「なんとかマインクラフトを抜きたい!」前代未聞の4人対戦型DAW、KORG Gadget for Nintendo Switchで目指す佐野電磁さんの野望!

先月4月26日に発売されたKORG Gadget for Nintendo Switch。『Nintendo Switch上で動く、世界初の対戦型DAW(!?)』ということで、世界中で大ヒットとなっているようです。これは、あの佐野電磁さん率いるDETUNEコルグが共同開発したソフトで、ニンテンドーeショップより5,000円でダウンロード販売されているというもの。名前からも分かるとおり、KORG Gadget for MacKORG Gadget for iOSの機能、性能を踏襲しつつ、4画面分割、4人同時プレイや時間制限モードなど、今までのDAWでは考えられない面白い機能を持つとともに、ゲームコントローラーを使った使いやすい操作性を実現するなど、かなり進化したソフトになっています。

昨年10月のM3会場で発表されたKORG Gadget for Nintendo Switchのニュースは、瞬く間に世界中へ広がっていたたので、このソフトについてはご存知の方がほとんどだと思いますが、まだ触っていないという人も少なくないでしょう。そこで、具体的にどのような進化を遂げているのか、対戦型とはどういう意味なのか、どんなやり取りがあって企画化され、開発されていったのか、さらには今後どうなっていくのか……、開発陣のみなさんに話を伺ってみました。インタビューに対応していただいたのは、佐野電磁さんと、プログラマーである鈴木秀典さん、またコルグの中島啓さんと加藤智幸さんの4人の方々です。


KORG Gadget for Nintendo Switchの開発メンバー、左上から加藤智幸さん、鈴木秀典さん、
中島啓さん、佐野電磁さん


--KORG Gadgetをご存知ない方もいると思いますし、対戦型DAWといっても、なかなか想像しづらい面もあると思うので、まずはKORG Gadget for Nintendo Switchとは何なのか概要を教えてください。

Nintendo Switch用にリリースされたDAW、KORG Gadget for Nintendo Switch

中島:
これはKORG Gadgetの直感的なユーザーインターフェイスをNintendo Switchで実現させたもので、16個の個性的で強力なシンセサイザー、ドラムマシンなどのガジェットを搭載したシステムです。タッチディスプレイを操作して使うiPhoneやiPad、マウスで操作するMacとは異なり、専用のコントローラーであるJoy-Conを傾けたり回すことで、アクティブに動かして操作、演奏が楽しめるようになっています。従来のKORG Gadgetと決定的に違うのは最大4人まで対応可能なマルチプレイモードを持っていることで、みんなでワイワイ曲作りを楽しむことができます。


KORG Gadget for Nintendo SwitchはDETUNEとKORGの共同開発

佐野:KORG Gadgetの移植版ではあるのですが、Switchは子供も含め、多くの世代の人たちが使うプラットフォームです。「シンセおじさん」たちが喜んでくれることは十分想像できたのですが、より広い人たちに楽しんでもらうにはどうしようか……と、発想を広げて作っていったソフトなんです。その中で4人対戦、4画面分割、コントローラーでのフィジカル操作……などさまざまなアイディアを盛り込んでいくことで、面白いものにしていきました。ゲーム性という意味では、時間制限モードを入れてみたり、30秒の動画を録画・共有できる機能を使いSNSにアップロードできるようになっているのも面白いところです。

DETUNEの代表取締役で、KORG Gadget for Nintendo Switch開発プロジェクトの中心メンバーである佐野電磁さん

--KORG DS-10、KORG M01D、KORG DSN-12……。まさに定番となっているNintendoハードウェアと、コルグのサウンドエンジン、そして佐野電磁さんという組み合わせですが、今回Nintendo Switchという新ハードウェア上で新たな製品が誕生したわけですよね。これは、やはり佐野さんからの発案だったのですか?


