リードボーカルをガイドにして、ダブルやハモリのタイミングとピッチを自動で揃えてくれるツール、Synchro ArtsのVocAlign。世界中のプロの現場で使われてきた定番ツールですが、そのメジャーアップデート版となるVocAlign 7が9月24日に登場しました。開発元のSynchro Artsは1994年設立のイギリスの老舗メーカーで、現在はAIマスタリングで知られるLANDRの傘下。VocAlignは1995年の初代登場から30年にわたって進化を続けてきましたが、今回のVocAlign 7では、その歴史の中でも最大級となる刷新が行われています。
最大のポイントは、ガイド、ダブル、ハーモニーといった複数のボーカルトラックを、ひとつのマルチトラック環境でまとめて扱えるようになったこと。これまでよりも複数トラックを視覚的かつ柔軟に管理できるようになり、ボーカルスタック全体をひとつの作業環境で扱いやすくなっています。どのトラックをガイドにするかも自由に選べます。またPro版では、ハモリの音程差を壊さずにピッチを整えるSmartPitchも利用可能。RePitch 2との連携を強化するSynchroLink 2.0や、Ableton LiveなどARA非対応DAWでの取り込み改善も見どころです。ラインナップは従来同様StandardとProの2つで、価格はStandardが149ドル、Proが199ドル。実際どんなツールになったのか、さっそく試してみたので、紹介していきましょう。
30年間、プロの現場で使われ続けてきたVocAlignとは
VocAlignについて簡単に紹介すると、これはガイドに設定したトラックに合わせて、ほかのトラックのタイミングやピッチを自動で調整してくれるツール。ボーカル修正ツールとしては、CelemonyのMelodyneやAntaresのAuto-Tuneなどが有名ですが、これらは基本的に1トラックずつエディットしていくもの。ダブルやハモリのトラックが大量にある楽曲では、すべてのトラックを1音ずつ調整することになり、膨大な時間が掛かります。
そんな中、VocAlignを使えば、リードボーカルをガイドにしてダブルやハモリをまとめて揃えていくことができるため、この作業時間を大幅に短縮できるのです。以前、「ボーカルエディットに掛かる時間を1/10にする画期的ツール、VocAlign 6 Proがトンでもない価格でセール中」という記事でVocAlign 6 Proの使い方を詳しく紹介しているので、VocAlignを初めて知ったという方は、ぜひこちらも参考にしてみてください。
改めて開発元であるSynchro Artsは、1994年設立のイギリスの老舗メーカー。1995年に初代VocAlignをリリースして以来、30年にわたってボーカルアラインメントの分野を牽引してきており、2012年には上位版のRevoice Proが、2022年にはピッチ補正に特化したRePitchが登場しています。2021年からはAIマスタリングで知られるLANDRの傘下となっていて、現在は日本からもLANDR / Synchro Artsの公式サイトを通じて購入できます。
そんなVocAlignの従来版であるVocAlign 6には、タイミング調整を中心としたStandardと、ピッチ調整やフォルマントシフトまで行えるProの2グレードが用意されていました。VocAlign 7でもこの構成は引き継がれており、VocAlign 7 StandardとVocAlign 7 Proの2ラインナップとなっています。では、VocAlign 7でいったい何が変わったのか、さっそく順番に見ていきましょう。
ボーカルスタック全体を1画面でコントロール
VocAlign 7最大の変化は、複数のボーカルトラックをひとつの画面で扱えるマルチトラックワークフローです。ダブル、ハーモニー、コーラスといったセッション内のボーカルトラックをひとつのマルチトラックビューに取り込み、任意のトラックをガイドに設定して、残りのトラックをまとめて揃えられるようになっています。ガイドをひとつに固定する必要はなく、複数のガイドを含むボーカルスタックにも対応。ガイド数の自由度も高く、大量のダブルやコーラスを含むボーカルスタックにも対応しやすい設計となっています。
以下はSynchro Artsが公開しているVocAlign 7の紹介ムービーです。1分弱の短い映像ですが、どんなことができるのか、ぜひご覧ください。
