とはいえ、DAW全盛の現在、MPCだけで制作していくというのは非効率ということで、従来のスタンドアロン型のMPCはなくなってしまいました。しかし、PCやiPhone/iPadと組み合わせる新しいタイプのMPCがいろいろ出ているんですね。従来からの使い勝手はそのままに、より高性能、高機能になると同時に、コンパクトに、そして低価格になっているんです!そのPCと組み合わせて使う現行のMPCは3製品あるようですが、一番薄くて軽く、15,800円で入手可能なMPC ELEMENTという機材を紹介してみましょう。
PCと組み合わせて使う非常に薄くてコンパクトなシステム、AKAI MPC ELEMENT
4×4のパッドを中心にトランスポートボタン、タップボタン、バンク切り替えボタンなどが並んでいる
リズムにあわせてタップボタンを押していくと、テンポの設定ができる
RECとPLAYボタンを押すと、クリックが鳴り出すので、それに合わせてキック、スネア、パーカッション……とパッドを叩いていけば、どんどんリズムが入力できます。
また、写真を見ても分かるとおり、このパッドにはLEDが装備されており、パッドを叩く強さによって色が変わるようになっているのです。そして、その強さに応じて応じてベロシティーが変わり、音量も反映されていくのです。
このMPC Essentialsには数多くのリズム音色、また効果音などが入っているほか、リズムデータもたくさん収録されているので、とりあえずそうしたデータを読み込んで鳴らし、それをベースに自分でエディットしたり、音を追加していくといった方法もいいかもしれません。
もちろん、自分でサンプリングするだけでなく、手持ちのWAVファイルやサンプリング素材データなどを読み込み、それぞれのパッドに割り当てていくということも可能ですよ。
さらに面白いのは、これが本格的なサンプリングシンセサイザーであるという点です。1つのパッドには4つサンプリングデータをレイヤーとして割り当てることができ、それにフィルターをかけたりモジュレーションをかけたりでき、エンベロープをいじったり、LFOで変調していくといったこともできますから、相当な音作りが可能なんです。これは音作りを始めると、面白くて止まらなくなりますね。
こうして作った音に対し、4つのインサーションエフェクトをかけていくことも可能なのです。コンプ、EQ、コーラス、リバーブ……とさまざまなエフェクトが標準で装備されているだけでなく、VSTプラグインを利用することも可能だから、まさに音作りは自由自在。従来の単体のMPCではできなかった強力な機能だと思います。もちろん、こうしたフィルターやエンベロープの設定、エフェクトの設定は各パッドに割り当てた音色1つずつに対してできるようになっています。
また、パッドで叩く音のレコーディングは標準設定でクォンタイズがかかるようになっているから、多少入力が下手でも、タイミングはバッチリ合ってくれます。でも、頭のキックは微妙に突っ込み気味にしたいとか、3拍目のスネアはモタリ気味にしたい……、なんてこともありますよね。これについてはピアノロール画面で調整することができるほか、数値入力のエディター画面も利用することができるので、本当に細かくエディットしていくことが可能なのも、すごいところです。
通常は、PCとUSBで接続して使うわけですが、さらに外部機器を接続したいという場合には付属ケーブルを取り付けることで、MIDI IN、MIDI OUTを設けることも可能。外部のシーケンサと同期させたり、別の音源を鳴らすといったこともできるのです。
ちなみに、MPCのカバー部分にiPadを置くとちょうどピッタリなサイズ。USBケーブルがL字型のコネクターになっているので、うまくハマるんですよね。iPad、iPhoneとの接続にはLightning-USBカメラコネクタが必要になってきますが、iPad、iPhone単体で使うのと比較して圧倒的に使いやすくなります。
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MPC ELEMENT製品情報
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AKAI Professional