電源ノイズをシャットアウトするフィルター搭載電源タップ、PERFECTIONのPFT-T3000AFとPFT-T1000PF

みなさんは、DTMにおける電源部分について、どのくらい気を払っているでしょうか?バッテリー駆動のノートパソコンなどを除けば、コンピュータもオーディオインターフェイスも、アンプもスピーカーも、すべて動作の源は、部屋に引かれている100Vの電源から来ているので、非常に重要な存在です。そして、その電源に問題があると、モニター音にノイズが乗ったり、下手するとレコーディングする音にノイズが乗ってしまうということだってありえます。また、ノイズというところまでいかないにせよ、電源の状況によって、音質が変化してしまうということは、よくある話です。

とくに「電子レンジを使っているときに音が少しおかしかった」、「エアコンをつけているときと、つけてないときでニュアンスが違う」というケースはしばしば。家庭のDTM環境においては、なかなか避けがたい問題です。そうした電源からくるノイズをシャットアウトするフィルターを搭載する電源タップというものも、いくつか販売されています。そうした中、日本の老舗ブランド、PERFECTION(パーフェクション)からDTMで使いやすそうな製品が2ラインナップ発売されています。パッシブフィルター型のPFT-T1000PF(税込定価:55,000円)とアクティブフィルター型のPFT-T3000AF(税込定価:132,000円)の2種類。実際どんなものなのか試してみたところ、確かに効果があることが確認できたので、紹介してみたいと思います。

PERFECTIONブランドのフィルター搭載電源タップ、PFT-T3000AF(左)とPFT-T1000PF(右)

電子レンジやエアコンなどインバーター系機器がノイズ源

電源のことを言い出すといろいろキリがなく、水掛け論の論争になりがちなので、私自身、話題にすることはあまり積極的にはしていないのですが、確かに気を付けるべきことはいろいろあるとは思ってはいます。そして基本は守っておかないとノイズの原因になりうることは確かです。

電源の極性、電源ケーブル、電源電圧、アース……と知っておくべき基礎知識はいろいろあり、ある程度は気を付けておいて損はないと思います。とはいえ、オカルト的部分は多いと思うので、あまりハマり過ぎないほうがいいだろうと思いますが、ある程度の部分から先は趣味の領域だと考えています。オーディオマニアの方の中にはMy電柱を立ててしまう人がいる、なんて話がテレビで取り上げられて話題になったことがありますが、個人的には、ばかばかしいと感じているくらいではあります。

そもそもコンピュータはノイズの塊なので、そのすぐ隣にオーディオインターフェイスやモニタースピーカーを置いておくと、ノイズ要因になる可能性がありますし、USBケーブルを通じてノイズが伝わる可能性もありますが、実際にはそれぞれの機器が防磁機構を持っていたり、ノイズ対策をしているので、過剰な心配は不要だとは思っています。

ちなみに、ウチは屋根にソーラーパネルを搭載しているので、人から「太陽光発電の電源だと音がいいんでしょ」なんて言われることがありますが、そこは真反対。電力会社からくる電源はほぼ正弦波=サイン波に近い50Hzの交流が来ていますが、太陽光発電が作動しているときは、家に設置しているパワコン(パワーコンディショナー)と呼ばれるインバーターが作動して、これが交流を作っているため、正弦波とはほど遠く、矩形波=パルス波に近い、ある意味、オーディオ的には劣悪な環境。もちろん、系統連系しているので、商用電源に引っ張られるので、実際には正弦波に近いから大きな問題にはなっていませんが……。

すみません、ついマニアックなネタになってしまいがちだから、普段は、あまり触れてないのですが、そんなウチでも電源系で問題になる事象があります。それが電子レンジ。普段ほとんど気にしていないのですが、電子レンジをオンにすると、ハムノイズとは言わないまでも、モニタースピーカーの音がちょっとおかしくなることが多いんです。

まあ、レコーディングする音にノイズが入り込むわけではないので、そこまで気にしなくていいとは思うものの、電子レンジはやっぱり注意すべきモノだな……とは感じているんです。

そのほかでよく電源系のノイズ元として聞くのが調光器。これをフルにしてないとノイズが回り込むというのはよくある話。また、エアコンもインバーターが入っているため、夏の冷房時期や冬の暖房時期に問題になるという話はよく聞きます。

