• 人選、お金、権利、クオリティ…、ソングライターが直面する編曲問題を解決する編曲家チーム、Super dolphin誕生

ソングライターにとって編曲は悩ましい問題です。自分でいいアレンジができる人であれば問題ありませんが、編曲家に依頼するとなると、そもそも誰に頼めばいいか、いくら費用がかかるのか、実際イメージ通りの曲に仕上がるのか、できあがった曲の権利は誰のものになるのか……など気になる問題もいっぱいです。同様に編曲家にとっても、鼻歌と歌詞が届いただけで編曲に入る前の作業もいっぱい、オーダーがいい加減でやり取りがやっかい、納品したのに曖昧な理由で全面的なリテイクを要望してくる、お金が振り込まれない……など難しい問題があります。

そんな中、音楽活動支援サービス、Frekul(フリクル)の新サービスとして、匿名編曲家チーム、Super dolphinを立ち上げるとともに、ソングライターと編曲家を仲介するビジネスをスタートさせました。これにより、ソングライター側が抱える編曲オーダーに関する問題と編曲家が抱えるさまざまな問題を同時に解決することができるできるというのです。本来、ソングライターと編曲家の取引が成立するには、音楽的センス、技術レベル、報酬、権利、スケジュール、ブランディングなど多くの点について一致させる必要がありますが、Super dolphinという形で仲介することで、これらをすべてクリアにする、とのこと。実際、どのようにして多くの問題を解決するのか、本当にトラブルは起きないのか、そもそもそんな仲介ビジネスなど成り立つのか、気になることもいっぱい。そこで、Frekulを運営するワールドスケープの取締役である海保けんたろーさんに、このSuper dolphinとはどんなものなのか、オンラインミーティングの形でお話しを伺ってみました。

編曲問題を解決する匿名編曲家チーム、Super dolphinがサービススタート

ソングライターが編曲を外注する際の問題とは

--Super dolphinができた背景について教えてください。
海保:Frekulというプラットフォームを運営している中で、我々がより音楽家の方々のためにできることはなんだろうと常に考えていました。たとえば、以前DTMステーションでも「これってメジャーデビューのチャンス!?自分の作品をレコード会社や音楽事務所に評価してもらえる「スマートオーディション」とは」で紹介していただいた、スマートオーディションをはじめ、いろいろなアイディアを膨らませ、実際に新サービスとしてスタートさせています。Super dolphinをスタートさせるきっかけは、Frekulに登録してくださっている方のリアルな悩みでした。さまざまな悩みがある中で、特に編曲問題が浮かんできて、これを解決したいと思ったのです。おそらくソングライターの半分くらいは編曲を誰かに依頼していると思うのですが、満足いくことは少なく、トラブルが起きることが多いです。ギターと歌だけのシンプルな曲に、ドラム、ベース、ピアノ、そのほかの楽器の音を入れて、聴き応えのある音楽に仕上げる編曲という作業は、アーティスト側はもちろん、編曲家の負担もたくさんあります。

ワールドスケープの取締役の海保けんたろーさん

ー-ソングライターの問題って、もう少し具体的にはどういうことですか?
海保:たとえば、Aさんというシンガーソングライターの方が居るとします。ギター+歌という形で活動をしているアーティストです。オリジナル楽曲を作るために自宅で、ギターを弾きながら、鼻歌でメロディを作っていきます。メモとして、スマホに録音してストックをしている状態です。その後、その録音を元に歌詞を作成していきます。弾き語りの状態で、ライブパフォーマンスを行ったり、SNSで投稿したり、自分のレパートリーとして新しく楽曲が加わりました。そして、音源にしようとしますが、ここで編曲という問題が出てきます。Aさんは自分で編曲をすることができないため、誰かにお願いします。過去にツテで知り合った編曲家に依頼してきましたが、実は色々と不満があったり、自分の好みではない編曲に仕上がってしまったり、約束していた納期に完成しなかったり、曲の権利についてトラブルになってしまったり……。なので、編曲家をネットで探してみることにしました。ただクオリティが高くても音楽的センスが合うとは限りませんし、ギャラの金額も明示されていないことがほとんど。いい人が見つかっても、納期が守られなかったり、後から権利や支払いについてトラブルになってしまう心配もあります。ですが、誰かに依頼しないことには、この楽曲をリリースすることができない。というケースが多々あります。仕方なく編曲の依頼を出しますが、満足することが少ないのが実状です。

 

従来の作曲~編曲までの流れ

1. メロディを作る
Aさんはシンガーソングライターです。自室でふと良いフレーズを思いついたので、ギターを手にとって鼻歌を歌ってみます。繰り返し歌っているうちにサビのメロディができあがり、続いてAメロ、Bメロも完成しました。忘れないようにスマートフォンに録音しました。まだ簡単なギター+鼻歌のような状態ですが、素敵な曲になる予感がします。

2. 歌詞を作る
数日後、スマートフォンに録音した自分の歌を聴きながら歌詞を考えてみることにしました。メロディがもつ雰囲気からイメージを膨らませて、徐々に言葉を当てはめていきます。何度も歌いながら、納得のいく歌詞を付けることができました。きっとリスナーの心に残る1曲になるはずです!

