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Bluetoothでアナログシンセをコントロールするmi.1e。日本のベンチャーQUICCO SOUNDがモジュラーの世界に賭ける夢

MIDIBluetoothで飛ばすユニークな機材、mi.1を開発・発売する日本のベンチャー企業、QUICCO SOUND(キッコサウンド)。シンセサイザやオーディオインターフェイスのMIDI端子に取り付けるだけで電源不要でワイヤレスMIDIを実現できるmi.1は日本のみならず世界中で広く使われる製品となっています。そのQUICCO SOUND(キッコサウンド)が、また新たな製品、mi.1eを開発し、6月1日より発売を開始しました。これはユーロラックに4HPで収まる小さなデバイスで、iPadとBluetooth接続することでMIDI-CV/GATEの変換を可能にするインターフェイスです。

 

0in/8outのmi.1e 0|8と2in/6outのmi.1e 2|6の2機種があり、いずれも価格は29,800円(税抜き)。これらが発売前の5月20日、東京・六本木で行われたモジュラーシンセのイベント、Cafe Deluxe #3で展示されたので、ちょっと見に行ってきました。会場にはmi.1eの開発を行った3人が来ており、mi.1eについていろいろとお話しを伺うことができました。聞いてみると、世界にほかにないユニークな機材で、かなりマニアックな仕様。今後、海外でも爆発的なヒットになりそうな予感がします。どうやってこんな機材が開発されたのか、インタビュー形式で紹介していきましょう。


mi.1eを開発したQUICCO SOUNDのみなさん。左から水引孝至さん、廣井真さん、高塚文啓さん


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ユーロラックのモジュラーシンセとBluetooth接続するMIDI-CVアダプター」、いったい何を言っているのかよく分からない……という方も少なくないと思うので、まずはCafe Deluxe #3の会場で撮影した以下のビデオをご覧になってみてください。

 

なんとなくイメージがついたでしょうか?要するに、iPadのシーケンサからBluetoothでアナログシンセをコントロールしているわけですね。これまでも有線のMIDIでCV/GATEをコントロールできる機材というのは海外にありましたが、Bluetooth接続できるのはこれが初。しかも単なるMIDI-CV/GATE変換というのではなく、モジュラーシンセを存分に活用できる専用のiPadアプリもセットにしているというのが大きなポイントとなっているようです。

Cafe Deluxe #3で展示されたmi.1e

お話を伺ったのはQUICCOの代表取締役 CEOの廣井真さん、ソフトウェア開発担当の水引孝至さん、仕様およびデザイン担当の高塚文啓さんの3名の方々です。

 

--まずは、簡単にmi.1eの概要を教えていただけますか?

廣井:基本的にはBluetooth MIDIをCV信号に変換するモジュールとして開発スタートしたのですが、最終的には2種類のシーケンサー、LFO、シーンメモリーを搭載する多機能モジュールとなっています。シーケンサーやLFOモジュールのノブやスイッチをiPad画面上に移して、本体にはCVポートだけを残したモジュールともいえます。

QUICCOの代表取締役 CEOの廣井真さん

--では、改めてこのmi.1eを開発することになった経緯を教えていただけますか?
廣井:高塚さんから「BluetoothでCVを出せるユーロラックを作りませんか?」と声をかけられたのがきっかけでした。高塚さんは、会社ロゴをはじめ、mi.1のロゴ、名刺のデザインなども手がけていただき、創業当初からいろいろとお世話になっています。
高塚:私がユーロラックを始めたころで、少しずついろいろなモジュールを買い揃えだしたタイミングで廣井さんに声をかけたのです。mi.1のように、iPadからモジュラーシンセをシーケンスできたら面白いな、と思ったのです。
廣井:私は、当時ユーロラックを始める前で、むしろ、手持ちのローランドMC202やSYSEM100MなどのビンテージシンセをiPadで動かしたいと思っていました。