KORG側のプロジェクトマネージャーである中島啓さん

中島:実は、今回に関してはコルグ側からDETUNEさんへ相談を持ち掛けたのがスタートです。DETUNEさんとは、定期的にミーティングをしたり、情報交換をしているのですが、任天堂から新しいプラットフォームがリリースされるらしいという噂があったので、「KORG Gadgetで何かできないだろうか……」と佐野さんに話をしたのです。
佐野:Nintendo Switchが発表される前の話だったので、すぐに製品イメージが沸いたわけではありませんでした。また当初は3DSでKORG Gadgetを……という話もあったんです。そのときに鈴木さんに相談したら「3DSだったら絶対に作らない」と言われちゃったんですよ(苦笑)。

KORG M01、KORG M01D、KORG DSN-12の開発も行ってきたプログラマーの鈴木秀典さん
--3DSが嫌だった理由って何かあるんですか?
鈴木:3DSについては、これまでもう十分にやりつくしてきた感があったので、もっと新しいことをしてみたいな…という意味ですよ(笑)。実はちょうど別件の仕事でNintendo Switchに関する情報を知っていたので、やるんだったら絶対にSwitchがいいと(笑)。3DSはゲーム機だなという印象です。画面が2つあってソフト的にもハード的にも特殊な作り方をしないといけないんですね。一方Switchは、いわゆるモバイル端末に似たシステムなんです。3DSと比べるとかなり違うものになっていますね。特にJoy-Conがかなりよくできたデバイスなので、それを駆使すれば色々なことができるなと思いました。

DTMステーションでも何度も取材させてもらっている開発リーダーの加藤智幸さん
--もちろん、3DSとSwitchを比較すれば、発売された時期も大きく違うので、処理能力もかなり違うと思いますが、作ろうと思えば、3DS用のKORG Gadgetも作れたのでしょうか?
鈴木:仕様上の詳細は機密事項となっているのでお話できませんが、体感的にSwitchのパワーはiPad Air程度のものではあります。それに対して3DSだとその10分の1とかだと思います。

加藤:Switchで使っているエンジンは、Mac版、iOS版とまったく同じものを使っていてそのまま動いています。それが3DSだと音源を最初から作り変えないとまったく動かないと思いますね。そういった意味でもSwitchにしてよかったと思っています。


KORG GadgetのiOS版(左上)、Mac版(右上)、Nintendo Switch版(中央)

--ということは、KORG Gadget for Nintendo Switchで出る音は、Mac版、iOS版と同じ音質のものということなんですね!?
中島:その通りです。Nintendo Switchのヘッドホン端子から音を出せるだけでなく、HDMIで繋げばテレビから音声を出すこともできますし、USB端子が用意されているので、ここにUSBスピーカーを繋ぐことも可能ですよ。そのため基本的にはMacに繋いだときと同じ音が出ますね。

KORG Gadget for Nintendo Switchに搭載されているのは16音源
--そう聞くとDTMユーザー的にも俄然、興味が湧いてきますね。ちなみに、Mac版やiOS版における全機能がSwitch版でも使えると考えていいのでしょうか?
中島:使えるガジェットの数、トラックに違いがあります。Mac版の場合は全35個のガジェットがあり、iOS版も標準の18個(うち2つはオーディオ専用)にオプションを追加することで同様のガジェット数を持っています。それに対し、KORG Gadget for Nintendo Switchでは、当初あった15種類のガジェット+Kamataの計16個で、トラック数も16トラックまでとなっています。

佐野さんがKORGにバンダイナムコを紹介したことで生まれたKAMATAも搭載されている
--ところで今回、みなさんの役割分担はどのようになっていたのですか?
中島:私はアプリ開発チームのマネージャーとして、費用面やリソースなど開発の全体的な管理をしていました。実際の開発リーダーは加藤が行っていた形です。
加藤:全体のUIをどうするかなどを考えながら、ピアノロール以外の画面を実装していったり、音源の移植作業などを行っていました。
佐野:DETUNE側は僕と鈴木さん、同じくプログラマーの穴澤友樹さんで進めていました。KORG M01、KORG M01D、KORG DSN-12にも携わっていたメンバーですね。

この4人に穴澤友樹さんを加えたメンバーで開発が進められた

--加藤さんがUIを実装を担当していた一方、鈴木さんはどういったところを担当されていたのですか?