さて、これまでのVocAlignはご存知の方も多いと思いますが、ガイドと、それに合わせるダブルという組み合わせをその都度処理していく設計でした。そのためハモリやコーラスが10トラックあれば、VocAlignを立ち上げて同じ操作を繰り返すことになり、トラック数が増えるほど手数も増えていました。
一方VocAlign 7ではこの作業がひとつの環境内で完結するので、ハモリの多い楽曲を扱う機会が多い方なら、これだけで作業がかなり楽になったのです。
実際に画面を見てみると、これまでのガイドとダブルを上下に並べる表示から、DAWのようなマルチトラックのタイムライン表示へと大きく変わっているのが分かります。各トラックにはソロ・ミュートのボタンも用意されているので、複数のトラックを聴き比べながら作業を進めていくことが可能です。
ガイドの割り当ては自由で、作業の途中でガイドを切り替えたり、ダブルを再割り当てしたりすることもできます。複数のハモリをまとめて確認しながら、どのトラックを基準にして、どのトラックを追従させるかを柔軟に決めていけるので、ボーカルスタック全体を俯瞰しながら編集できるようになったのです。
必要な部分だけ、クリップ単位で細かく調整できる
そしてマルチトラック化と並ぶもうひとつのポイントが、クリップ単位での細かな編集です。セッション全体に対して大きく補正をかけることも、特定のクリップだけを細かく編集することもでき、タイミング、ピッチ、フォルマント、トランスポーズを必要な場所だけに適用できます。全体を機械的に揃えるのではなく、崩したくないニュアンスを守りながら、気になる部分だけを整えられる設計となっています。
なお、フォルマントの調整はPro版限定。フォルマントは声のキャラクタを決める周波数成分で、これをトラックごとに独立して動かせるため、ダブルを自然に馴染ませたり、コーラスに広がりを持たせたりと、ボーカルスタック全体の質感を作り込んでいけますよ。
また手動編集のための機能も充実しています。合わせる基準点を指定するSync Pointsや、処理から保護する範囲を指定するProtected Areasといった機能が用意されており、「ここは合わせたい」「ここは触ってほしくない」といった意図を細かく反映することが可能。ガイドにどこまで強く合わせるかを決めるMax differenceのノブ(LOOSEからTIGHTまで)もトラックごとに用意されており、ピッタリ揃えることも、少しルーズに残すこともできます。
そしてVocAlign 7では、各トラックのエネルギー量を視覚的に確認できるVisual Energy Analysisという表示が追加されています。どの部分でアラインメントがうまくいっているか、どこでズレや違和感が起きているかを、耳だけに頼らず目でも確認できるため、トラック数が多い場合でも問題のある箇所を素早く見つけやすくなっています。
ハモリの音程差を壊さずにピッチを整えるSmartPitch
そして、Pro版で注目したいのがSmartPitchです。バックボーカルに対してピッチ補正が必要な箇所を自動で判断し、必要な部分だけに補正を適用する機能で、VocAlign 7ではMatch pitchセクションの中にモード選択として用意されています。
モードは3つ。すべての音程をガイドに合わせるMatch All To Guide、ガイドと同じ音程で歌っている部分だけを合わせるMatch Unison Only、そしてユニゾン部分はガイドに合わせつつ、ハモリ部分は音程差を保ったままチューニングするMatch Unison & Tune Non-Unisonとなっています。
すべての音程を基準トラックに強く合わせる処理は、リードと同じメロディを歌ったダブルには向いていますが、たとえば3度上のハモリにそのまま使うと、音程までリードと同じ高さに引っ張られて、せっかくの音程差が消えてしまいます。ハモリにはMatch Unison & Tune Non-Unisonを選べば、チューニングすべき箇所と、ハーモニーとして残すべき箇所を自動で判断してくれるため、ハモリの音程関係を保ったまま、ボーカルスタック全体の自然さを崩さずにピッチを整えられるのです。
ピッチ補正とアラインメントを繋ぐSynchroLink 2.0
続いて、SynchroLink 2.0について。SynchroLinkは、同じSynchro Artsのピッチ補正ツールRePitchとVocAlignを連携させる仕組みで、VocAlign 7ではこれが2.0へと強化され、現行のRePitch 2との連携がより密接になっています。
