シールを貼ったらスピーカーの音がよくなる!? 産総研の実験データからも明らかになったAdPower Sonicの威力

先日、レコーディングエンジニアの森元浩二さんから、「ぜひ、一度試してもらえませんか?」と言われ、AdPower Sonicなるシールをウチのモニタースピーカーに貼ってみました。実際、森元さんが自宅にいらっしゃり、そのシールを貼るというか、バスレフポート(スピーカーの穴)にちょっと入れてもらったところ、明らかに音が良くなった感じがして驚いたのです。これは記事にして紹介してみたいと思う一方、ホントだろうか?何か騙されてないか?と少し自分の耳を疑ってみたりもしました。

そこで森元さんに、「何か客観的なデータってないですか?」と聞いたところ、「いま公的研究機関である産業技術総合研究所で実験・測定を行っているところなので少し待ってほしい」と言われたのです。産総研から客観的な結果が出てくれば、それは間違いなさそうだけど、ホントに違いが分かるのだろうか……と思っていたところ、先日森元さんから「明らかな違いが出た」という連絡をもらったのです。実際、どういうことなのか、このAdPower Sonicを使った実験を行い報告書をまとめた産総研の生命工学領域 バイオメディカル研究部門の細胞・生体医工学研究グループの添田喜治さんに測定結果に関する話を伺うとともに、製品の開発・発売元であるアドパワー・ソリューションズ 代表取締役の冨澤直子さん、そしてエンジニアの森元さんに製品開発の経緯などについてインタビューしてみました(以下敬称略)。

スピーカーに貼るだけで音質が向上するというAdPower Sonicの威力はホンモノなのか!?

今年の夏前からSNS上で、森元さんがいろいろなエンジニアさんや作曲家さんの元に行って、音が良くなるというシールを貼っていたのを見ていたので、何となく気になりつつも、怪しい……と思っていたのです。そうした中、森元さんから連絡をいただいたので、「ついに!」とワクワクしつつも、まあ、そんな大したものではないだろう…と思っていたのです。

うちのDTM環境、そんな大したものではないし、壁に吸音材を貼ったり…なんてこともしてないので、その旨は事前に伝えておいたのですが、森元さんからは「ぜひ、ごく普通の環境で試してみたい」とのお返事であり、ウチに来ていただいたのです。早速…といって試してみたのは15mm×20mmくらいのマグネットシートのようなものを、長年使っているYAMAHAのMSP 5 STUDIOの小さな穴に1つずつ、計4つを入れただけ。

森元さんが持ってきた黒いシール?AdPower Sonic

これがAdPower Sonicなるもので、もちろんマグネットシートではないし、磁性を帯びたものでもありません。シールにはなっているけれど、このときはバスレフポートの穴にフィットするように少し曲げて、入れただけ。これの有り無しで、音を比べてみると……、曲を再生して3秒で、「あれ?」という違いを感じました。このシールを入れると、なんか音がクッキリした感じになるのです。

MSP 5 STUDIOのバスレフポートにとりあえず置いてみたら……

森元さんは「静電気の除去による効果だ」という話はされていましたが、どうも納得はいかず…。でも「お土産に」とこのシールをいただけてしまったので、やはりこのほうが音が気持ちいいので、その後もそのままにしています。そうした中、先日、産総研の結果が出た、ということで、いろいろとお話を伺ってみたのです。

AdPower Sonicインタビュー

--アドパワーさんは、もともとクルマ用の燃費向上シートを出されていたんですよね?今回AdPower Sonicを発売した経緯を簡単に教えていただけますか?
冨澤:私たちはもともと投資ファンド関連の会社を作って仕事をしていたのですが、リーマンショックをキッカケに、環境に関する技術を海外展開できないか…と模索していました。主にシンガポールをベースに、廃棄物を処理してレンガを作るプラントなど、いくつかのプロジェクトを動かし、シンガポール政府や企業に紹介した結果、基本合意までいけても、事業が動き出すまでには時間がかかってしまいます。そこで、もっとストレートに貢献できる方法はないか……と探すなか、排気ガスを抑制する方法にたどり着き、内部でいろいろと研究した結果、特殊顔料を使用した第1層、特殊合金による第2層、薄くて高性能なグラスファーバーの第3層で構成される、3層構造のラミネート状のシールを使うことで、行けるということが2014~15年ごろに分かってきたのです。