鈴木:私はピアノロール部分と、細かいところだとメモリー管理やファイルの管理、画面の切り替え処理、描画システム……などシステム全般のプログラムを担当しました。画面に見えてない根幹部分ですね。

ピアノロールやドラムエディタの画面も鈴木さんが新たに開発している
--KORG Gadgetとしての基本機能系のところは加藤さんが作っていて、システム的なところは鈴木さんが担当という形だったんですね。
鈴木:加藤さんと二人で「ダメだ、できない!!」というところは、穴澤さんに「助けてください!」とお願いしていました(笑)。
加藤:今回Gadgetが16個搭載できたのも穴澤さんのおかげなんですよ。
佐野:神頼み的な。佐野と同世代なので若干「気難しい神様」です(笑)。

オーバービュー、ピアノロール、ミキサー、Gadget Editの大きく4種類の画面が存在する
--昨年のM3で見たときにはほぼ完成していたように思いましたが、開発当初から今の仕様が固まっていたんですか?

佐野:最初は夢を広げすぎちゃって、まったくまとまらなかったですね。たとえばSwitchは子どもも遊ぶので、お子さん用に「こういう機能を」とか、操作をもっと簡単にしようなどあったのですが、アイディアが爆発しすぎたので、まずは素で移植しようと開発を進めていきました。その移植をしながら、4人同時プレイを実現したり、Joy-Conの良さを活かした操作性を実装していくうちに、製品としての魅力が爆発し始めて、そこから「これは行けるぞ!」となったんです。

2017年10月29日のM3会場での3人
--それこそM3直後から色々なメディアを駆け巡ってましたよね!
佐野:最初はM3の会場内で盛り上がったら嬉しいなぐらいだったんですが、まさか海外メディアまで広がるとは予想してなかったです。
鈴木:実はM3の時はまだ画面4分割の話は決まってなかったんですよ。もちろんアイディアはあったのですが、2018年春と発表された発売時期を考えると、まあ無理だろうと思い見送るつもりで考えていました。が、いつの間にかに作らなくちゃならないハメになっていました(苦笑)。

佐野:M3で何人かの方に「マリオカートみたいに4分割になったらいいですよね」と言われて、「そうですよね」ってそのまま鈴木さんに伝えました(笑)。


こだわりのSwichスニーカー(!?)を履く、佐野さん!

--やや頭が混乱してしまうのですが、4人が同時に別々の画面で操作していたら優先順位はどうなっちゃうんでしょう?

鈴木:たとえば自分の操作しているシーケンスが気づかないうちに人によって消去されてしまうわけですから(プログラム的には)たまったものじゃないですよ。一画面であれば、シーケンスを消すのであれば、シーケンスを消すという処理が一つで済むのですが、4分割画面だと誰かがシーケンスにいて、誰かがガジェットの設定を操作しているのに、オーバービューでトラックを消されたりしてしまうので、ほんと何てことしてくれるんだって感じです(笑)。マリオカートみたいにレースが終了するまで、みんな同じことをしているわけではなく、例えるなら誰かがコースを消すみたいなことなんです。時間的に間に合わないと思いましたが、なんとか完成させることができました。


画面4分割で4人が同時にプレイすることができる

--一方、時間制限モードというのがありますが、これはどういう発想だったんですか?
佐野:YouTubeに10分以内に作曲するって動画が結構あって、これが面白いからやってみようと思ったのがキッカケですね。10分ってすごく短そうに思えるのですが、4人で制作するとなると10分は長すぎるんですよね。そのため、デフォルトでは5分にしています。