具体的には、RePitch 2で整えたリードボーカルを、VocAlignのガイドとして扱いやすくなります。チューニングとアラインメントを別々の工程に分けず、より連続したワークフローとして進められるのが大きな利点です。
そもそもVocAlignはガイドに合わせるツールなので、基準となるリードボーカル自体は、RePitchなどのピッチ補正ツールで先に仕上げておく流れが基本となります。VocAlign 7とRePitch 2の組み合わせなら、リードのチューニングからスタック全体のアラインメントまでを、行き来しながらひと続きで進められますよ。
このRePitchについては、以前「プロ御用達ツール一式、134,000円が23,450円の激安セール実施中。SynchroArtsのRePitchはMelodyneと何が違う!?」という記事でも紹介しているので、ぜひそちらも参考にしてみてください。鉛筆ツールでピッチの動きを直接描けるドローツールなど、Melodyneにはない機能も備えたツールとなっています。
ARA非対応のAbleton LiveやFL Studioでも快適に
VocAlignを語るうえで欠かせないのが、ARAへの対応です。ARAは、DAWとプラグインがオーディオデータや解析結果を直接やり取りするための規格で、対応するDAWでVocAlignを使うと、再生を待たずに一瞬でトラックを取り込み、DAWの一部の機能のような感覚で使うことができます。従来のVocAlign 6も、Fender Studio Pro(旧Studio One Pro)やCubase、Pro ToolsなどのARA対応DAWでは、この形で快適に使うことができました。VocAlign 7も、ARA2と非ARA環境の両方に対応しています。
一方、Ableton LiveやFL StudioのようにARAに対応していないDAWでは、これまでプラグインをインサートした上で、セッションをリアルタイムで再生してボーカルを一つひとつVocAlignへ取り込む作業が必要でした。曲が長ければ長いほど、取り込みにも時間がかかっていたのです。
VocAlign 7では、この取り込みのワークフローが大きく改善され、待ち時間を減らして、よりすぐに編集作業へ入れるようになっています。具体的には、複数のトラックを同時に取り込むことが可能となったことで、先にプラグインを適用したい全トラックにインサートし、Arm Captureをクリック、再生すればすべてのトラックを一発で取り込むことができます。Ableton LiveやFL Studioをメインに使っているユーザーにとっては、かなり嬉しい進化点ですね。
ざっと、VocAlign 7の進化点を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?最後にラインナップを整理しておきましょう。VocAlign 7 Standardは、マルチトラック対応やVisual Energy Analysisを含む、タイミング調整が中心のグレード。VocAlign 7 Proは、これに加えてピッチ調整、SmartPitch、フォルマント、トランスポーズ、SynchroLink 2.0までを備えた上位グレードとなっています。ハモリやコーラスのピッチまで扱うなら、個人的にはピッチまわりの機能が揃ったProがおすすめです。
価格はStandardが149ドル、Proが199ドル。VocAlign 6からのアップグレードはStandardが69ドル、Proが99ドルで、条件を満たすユーザー向けのクロスグレードもStandardが99ドル、Proが133ドルで用意されています。購入はLANDR / Synchro Artsの公式サイトから行うことができますよ。
以上、Synchro Artsのボーカルアラインメントツール、VocAlign 7について紹介しました。複数のボーカルトラックをひとつの画面で扱えるマルチトラック対応を筆頭に、作業時間の短縮だけでなく、ボーカルスタック全体の完成度を高めるためのツールへと進化しています。ダブルやコーラスの編集に時間を取られている方は、ぜひ一度チェックしてみてください。
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【関連情報】
Synchro Arts VocAlign製品ページ
LANDRサイト
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