クルマの燃費向上・排ガス削減用途で発売されているAdPower

--シールを貼ると排気ガス抑制がされるとか、燃費が上がる……って、失礼だとは思いますが、それもなかなか怪しい製品に思えますよね。
冨澤:やはりオカルト商品のように言われましたが、効果があることには確信を持っていたので、第三者機関による検証における効果の見える化、可視化や社会的な実績を積みあげることが重要だろうと2017年に特許を取得するとともに、日本自動車輸送技術業界という公的機関で、排ガスや燃費の向上するというデータを取りました。さらに2019年から東海大学工学部機械工学科と共同研究を開始し、昨年「吸入空気の流れに影響する静電気帯電・放電メカニズムの研究」という学術論文を発表させていただきました。簡単にいうと、静電気を抑制することで空気の流れが変わり、車両にもよりますが吸入空気量が7~8%増えるという結論がでたのです。それが燃費向上や排ガス抑制に効果につながるというわけなのです。

東海大学との共同研究の結果をまとめ、自動車技術会2021年度秋季大会学術講演会で発表した学術論文

--なるほど、世の中にあるいろいろなオカルト商品とは一線を画す、しっかり学術機関とも連携しながら進めてきた製品なのですね。それが、どうしてオーディオに?
冨澤:昨年秋に、森元さんから連絡をいただいたのがキッカケでした。それまでスピーカーに取り付けるなんていう発想はなかったのですが、森元さんからそうした話を伺い、取り組んでいきました。

アドパワー・ソリューションズ 代表取締役の冨澤直子さん

森元:昨年、広告でAdPowerを知り、クルマに貼ってみたところ、確かに効果があり、燃費が上がりました。すごくいい結果なので、これはもしかして……と思ったんです。試しにGenelecのバスレフポートに貼ってみたら、音が明らかによくなった。ただ、クルマ用だから粘着力が強いし、赤い色はいただけない(笑)。そこで「粘着力がそこまで強くなく、赤くないのは作れないですかね」とアドパワーさんのホームページのお問い合わせのところから連絡してみたところ、すぐに返事をいただけたんですよ。

エイベックス・エンタテインメントprime sound studio formのチーフエンジニア、森元浩二さん

--でも、どうして燃費がよくなるから、音がよくなる…という発想が出てきたのでしょうか?
森元:4~5年前でしたかね、トヨタがアルミテープを貼ることで静電気を抑制し、クルマの走りをよくするというのを知って、静電気を抑制して空気の流れがよくなるから、走りが良くなるのであれば、これはスピーカーにも効果があるのでは……と思い、バスレフポートに貼って実際に試してみたんですよ。そうしたら、そんなに効果はなかった。そんな中、今回クルマで試したAdPowerがいい結果を出してくれたので、ダメ元で試してみたところ、明らかに良くなったんですよね。それでアドパワーさんに連絡をしてみたのです。

--モノとしてはクルマ用とスピーカー用、どんな違いがあるのですか?
冨澤:基本的にほぼ同じです。顔料を黒に変えたのと、シールの粘着力を変えたくらいです。この顔料で問題ないかなど、森元さんと相談をしながら、製品化を進めてまいりました。クルマ用が1枚のシートなのに対し、今回AdPower SonicにはL、M、Sと3種類の製品を用意させていただきましたが、いずれも左右用ということで、2枚ペアでの製品となっています。

AdPower SonicはL(36×98×0.5mm)、M(27×75×0.5m)、S(16x32x0.5mm)の3種類がある

--実際、自分でも音の違いを確認したのですが、どうしてこれで音が良くなるのか、納得いかない面もあります。ぜひ、ホントに違うのかをデータで見れるのか、また、音が変わるのはどういう理由なのか、教えてもらえますか?
森元:当初、知人にも相談しながら、いろいろな測定方法を模索していたのですが、しっかりした研究機関に見ていただくことがいいだろうということで、産総研に調査をお願いすることになったのです。
冨澤:いま産総研の添田さんとオンラインで繋がったので、ぜひ詳細を聞いてみてください。

