サブDAWとしても大きな威力を発揮するBitwig Studio。モジュラー機能The Gridを搭載した3.1が登場

新世代DAWとして2014年に誕生し、ライブパフォーマンスで使えるということで世界的にも注目を集めたBitwig Studio。もちろんライブ用のみならず、レコーディング用、打ち込み用、アレンジ用、ミックス&マスタリングツールなど音楽制作用途全般でも大いに活用できるDAWであり、既存のDAWとは一線を画すツールとして進化してきました。そのため既存のDAWから乗り換えるというより、既存のDAWと一緒に使うサブDAWとしても大きな威力を発揮するソフトなのです。

そのBitwig Studioも、先日Bitwig Studio 3となり、まもなくバージョン3.1もリリースされるところまで来ました。このBitwig Studioには非常にユニークな機能で、モジュラーシンセのようなThe Gridという機能が搭載されています。その最新版のBitwig Studio 3.1を一足早く試してみたので、改めてBitwig StudioがどんなDAWなのか、ほかのDAWと何が違うのかなどを紹介してみましょう。

Bitwig Studio 3ではThe Gridというシンセサイザ構築機能が搭載された

2014年のリリース当初、「Ableton Liveの競合DAW」などと言われて大きな話題になったドイツBITWIG社のDAW、Bitwig Studio。確かにAbleton Live的な側面も持っており、ループ素材を切り替えながらリアルタイムに曲を構成していくライブパフォーマンスに向いた機能も装備しているのですが、そこに留まらず音楽制作に向けた機能も非常に充実しており、さまざまな用途に使えるDAWなのです。

Bitwig Studio 3.1の画面

なかでも他のDAWと異なる方向性を打ち出しているのが、サウンドデザイン、つまり音作りやシンセサイザに関する部分。以前Bitwig Studio 2が出た際に書いた「ウニョウニョ動く新世代DAW、Bitwig Studio 2が発売開始」でも紹介した「Modulation System」というのもまさにその一つでした。これはBitwig Studioが標準で装備しているインストゥルメント(音源)やエフェクトはもちろん、VSTプラグインなども含めた音源、エフェクトに対し、自由にモジュレーションを掛けることを可能にした機能です。

ModulatorsLFOやエンベロープなどがアニメーションで動きつつ、各パラメータにモジュレーションできる

たとえば先日も記事で取り上げたNative InstrumentsのMassive Xのフィルターのパラメータに対し、Bitwig Studioが持つLFOでモジュレーションを掛けたり、ノイズジェネレータに対してBitwig Studioのエンベロープジェネレーターでモジュレーションする……なんていった妙な操作を自由自在に行えるようになっているのです。

リリース直前のBitwig Studio 3.1 Beta 1で試してみた

さらにBitwig Studio 3になって登場した新機能が、The Gridというもの。これはさらにもう数歩踏み込み、自分でシンセサイザなりエフェクトなりの設計までできてしまうという機能なのです。強いて言えば、Cycling ’74のMAX/MSPとかNative InstrumentsのReaktorのような機能をBitwig Studioに内包してしまった、といってもいいかもしれません。

The Gridのシンセサイザ構築機能であるPoly Gridを選択

Bitwig Studio 3の説明を読むと「モジュール式サウンドデザインデバイス」とか「モジュラー型DAW」なんて表現があるので、「モジュラーシンセのような機能が搭載されたのかな…!?」なんて風に想像する人も多いと思いますが、それとはちょっと違うものです。オシレーターやフィルター、エンベロープジェネレーター、LFO、ミキサー……といった部品=モジュールを1つ1つ組み合わせてシンセサイザを自分で構築していく、というものなんですね。

インストゥルメントトラックとしてPoly Gridを作成すると、画面下にPoly Grid画面が小さく表示される

Poly Gridというデバイスをトラックに組み込むと、すごくシンプルな電子音が鳴るシンセとして使えるようになります。中身を見ると三角波を出すオシレーターにARで構成されるエンベロープジェネレーターがつながっただけの音源となっています。ここでオシレーターのSkewやFoldというパラメータを動かして三角波の形を変化させて音をいじっていくことも可能ですが、ここに、さまざまなモジュールを追加していくことができるのです。

Poly Gridを開くと、三角波のオシレーター、ARのEGが接続された状態で表示される

たとえばオシレーターとエンベロープジェネレータの間にローパスフィルターを組み込めば、音を劇的に変化させることができるようになります。

オシレータとEGの間にローパスフィルターを追加してみた

さらにオシレーターとしてサンプラーも用意されているため、三角波をやめてサンプラーに切り替えた上でピアノ波形でも読み込ませれば、ピアノサウンドを鳴らすことが可能となり、それをフィルターやエンベロープで動かしていけば、どんどん自由に音を作っていくことも可能になるのです。

三角波のオシレーターの変わりにサンプラーを設定してみた

一方でThe Gridにはシンセサイザを構築するためのPoly Gridというデバイスとは別に、エフェクトを構成していくためのFX Gridというデバイスも用意されています。ここでは入力してきた音に対し、やはりフィルターを掛けたり、ディレイで音をズラしたり、ピッチやレベルをいじったり、それを組み合わせてモジュレーションしたり……と世の中にない自分だけのエフェクトを作れてしまうのも面白いところです。