仕様およびデザイン担当の高塚文啓さん

--高塚さんは、シンセは以前から使っていたのですか?
高塚:若いころは、バンド活動もしていてアナログシンセを使っていました。
廣井:と控えめに言ってますが、持っていたのはProphet-5ですよね!男の60回払いで手に入れた(笑)。
高塚:モジュラーシンセに手を出したのは今から3年前のことです。少しずつ揃えていったのですが、とにかくお金がかかるんですよね。やっていくと、やはりシーケンサを埋め込みたいな……とか思うようになったものの、欲しいものは5~8万円と結構高いし、面積もとる。それでいて1音とか2音しかコントロールできないんですからね。しかもそれだけだとCV/GATEのコントロールで終わってしまい、ドラムをコントロールしようとしたら、別にゲートシーケンサも必要となります。これをアプリで行えば多機能に展開できそうなので、絶対いけるはず、と思ったのです。
廣井:私は、大きいほど高そうに見えるのでMIDI端子も付けて8HPくらいをイメージしていたのですが「小さいことが絶対正義!」と諭され、4HPに収めることになりました(笑)。
高塚:モジュラーはケース自体が高いものも多く「土地代」もユーザーは気にしていますので。


高塚さんのご自宅にあるモジュラーシンセ

--最初から今の仕様がだいたいイメージできていたわけですね?
廣井:いいえ。こんな大掛かりな仕事になるとは、まったくイメージできてませんでした。最初は、アプリなど作るつもりはなく、うちはハードだけを作って、既存のMIDIアプリを自由に使ってもらえればOK、と思ってました。しかし実際に使おうとアプリを探しても、普通のシンプルなステップシーケンサーやリズム用のグリッドタイプ(格子状のUI)のシーケンサーが見つからないのです。さらにmi.1eの設定は別の独自アプリで送る必要があり、とても不便だと感じました。そんな状況の中、高塚さんから「アプリ作りますか?」と提案されて「それ、いいですね!」となったのです。その3日後くらいには、グラフィックの下書きができてました(笑)。そのデザインがカッコよかったので、以前から高塚さんとiOSアプリを開発されている水引さんにお声掛けしました。


インタビューに応じていただいたm1.1e開発メンバー

-- 仕様も高塚さんが担当されたとのことですが、特にこだわったことは何でしょうか?
高塚:仕様で拘った点は本体のカラーLEDとの関連性と、2ポートをペアで1Trackにすると割り切ったところです。これによって設定がシンプルになり、各トラックに違うアプリを割り当てた時の仕様も上手くまとめられたと思います。

 

-- 他に工夫された点などはありますでしょうか?
高塚:工夫した点は、もちろんiPadでコントロールすることでモジュラーにはない視認性や操作性を楽しんでもらえることですが、やはりモジュラーをメインで触って欲しいので、盛りすぎてない仕様でしょうか?

廣井:「パフォーマンスの主役はあくまでモジュラーで、アプリは仕込みがメイン」と開発当初から一貫してましたね。でもリアルタイムの操作性もかなり良いものに仕上がったので、ぜひアプリの方も積極的に使って欲しいですね。

iPadアプリのmi.1e connect画面はStep Sequencer

--mi.1e、2年前の楽器フェアのときに展示されていたのを見た記憶がありますが、あれがようやく製品化したということなのですね?
廣井:はい、予想以上に時間がかかってしまいました。楽器フェアのころに出したのは動作したばかりのプロトタイプで、製品化には程遠いものでした。


リズムを打ち込むのに便利なGrid Sequencer

-- 基板サイズが製品ではコンパクトになっているのですね。
高塚:試作基板は、奥行きが長すぎて、私のユーロラックケースに入りませんでした。最近のケースは、ライブなどの可搬性を重視して、底の浅いものが主流となってきています。試作基板は48mmほどあったのですが、40mmに収めたいと思いました。
廣井:最近のケースには、ユーロラック規格を提唱したDOEPFER社のモジュールでさえ大きすぎて入らなかったり、ということが起きています(笑)。技術的には両面基板を4層基板にしたり、オペアンプやCPUのパッケージを小さいものに置き換えたり、ということを行って40mmに収めました。


