり、開発の中心を担う周旭宇(しゅう・きょくう)さんに、ブランド立ち上げの背景や製品開発への思いを伺いました。


スポンサーリンク
スポンサーリンク

デジタル時代だからこそ、アナログの真実の音を

──まず、周さんの経歴を教えていただけますか。

周:私は以前、レコーディングエンジニアとして働いていました。同時に、個人としての昔からの趣味がアナログ機材だったんです。普段から自分で機材の修理をしたり、好きなものを作ったりしていました。そういった背景もあって、HOTONEに入社しました。入社してちょうど1年になります。

──HOTONEは元々ギターエフェクターのメーカーとして知られていますが、なぜスタジオ向けのアウトボード機器を開発することになったのでしょうか。

周:現在は、デジタル音響が非常に発展しています。しかし、実際の音楽制作においてデジタルだけではどうしても再現できない、古きよきサウンドがあるのも事実です。そこで、あえてアナログ機器を使うことで、そうしたサウンドに簡単に触れることができるようになります。それが私たちの目的です。

デジタルプラグインでも伝統的な機材の音色を模倣することはできますが、それはあくまで模倣であって、真実ではありません。演奏者にとって、より分かりやすく、使いやすく、良い音が得られるようにするために、機材の開発をおこなってきました。特に初心者でもすぐ使えるように、そして心地いいサウンドを奏でることができるようにするために開発してきました。

──ギターエフェクターとスタジオ機器では、まったく異なる分野だと思うのですが。

周:実は、デジタル化によって音楽制作者の音色への要求は高まっています。人間の成長の中で、音色への要求が高度になっていくんです。実際に、このような高度な音色への要求はデジタルでは難しい部分があります。できないわけではありませんが、難しいのです。しかし、アナログ機器を使うことにより、それを容易に、そしてよりよいサウンドで実現することが可能になります。

ビンテージ名機の復刻、しかし完全コピーではなく

──今回、多くの製品を一度に発表されましたが、開発はどのように進めてきたのですか。

周:実際には順番に開発してきました。まず最初の段階では、伝統的な名機の復刻を行いました。その後、Neovoxシリーズという完全オリジナルなアナログのアウトボード製品を開発しました。それが一通り揃ったので、今回のMusic Chinaのタイミングで一気に発表したんです。これまで水面下で全部進めてきたということですね。

DT-76:シングルチャンネルFETコンプレッサ

1976年誕生の伝説的FETコンプレッサー1176をベースにした単通道FETコンプレッサー。オリジナルの音色と圧縮カーブを保持しながら、現代の音楽制作に適合するよう調整。周波数特性±1dB 20Hz-20kHz、SN比>1dB。出力XLR、電源115V/230V 50-60Hz、2Uサイズ、4.6kg。

──復刻製品について、DT-76は1176、DT-4KCはS社の4000シリーズ、DT-2AはLA-2Aがベースになっていると思うのですが、これらは完全にそっくりなものをアナログで作ったという理解で合っていますか?

周:復刻した部分もありますが、完全に同じものを作ったわけではありません。例えばDT-76は、元の音色と圧縮カーブは保持しています。しかし、ゲイン比や他のパラメータの幅を広げることで、現代の音楽制作の要求に合わせた調整を行っています。マーケットのニーズに合わせる形でパラメータを調整しているんです。

DT-4KC:バスコンプ

S社4000シリーズのバスコンプレッサーをベースにした製品。改良された202VCA回路を採用し、突破性のある音色と正確な制御を実現。MIXBUSに対応した伝統的な音色を現代的に再構築。

──中身はすべてアナログ回路ですか?DSPなどで補完していたりするのでしょうか?

周:これらはすべて純粋なアナログ回路で構成しています。デジタル処理は一切使っていません。

DT-2A:光学式真空管コンプレッサー

LA-2Aをベースにした光学式真空管コンプレッサー。光と電子管を融合させた設計により、独特の滑らかな圧縮特性を実現。経典的な架構を継承しながら、進化させた音色を提供。

──復刻製品はこの3機種ですか。ほかにもありますか。

周:今回の主要な復刻は、この3機種です。それに加えて、DT-12 500というAPI 500フォーマットの製品もあります。これは日本のあるメーカーのコンソールの増幅器も参考にした、融合的なものです。

DT-12 500:マイクプリアンプ

API 500フォーマット対応のマイクプリアンプ。日本の某メーカーのコンソールの増幅器も参考にした融合的な設計。シンプルな設計思想で、高いSN比と色彩的な音色を両立。

DT-PS8 500:電源ユニット

DT-12 500シリーズ対応の電源ユニット。純浄電源と調節音色の機能を提供。CNCアルミニウム筐体を採用し、高級感のある外観とNeutrik製コネクタを装備。

オリジナル設計のNeovoxシリーズ

──Neovox SSとTTについて教えてください。こちらは完全オリジナルの設計ですか。

周:はい、Neovoxシリーズは完全にオリジナル機材として開発したものです。製品コンセプトとしては、昔のテープレコーダーを通したサウンドをイメージしています。

以前、古いオープンリールのテープレコーダーの音を聴いた時、とても温かい音が聴こえたんです。私たちはその回路について探求を行い、この真空管マイクプリアンプを開発しました。この音は、古いテープレコーダーのようなものに非常に近いです。しかし、その音の音響特性やS/N比は非常に高く、パラメータもとても良いものになっています。