オンラインミーティングの形でお話を伺った産総研の添田喜治さん

--添田さん、今回、このAdPower Sonicを使った測定を行い、違いが出たとのことですが、具体的にどんなことをされたのか教えていただけますか?
添田:今回、Genelecの8020CとYAMAHAのMS101IIという2つのスピーカーで実験を行いました。実験を行ったのは無響室と防音室、それに居室のそれぞれ。防音室というのは、みなさんの言われるスタジオだと思っていただいて結構です。居室は普通の部屋というか、私たちの職場で行ったものです。ここにスピーカーを設置するとともに、スピーカー正面、70cmの距離のところにダミーヘッドマイクを置いて左右の音を測定するというもの。ここで大きく2つの実験を行っています。一つはインパルス応答解析といってインパルス信号をスピーカーから出して、その結果を見るもので、もう一つはこうした信号ではなく普通に音楽を鳴らすというものです。具体的にはKing of Blue、Nightfly、Dvorak、Les Miserablesのそれぞれの楽曲と、川のせせらぎを捉えた自然音の5つです。

スピーカーの前方70cmの距離でダミーヘッドマイクを設置して測定

--測定の結果、どんな解析をしたのですか?
添田:自己相関と両耳間相互相関(IACC=Inter Aural Correlation Coefficient)のそれぞれの解析をおこなっています。自己相関とは信号とその時間遅れ信号の相関を見るもので、IACCは左耳と右耳の信号の相関を意味するものです。その結果、まず無響室においてはAdPower Sonicを貼っても貼らなくても差異は見られませんでした。しかし、防音室と居室においては、AdPower Sonicを貼ることでIACCが増大することが見て取れました。Genelecのスピーカーのほうが顕著で、YAMAHAよりもより大きな効果がでていますね。

自己相関関数と両耳間相互相関関数(IACC)

--IACCが増大するというのはどういうことのあのでしょうか?
添田:IACCが増大するということは左右で聴こえてくる音の違いが少なくなるという意味なのですが、その結果、音像、定位感が明確になる…ということです。

4つの音での測定をした結果、AdPower Sonicを取り付けたほうがIACCが大きくなる傾向がみられた

--音源によって違いがあったりはしないのですか?
添田:今回、ジャズやクラシック、自然音など、さまざまなもので試してみたわけで、結構違いが出るのでは、と予想していたのですが、実際試してみると、結果はどれも同じです。一様に効果があるということですね。

平均値でもAdPower Sonicを付けたほうがIACCが大きいが、無響室では差はなく、Genelecのほうがよりハッキリ傾向が出る

--でも、どうしてこのような結果が起きるのでしょうか?
添田:その点については、先日森元さんともいろいろ議論をしましたが、AdPower Sonicを貼ることで、空気の流れがよくなる結果、壁にぶつかって反射する音の波形の崩れが少なることが原因ではないか、と考えています。反射して戻ってくる音の濁りが少ない、雑味が少なくなる結果、左右の耳に到達する音がよりハッキリして、結果的に音像が明確になる、と。人間が音をどのように知覚するかは見えにくものですが、計算上、こうした測定結果に近いメカニズムで人間が音を捉えているのではないか、という知見が我々にもあるので、今回このように結論付けました。

バスレフポートがある場合、バスレフポートの内側に取り付ける

--このAdPower Sonicの効果をうまく引き出すには、スピーカーのどの位置に、どのように貼るのがいいのでしょうか?
森元:バスレフポートがあるタイプはポートの中に取り付けるのが効果的です。密閉型やポートがないタイプはスピーカーの正面に取り付けるのがいいようですね。ウーファーに近い部分がいいです。中にはスピーカーの上面に追加装着することで、より効果を感じるケースもありますが、これは好みにもよるところだとは思います。一度仮止めして音を確認した上で違いが感じられるところに固定するのがいいので、製品を入手したら音を聴きながら、いろいろと試してみてください。

取材したエイベックスのスタジオのモニターにもAdPower Sonicが取り付けられていた

--モニタースピーカー以外、もっと多くの人に身近なBluetoothスピーカーとかでも効果があったりするのですか?
森元:そうですね、小さなBluetoothスピーカーなどでも、かなりわかりやすい効果が得られます。ただ、実はスピーカーに限らず、オーディオ機器、楽器全般でもAdPower Sonicの効果が得られるのも面白いところです。たとえば、ギターアンプやベースアンプのスピーカーキャビネットに取り付けるのも有効ですし、ドラムシェルやリム、ドラムミュート、バスドラムインパクトパッドなどに取り付けると、やはり静電気の抑制によって、大きく音が変わるので試してみる価値はあると思います。そのほか、レコードプレイヤーの筐体やレコードの盤面(スタビライザー)などでもテストしてみたところ、いい効果が得られたので、興味のある方は試してみると面白いと思います。

スピーカーだけでなく、ドラムやギター、アンプなどに取り付けても効果があるという

--ありがとうございました。

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