3. 編曲について考える
問題はここからです。Aさんは自分で編曲をすることができないため、誰かにお願いしなくてはなりません。編曲とは、現状ギターと歌だけのこのシンプルな曲に、ドラム、ベース、ピアノ、その他の楽器の音を入れて、聴き応えのある音楽に仕上げる作業です。これまではツテで知り合った編曲家に依頼してきましたが、実は色々と不満があります。自分の好みではない編曲に仕上がってしまったり、約束していた納期に完成しなかったり、曲の権利についてトラブルになってしまったり、などの経験があるからです。

4. 編曲家を探す
ネット上で編曲家を探してみましたが、なかなか良い人が見つかりません。クオリティが高くても音楽的センスが合うとは限りませんし、ギャラの金額も明示されていないことがほとんどです。いい人が見つかっても、納期が守られなかったり、後から権利や支払いについてトラブルになってしまう心配もあります。しかし誰かに依頼しないことには、この曲をリスナーの耳に届けることができません。Aさんはどうしたらいいのでしょうか?

編曲家側が抱えるリスクや煩わしさ

--ただ、これってケース・バイ・ケースだし、ソングライター側、編曲家側双方に問題がもありそうですよね。
海保:そうですね、実際に編曲家からみた問題点もよく耳にします。たとえば、弾き語りのデータが送られてくるとして、酷く音質の悪いデータだったり、適当に録音したものだからBPMすら一定じゃなかったり……とデータの問題もよくあります。一方で、依頼される曲のイメージのすり合わせができず、何度もリテイクの要望を受け、場合によってはすべて最初からやり直し……なんて話も聞きます。一方で、事前に相談がなかったにも関わらず、すべての権利を主張される…なんてこともあれば、支払いが行われず、督促業務で無駄な時間を費やした……というようなこともあるようです。個人間でのやり取りがメインとなってくるので、編曲家も編曲にすべての力を注げるわけではなく、事務作業が仕事の半分以上を占めることもしばしばです。

--こういった問題を解決しようというのが、Super dolphinということなんですね。ちなみに同じようなサービスはあるのですか?
海保:われわれも調べてみたところ、海外では、近いサービスもあるようですが、日本では見つかりませんでした。知り合いでない人に頼むという意味では、クラウドソーシングサービスがありますが、なかなか合う人を見つけるのが難しいのが、実状です。

仕事の流れをルール化し、価格は一律88,000円

--編曲の相場は実際どの程度なんでしょう? 
海保:それこそクラウドソーシングは、本当にピンキリで、5,000円で編曲します、という方もいますね。メジャーであれば最低15万円くらいから、インディーズなら5~10万円ぐらいが相場ではないでしょうか。

--Super dolphinは1曲一律88,000円という価格設定で、リーズナブルだと思うのですが、それで実際、どんなことを行っていくのですか?
海保:当社はIT企業なので、まず最初にアイディアでとして上がったのは、編曲プラットフォームとか編曲Webサービスです。ソングライターが元となる曲をアップロードすると、すべてAIなどで自動編曲を行う……というような。ですが、ソングライター側のニーズを考えると、工業的に編曲して満足行くものができるとは思えません。そこで、われわれがソングライターの要望を聞き取り、定型化したうえで、それにマッチした編曲家に頼むということがいいのでは……というように方向性を大きく変えていったのです。

一般的な編曲家 Super dolphin
価格 個別に交渉 一律88,000円
手間 かかる 最小限
曲の権利 個別に交渉 ほぼ譲渡
クオリティ さまざま 高品質
キャンセル 不可能 可能

--具体的にソングライターと編曲家の間に入ってどんなことを行うのでしょうか?
海保:まず音楽を作ること以外のお金や権利など、あやふやになりトラブルになりがちなところは、ルールを明確にしています。そして、編曲を行う際には、弊社のヒアリングスタッフがソングライターと編曲家の間に入り、曲のイメージをしっかりさせるということを行っています。具体的には、まず原曲や、編曲のイメージに近いリファレンス曲を送ってもらい、その後ZOOMにて、どういう編曲にしたいのかをしっかり面談しています。この面談の内容は、その後議事録を作成し、こういうイメージで、展開はこうで、楽器の編成はこうでしたよね……など、編曲する際に必要な要素の確認を行います。アーティストのフワッとした、イメージを言葉に落とし込んで、編曲家に伝えるということをしています。

