声優、井上喜久子さんがCVの『桜乃そら』がAIでほぼ人間に!VOICEPEAKとSynthesizer Vで8月24日発売開始

声優の井上喜久子さんがCVを務めるキャラクタ、桜乃そら(読み方:ハルノソラ)。これまで喋るソフトとしてはVOICEROID2、歌うソフトとしてはVOCALOID5で製品が販売されていました。その桜乃そら誕生5周年というタイミングに合わせ、この度新たなバージョンが誕生することが7月25日に発表されるとともに、その翌日、7月26日に、井上喜久子さんご本人も登場する「AHS公式生放送」という形での発表会が開催されました。

その新バージョン、入力文字読み上げソフトとしてはVOICEPEAKを、歌声合成ソフトとしてはSynthesizer Vを使う形で製品化され、「VOICEPEAK 桜乃そら」、「Synthesizer V AI 桜乃そら」という2製品が8月24日にパッケージ版、ダウンロード版で発売されます。いずれのソフトもWindows、Mac、Linuxの環境で動作するため、使えるユーザーが大きく広がるのも大きなポイントです。一足先に、そのβ版を試してみたところ、ほぼ井上喜久子さんそのものの声で驚きました。その生放送に同席し、井上喜久子さんと、AHS会長の尾形友秀さん、そしてVOICEPEAK、Synthesizer Vの開発者であるカンル・フアさんにもお話を伺うことができたので、そのインタビューも交えつつ、実際どんなソフトなのか紹介してみましょう。

「VOICEPEAK 桜乃そら」、「Synthesizer V AI 桜乃そら」が発表に。左から井上喜久子さん、カンル・フアさん、尾形友秀さん

桜乃そらは2018年にVOCALOID5対応のボイスバンク「VOCALOID 桜乃そら ナチュラル」と「VOCALOID 桜乃そら クール」の2種類、VOICEROID2製品としては「VOICEROID2 桜乃そら」が発売され、DTMステーションでも「声優・井上喜久子さんCVのVOCALOID&VOICEROID「桜乃そら」が誕生。一足先に試してみた!」、「“VOCALOID・VOICEROID制作は自分の歌声のMRIみたい!?”、声優・井上喜久子さんが語る『桜乃そら』開発の裏舞台」といった記事でも紹介してきました。

「VOICEPEAK 桜乃そら」、「Synthesizer V AI 桜乃そら」は8月24日より発売開始

もちろん、今後もVOCALOID5とVOICEROID2の「桜乃そら」は継続販売されるのですが、今回新世代製品としてVOICEPEAKとSynthesizer Vという、まさに最先端のAIソフトとしてリリースされることになったのです。

井上喜久子さんと判別つかない!?5つの感情表現パラメータでしゃべる

いろいろ説明するよりも、実際のしゃべり声、歌声を聴いてみれば、すぐにその実力が分かると思います。まずは「VOICEPEAK 桜乃そら」紹介動画がこちら。

この動画での声を聴けば分かる通り、そのしゃべりは、ほぼ井上喜久子さん本人。不自然さがまったくないのは驚きです。また、動画にもある通り、「幸せ」「悲しみ」「怒り」「ささやき」「クール」という5種の感情表現のパラメータを持っており、それぞれのパラメータを動かすことで、非常に幅広いしゃべり方が可能になっているのも重要な特徴。それぞれで、かなり雰囲気が変わります。

VOICEPEAK 桜乃そらはテキストを入力すればすぐにしゃべってくれる。5つの感情表現パラメータも搭載

この感情表現は、スイッチではなくパラメータであるため、「怒り」と「クール」を混ぜ合わせるといったことができるだけでなく、ある意味真反対の「幸せ」と「悲しみ」の両方をマックスにしながら、「怒り」と「ささやき」を少しずつ混ぜる…なんてメチャメチャなことをしても、破綻せず、なるほど…と思わせるしゃべり方になるところは、不思議でもあります。やはりサンプリングデータを組み合わせていくのではなく、AIでディープラーニングさせたしゃべりの表現力の破壊力の凄さを実感させてくれます。

