従来のリニアPCMレコーダーの範疇を超えて進化を続けているTASCAMのDR-44WL(右)、左はリモコンとして機能するiPhone
そもそも「リニアPCMレコーダーって何?」という人もいるかもしれませんね。誤解を恐れずに一言で説明すれば「できる限り高音質で録音するための機材」とでもいえばいいでしょうか?MP3やAACのような圧縮形式ではなく非圧縮のWAVのファイル形式で、レコーディングする機材であり、DR-44WLのようなハンディータイプの高品質マイク搭載の機材が主流になっています。
そのDR-44WLは「Wi-Fi接続対応リニアPCMレコーダー」としてはDR-22WLと同時に発売された兄貴分のほう。DR-22WLが2chレコーディングなのに対し、DR-44WLは4chのレコーディングができるほか、4トラックのMTRとしても使えるという仕様となっているのです。
その「Wi-Fi接続」というのが独特なものであり、多くの人は「なぜ、リニアPCMがWi-Fi対応なんだ?」と疑問に思うところですが、先ほど例として紹介したスマホからのリモコン操作というのが、まさにWi-Fi接続の機能なのです。普通Wi-Fi接続というと、「Wi-Fiの電波が入るアクセスエリアでインターネットに接続して……」ということを思い浮かべると思いますが、DR-44WLやDR-22WLでのWi-Fi接続はちょっと違うんです。これらの機材の側面にあるWi-Fiボタンを押すと、このリニアPCMレコーダー自体がWi-Fiの電波を発信するようになり、ここにiPhoneやAndroidを接続する形になるのです。だから、電波がまったく来ていない地下室であっても、電波が遮断されたホールの中でも利用できてしまうわけなのです。
地理情報とは、まさに地球上のどこの場所なのかを示す情報であり、国内であれば北緯○○度、東経○○度というかなり細かな情報です。たとえば、DR-44WLを野外に持ち出して、鳥の鳴き声を録る…といったフィールドレコーディングの場合、音と同時に地理情報も記録できれば、後でどこで録った音なのかをしっかり確認できますよね。
でも、DR-44WLにGPS機能を装備しているというわけではありません。どうやって地理情報を掴むのかというと、スマホに搭載されたGPS機能でそれを把握し、TASCAM DR CONTROLを使ったリモコン操作を行う際に、これをDR-44WLへとデータ転送して記録させるのです。
この際、DR-44WL側では録音のフォーマットをBWFに設定し、XRIモードを「ON+GPS」に設定しておく必要があります。BWFとはBroadcast Wave Formatの略で、一般的なWAVファイルの拡張版。基本的にはWAVファイルと同じものであり、普通に互換性もあるのですが、ここに各種情報を埋め込めるようになっているのです。
その情報としてTASCAMが定義するXRI(eXtended Recording Information)というものを埋め込む形になっているわけなのです。ちょっと込み入った話で難しく思えた方もいるかもしれませんが、使い方自体はいたって簡単。単純にモード設定して、TASCAM DR CONTROLで操作すればいいだけなのです。
Cubaseに読み込ませると、地理情報ほか、各種情報が確認できる
こうした情報をどう活用するかはユーザー次第ではありますが、リニアPCMレコーダーの世界はまだまだ発展しているようですよ。
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