当初の試作機(左)と製品版(右)

-- 他にはどういった点が変わったのですか?
廣井:主にソフトの改善ですが、一番大きかったのは、発音タイミングが正確になったことです。試作機の頃はBluetoothのタイミングの曖昧さがそのまま出ていました。
高塚:CV/GATEって、デジタルにはない出音の鋭さを感じるんです。その気持ちよさにひかれて、私もモジュラーの世界にハマった感じなんですよ(笑)。でも、当初作ったmi.1eだと、その鋭さにmi.1eのシーケンスがついて来れない感じで、カッチリとした同期がうまく表現できておらず、モタったりバラついたりして気持ちよくなかったのです。
水引:Bluetooth MIDIは、iOSと通信を行うため、タイミングのジッター(揺れ)が発生します。それを回避するために、イベントが発行された時刻(タイムスタンプ)を見て、受信側の正確な時計でCV出力する仕組みが入っています。


ソフトウェア開発担当の水引孝至さん

--LFOも進化しているんですよね。
廣井:はい。プロトタイプでは、LFOの表示は8チャンネルありましたが、演算が追いつかず、2チャンネル以上同時に動かないし、周波数も100Hzくらいが限界でした。もともとMIDI-CV変換用のサブCPUでしたので、それほどハイスペックではなく、LFOまでは厳しいかも、という心配はありました。ただ、試しに入れてみた「手描きLFO」が思いのほか、ウリの機能となるほど評判が良く、LFOを外すわけにはいかなくなりました(笑)。
水引:基板を作り直すタイミングで、私からはサブCPUのグレードをあげることを提案していましたが、発売を急ぎたい、との理由でCPUは据え置きとなりました。
廣井:今回のサブCPUは、本来の能力を200%くらい引き出させられている状況です。ハッカーのような『裏技』があちこちで使われてます。8チャンネルのLFOが問題なく動くのは、当初のことを思うと奇跡のようで、お世辞抜きで『水引マジック』だと思っています。ともあれ、あの楽器フェアのタイミングで、不完全ながら、どうにか動くプロトタイプを展示できたのは良かったです。こちらから挨拶をしなければ、と思っていた楽器店さんはじめ、TFoMのHatakenさん、大須賀さんなど、日本のモジュラー界の大御所の方々から、とても的確なアドバイスを頂き、mi.1eの仕様に反映することができました。

高塚:国内のモジュラーシンセの世界って、まだまだ小さく、開発しているメーカーも、売っているお店も少数なんです。その意味でアットホームなところでもあるのですが、そうしたみなさんにもmi.1eを評価していただき、みなさんの協力、フィードバックがあって、いいものに仕上がってきた、という面も大きいんですよ。


8ch同時に自由に設定して出せるLFO

 

--水引さんは、DXiなどのiOSシンセの世界では有名な方で、DTMステーションでも何度も取り上げています。
廣井:他の商品の開発で、技術的なハードルを乗り越えられないことがあり、水引さんに相談をしたのがきっかけです。それ以来、技術コンサルタントとして関わっていただくことから始まり、ファームを書いていただいたり、mi.1eでは、2つのCPUのファーム、iOSアプリ、テストプログラムと全てを担当していただいております。事実上、まるで弊社のCTOを務めていただいたようでした。
水引:報酬1ドルの暫定CTOです(笑)


LFOは波形を手描きできる

--楽器フェアのときは0|8のみだったのが2|6を追加したのは、どうしてだったのでしょうか?
高塚:モジュラーシンセの初心者なら、まずはステップシーケンサーでオシレーターをコントロールする、というところからのスタートでもいいのですが、やはり中上級者になってくると、すでにシーケンスモジュールなどは持っていて、そのクロックに同期させるというのが、必須となってきます。同期させるには当然入力が必要になってくるわけです。
廣井:まさにモジュラーならでの解釈ですが、クロック入力は、単にテンポを合わせるだけの目的ではなく、クロック自体をスイングさせたり、何倍にも速くしたり、変調をかけたり、環境音をクロックに変換して突っ込んだり、とモジュレーションソースの一つとして、音作りの幅を広げるためにも使われます。この辺りは「モジュラーってアナログシンセを機能ごとにバラしただけでしょ」という考えから入っていくと、パラダイムシフトさせられる瞬間でもあります。
水引:とはいえ、クロック同期そのものは正確さが求められますので、入ってきたクロック信号をトリガーに、レイテンシーゼロで、CV/Gate信号として出力する必要がありました。


