ボーカルエディタやコード演奏機能も装備、大きく進化したReason 9で遊んでみよう!

先月、スウェーデンのPropellerheadが開発するReasonの新バージョン、Reason 9が発売されました。2000年に初期バージョンがリリースされて以来、一貫してラックマウントのユニークなUIをベースに発展してきたReasonですが、CubaseやSONAR、Pro Tools、Studio One、Ability……といった一般のDAWに負けない機能、性能を装備してきています。

今回の新バージョンでも、またユニークな機能がいろいろと搭載されるという情報を聞いていたので、以前から気になっていたのですが、私がようやく入手したのは9月に入ってから。ちょっと遅くなってしまいましたが、「最近、Reason使ってないなぁ…」という人も多いと思うので、改めて最新版Reasonがどんなものなのかを紹介してみたいと思います。


新たな機能がいろいろと搭載され、さらに強力になったReason 9


2000年にPropellerheadからReasonが誕生したときは、見る人みんなが度肝を抜かれました。まだソフトシンセ自体それほどポピュラーでなく、MIDIシーケンサからDAWへとようやく変わろうとしていた時代に、とんでもない機能を実現していたからです。それは画面上のラックにシンセサイザをマウントすると機能し、画面を裏側にひっくり返すと、ブランブランと揺れるケーブルが繋がっていて、それをマウスで抜き差しすることで、エフェクトやミキサーなどに自由にルーティングできるというUIになっていたからです。


初期のReasonはこんな雰囲気だった。といっても、この画面もReason 9のもの 

その後、Reasonは利用可能なシンセサイザやエフェクトを増やしながらReason 2、Reason 3、Reason 4とバージョンアップ。私もいくつかの書籍を書いて、結構なヒット作品になった記憶があります(BNN新社の「Master of ****」というシリーズ本の最初の書籍は私が書いた「Master of Reason」だったんですよ!)。さらに、オーディオレコーディングを可能にするRecordというソフトが誕生し、これがReasonと融合できる形になったのですが、Reason 6ではRecord統合。


TABキーを押してリアを表示させると、ケーブルがアニメーションでブランブランと動き、マウスで接続先を変更できるのには驚かされた

そしてプラグインのように機能追加可能なRack Extensionという仕様が公開されたり、外部MIDI音源を駆動できるようになるなど、かなり大きく発展してきており、できることという意味ではDAWに劣らないし、その使い勝手の良さはDAWを凌ぐものがあります。まぁ、ReasonをDAWと呼ぶか否かで、みなさん意見が分かれるようですが、私、個人的にはプラグインが使えないという観点からDAWとは呼んでいないんですよね。

新バージョンも従来のUI、機能はすべて踏襲している
さて、そのReasonの新バージョン、Reason 9では、またユニークな機能がいろいろと搭載されましたので、紹介していきましょう。今回の目玉機能ともいえるのが、Playersデバイスと呼ばれる3つのモジュールです。

Reason 9で追加されたPlayersというデバイスには3種類が存在する

具体的にはScales & ChordsDual ArpeggioNote Echoの3種類で、いずれもReasonのインストゥルメント、つまりアナログシンセやサンプラーなどの音源と組み合わせて使うデバイス。


スケールを設定すると単音を弾くとそれに合ったコードを生成してくれるScales & Chords

たとえば、Scales & Chordsを読み込んだ状態で、MIDI鍵盤で1つのキーを押させると、それを基音とするコードが演奏されるのです。画面左側でキーとスケールを設定すると、そのスケールに合ったコードで演奏されるので、まったくキーボードを弾けない人が適当に弾いても、リアルタイムにそれっぽい演奏になっちゃうのが楽しいところです。

上下の画面で2つのアルペジオを走らせてくれるDual Arpeggio
またDual Arpeggioの場合は、上下2種類のアルペジエーターが動く形になって、かなり自由度高い演奏が可能になっています。先ほどのScales & Chordsの後にDual Arpeggioを置くと、指一本でコードができ、そのコードを元に複雑なアルペジオが展開できるので、かなり面白いですよ。

MIDIエフェクトのNote Echo。エコー効果で鳴る音の音程を変化させられる不思議なエフェクト

そしてもう一つのNote Echoは、結構不思議なMIDIエフェクト。MIDIキーボードであるキーを押すと、ディレイというかエコーとして、音が連続して鳴るのですが、そのディレイとして返ってくる音の音程や音量を調整できちゃうユニークなシステムなのです。ギターのストロークでジャラ~ンと鳴らすような感じのことができ、その鳴らし方を自由にコントロールできるというわけなのです。