1959年スタートの国産ブランド、PERFECTIONが復活

と、前置きがとっても長くなってしまいましたが、そうした電源からのノイズをうまく取り除いてくれる、というのが今回とりあげる、PERFECTIONの2製品です。

1949年創業、1951年設立の完実電気

PERFECTIONは、BELDEN、SHURE、MONSTER、beats、Marshall……といった機器を取り扱う輸入商社として著名な完実電気のブランド。完実電気は1949年創業という老舗ですが、1959年にPERFECTIONブランドを立ち上げてスピーカーシステムの製造をしたり、超低音3D システムフィルターアンプ・スピーカーなどを販売してきたメーカー。ただ、平成の時代に入ったあたりからメーカーとしては休眠していたそうです。その完実電気が来年に創業75周年を迎える記念事業としてPERFECTIONブランドを復活させるとともに、その製品としてまったく新規に開発したのが、今回のノイズ対策製品FORN(FOR Noise)シリーズであるPFT-T3000AFやPFT-T1000PFなど、とのこと。それぞれを簡単に紹介していきましょう。

ANE回路を搭載し、ノイズ削減を可視化できるPFT-T3000AF

まずPFT-T3000AFはアクティブ・ノイズエリミネーター(ANE)なる回路が搭載されているのが最大の特徴。ANEとは、電源ラインに重畳している高周波ノイズを抽出し 、そのノイズエネルギーを電圧変換することによりノイズを低減させるシステムだそうです。なんとも不思議なのはノイズエネルギーを電圧に変換しているので、それを元にLEDを点滅させることができ、これによって、消しているノイズ量を可視化できるというのです。

ANE回路搭載のPFT-T3000AF

ホントかよ……、とやや懐疑的に思いつつ、PFT-T3000AFをコンセントに接続してみると、電圧、電流、周波数がディスプレイに表示され、電流は使用状況に応じて刻々と変化していきます。電圧は103~104Vあたりでほぼ安定していますが、ドライヤーを入れたり、電子レンジを入れたりすると、102Vくらいに落ちたりもしますね。

PFT-T3000AFのモニター表示。上から電圧、電流、周波数

そして、一番気になるのが、その点滅するLEDですが、最初どれだろう…と気づかなかったのですが、本体のフロント左側でときどきピカッと一瞬光る白いLEDランプがありました。これがそのノイズを消した証、ということのようです。みると2~3秒に1回の割合で光るのですが、間隔は定期的ではない模様です。

ノイズを電圧に変換してLEDを点灯させて消費して消すというANE回路

そして試しに電子レンジを動作させてみると、点滅速度が上がるのです。PCに接続したPERFECTION PFT-T3000AFがあるのは仕事部屋で、電子レンジがあるのは別フロア。確かに違いがあるようです。また日中の太陽光発電をしている時間は夜よりも点滅が明らかに早いので、これもパワコンからのノイズの影響なのでは…と思ったところです。

そして音のほうは……というと、まあ、そもそもそこまでハッキリしたノイズや音の大きな変化があったわけではないものの、このPFT-T3000AFを通すと、電子レンジがオンのときとの違いはまったく分かりません。

さらに驚いたのは、そのLEDの点滅があるとき急に超高速になりはじめたこと。どうして?と思ったら、家族がヘアドライヤーを使っていたんです。これが大きな電源ノイズになっているということのようです。ドライヤーで、ノイズが入ったり、音が変わったという記憶はあまりないのですが、実際には影響があったのかもしれません。これについても、PFT-T3000AFを通しているからか、音の違いはまったく感じませんでした。

これら3つの状態をiPhoneでビデオ撮影して比較してみたビデオがこちらです。あくまでもLEDの点滅状態の違いの比較ですが、なかなか不思議な気もしました。

なお高周波以外のノイズ対策としてX,Yコンデンサーを搭載しており、これが非常に広い帯域のノイズをカバーする仕様となっているそうです。ドライヤーに効いていたのはこちらなのかもしれませんね。

また、電源からくるノイズだけでなく、このPFT-T3000AFに接続したコンピュータなどからのノイズ成分もしっかりとってくれるとのことなので、その点でも安心なようです。

PFT-T3000AFのサイドパネル。電源入力端子の左側にはアース端子がある

一方で、マニュアルを見て気づいたのは、しっかりアースのある電源を使った場合、そのこともインジケーターで表示できるとのこと。具体的には、フロント右下にある緑のランプで確認できると、あるのです。残念ながら、仕事部屋にはアースはないので、接地はできておらず、あくまでも2線で接続しているだけだから、オープンアースということで、緑のLEDが点灯した状態になっているようです。

