1994年9月に発表され、同年12月発売となったヤマハのXG音源の第1弾、MU80(当時のパンフレットより)
DTMにおいては1988年にミュージくん、1989年にミュージ郎を出して市場開拓を始めたローランドが全盛期を迎えていました。とくに1993年に発売したGS音源のSC-55mkIIが大ヒットとなり、パソコン通信のNIFTY-ServeのFMIDIやPC-VANのSIGミュージシャンズ・スクエアなどが盛り上がっていた時代です。
突然のようにXG規格がヤマハから発表された。これはその時のプレスリリース(報道発表資料)
では、そのXGに対応した初代音源であるMU80とはどんなものだったのでしょうか?私も発売と同時に購入し、今でも手元に残している音源でしたが、さすがヤマハが本気で開発してきた音源だけに、かなり強力で画期的な音源でした。
MU80のエフェクトに関するブロックダイアグラム。
2つあるVARエフェクトはこのようにインサーションとして使えるほか、システムエフェクトで使うモードもあった
そうVARIATION TYPEと名付けられたこのマルチエフェクトでは、フランジャー、ゲートリバーブ、オートパン、フェイザー、ディストーション、オーバードライブ、、アンプシミュレータ、ピッチチャンジ、EQ、コンプ……とさまざまなエフェクトを使うことができ、これを任意のチャンネルにインサーションとして突っ込むことができたんですよね。まだDTMにおいてはギターサウンドが非常に弱い時代でしたが、エフェクトとしてディストーションを備えたことで、従来のギターサウンドとは明らかに違うリアルなサウンドが出せたのが特徴的でした。
もっとも、まだUSBの規格も、オーディオインターフェイスなんて製品も登場していない時代。PCとの接続はあくまでもMIDIであったため、ここでいうA/DはあくまでもMU80内で完結するもので、PCに取り込むことなんて不可能だったんですけどね。そう考えると、この20年でDTMはずいぶんと進化したんだなぁ……と、改めて感じてしまいます。
ちなみにXGの音色のバンク切り替えはGSの手法とぶつからないように、MSBとLSBをひっくり返す形となっていました。またMU80にも、TG300に搭載されていたGS互換モードであるGM-Bモードを引き継ぎ、SC-88との互換性も持たせたTG300Bモードが搭載されていました。これによって、GS音源用のデータが来てもうまく鳴るように作られていたのも見事なところでしたね。
このXGおよびMU80の登場により、全面戦争に突入した音源シェア争い。その後も下位バージョンのMU50を出したり、さらに上位機種となるMU90、MU100、MU128、MU1000、MU2000といったものをリリースし、ローランドとともにしのぎを削ってきたんですよね。最後のMU2000のころには、ローランドも、ヤマハもGS、XGを前面に打ち出すのはやめて、お互い共通で使えるGM Level2に対応させるなど戦争も収束していくと同時に、プラグイン音源へと主役の座をバトンタッチしていったわけです。
私の手元にあるMU80は今でもしっかり動いてくれる。最新のiPhone6sやCubase8との組み合わせでもバッチリ動作
とはいえ、今でもMIDIで接続すれば最新のCubaseやSONAR、Ability、Studio One……といったDAWでMU80を鳴らすことができますからね。もし、まだ手元にあるという人は、時々引っ張り出してきて鳴らしてみると楽しいと思いますよ。
なお、こうしたDTMの昔話、インプレスから出している電子書籍の3部作、「DTMの原点Vol.1」、「DTMの原点Vol.2」、「DTMの原点Vol.3」でも、いろいろと書いているので、よかったらご覧ください。
【関連書籍】
◎Amazon(Kindle) ⇒ DTMの原点 Vol.1
◎iBook Store(iOS) ⇒ DTMの原点 Vol.1
◎その他デバイス ⇒ DTMの原点 Vol.1
◎Amazon(Kindle) ⇒ DTMの原点 Vol.2
◎iBook Store(iOS) ⇒ DTMの原点 Vol.2
◎その他デバイス ⇒ DTMの原点 Vol.2
◎Amazon(Kindle) ⇒ DTMの原点 Vol.3
◎iBook Store(iOS) ⇒ DTMの原点 Vol.3
◎その他デバイス ⇒ DTMの原点 Vol.3
【関連情報】
MU80オーナーズマニュアル(PDF)