これらPlayersをどう使うかはユーザーのアイディア次第ですが、まずはリアルタイムに演奏するのに楽しく使えそうだし、それをレコーディングしていくというのもよさそうですね。

もちろんReasonですから、アナログシンセのSubTractorに利用してもいいし、サンプリング音源のNN19やNN-XT、グレインテーブルシンセのMalstrom、ポリソニックシンセのThorなど、どの音源に利用してもOKですよ。

ボーカルなどを読み込むとピアノロール表示してエディット可能になるピッチエディター

さて、もう一つ搭載された新機能はピッチエディット機能です。これはCelemonyMelodyneやRoland時代のSONARV-VOCALみたいな機能と言ったらわかりやすいですかね。ボーカルをレコーディングしり、ソロでの演奏やボーカルのオーディオファイルをトラックに読み込んだモノを、MIDIのように自由にエディットできてしまう機能です。

波形を選んで「ピッチエディット」ボタンをクリックするだけでOK

特に変換作業をする必要もなく、エディットしたいオーディオイベントを選択したうえで、「ピッチエディット」というボタンを押せば、すぐピアノロール風に表示され、エディットすることが可能になるのです。ピッチの変更はもちろん、音符の長さの変更も自由自在ですから、使い勝手は抜群。このピッチエディットのためだけにReason 9を買っても損はないと思う機能を持っていると思いますよ。


バウンスメニューにある「オーディオクリップをMIDIへバウンス」を選択すれば、即MIDIトラックが生成される

また、これに関連して、オーディオファイルをMIDIに変換する機能も搭載されました。これもピッチエディットと同様、ソロの信号のみの対応で、和音をMIDIに変換することはできないのですが、ボーカルからMIDIを生成するといったことが簡単にできるし、結構いい感じにMIDI変換してくれるので、便利に使うことができそうですよ。

といったところが、Reason 9の新機能なのですが、今回久しぶりにReasonを使ってみて、一つ気になったのが、外部MIDIインストゥルメントというデバイスです。従来、ReasonはReasonというソフト単体で完結することをテーマにしてきたシステムであるため、プラグインなどにも対応しなかったんですが、Reason 7で、この外部MIDIインストゥルメントという外部MIDIデバイスを鳴らす機能を装備していたんですね。


Reason 7で搭載されていた外部MIDIインストゥルメント 

まあ、やっていること自体はいたって単純。Reasonのシーケンサを再生する際、MIDI信号を内蔵のソフトウェア音源でなく、外部のMIDIポートに送るだけの話です。基本的には外部音源モジュールを用いて鳴らすわけですが、今時外部音源を持っている人は少なそうだし、VSTiなどのプラグイン音源が使えるとちょっと便利そうですよね。

ということで実際にプラグイン音源が使えるのかどうか、簡単にテストしてみました。ここではWindows 10環境にフリーウェアのloopMIDIというものを入れて行いましたが、MacならAudio MIDI設定にあるIAC Driverを使う形になります。


loopMIDIを起動して「+」ボタンをクリックするだけ 

loopMIDIを起動し、左下にある「+」ボタンを押すと「loopMIDI Port」という仮想MIDIドライバができます。この仮想ドライバをDAWの入力ポートに設定するとともに、Reasonの外部MIDIインストゥルメントの出力ポートに設定すると、あっさり使えてしまいました。


DAW側でプラグインを起動するとともに入力MIDIポートをloopMIDI Portに設定する 

まあ、この際、DAW側を先に起動してReWire接続してしまえば、オーディオの制御はすべてDAWに任せられるので、それが便利かもしれませんね。まあ、もともとReWireを使っていれば、プラグインとの共存は可能だったわけですが、Reason側ですべて制御できるという意味では外部MIDIインストゥルメントの存在意義は大きそうですね。


外部MIDIインストゥルメントの出力先をloopMIDI Portに設定する 

以上、Reason 9の新機能を中心に紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?「久しぶりにReasonを使ってみようかな…」なんて思った方も多いのではないでしょうか?せっかくなので、Reasonの購入方法について簡単に紹介しておきましょう。

