多機能で高性能な日本のデジタルシンセがELZ_1 playとして復活!開発者が語るシンセにかける熱い思い

日本のベンチャー楽器メーカーであるSONICWAREが2018年1月にNAMM Showで発表し、2019年にワールドワイドでの発売となった、小さなデジタルシンセサイザ、SONICWARE ELZ_1。DTMステーションでも以前紹介したことあった、このユニークで、非常に多くのシンセサイザ方式を盛り込んだELZ_1は、コロナや半導体不足の影響に直面し、しばらく生産が止まっていました。しかし、今回新バージョンのELZ_1 playとして復活させることが決まった、というのです。しかも、ただ復活するだけでなく、ELZ_1のコンセプトを踏襲した上で、ソフト、ハードともに進化。

そんなELZ_1 playの復活は、SONICWAREから発売されるわけでなく、開発者であり、SONICWAREの代表取締役でもある遠藤祐@yu_endo)さん個人のプロジェクトとして展開するとのこと。生産するのに必要な工場の最小ロット数でもある200台を作る、ということまでは現在決まっており、そのプレオーダー受付が本日より開始されています。そこで、改めてELZ_1とはどんなものだったのか、今回のELZ_1 playは従来機と何がどう違うのか、なぜクラウドファンディングのサービスを使わないのか、なんでSONICWAREでなく個人で復活させるのか……など、その熱い思いについて、遠藤さんにお話を伺ってみました。

半導体不足から生産停止になっていた超強力なデジタルシンセ、ELZ_1が大きくパワーアップし、ELZ_1 playとして誕生

世界的な半導体不足でELZ_1が生産停止に

インタビューに入る前に、まず新製品であるELZ_1 playの動画があるので、こちらをご覧になってみてください。どんなものか、その雰囲気が分かると思います。

ーーELZ_1の発表はNAMM Showでしたよね。NAMM会場近くのホテルですぐに記事を書いたことを覚えています。
遠藤:最初の発表が2018年1月のNAMM Showでした。藤本さんには、そのタイミングで「日本の小さなガジェットシンセ、ELZ_1がNAMMでお披露目!」という記事を書いていただきましたね。もともとELZ_1には、FMシンセエンジンのように一般に広く知られるエンジンばかりでなく、まったく新しいユニークな音源をいくつか搭載していて、実験的な試みが強い製品といった側面がありました。またSONICWAREから発売した、初の自社製品ということもあり、かなり思い入れの強い存在でもあります。独自で考えた、SiGrinderやDNA Explorer、SAND FLUTEなどのシンセエンジンのアイデアやコーディング実験から開発がスタートし、実験的なアプローチを経て、最終的に楽器として使えるレベルに仕上げたので、多くの思いが詰まった製品でした。

2018年のNAMM Showでの遠藤さんとELZ_1

ーー一方SONICWAREには、LIVENシリーズがありますが、これとELZ_1は位置づけとして何が違うのでしょうか?
遠藤:ELZ_1は、私自身が考えた音源を搭載していたり、実験的な要素を多く含んでいるシンセサイザを基本とするコンセプトである一方、LIVENシリーズは8bitサウンドやウェーブテーブルシンセ、FM音源など、1つの音源に絞った上で、音源名を見ればすぐに分かる馴染みのあるエンジンと、直感的に操作できるシーケンサを組み合わせたグルーヴボックスよりのラインナップとなっています。

新モデルのELZ_1 play(上)と旧モデルのELZ_1

ーーそのELZ_1が一般にも販売され、LIVENシリーズもラインナップを増やす中、半導体不足が騒がれだしたのは、2020年ごろからでしたよね。
遠藤:2020年の年末ごろから深刻化していき、社会的にも大きな注目を集めました。そのあと、ずっと半導体を入手できない状態が続き、製品の心臓部の部品であるDSPを買うにしても、購入から1年後に届くといった状況に。高いリベートを払えば、入手することもできたので、すでに調達ができていた部品を利用できるSmplTrekやLIVENシリーズにリソースを絞って開発・生産するという判断をしました。以上の理由から、ELZ_1の生産を停止しました。多くの方から再販売の要望を受けていたのですが、そこから2年経ち、ようやく半導体不足も少し落ち着いてきたので、今回ELZ_1をELZ_1 playとして復活させることにしました。

