日本・中国・韓国の伝統楽器を収録した最高品質音源、Native Instruments EAST ASIAの実力

先日、Native Instrumentsからアジア3か国の伝統楽器音源「EAST ASIA」がリリースされました。これは、Native InstrumentsのKOMPLETE KONTROLKONTAKT上で動くライブラリで、日本・中国・韓国の伝統楽器が収録されたもの。よく海外メーカーが出す伝統楽器系の音源だと、和太鼓という名前なのに実はティンパニーだったり、中国の大きい太鼓だったり……ということがしばしば。そうした中、今回登場したEAST ASIAでは、収録において日本、中国、韓国のプロの演奏者を起用し、最高の環境でサンプリングしているだけあって、その出音は本物です。

音がいいのはもちろんのこと、和楽器や中国や韓国の伝統楽器のおいしいフレーズが収録されており、簡単にドラッグ&ドロップでDAWにMIDIフレーズを読み込めるのもポイント。また、Native Instrumentsの音源では珍しいダイナミックコントロールというパラメータが搭載されているので、音の表現力も豊になっています。MIDIフレーズの作成に日本からは、DTMステーションPlus!でもお馴染みの作曲家の多田彰文さん、そしてと映画、テレビドラマ、アニメなど多方面で活躍する作曲家の横山克さんが参加しているとのことなので、作成したフレーズの使いどころなどコメントもいただいています。実際にEAST ASIAを使ってみたので、これがどんな製品なのか紹介していきましょう。

日本・中国・韓国の伝統楽器を収録した本格的な音源、Native Instruments EAST ASIA


EAST ASIAは、Native InstrumentsのSPOTLIGHT COLLECTION(旧DISCOVERY SERIES)の最新作として発売された、東アジアの楽器を収録するソフト音源。このSPOTLIGHT COLLECTIONには、ほかにもアラブ、トルコ、ペルシャ音楽の楽器を収録したMIDDLE EASTやインドの伝統楽器をサンプリングしたINDIA、西アフリカの音源WEST AFRICA……などがあり、各地域の楽器にフォーカスを当てたシリーズとなっています。

SPOTLIGHT COLLECTION

英語ではありますが、以下にNative Instrumentsが作成したEAST ASIAの紹介ビデオがあるので、これを見てみれば、だいたいの雰囲気がつかめると思います。

ご覧いただいてもわかる通り、EAST ASIAは、KONTAKTという同社が発売するサンプラー上で動く音源。最新版のKONTAKT 6を単体購入すると、53,700円もしてしまうのですが、実はEAST ASIA自体は無料版のKONTAKT PLAYER 6でもまったく同じように使用することが可能です。以前「NIからのホリデーギフト、中国の伝統楽器・揚琴をサンプリングしたYANGQINが無料配布中!無料のKOMPLETE STARTとセットでDTM環境をグレードアップ」という記事で、KONTAKT PLAYERを入手する方法を紹介しているので参考にしてみてください。またこの記事ではKONTAKT PLAYERのほか、7つのシンセ、9つのサンプル・インストゥルメント、2つエフェクト、1,500個のループとサンプルがバンドルされていて無料でもらえるKOMPLETE STARTについて紹介しているので、もし、まだ持っていない、という人がいたら、ぜひ、この機会にゲットしておくといいと思います。

無料とは思えない量の音源がバンドルされているKOMPLETE START

その記事では、YANGQIN(揚琴)という無料の音源をゲットする方法を紹介していましたが、これはEAST ASIAの中から選出された中国の伝統楽器だったようです。以前のタイミングでゲットした方なら、この音源のクオリティの高さが分かるはずです。音源の試聴も可能なので、ぜひ聴いてみてください。