Neovox SS:シングルch真空管マイクプリ

シングルチャンネル真空管マイクプリアンプ。「クリーン」と「ウォーム」を両立させ、デジタル時代にアナログの魂を取り戻すというコンセプトで開発。テープカセットの温かみのある音色を再現しながら、最大増幅+72dB、THD+N 0.02%@1kHzという優れた性能を実現。入力はXLR(マイク0.12mΩ)、TRS(楽器1mΩ)を装備。電源115V/230V 50-60Hz、1Uサイズ、2.47kg。

──実際にテープを使っているわけではないんですね。

周:そうです。テープを入れたシステムではありません。古いスタイルの増幅回路を使用して、その音色によってカセットテープのような温かみのある音を出しつつ、より安定した動作を実現しています。

──Neovox TTとの違いは何ですか。

周:Neovox SSは真空管マイクプリアンプですが、TTも同様に真空管マイクプリアンプです。TTの特徴は、このメーターにあります。これは非常に珍しいもので、今の製品ではあまり見かけないと思います。また、呼吸するような感じの特殊な音の雰囲気があります。

Neovox TT:シングルch真空管マイクプリ

シングルチャンネル真空管マイクプリアンプ。12AX7/12AU7真空管を使用し、光と温度を音に注入するというコンセプト。最大増幅+66dBu、THD+R 0.02%@1kHz。希少なVUメーターを搭載し、呼吸するような独特の音の雰囲気を持つ。入力はXLR(マイク0.12mΩ)、TRS(楽器1mΩ)。電源115V/230V 50-60Hz、1Uサイズ、2.47kg。

なぜアナログなのか──開発者の情熱

──現在はDAWを使い、音楽制作をすべてデジタルで完結できる時代です。その中で、あえてこういうアナログな製品を開発された理由を教えてください。

周:デジタルには限界があるからです。アナログを使うことによって、もっと簡単に良い音を得ることができます。現在のデジタルの作業環境では、このようなアナログ機器を導入することで、真実の手応えを通じて、もっと欲しい音色を得ることができるんです。アナログの方が、操作しやすく、手応えがある音作りができます。

TR-1 TONE REGEN BOX

Reamping機能を持つ特殊なボックス。カセットテープのイメージでデザインされ、信号を復元して再度演奏できるようにする。ミックス作業の中で、ある種の音色に不満を感じた時に、このボックスを通過させることで再生が可能。完全アナログ回路。

──アナログ機器は、スペース、重量、価格などコストや手間がかかる側面もありますが、なぜこの領域に挑戦しようと思ったのですか。

周:多くの理由がありますが、一つは私の情熱です。私は本当にアナログが好きなんです。以前から好きなものでした。以前のレコーディングの仕事の中で、私はアナログ機材や真空管がすごく好きでした。それによって、自分が聴きたい音や、自分がやりたいことを全部実現できたので、より多くの人にこれを体験してもらいたいと思っています。安い値段でお届けしたいという思いがあります。

──小さい頃からそういう機材に触れる機会があったんですか。

周:小さい頃はよく家の電気製品を壊して研究していたり、分解したりしていました。そういう世界が子供のころから好きだったんですね。今、こういう機会に恵まれて本当に楽しく仕事をさせてもらっています。

価格設定とデザインへのこだわり

──価格がオリジナルの約3分の1というのは、かなり攻めた設定だと思います。市場的にはどう考えていますか。

周:私たちの長期的な戦略は、多くの人たちに私たちの製品の価値を知ってもらうことです。つまり、私たちがどの部分で優れているか、オリジナルとの違いを知ってもらいたいんです。

現在の価格については、私たちの製品は決して安いだけではありません。現代の復刻版であり、50年代のオリジナルそのものではありません。そして、材料にも厳選した部品を使っています。これが私たちの売りです。

この価格は、新しいユーザーにどんどん私たちのブランドがどういうものなのか知ってもらいたいという思いからです。実際の中身は完全に同じものを使っているわけではなく、自社で市場に合わせたオリジナルの部分もあります。体験していただくことによって、もっと私たちが何を目指しているのか分かってほしいんです。

──中国市場と海外市場で、どこをメインにターゲットにしていますか。

周:私たちはこの市場を中国市場と海外市場に分けています。しかし、基本的な考え方は同じで、いい音を実現できるアナログ機材を、より手ごろな価格で、誰もが楽しめるようにする、ということ。それを実現するために開発してきたので、ぜひ多くの日本の方にも使っていただけたらと思っています。

──デザインについてですが、従来のスタジオ機器は黒や灰色が多い中で、なぜこういう可愛い色を選んだのですか。

周:今、みんなが好きな色を使っているということもありますが、プロ向けの機材は黒とか灰色が多いですよね。だから、もうちょっとこういう可愛い色もいいかなと思いました。仕事する時にも、そういう可愛いものを見たら心も癒されますから。

──最後に、DIADEM TONEが次の時代の音作りにおいて果たしたい役割や未来について教えてください。

周:まず、私たちは製品をより多くのミュージシャンに使っていただきたいと思っています。そして私たちの製品が、実際に彼らの音楽作品の中に使われていくことを願っています。

特に現在の若い世代には、多くのアナログ機器を取り入れて、古くからあるアナログサウンドの良さを味わってほしいと思っています。若い人がアナログの世界にハマっていく未来を期待しています。


DIADEM TONEの製品は、中国国内では既に一部が発売されていますが、日本を含む海外市場での発売時期や価格は現時点では未定ですHOTONE Japanからの公式発表をお待ちください。開発チームはわずか4名という小規模体制ながら、1年間でこれだけの製品ラインナップを完成させた情熱と技術力に注目です。

【関連情報】
HOTONE Japan公式サイト

コメント