イントネーションなどを修正することも可能

なお、この「VOICEPEAK 桜乃そら」を購入するとてオマケとして「VOICEPEAK ポロンちゃん」、「VOICEPEAK フリモメン」がもらえてしまうという超豪華特典もついています。これも見逃せないポイントです。

「VOICEPEAK 桜乃そら」には、「VOICEPEAK ポロンちゃん」、「VOICEPEAK フリモメン」がおまけでついてくる

リアルな声で歌ってくれる「Synthesizer V AI 桜乃そら」

では、もう一方の歌うソフトである、「Synthesizer V AI 桜乃そら」のほうも見てみましょう。こちらもいろいろなデモ曲が公開されていますが、音楽ユニットであるGARNiDELiAのtoku(とくP)さん制作の「赤い橋 feat. 桜乃そら」がこちら。

やっぱり、こちらも、井上喜久子さんそのものの声ですよね。エフェクトをあまり使っていない分、まさにそこで本人が歌っているかのような生っぽさがあります。ほかにも、いろいろな曲が公開されているので、ぜひ聴いてみてください。

いずれも、人による歌声なのか、歌声合成によるものなのか、判別つかないほどのクオリティです。

Synthesizer Vにおいては最新のバージョン、1.9.0で動作させて、歌声をチェックしてみましたが、本当にリアルな声であることに驚かされます。

非常にリアルな歌声で歌ってくれる「Synthesizer V AI 桜乃そら」

その1.9.0については先日、開発者のカンル・フアさんにインタビューした「最新AIでついにラップも実現、まだまだ進化するSynthesizer Vの技術背景と目指す方向」という記事で、いろいろ紹介していますので、ぜひそちらも参照してみてください。その記事にもある通り、現時点ではまだ日本語ラップには対応していませんが、英語のラップで歌わせることも可能。井上喜久子さんが英語でラップを歌うというのも、かなり不思議なシチュエーションですが、試してみると面白いですよ。

「Synthesizer V AI 桜乃そら」で英語のラップを歌わせることもできる

なお、VOICEPEAK、Synthesizer Vの桜乃そらの価格は以下の通りとなっています。

VOICEPEAK 桜乃そら 13,800円
VOICEPEAK 桜乃そら ダウンロード版 10,800円
VOICEPEAK 桜乃そら AHSユーザー特別版 ※ 11,800円
Synthesizer V AI 桜乃そら 10,780円
Synthesizer V AI 桜乃そら ダウンロード版 9,680円
Synthesizer V AI 桜乃そら AHSユーザー特別版 ※ 8,580円

※ AHSユーザー特別版は、製品登録済みのAHS製品をお持ちの方限定のお得なパッケージです。AHSストア限定での販売で、購入には製品登録済みの対象製品のシリアル番号が必要となります。

 

井上喜久子さんインタビュー

7月26日のAHS生放送では井上喜久子さん、AHS会長の尾形友秀さん、そして弦巻マキの中の人である田中真奈美さんの3人が出演する形で桜乃そらの発表が行われました。その発表会の開催前に、井上さんと、尾形さん、そして開発者のカンル・フアさんにインタビューすることができたので、紹介していきましょう。

--VOCALOID5とVOICEROID2の「桜乃そら」から5年目で、今回のVOICEPEAK、Synthesizer Vの製品になったわけですが、今回の新バージョンである「桜乃そら」誕生の経緯を簡単に教えていただけますか?
尾形:AHS社内のマル秘の機密文書として2009年から「後世に声を残したい人リスト」というものを作っていて、そのリストの筆頭に、井上喜久子さんのお名前を入れていました。いろいろ技術や環境も整ってきたことから、今から7年前に喜久子さんの事務所に「ぜひ、喜久子さんの声を残したいので、収録させてもらえませんか?」とお願いしてみたところ、すぐにOKをいただくことができ、最初の「桜乃そら」ができたのです。その結果、多くの方に桜乃そらを使っていただいてきましたが、そこから大きく進化したAIを使ったエンジンであるSynthesizer V AIやVOICEPEAKができました。この新しい今の技術で再度喜久子さんの声を収録することで、よりリアルでしっかりしたデータとして喜久子さんの声が残せるはずだ、と改めてお願いしたのです。
井上:今回のお話をいただいたのは1年ちょっと前だったと思います。声を残すということは私にとってもとても嬉しいこと。喜んでお引き受けしました。以前のときも、かなりレコーディングしましたが、今回も特に歌に関してはトンでもないほどたくさん歌わせてもらいましたね(笑)