EAST ASIAには、日本から14種類の楽器、中国から12種類の楽器、韓国から10種類の楽器が収録されており、容量は約24GBとかなりボリューミー。

日本 中国 韓国
メロディ 篳篥 (HICHIRIKI) 笛子 (DIZI) アジェン (AJAENG)
箏 (KOTO) 二胡 (ERHU) テグム (DAEGEUM)
尺八 (SHAKUHACHI) 古筝 (GUZHENG) カヤグム (GAYAGEUM)
三味線 (SHAMISEN) 古琴 (GUQIN)
笙 (SHO) 琵琶 (PIPA)
揚琴 (YANGQIN)
パーカッション 鉦 (KANE) 板鼓 & 梆子 (BANGU & BANGZI) チン (JING)
鞨鼓 (KAKKO) 大鈸 & 鐃鈸 (DABO & NAOBO) ケンガリ (KKWAENGGWARI)
小鼓 & 大鼓 (KO-TSUZUMI & O-TSUZUMI) 大锣 & 小锣 (DALUO & XIAOLUO) サムルプク & ソリプク (SAMUL-BUK & SORI-BUK)
宮太鼓 (MIYA-DAIKO) サムルチャング & サンジョチャング (SAMUL JANGGU & SANJO JANGGU)
桶胴太鼓 (OKEDO-DAIKO) ソゴ (SOGO)
締太鼓 (SHIME-DAIKO)
鉦鼓 (SHOKO)
釣太鼓 (TSURI-DAIKO)

では、実際に起動し、MIDIフレーズから見ていくことにしましょう。MIDIフレーズは、その楽器が一番魅力的になるように作られており、伝統楽器に詳しくなくても、いい感じのフレーズを自分の楽曲に取り入れることができるという機能。このMIDIフレーズを第一線の作曲家である多田さん、横山さんも参加する形で収録しているというわけなのです。

せっかく、いい音でサンプリングされた伝統楽器であっても、奏法を理解し、知識を持った上で弾かないことには宝の持ち腐れ。でもこのMIDIフレーズを利用すれば、そうした知識がない初心者であっても簡単にプロの演奏を自分の楽曲の中に取り込めるというわけなのです。具体的にはEAST ASIAの再生ボタンを押すとフレーズを試聴することができ、SyncをオンにするとDAWのテンポと同期します。また、1/2、×2で半分のスピードで再生、倍速にすることが可能です。

MIDIフレーズが多数搭載されている

Editを押すと、MIDIフレーズの編集画面が表示され、上部にあるシーケンサーで編集も可能。「01-Traditional」「02-Contemporary」と書いてあるように、大きく伝統的な音楽と現代的な音楽が分かれているのも使いやすいところ。

種類ごとにMIDIフレーズは分かれている

また気に入ったMIDIフレーズがあれば、ドラッグ&ドロップでDAWに持っていくことも可能。MIDIフレーズをもとに自分でカスタマイズしてフレーズが作れるわけですね。

ドラッグ&ドロップでDAWにMIDIフレーズを移動できる

MIDIフレーズの画面を見てお気づきの方もいるかもしれませんが、EAST ASIAのScaleの設定は少し特殊。平調子(Hirajoshi)や雲井調子(Kumoijoshi)など、筝のスケールが搭載されているのです。たとえば、Scaleで平調子を選択してみると、EAST ASIA上の鍵盤に水色でスケールが表示されます。青色の鍵盤は、別の奏法が割り振られており、簡単に演奏できる設計がされています。ちなみにピンク色の鍵盤は、ハーモニクスやコードなどが割り振られています。
特殊なスケールも搭載されている

ちなみにScaleタブから、スケールの設定の詳細を見ることができます。ここで選択したスケールでは、どの音程が使われているのか確認できますし、スケールをエディットしていくこともできます。もちろん、メジャースケールやマイナースケールなど、どこにでも搭載されているスケールもありますよ。

Scaleタブ

そして、紫色の鍵盤の白鍵部分は、MIDIフレーズが割り振られており、黒鍵部分とオレンジ色の鍵盤には奏法に関するキーが割り振られています。これは、Mappingタブから確認することができ、紫色の鍵盤はPerformance Keys、オレンジ色はKey Switchesになっています。これは各楽器の奏法によって変わり、キースイッチを押しながら演奏したりすることにより、表現を付けることができます。

Mappingタブ

右上にあるSound Presetでは、CLASSIC、MODERN、VINTAGEなど、楽器の雰囲気を調整することができます。

EQやリバーブの設定がされているプリセットが用意されている

これは、Mixerタブでより詳細に調整することができ、ここにはリバーブが搭載してあったり、

5種類のリバーブが搭載されている

Instをクリックすることで、EQを調整可能。

EQが搭載されている

MainにはCompやTapeといったエフェクトも搭載されています。

FXにエフェクトが搭載されている

ちなみに複数の音源が入っているものを選ぶと、Mixerタブに楽器がずらっと並び、ボリュームの調整などをここで行えますよ。

複数の楽器のバランスもここで調整可能

そして、もっともEAST ASIAでユニークなパラメータが、左上に搭載されているものです。モジュレーションホイールで制御できるこのパラメータは、尺八ではDynamicとなっており、吹く息の強さをコントロールできるのです。各楽器によって割り当てられる内容は変わるのですが、キースイッチや音量・ベロシティーに加えて、表現が増えたことにより、繊細な音のコントロールが可能になっています。同じフレーズでも、奏法や表現が変われば、聴こえ方が変わってくるので、よりこだわれる仕様になっていますね。