Super dolphinのサイトでメロディ音源のアップロードなどを行っていく

--双方に問題があるのを解決するために仲介するのは素晴らしいですが、かなり手間もかかりそうです。これでビジネスとして成り立つのでしょうか?
海保:実際のサービスのリリース前にFrekulのアーティスト向けに約10曲ほど試行をしました。そこで、自動化できるものと手動で行うべきものが分かり、力を掛ける必要がない部分は、テクノロジーを使うことで、リーズナブルな価格に抑えることができました。何より、そのテスト運営で、アーティストと編曲家の双方、ほぼ100%の方が満足してくださり、トラブルも少なく進めることができ、これなら行ける、と確信したのです。リテイクも内容を具体化していくことで、キャンセルリスクも軽減できました。たとえば「なんか違う」という曖昧な表現で全面リテイクするのではなく、ヒアリング担当がしっかり内容を具体化していくのです。たとえば「では、このイントロでのピアノの音色をシンセパッドにしていけばいいですね」というようにハッキリさせることで、編曲家の負担も少なく、アーティストも満足する結果になったのだと思います。ちゃんとアーティストのニーズを聞いて、たとえばハードロックのギターが必要な曲の場合は、それが得意な編曲家に頼むことで、お互いのストレスなく、うまくいくと感じています。大幅なリテイクがないようにハンドリングしていくことが重要だと考えているので、ヒアリングの部分は大切に考えています。

--メニューを見るとキャンセルもできるみたいですが、全部キャンセルになってしまったら、大赤字になってしまうのではないでしょうか?
海保:しっかりとしたヒアリングを行うことで、キャンセルはレアケースになるはずです。キャンセルというメニューを用意することで、理不尽なリテイクをキャンセルに持っていくこともできるので、編曲家の負担を減らすことにもなっています。もし仮にキャンセルされても編曲家には弊社から報酬はお支払いするという仕組みを取っております。一方で、キャンセルされてボツになってしまった曲もトラック自体は弊社が買い取り、弊社がで再利用ができるので、問題はないと思っています。トラック自体そのままに、メロディを変えてしまえば、別の楽曲にもなるので、これをコンペに出すこともできるだろうし、オーディオストックなどの音楽素材サイトで公開するなど、展開はいろいろ可能なので、うまくバランスを取っています。

Super dolphinに編曲を依頼する流れ

--実際にSuper dolphinへ依頼するとどのように進んでいくのでしょうか?
海保:現状としては、Super dolphinのページから申し込みを行います。ウェブページ上で、まず編曲してほしい楽曲の音源をアップロードしていただくとともに、リファレンスとなりそうな曲の曲名やアーティスト名、YouTube URLなどの情報を送っていだきます。それから、ZOOMの日程候補日を選択していただき、その後実際にZOOMでの面談を行います。面談では詳しくすり合わせを行い、後日議事録をお送りいたします。そして議事録を確認していただき、問題なければ、編曲を依頼するという形になります。なお、ZOOMでの面談内容をまとめたものを確認していただくところまで、無料で行います。実際に編曲を依頼するとなった際にお支払いいただき、われわれがそれにマッチした編曲家をアサインしたうえで、編曲家が作業を開始します。またリテイクが生じる場合は、メールなどを通じて、細かくすり合わせていく形です。

Super dolphinでの編曲の流れ

--編曲家にとって、Super dolphinに参加することのメリットはどういうことになりますか?
海保:まずは、煩わしい交渉などは弊社が負担するので、編曲に集中できるということが挙げられます。また、キャンセルの場合でも、お話ししたように報酬はきちんとお支払いするので、リスクも少ないです。編曲家のみなさんも忙しいとき、比較的余裕があるときなど波もあると思います。なので、余裕のあるときだけSuper dolphinに参加して仕事をするという利用法をしていただければと思っています。またSuper dolphinでは、依頼をチームとして受けるので、苦手ジャンル要求が来ず、得意なものだけ手掛けることができるのも大きなメリットだと思います。一方で、名前のある編曲家の方などの場合、無名のソングライターの仕事を請けているということを知られたくない……なんていうケースもあると思います。でもSuper dolphinは匿名のチームとしているので、ブランド的リスクもありません。煩わしい部分は、弊社が負担するので、そこはメリットに感じていただけると確信しています。Super dolphinへ参加してくれる編曲者も募集しておりますので、ぜひご連絡いただければと思います。

Super dolphinに編曲を依頼することで、これまでの多くの問題が解決しそう

--双方にとって、嬉しいサービスになりそうですね。今後、ここからヒット曲が生まれてくることを期待しています。
海保:Frekulを使ってくださる方やインディーズアーティストの方の音源を聴いたときに、正直もったいないと思うことが多々ありました。声やメロディがいいのに編曲がしょぼくて、後少しブラッシュアップされれば、バズるかもしれないと思える曲も少なくありません。今アーティストがどのようにヒットするか分からない時代です。実際、テスト運営した際に編曲されたことによって、すごく感動する作品に生まれ変わったことがありました。もしかしたらSuper dolphinによって、新しいヒットが出る手助けになったり、アーティストの突破口になるのではと感じています。

--ありがとうございました。

【関連情報】
Super dolphinサイト