--そのように、Switchに合わせたさまざまな機能を搭載したKORG Gadget for Nintendo Switchですが、実際の売れ行きはどうなんですか?
佐野:僕はもっと爆発的に売れると思ったのですが、まあ、普通に売れていますね(笑)。とはいえいつかはマインクラフトを抜く気でいます。でもマイクラはホント強いですね(笑)。
中島:国内のダウンロードランキングは最初の週で5位、その時マインクラフトはもちろん1位でした。

--全力で応援したいところですが…、ちなみに海外の反応はどうですか?
中島:海外の数字は発表していないのですが、Nintendo.com のBest Sellersには載っていましたね。

佐野:DS10の頃と比べると確実にアメリカは強いです。EDM効果でシンセの認識が高まっているんですかね。

Twitterのタイムライン上にはKORG Gadget for Nintendo Switchの30秒動画が数多くあふれている
--ところで最近、TwitterでよくKORG Gadget for Nintendo Switchの動画を見かけるのですが、あれはどうなっているんですか?
中島:Switchに搭載されている30秒の動画を録画・共有できる機能を使いSNSにアップロードできるようになっています。Twitterでハッシュタグ #GadgetSwitch で検索すると完成したものから、とりあえず遊んでみたもの、試行錯誤したものまで色々な人の投稿が見れますよ。

佐野:このTwitterの30秒動画キャプチャーを見ていると、従来からのシンセ好きの40代、50代の方々とは違う、新しいユーザー層が増えてきているという印象はあります。「分からないけど面白い!」といったコメントも多く、そういった人たちを飽きさせず、くじけさせない工夫をしていきたいです。インスタみたいに30秒っていう手軽さがいいと思うと同時に、これをどうエンターテイメントにしていくかですよね。この #GadgetSwitch を利用して、キャプチャ動画Viewer数ランキングや、今人気急上昇中の投稿ご紹介…みたいなウェブページを作りたいんですよ。手軽に次々と世界中のKORG Gadget for Nintendo Switch楽曲を楽しめるような。他にも、使ってるガジェットを自動的にタグに追加する機能なんかができたらいいな…と。

--それこそ、KORG Gadget for Nintendo Switchで育った子どもたちが大人になってコルグのシンセを使ってくれたら嬉しいですよね。他にも今後機能的にアップデートしていくアイディアなどはあるんですか?
佐野:ありますよ!正統進化系のアップデートはもちろん、僕はもっとゲームにしていきたいんですよね。たとえばBOMBっていうノートがあって、それを置くと四方八方に爆発して音符を消せるとか。で、いずれ作曲をeスポーツ化させたい。 あと、教育の現場でぜひ使ってもらいたいです。 これって4人であーだこーだ言いながら作曲というグループワークするのに適した環境なんですよね。こういうのって意外と他にないです。しかも、4人で1つのものを作るって音楽に限らず他のことにも応用できると思います。プロジェクターに映せるので、教えやすいですしね。 ご興味のある教育現場の方々、どうぞお気軽にご連絡を!

マインクラフトを抜く!と宣言する佐野電磁さん
--今後どう発展していくのか楽しみです。マインクラフトを追い越せるよう、頑張ってください!ありがとうございました。

【関連情報】
KORG Gadget for Nintendo Switch製品情報
KORG Gadget製品情報

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2件のコメント
  • AOD

    アップデートの予定があるのは嬉しいです
    現状スイッチというデバイス唯一のDAWなので
    (DSや3DSを見る限りこれ以外現れることはないでしょうけど)
    DTMステーションでも続報を教えてくださると嬉しいです

    2018年5月25日 8:55 PM
  • mosher

    複数人プレイやジャイロセンサーを利用したツマミ操作等の追加要素は
    力を入れているだけあって素晴らしいのですが
    現時点では機能不足やバグが目立つ為、今後のアップデートに期待ですね

    2018年5月26日 1:54 AM

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