アース接続していない状態だと緑のランプが明るく点灯している

これについても、ホントなのか確認するため、洗濯機用に使っているアース付きのコンセントに接続して試してみました。

こここに接地してみたところ、完全に緑のランプが消灯するわけではなく、かなり暗くなるという感じでした。写真だとややわかりにくいですが、目で見るとまったく違う状況です。

アース接続すると緑のランプが暗くなる

電源ケーブルがアース接続端子がある場合は、このように使えますが、そうでない場合は、PFT-T3000AFにアース端子があるので、これを利用してアース用の電線を用いて接続する形でもOKなようです。

なお、写真を見ても分かる通り、ACアウトレットは8口あり、ここにコンピュータやモニタースピーカー、オーディオインターフェイス……といった機器を接続できるので、これ1台あればかなりパワフルに活用できそうです。

アナログ用とデジタル用で分割されたハイコストパフォーマンス機、PFT-T1000PF

このようにいろいろ数値表示やインジケーター表示ができるPFT-T3000AFに対して、そうした表示機能はないながらも、断然安価に利用できるパッシブフィルター型の製品もあります。それがPFT-T1000PFです。

パッシブフィルター搭載の電源タップ、PFT-T-1000PF

PFT-T3000AFは、8つある口すべてがオールマイティーに使える設計になっていたのに対し、PFT-T1000PFのほうは入力電源に近い前段の4つと後段の4つで、それぞれ役割が違っているというのがユニークな点。

入力電源に近い側の前段4つはアナログ用となっている

前段の4つには「for ANALOG」と記載がある通り、アナログ機器への接続用。一般のモニターアンプやミキサーなどはこちらに接続するということですね。

入力電源から遠い4つの後段がデジタル用になっている

そして後段の4つには「for DIGITAL」とある通りこちらはデジタル機器への接続用。コンピュータと接続したり、デジタルシンセサイザやオーディオインターフェイスなどの接続はこちら、ということのようです。

前段と後段の間にデジタルノイズの流入を防ぐ、特殊な新開発フィルターを搭載していることで、こういう役割分担になっているんですね。また回路自体は少し違うようですが、こちらもPFT-T3000AFと同様、X,Yコンデンサーを搭載し、広い帯域のノイズ対策を実現 しているとのことです。

また端子の写真を見てみると分かる通り、PFT-T1000PFのほうは8つのコンセントそれぞれがすべて外側を向いているというのも重要なポイント。したがって、ACアダプターなどを接続した際に、アダプタ同士がぶつかり合って挿せないとか、ほかのケーブルが邪魔をしてしまう、ということがないのが便利なところ。PFT-T3000AFのほうも、そうだったらいいのに……とちょっと思ってしまいました。

大きなACアダプタなどもぶつからずに効率よく挿すことができる

こちらも試してみましたが、電子レンジのオン/オフで音の差は感じられなかったので、やはり同等の効果はありそうです。同様にドライヤでもまったく音に違いはなかったので、やはりフィルタとしてしっかり効いているようです。

なお、PFT-T3000AFもPFT-T1000AFも雷からのサージ電圧を保護する機構が入っています。これにより雷や過電流が流れた際に接続機器を保護する機能を持っているので、安心です。

以上、完実電気のPERFECTIONブランドのノイズ対策用の電源タップ、PFT-T3000AFとPFT-T1000PFの2つを紹介してみました。ちょっと高いけれど、個人的にはノイズが可視化でき、しっかり取り除いてくれるPFT-T3000AFがお勧め。とはいえ、PFT-T1000PFでもしっかりノイズ対策はできるので、コストパフォーマンスという意味ではPFT-T1000PFで十分かもしれません。

【関連情報】
PERFECTION PFT-T3000AF製品情報
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Commentsこの記事についたコメント

2件のコメント
  • YSKT

    普通の電源タップの寿命は3〜5年とききますが、こうしたオーディオ用途の製品では、寿命はどの程度を考えればよいものなのでしょうか?
    またアクティブ型とパッシブ型でも寿命の長さは違ってくるものでしょうか?

    2023年7月30日 11:51 PM
  • PoyoPiyo

    いつも有益な情報ありがとうギザいます。
    こういう製品って波形見るとノイズ低減効果は確かにあるんですけど、聞いて分かるかっていうと微妙かなと思います、スピーカーに耳近づけて何も聞こえない状態でこれ以上ノイズ減っても気付くものでしょうか?まあ使うと安心感はあるでしょうけど。
    あと電源や機器の残留ノイズの波形とか客観的なデータがあるといいかな思いました。

    2023年7月31日 10:50 AM

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