表現のレイヤーが増えているので、より緻密な音作りが可能になっている

Optionsタブでは、楽器のチューニングを変更したり、各パラメータをランダムにするRandomizeノブが搭載されていたり、

Optionsタブ

メイン画面のPerformタブで、楽器の下にあるノブではDynamicやBody、Decayなど、簡単に楽器の鳴り方を変えられるノブも搭載されていて、音がいいこともさることながら、使い勝手がいい製品に仕上がっています。

簡単に楽器の鳴り方も調整できる

以上、EAST ASIAを紹介してみました。EAST ASIAは、通常13,400円(税込)で販売されていますが、YANGQINをゲットしていた方なら、アップグレード・バージョンが用意されているので、10,700円(税込)で入手可能。稀に見る、高品位で使える伝統楽器音源なので、この機会に入手してみてはいかがでしょうか?

なお、このEAST ASIAについては、8月17日配信予定のDTMステーションPlus!の番組で横山克さんをゲストにお招きして特集する予定です。もちろん、いつも通り多田さんもいらっしゃるので、EAST ASIAの開発秘話なども交えて、いろいろ実演できればと思っているので、ぜひお楽しみに!

※今回、横山克さん、多田彰文さんのお二人にメールベースで同じ3つの質問を投げかけてみました。

横山克さんインタビュー

Profile:横山克さん

アニメやドラマ、映画などの映像作品の音楽を担当するほか、ももいろクローバーZをはじめとしたアイドルへの楽曲提供も手がける。世界各地でのレコーディングや、自ら制作するサンプリング素材でのサウンド構築などをライフワークとし、管弦楽とエレクトロの世界を行き来しながら常に固有の音楽を探し求めている。音楽を担当した主な作品は、映画『ちはやふる』、『空の青さを知る人よ』、アニメ『四月は君の嘘』、『機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ』、ドラマ『Nのために』、『ネメシス』、NHK連続テレビ小説『わろてんか』、ももいろクローバーZ『Chai Maxx』、『白金の夜明け』等。

Q1. 今回、どのフレーズを作られたのか、具体例を2,3ピックアップしていただけますか?

Masaru Yokoyama, Kana Hashiguchi, Tsubasa Handa(Plugnote)の3人で、Shamisen, Shakuhachi, Hichiriki, Koto, Shoのパターンセットを作成しました。

Q2. そのフレーズ、どのような人に、どのような使われ方がされると想定して作ったのでしょうか?

まず、楽器本来のもつ特性、フレーズ感に嘘がありすぎないように最大限注意しました。これは曲を作るときに珍しい楽器を取り入れるときも同様に注意しているのですが、「その楽器にとって最大限良いところを引き出したい」という想いを常に持っています。その土台となるため、まずは楽器のことを研究し、魅力的と感じられるフレーズを作っています。作曲家がフレーズセットから楽器の特徴を掴んでもらい、自分の曲に組み込んで欲しい、そのファーストステップとなることを想定しています。

Q3. EAST ASIAで、「ぜひこの機能を使ってほしい」、「このように活用してほしい」、というものがあれば教えてください

とにかく!たくさん触って遊んでほしいです。SPOTLIGHT COLLECTIONがすべてそうなのですが、珍しい楽器がたうさんあります。先程も述べましたが、「嘘をつきすぎる」ことは、楽器に無理をさせることでもあり、それは音楽としてうまく成り立ちません。NIの多くの音源にはフレーズが組み込まれているので、本来の姿を探りながら、創作的にどんどん活用してほしいです。そして、これはとても大切なことですが、もしそれらの楽器に興味が湧いたら、ぜひ、本物の楽器でのレコーディングにもトライしてほしいです。リモートレコーディングが発展した現在、どのような楽器もとてもレコーディングがしやすくなっています。このような音源とレコーディングは双方に発展していくべき存在だと思っています。

