楽器が弾けない人でもAR技術で誰でも演奏可能。相対性理論のライブでも使われたKAGURAがバージョンアップし、DAWとの連携も強化

KAGURAという、これまでにないユニークな日本発のAR楽器が世界中で使われだしているのをご存知ですか?これはカメラ付きのPCを利用し、ユーザーが手を動かしたり、体を動かすだけで誰でも簡単に音楽を演奏できるというもの。子どもから大人まで、楽器経験のない人、音楽知識がない人でもすぐに演奏ができるというのが大きな特徴となっていますが、昨年の相対性理論のライブ『証明III』で、KAGURAが使われたということでも、大きな話題になりました。

DTMステーションでも「楽器の革命だ!日本発の新発想楽器KAGURAがクラウドファンディング中」という記事で取り上げたことがありましたが、クラウドファンディング終了後、2017年3月に正式に発売となり、世界中に広がっているようです。そのKAGURAがこの度、初の大型バージョンアップをし(クラウドファンディング購入の人も含め、無償アップデート)、DAWともより連携しやすくなっています。また、このバージョンアップのタイミングで、キャンペーンとして通常価格の半額で販売されているので、改めて紹介してみたいと思います。

楽器経験のない人でもすぐに演奏できるAR楽器、KAGURAがバージョンアップ



KAGURAを知らないという方は、まず以下のビデオをご覧いただくと、どんなものなのか雰囲気はすぐにつかめると思います。

この女性が画面内に表示されているグラフィックで描かれたアイコンに手や足でタッチすると音が出たり、グラフィックのバーに触れていくとピッチが変化したりフィルターが変化しているのが分かると思います。

つまりカメラで自分を映した上で、動き回れば簡単に演奏ができるというわけなのです。「でも、タイミングとか、タッチするものを間違えたり、こんなにカッコよくはいかないんでしょ……」と思う方もいるかもしれません。でも、そこは大丈夫。ソフトウェア側がうまくリアルタイムにタイミングを揃えてくれるので、難しい練習なしに、演奏の楽しさだけを存分に味わうことができるのです。

スクリーンの中のグラフィックに触れていくことで音を鳴らすことができる
しかもタイミングはユーザーが自由に設定することもできるようになっているのも面白いところ。つまり、表示するアイコンごとにクォンタイズ値を設定できるので、アイコンに触れるタイミングが多少ズレても、演奏上はピッタリの位置で鳴るようになっているんですね。

さて、そのKAGURAがこの度、またバージョンアップをし、DTMユーザーにとっても、より面白いソフトウェアへと進化しています。今回のバージョンアップは、これまでアーティストやユーザーから受けたフィードバックを元に、クリエイター視点での機能強化とのことです。KAGURAはMacでもWindowsでも利用可能なハイブリッドのソフトウェアですが、今回のバージョンアップでDAWとの連携がより深まっているのはMac側です。一言でいえば、「macOS標準のMIDIの仮想ドライバであるIACドライバに対応した」ということになるのですが、この言葉ではピンと来ない方がほとんどだと思うので説明しましょう。

先ほどのビデオにもあった通り、KAGURAでは画面上のアイコンやバーに触れることでオーディオを鳴らすことができるのですが、オーディオだけでなく、MIDIを鳴らすことが可能になっています。つまりMIDIインターフェイスを経由して、外部にMIDI音源を接続しておけば、それらを鳴らすことができたのです。

各アイコンにMIDIのNote OnやCCを割り当てることができる
でも、昨今のDTM環境を考えると、外部のMIDI音源を使うというケースはあまりなくなっています。多くの方はDAW上で起動するソフトウェア音源を使っているわけですが、これまでKAGURAから、これらソフトウェア音源を鳴らすということができなかったので、せっかくMIDIに対応していても、あまり使い道がなかった、というのが実情でした。

ところが、今回の新バージョンではIACドライバにアクセスできることが可能になったので、Ableton LiveでもCubaseでもStudio OneでもLogicでも、自分の使っているDAWと連携させて使うことが可能になったのです。

Audio MIDI設定のMIDIスタジオを開くと、IACドライバというものがあるのでダブルクリックする

方法としては、あらかじめmacのユーティリティにあるAudio MIDI設定を開き、メニューから「ウィンドウ -> MIDIスタジオを表示」を選択します。すると、IACドライバというアイコンがあるので、これをダブルクリックします。今度はIACドライバのプロパティというのが表示されるので、「操作はオンライン」にチェックを入れるとともに、画面下の「+」を1回クリックしてポートを作成します。必要に応じて分かりやすい名前を付けておいてください。