エフェクトを構成するFX Gridの画面

ちなみにPoly Grid、FX Gridという2つのデバイスを持つThe Gridには、いずれも

I/O Display Phase Data
Oscillator Random LFO Envelope
Filter Shaper Delay Mix
Level Pitch Math Logic

と16カテゴリーに分類されるさまざまなモジュールが用意されています。Bitwig Studio 3リリース時に154のモジュールがあったのですが、今回Bitwig Studio 3.1となってさらにモジュールが追加されて全159モジュールとなっています。どう使うかは、ユーザーのみなさん次第ではありますが、いろいろモジュールを組み合わせてシンセを作ったり、エフェクトを作って遊ぶだけでもかなり楽しいですよ。

作成したフレーズをループ素材として書き出し、他のDAWへもっていくこともできる

こうしてThe Gridで作った音源をBitwig Studioの鳴らすことで、ほかにはない自分だけのループ素材をどんどん生産していくことも可能です。そしてその素材をExport Audioの機能を用いて書き出していくことができるので、それをCubaseやStudio One、Ability、Live……といった普段使っているDAWに取り込んで利用していく……といった使い方もありなんです。別にDAWを一つに絞る必要はないので、適材適所で使っていくのも手ですよね。

さて、そのBitwig Studio、そのライセンスの考え方が他のソフトとちょっぴり異なるので、少し解説しておいたほうがいいかもしれません。たとえば、いまBitwig Studio 3を購入すれば、WindowsでもMacでも、さらにはLinuxでも使えるDAWとして将来ずっと使い続けることは可能です。でも、仮に半年後にBitwig Studio 3.5とかBitwig Studio 4なんてバージョンが登場したらどうでしょう?普通のソフトなら、買ったばかりであっても、新バージョンが出てしまったら、泣く泣く現状のバージョンを使い続けるか、バージョンアップ料金を支払って最新版にアップデートする必要がありますよね。

12か月間無料でアップグレードできる「アップグレードプラン」

ところがBitwig Studioは購入してから12か月間は無料でアップグレードが可能で最新アップデートを得ることができるというユニークなライセンスとなっているのです。だから半年後にBitwig Studio 4が出たら、Bitwig Studio 4にバージョンアップすることが可能で、そのBitwig Studio 4を将来ずっと使い続けることが可能なのです。いわゆるサブスクリプションでないから、1年を経過しても問題なく使うことができますよ。もし、3年後にBitwig Studio 5なんてのが出たら、そのタイミングでまた12か月分の「アップグレードプラン」を購入すればその時のバージョンにアップグレードすることも可能となっています。

ちなみに、この「アップグレードプラン」というライセンス形式になったのはBitwig Studio 2がリリースされたタイミングであり、5年前に発売されたBitwig Studioの初期バージョン(ここではBitwig Studio 1と呼ぶことにします)では、そうした考え方がありませんでした。そのためBitwig Studio 1から現行のバージョンのBitwig Studioにアップグレードするには通常の「アップグレードプラン」ではなく、「最新版へのアップグレード・ライセンス」なるものを入手する必要があるのがちょっとややこしいところです。

普通にBitwig Studio 3を買うより断然安く導入できるBitwig Studio 1 to 3

で、実はその仕組みをトリッキーに使ったパッケージが国内のみ数量限定で販売されているのです。それが冒頭でもちょっと触れた「Bitwig Studio 1 to 3」というもの。これは「Bitwig Studio 1」と「最新版へのアップグレード・ライセンス」をセットにしたもので、Bitwig Studio 1の在庫処分で展開しているセールなんです。これは一度Bitwig Studio 1をインストールしてから最新版へのバージョンアップさせる必要があるというひと手間がかかるのがミソですが、それによって通常版のBitwig Studioを購入するより断然安くBitwig Studio 3を入手することができるのです。もちろん、そこから1年間「アップグレードプラン」が適用されるので、安心です。

ちょうど11月27日からBITWIGのあるドイツ本国においてウィンターセールがはじまり、$100オフで購入できるようになっていますが、「Bitwig Studio 1 to 3」を使えば、それよりもずっと安く購入できてしまうのがポイント。それほど数は残ってなさそうなので、早めに入手するのがよさそうですよ!

【関連情報】
Bitwig Studio 3製品情報
Bitwig Studio 1 to 3ニュースページ

【価格チェック&購入】
◎ディリゲント・オンラインショップ ⇒ Bitwig Studio 1 to 3
◎Rock oN ⇒ Bitwig Studio 1 to 3
◎宮地楽器 ⇒ Bitwig Studio 1 to 3
◎Amazon ⇒ Bitwig Studio 1 to 3
◎島村楽器 ⇒ Bitwig Studio 1 to 3
◎イケベ楽器 ⇒ Bitwig Studio 1 to 3

Commentsこの記事についたコメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です