多田彰文さんインタビュー

Profile:多田彰文さん
幼少よりクラシックピアノを、中学時代よりギターを始める。1989年手塚治虫原作「火の鳥」舞台演劇にてシンセサイザー演奏デビュー。その後、辛島 美登里をはじめ、西城 秀樹・野口 五郎など 歌手・アーティストのツアーミュージシャンとして演奏活動を行う。
日本大学文理学部英文学専攻科在学中に作曲・編曲活動を始め、新人アーティストのサウンドプロデュースやドラマ・アニメ・ゲーム等の音楽制作を手掛ける。作・編曲・オーケストレーションを小笠原 寛氏、指揮法を大澤 健一氏に師事。キーボード・ギター・ベースはもとより、木管・金管楽器、ヴァイオリン、パーカッションから大正琴まで、あらゆる楽器を演奏し、スタジオレコーディングでの指揮者もこなす、マルチプレイヤーである。

Q1. 今回、どのフレーズを作られたのか、具体例を2,3ピックアップしていただけますか?
Q2. そのフレーズ、どのような人に、どのような使われ方がされると想定して作ったのでしょうか?

【Percussion Japan】
アンサンブルプログラムのひとつで、日本の純邦楽で使用される鳴り物(打楽器)5種類から成るプログラムです。C2より上の鍵盤にはそれぞれの楽器の奏法(基本的に右手と左手それぞれの打音)がアサインされており、C1〜B1ではワンキーでリズムパターンを演奏できるようなシーケンスが組まれています。以下、大きくは3つのカテゴリーを作成しました。

「Dentou(伝統)」は、日本古来の能楽や歌舞伎などでよく聞かれるパターンを作成。このようなジャンルにおいては本来、リズム(拍子)という概念がなく、「間(ま)」というものを大切に奏でられるそうです。Kakko(鞨鼓・かっこ)奏者がそのリーダー、西洋音楽における指揮者的な役割になって、間合いを整えていくとのこと(※雅楽奏者からの情報)。とはいうものの、テンポは84として作成し、そのような雰囲気を出しつつも、楽曲に合わせられるようなアンサンブルを心がけてみました。

「Gendai(現代)」は、POPSや、場合によってはROCKなどに合わせられるように作成したリズムパターンです。「Taiketsu(対決)」は、ゲーム音楽やアニメなどのバトルシーンなどにあわせてグルーブを出せるようなビートを作成しました。この2つのカテゴリにおいてはどちらも8ビートや16ビート以外に3連符によるビートも用意しています。これは、ユーザーの方に幅広い音楽ジャンルで使用してほしいという思いもありますが、実は自分があったら便利なので欲しいと思ったからです(笑)。

【Shamisen – Honchoshi】
現代ではPOPSやROCK、JAZZに始まり、アニメやゲーム音楽での背景音楽にも多用される楽器となりました。そのニーズに応えるために、オーソドックスなフレーズから3連符系、ロックンロールのようなパターンまでバラエティーなラインナップを作成しました。

Q3.EAST ASIAで「ぜひこの機能を使ってほしい」「このように活用してほしい」というものがあれば教えてください

どのインストゥルメントも、各楽器をよく研究されてのプログラミングで、多様な奏法に対応できるものとなっていました。たとえば、ShamisenやKotoなどの弦楽器ものでは鍵盤の一部の黒鍵に開放弦が用意されていて、Shamisenなどによくある、開放弦を響かせつつ高い音でフレーズを弾くという技が再現できるのは特筆すべきところですね。また、同じくShamisenにおいて「LH Pizz」という、いわゆる弦を押さえる側(左手)で弦を弾く(プリング・オフ奏法)が用意されているのも粋な計らいだと感じました。ユーザーが自分で打ち込みをするにあたってもかなりの複雑な表現が可能であると思います。

Melody(旋律)系の楽器に用意されている「Scale」は、平調子に始まり雲井調子や琉球音階など独特のチューニングが用意されていて、ただパラパラ弾いているだけでもそれっぽくなるというもの。これらは積極的に活用してほしいと思っています。

【関連情報】
EAST ASIA情報
KOMPLETE START情報

【DTMステーションPlus!】第179回

特集:EAST ASIAでホンモノの日中韓サウンドを♪

8月17日 20:30~22:30
◎ニコニコ生放送 ⇒ https://live.nicovideo.jp/watch/lv332896791
◎YouTube Live  ⇒ https://youtu.be/aITDu4ShJew