半導体不足が少し落ち着いてきたことから、ELZ_1を大きく進化させたELZ_1 playの開発に着手

同じ大きさながら、大きく機能、性能を向上させたELZ_1 play

ーーELZ_1 playという名前にしたのには、どういう意味があるのでしょうか?
遠藤:単純にELZ_1を復活させるだけでなく、これまで使用していただいていたユーザーさんからのフィードバックを参考に、より使いやすく、プレイ(Play)する楽しみをより感じていただくために、さまざまな機能強化を行なっているため、playと入れました。具体的には、全鍵ベロシティ対応に改良し、サイドパネルに高音質、大音量のステレオスピーカーを組み込みました。また、SDカードスロット、USB-C、標準MIDI端子も装備し、オーディオとMIDIをフレキシブルに取り扱えるようにしています。ほかにも、ユーザーさんからの要望が多かったMIDIコントロールチェンジへの対応に加え、ルーパー機能も同じサイズの筐体の中に詰め込み、それに合わせてボタンを追加で配置しています。

お話を伺ったSONICWAREの代表取締役、遠藤祐さん

ーー進化して、ELZ_1が復活するのですね。かなりワクワクします。
遠藤:はい、私もワクワクしてます(笑)。さらに、今回の200台に関しては特別に限定カラーのBlack Editionも選択できるようにしました。ぜひお好みで選んでいただければと思います。」

クラファンではなく個人プロジェクトのプレオーダーにした背景

ーーこれまで、KICKSTARTERといったクラウドファンディングを使用されていましたが、なぜ今回はクラウドファンディングではなく、プレオーダーという形にしたのでしょうか?
遠藤:それは主にクラウドファンディングの仕組みが関係しています。KICKSTARTERの場合、オールorナッシングという形で、ゴールに決めた金額に達成しなかった場合、1円も受け取らないという仕組みになっています。私自身、正直ELZ_1 playが欲しい、作りたいという、強い気持ちがあるので、クラファンに関係なく、製造を行います。クラファンの場合だと、1人の方が支援しても目標額に到達しなければ、それが製品になることはないですが、今回の場合ですと、まずは200台を私自身のリスクで製造するので、たとえ1人しかプレオーダーがなくとも、ちゃんとお送りします。

ベロシティ対応の鍵盤になるとともに、新機能に合わせトップパネルのボタン類も変わった。

ーークラファンは、基本的に寄付という形ですから、たとえゴールに達成しても、いつ完成するかわからない、下手すると何も届かない、というリスクもありますよね。一方、遠藤さんは実績もありますし、必ず作るとおっしゃっているのも安心できるところですね。
遠藤:そういっていただけると嬉しいです。ぜひ応援のほどよろしくお願いいたします。

ELZ_1 playのリアパネル。SDカードスロットや5pinDINのMIDI入出力も装備した

ーー一方で、今回SONICWAREからの発売ではなく、個人プロジェクトで展開するとのことですが、これは、なぜなのでしょうか?
遠藤:個人的には実験的な試みやもっと尖がった試みなどをどんどんしたいという想いがありますが、そういった、ある意味、趣味嗜好性が強く出ている実験的な試みは、あまり大量生産に向いていないと考えています。逆にSONICWAREは企業ですし小ロットはあまり得意ではありません。そこで、それらを区別できる方法として、今回の個人プロジェクト方式を考えました。個人プロジェクトは、Dr’s Journeyという名前で展開し、今後もあらゆる試みを行なっていきます。その第1弾として、このELZ_1 playの企画がスタートしたわけです。Dr’s Journeyでは、趣味嗜好が強い試みや実験的な試み、新しい試みなどがベースとなった製品がメインで、今後尖った製品を発表していく予定です。TOYOTAでいうところのMORIZO Editionのような感じでしょうか(笑)。かなりマニアックな面もありますが、そうしたものを支持してくれる熱狂的な人たちとともに進んでいきたいと思います。

Dr’s Journeyとして実験的なプロジェクトを次々と行っていく、とのこと

ーー今後Dr’s Journeyでは、どういったものが展開されていくか教えていただけたりしますか?
遠藤:第1弾であるELZ_1 playは、規模感の大きいプロジェクトですが、規模感自体はそれほど気にしていなくて、例えばTシャツを作る、とか、オリジナルのサンプルパックを作る、などもあるかもしれません。エッジの効いた新製品はもちろんのこと、SONICWAREから発売しているシンセのカラバリを作ったりするかもしれません。ある意味で実験場でもあるため、ここからヒット作品が生まれたりしたら、それはそれで嬉しいですが、一番大切にしたいと思っているのはワクワク感です。ものづくりのワクワク感をもっとDr’s Journeyを通してお届けできたらなと思っています。また、ここで培ったノウハウや技術力は、SONICWAREにも活かされるので、より良い製品をみなさまのお手元へお届けできるようになると思います。

これからも、どんどん面白いことをしていきたい、という遠藤さん

ーーこれからの展開、期待しています。ありがとうございました。

【関連情報】
dr.yuendo ELZ_1 playの情報

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