正気と狂気、ふたつの顔を持つステレオ・テープ・ディレイ。Rob Papenの普通じゃないエフェクト、DELSANEがリリース

一種独特な世界観を持つソフトシンセメーカーのRob Papen。同社がこの度、新たななエフェクトプラグイン、DELSANE(デルセイン)を3,520円(税込み)で発売しました。Rob Papenなのにシンセじゃなくてエフェクトなのか…とちょっと不思議にも思いましたが、実はこれまでもRP-ReverseRP-VERB 2XY-Transferなど、普通じゃないエフェクトを複数だしているので、そのシリーズに新たなものが追加された格好。もちろん、Rob Papen製品ですから、普通のディレイのわけがありません。

製品説明を見ると「ジキル博士とハイド氏が音楽制作をするように、DELSANEを使って正気(Sane)と狂気(Insane)を手に入れてください」なんて説明があるくらいなので、かなり危険な匂いのするエフェクトのようです。実際触ってみたところ、やはりパラメーターも普通のディレイとはかなり違うし、その音も「これはホントにディレイのジャンルに入るエフェクトなの?」と疑問に思う変なもの。どんなことができ、どんな音がするエフェクトなのか紹介してみましょう。普通ではなさすぎる、強烈なステレオ・テープ・ディレイ、Rob PapenのDELSANEがリリース

ジキル博士とハイド氏、正気と狂気……エフェクトの形容詞として、どうなのか……とも疑問に思うところですが、触って音を鳴らしてみると、なんとなく、そのニュアンスも分かってくるような気もします。実際にドラムループにDELSANEを掛けて、プリセットをいろいろと動かしてみたので、どんな音がするエフェクトなのか、ちょっとご覧になってみてください。

どうですか? どれがジキル博士で、どれがハイド氏かはともかく、確かに普通のディレイとはかけ離れたものであることは感じられるのではないでしょうか?

いっぱいパラメーターがあるので、軽く見ていきましょう。まずはDELSANEはステレオ・テープ・ディレイであるというだけあって、ディレイとしてのパラメーターが左上のほうにいくつか並んでいます。

基本となるディレイパラメーターのセクション

DRY/WETでエフェクトのドライとウェットの調整ができるのは置いておいて、その右2つ、LEFT DELAY、RIGHT DELAYで左右のディレイ時間を設定できます。この際、STEREO DELAYがONになっていれば左右別々に、OFFになっていれば両方同じように動きます。またTEMPO SYNCがONであれば32分音符単位での調整ができ、OFFの場合はmsec単位での調整という形になっています。

またその右のFeedbackはディレイのフィードバック、Cross-Feedは左右のディレイ間でのフィードバック調整……といった感じで、ここまでは、まあ普通のディレイです。でも、ここからだんだん、ディレイとしては妙なパラメーターがいろいろ出てきます。

DRY/WETの下にはDISTORTとあり、音を歪ませていくディストーションで、かなり強烈な音になっていきます。

画面右上にはフィルターやFrequency Shifterなる強烈なパラメーターが

中央右側にいくと、HIGH PASS、LOW PASSとあるとおり、2種類のフィルターがあり、いずれも6dBと12dBの切り替えが可能で、フィルターのかかり具合が変わってきます。

そして、VOCALをONにするとHIGH PASS、LOW PASSではなくボーカル用フィルターに変身。FREQで周波数を、VOWELで母音に対する効き具合を調整するというエフェクトになっていきます。

VOCALをONにすると、ハイパスフィルター、ローパスフィルタがボーカルフィルタに変身

さらにその右にあるFREQ SHIFTあたりから狂気の世界に入っていきます。これFrequency Shifterというもので、周波数をシフトさせるパラメーターとなっています。どういうことかというと、この値を100Hzに設定すると、200Hzの入力信号は300Hzの信号に、500Hzの入力信号は600Hzの信号に変化するといった具合。POSITIVEであれば+100Hz、NEGATIVEveであれば-100Hzとなる形であり、FEEDBACKをONにすると、設定値がフィードバックで変化するという、もう訳の分からない世界に突入していくのです。