各CVを自由に設定でき、Sceneを使うことでシーンメモリ的な使い方もできるCV Fader

--それがデジタルの限界で、レイテンシーゼロは無理なのでは?と思いますが…
廣井:そこに水引さん考案の特許級の技術が入っています。
水引:当初、廣井さんからは「入力への対応くらい簡単でしょ!」といわれたのですが、外部からのクロックを受け取り、それに合わせて動作させるのはかなり難しいことなんです。最初、廣井さん、高塚さんにそれを説明してもなかなか理解してもらえずに困りました(苦笑)。「A/D入れれば大丈夫でしょ!」って。先ほどのタイムスタンプの話がありましたが、普通にクロックを受けて、それに合わせて普通に次の信号を出すと50msec近く遅れてしまって、話になりません。そこでとあるトリックを使い、ほぼゼロレイテンシーを実現することが可能になったんです。

 

--その特許級の技術ってのがすごく気になります!
廣井:そこは秘密です。と言いたいところですが、仕組みを簡単にご説明します。
シーケンスデータを1ステップ分だけアプリが先読みし、mi.1e本体にフィードさせて、入力クロックのエッジで間髪入れずにCV出力する、というものです。
水引:とはいっても、限界はあるんですよ。bpmが200くらいまでは大丈夫だけど、それを超えると追従できなくなってしまうんです。普通200を超えることはあまりないとは思いますが……。


Clock&Reset

--そのほかに、今回の開発で、苦労したのは、どのあたりでしょうか?
水引:BLE MIDI のタイムスタンプの実装です。BLE パケットに載ってくる必要最小限の情報から異常時の回復処理も含めた様々なケースに対応しなければならないためです。動き始めるまでは意外と早かったのですが、安定して動作するようになるまでにかなり手間がかかりました。


iPadからBluetoothでコントロールできるので多機能・高機能でもラックの場所を取らないのが大きいメリット

-- 今回は、入れたかったけど、見送った機能などは、ありますでしょうか?
水引:Step Sequencer のスケール設定機能です。今は、クロマティックスケールしか使えないので、簡単に、素早く、メロディックなパターンを作れるような機能があるといいなと思っています。
廣井:バージョンアップで対応したいですね。

 

--かなり面白い機材がこれによって完成したというわけですね。とはいえ、先ほどの話からしても国内需要というのは、まだまだ小さいわけですよね。
廣井:そうですね、日本は世界のマーケットの1/10とも1/00とも言われていますね。ただ、ここ数年は、このTFoM(Tokyo Festival of Modular)を始め、アーティスト、メーカー、ディーラー、ユーザー、みんながFace to Faceで交流できるイベントが盛り上がってきています。大物のギタリストがお忍び(?)モジュラーライブをしていたり、坂本龍一さんなどオピニオンリーダー的な方も使い始めていたり。日本もこれから盛り上がる予兆があります。


Cafe Deluxe #3でのみなさん

--いよいよ発売になったわけですが、競合はやはりユーロラックタイプのシーケンサや、場合によってはスタンドアローンのCV対応シーケンサなどになるのでしょうか?
廣井:機能的には競合しますが、「一筆描きシーケンス」や「手描きLFO」など、物理シーケンサーでは置き換えられない、mi.1eならでは使い方があります。また、アプリ次第で今後も、新たな機能やモジュールを追加できるかと思います。そのバージョンアップもiPadから簡単に行えます。そして本来のMIDI-CVコンバータとしての機能も充実させて、既存のMIDIアプリや物理MIDIコントローラにも対応したいと考えています。

 

--ありがとうございました。

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