「装置はオンライン」にチェックを入れて、「+」をクリックしてポートを追加する

以上で準備は完了です。KAGURAのほうはデバイス設定画面のMIDIのところで出力デバイスに、いま設定したIACドライバをセットしておけばいいのです。

実は冒頭のビデオは、このIACドライバも活用しながら、Logic Proを使って制作していたとのこと。そのメイキングビデオも公開されたので、以下を見ると、参考になりそうですね。

このビデオ内にもありましたが、あとは、KAGURAのシーン設定の画面において、各アイコンで鳴らすMIDIのパラメータをセットすればいいわけです。ここで各アイコンに設定できるのは、音を鳴らすためのノートオン情報だけではない、というのも大きなポイントです。タッチして、ピアノで「ド」と鳴らすとかドラムのシンバルを鳴らすといったことは、ノートオン情報でできるわけですが、KAGURAの画面を見るとNote OnのほかにControl Change、Contorl Change Blockなるものがあります。

MIDIのコントロールチェンジ情報を割り当てることもできる
Control Changeとは何か、についてここでは詳細を割愛しますが、ボリュームを動かしたり、モジュレーションを動かしたり、ビブラートを調整したり……といったことを可能にするものです。これによって、ソフトウェア音源のフィルタをコントロールする、といったことも可能なわけですが、DAWと連携するということは、単にソフトウェア音源を鳴らすためだけではないのです。そう、DAW自体をKAGURAからコントロールすることが可能になるのです。ここで以下のAbleton Liveとの連携シーンのビデオをご覧ください。

KAGURAからの操作で、Liveを自在に鳴らしていくことができるのです。まさにLaunch PadのようなことをKAGURAでできるわけです。では、これら従来のMIDIコントローラを使うのとKAGURAを使うので、何が違うのでしょうか?

最大のポイントは、MIDIデバイスで操作する場合、下を向きながら操作をするしかないのに対し、KAGURAなら前を向きながら操作ができるという点。ライブステージにおけるパフォーマンスを考えると大きなメリットとなりますよね。また、KAGURAなら画面内でパッド=アイコンの位置を自在に調整できるので、オリジナルのコントローラを簡単に作れてしまうというのも大きな魅力だと思います。

ところで、ここまで読んできたWindows読者の中には「なんだ、Macだけなのかよ」と不満に感じている方もいるかもしれません。確かに、今回の新バージョンで強化されたのはMacのIACドライバ対応なのですが、Windowsユーザーであれば、もともとDAWとの連携は可能だったんですよ。

Windowsの場合は仮想ドライバとしてフリーウェアのloopMIDIを利用する

そのためにはMacのIACドライバに相当するソフトをインストールしておく必要があります。いくつかのものがありますが、一番使い勝手がいいのは、過去にDTMステーションでも何度か取り上げたことのあるLoopMIDIというフリーウェア。これをインストールし、画面下の「+」をクリックして1つMIDIの仮想ドライバを作っておけば、あとは各DAWと自由に連携することができるので、安心してくださいね。

デバイス設定画面のMIDIタブで、loopMIDIを選択すればOK

もちろん、KAGURAの新バージョンはMacのIACドライバ対応だけではありません。Undo/Redoに対応したり、アイテムを複数選択して一括編集が可能になったり、ビジュアルエフェクトを搭載するなど、さまざまな強化が図られているので、まずはいったんどんなものなのかを試してみることをお勧めします。

このようなビジュアルエフェクトが簡単に使えるようになった

現在KAGURAは製品版としてフル機能を装備するKAGURA Pro、編集機能は持っていないけれど演奏を楽しめる無料のKAGURA Playerがあります。そしてKAGURA Proのほうも制作した楽曲の保存およびプレイリストの作成はできないけれど、ほぼすべての機能を試すことが可能な無料体験版が配布されているので、これを使ってみるといいと思いますよ。気に入ったらライセンスキーを購入することで正式なPro版にアップグレードできる仕掛けになっています。


KAGURAには無料のKAGURA Playerと製品版のKAGURA Proがある

なお、7月から「KAGURAアーティスト育成プロジェクト」なるものがスタートし、現在KAGURAを使った音楽パフォーマンスの募集がはじまります。これはKAGURAでパフォーマンスする模様を動画に収録して送ると、優秀者は福岡(9月22日)と東京(9月29日と30日のどちらかで調整中)のステージで演奏ができるというものです。

「KAGURAアーティスト育成プロジェクト」がスタート
また、それに合わせてKAGURAを使ったパフォーマンス制作をしてみたい方向けの無料セミナーが行われるとのことなので、興味のある方は参加してみてはいかがでしょうか?
【関連情報】
KAGURAサイト
KAGURAアーティスト育成プロジェクト
KAGURAパフォーマンスセミナー in Tokyo

【価格チェック&購入】
◎KAGURAサイト ⇒ KAGURA Pro

【無料ダウンロード】
KAGURA Player
KAGURA Pro体験版
loopMIDI

Commentsこの記事についたコメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です