地球が左右に動く不思議な世界、DISRUPT SPHEREE

そして、ビジュアル的に何よりもインパクトがあるのは、中央でグルグルと回転している地球。これ、DISRUPT SPHEREE(ディスラプトスフィア)と呼ぶのだそうですが、地球が左右どこの位置にあるかによって、その下に並ぶパラメーターの値に影響を及ぼす形となっているのです。

マウスによって手動で地球の位置を動かすこともできるし、画面右のLAZY MODEをONにすれば、自動で動くようになります。この際テンポに合わせて動きを調整できるようになっており、動かすパラメーターが増えていくと、もうどんな音になるのか頭で想像することすら不可能な世界に入っていきます。

かなり膨大なプリセットが用意されている

このDISRUPT SPHEREによる動きをさらに複雑にしていくのが画面一番下のAUDIO FOLLOWERとMIDI&MODです。まずAUDIO FOLLOWERはDELSANEに入ってくる信号を元に、各種パラメーターの値を変化させてしまうという、ますます訳の分からないもの。どのくらいの音の強さで変化させるかはTHRESHOLDで決めることができ、どのパラメーターに影響させるかはDESTINATIONで設定できるわけですが、先ほどのようなドラムに掛けると、ビートに応じて音が変化するなど、意外と面白く使えるようです。

同じように任意のパラメーターをMIDIで動かそうというのがMIDI&MODです。MIDIのNOTEで動かすのか、ベロシティで動かすのか、ピッチベンドで動かすのか……などを選択の上、その影響を及ぼすパラメーターを設定することによって、外部からエフェクトのかかり具合などを調整できるようになるというわけです。

とざっと説明してみましたが、何となく意味が分かっても、実際どんな音になるのかは、まあ想像がつかないと思いますし、きっとそれでいいんだと思います。

以前、DTMステーションPlus!の番組にも出演いただいたRob Papenさん(中)。左が藤本、右が多田彰文さん

この一期一会ともいえるような音作りの世界は何もこのDELSANEに限らず、Rob Papen製品全般にいえるもの。ディレイと思わず、ある種飛び道具的なエフェクトとして使ってみると意外といい結果になることも多そうです。なお、DELSANEの開発者であり、社長でもあるRob Papenさん自身がDELSANEを解説している動画があるので、こちらも参考にしてみてください。

何か音作りに行き詰ったときに挿してみて、適当にプリセットを選ぶと、もしかしたら、とってもいい音に出会える……そんな可能性を持ったエフェクトだと思います。そもそも、3,520円という値段ですから、いざというときのために持っておくのも悪くないのではないでしょうか?

ちなみに、Rob Papen製品の全部入りセットとして、eXplorer 6という製品があり、ここには数多くのソフトシンセ、また普通じゃないディレイやディストーション、リバーブ、EQなどのエフェクトが入っていますが、DELSANEは新製品であるため、eXplorer 6の中には入っていません。いずれeXplorer 7が出るときには、その中に組み込まれるのだろうと思いますが、現状は個別購入するしか方法はないようです。

ちなみにeXplorer 6の販売方法を見ると、Rob Papen製品を何本持っているかによって、購入価格の割引が適用される方式となっています。そう通常版は49,940円であるのに対し、1製品持っているユーザーなら30,250円と2万円も割り引かれ、2製品持っていれば、20,350円、さらに3製品持っている人なら15,125円となっています。つまり、現状のeXplorer 6を購入するにおいても、先にDELSANEを購入してから入手するほうが圧倒的に得であるという仕組みになっているのです。まずは、DELSANEからRob Papenの世界を覗いてみてはいかがでしょうか?

※2022.2.3追記

2月3日~2月28日までRob Papen FXプラグインがすべて20%オフというセールが展開されています。詳細情報はこちらをご覧ください。

 

【関連情報】
DELSANE製品情報
eXplorer 6製品情報

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