まずReason 8には新規ユーザー向けの通常版(39,960円)とともに、以前のバージョン(Reason 1~8)を持っていた人向けのアップグレード版(12,960)があり、いずれもDVD-ROMメディアが入ったパッケージ購入可能で、日本語サポートも受けられるのがポイント。実は今Reasonはコルグが輸入代理店となっているので、コルグのサポートを受けられる形になるんですね。

Reason 9のパッケージ。ダウンロード版より少し安く、コルグからのサポートも受けられる

一方で、Propellerheadのスウェーデンの本国サイトからダウンロード購入することも可能です。この場合、通常版が$399、アップグレード版が$129となるので、1ドルが100円なら、ほぼ同額、今の103円程度だと若干割高という形になりますね。「海外ソフトは海外から直接買うのが安い」と信じて疑わない人も多いようですが、最近は事情が変わってきているので、要チェックですよ。

ちなみにパッケージ版もダウンロード版もソフト自体はまったく同じで、両方とも日本語対応ソフトで、PDFの日本語マニュアルも入っている点でも同様です。ただしダウンロード版を購入した場合のサポートは本国との英語でのメールのみで、コルグでのサポートは受けられないことを考えると、パッケージ版の購入が安心かもしれませんね。

なお、Propellerheadの日本サイトに行くと、30日間使えるフリー版も用意されているので、試してみてはいかがでしょうか?

【価格チェック】
◎Amazon ⇒ Reason 9
◎サウンドハウス ⇒ Reason 9
◎Amazon ⇒ Reason 9 アップグレード版
◎サウンドハウス ⇒ Reason 9 アップグレード版

【関連サイト】
Propellerhead日本語サイト
loopMIDIダウンロード


Commentsこの記事についたコメント

5件のコメント
  • no reason no life

    リーズンユーザーです、他のDAWとの連携がよりスムースになればうれしいです。

    2016年9月6日 7:23 PM
  • ねむねむ☆

    へー、loopMIDI等でVSTiなどのプラグイン音源が使えるんですか。知らなかったです。
    未だにステップレコーディング機能が無く、それよりもピッチエディットが付いたんですね(笑)
    >私、個人的にはプラグインが使えないという観点からDAWとは呼んでいないんですよね。
    というのは、DAW(Digital Audio Workstation)のWorkstationの部分において劣るからという理由なのでしょうか?

    2016年9月7日 4:29 PM
  • 藤本健

    ねむねむ☆さん
    DAWと呼ばないのは、あくまでも私の勝手な定義づけです。
    Workstationに、別にプラグインの意味があるわけではないし、
    Rack Extentionをプラグインととらえれば、それでいいようにも思いますが、
    なんとなく、そう区分けしてしまうんですよね。
    ほんとはFL STUDIOなんかもReasonの仲間であって、ほかのDAWとは違うもの
    というように思っているんですが、FLはしっかりVSTが使えるので、DAWでいいか、とも。

    2016年9月7日 10:55 PM
  • アンディ

    藤本健さん、初めまして!
    過去に藤本さんの書いた「Master of Reason 3.0」と「Master of Record」を購入した者です。
    久し振りにまたReasonを使いたくなり、最近バージョンアップをしたのですが、UI等が
    結構変更されていたのと、新しいデバイスもたくさん追加されていて戸惑っています…。
    切なる希望なのですが、「Master of Reason 9.0」の書籍を書いていただけないでしょうか?
    どうぞ宜しくお願いいたします!!!!!!!

    2017年6月7日 2:42 AM
  • 藤本健

    アンディさん
    こんにちは。以前の書籍、購入いただいたとのこと、ありがとうございます。
    そうですね、確かにReason 3.0やRecordのころと比較すると、ちょっと変わったところはありますね。ただ、使い勝手において戸惑うのは、最初に組み込まれているマスターセクション、それにReason 6あたりで追加されたコンビネーターくらいでしょう。
    コンビネーターとは、複数のデバイスをまとめて1つにしちゃうもので、マスター用にまとめたコンビネーターがマスターセクションなんです。これさえ理解してしまえば、前の本の内容がほぼそのまま生きてくると思います。後は、若干のデバイスが増えたのとVSTが使えるようになった程度でしょう。
    いま、もう書籍ってまともにビジネスとして機能しないんですよ。もちろん、話がくればやらないわけではありませんが、現実を考えるとReasonの書籍を出すのは、時代的に不可能かな…なんて思ってます。

    2017年6月7日 10:10 PM

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