--前回と今回を比べて、収録の違いというのはいかがでしたか?
井上:声優として安定した声で、しゃべり続けたり、歌い続けるという意味で、修行っぽい感じである点は同じ思いではあります。でも、前回はまさにお経のような歌い方で、苦行でしたが、今回はとっても楽しかったですね。ここ最近はアーティスト的な活動は休止中で、声優のお仕事に絞っていたのですが、やっぱり私、歌うのが大好きなんですよね。だから収録がいつも楽しみで!一方のセリフのほうもいろんなものがありましたが、結構笑っちゃうような内容も多くて、前回よりかなり楽しくできました。
尾形:ちょうど昨年の夏ごろから収録を初めて半年近くかかったので、かなりの収録数にはなりましたね。

--VOICEPEAKのしゃべり声を聴いても、Synthesizer Vの歌声を聴いても、まさに喜久子さん本人で、違いが分からないほどですが、喜久子さんご自身は、実際に最初に聴いてみて、いかがでしたか?
井上:収録中、AHSのスタッフさんからは「喜久子さん、今回のそらちゃん、本当に凄くなりますよ。とっても歌も上手くなりますから!」と歌うたびに聞いていたんです。でもまあそうはいっても…とは思っていたんです。期待しすぎるのもよくないだろうと思ってもいたんです。それからしばらく経って、最初に、新しいそらちゃんの歌声を聴いたのが、今年の3月。オンラインイベント、VVV MUSIC LIVEに出す作品ということで一足先に視聴した、だいすけPさんの曲「Rera」でした。聴いた瞬間、「ええ!?私が歌ってる、嘘でしょ!?」「こんなに素晴らしく、上手な歌声で、歌ってる、すごーい!」というを感じたところで、涙がぶわぁ…って。本当に感動しちゃいました。それに続いてEHAMICさんの「恋の呪文はソラソラ」を聴いて、嬉しくて、可愛くて。声優として、こんな感動をいただけるなんて、まさに神様からの贈り物なんだ……って思っちゃいました。曲の素晴らしさとともに、私の声の低いところをとってもうまく引き出す歌声になっていたのも、感激でした。また、そらちゃん、とっても上手に踊っていて、私ができなかったことを、そらちゃんが実現してくれてると思うと、感動でした。
尾形:VVVのときは、まだβ版であり、まだ未完成ではありましたが、Synthesizer V AI 桜乃そらの初お披露目となりました。一方で、VOICEPEAKのほうはまだできていなかったため、VVVでのしゃべりはVOICEROID2だったんですよ。

--ここまで、喜久子さんのしゃべり声、歌声をリアルに再現してくるとなると、声優として、これらのソフトが脅威になったり、敵になったり…ということはないのでしょうか?
井上:業界的にみると、いろんな考え方があるのは事実です。でも私自身は「私の声で誰かが笑顔になってくれる」ということが一番だといつも考えているんです。そういう意味で、私の声を多くの人に使ってもらい、喜んでもらえるなら、こんなに幸せなことはありません。技術が進化していく中で、私が多少なりともそのお手伝いができるのだとすれば、とっても光栄だし、嬉しいです。しかも、日本語だけでなく、英語や中国語、広東語などさまざまな言語で歌えるというのは、スゴイですよね。自分には絶対できないことを、そらちゃんが実現してくれる、って素敵じゃないですか。私が出せない音域までカバーするし、音痴な私より断然上手に歌ってくれるって、とってもいいですよね。よくロボットが人間の仕事を奪って……といった議論がありますが、それも進化の過程で、よりよい未来を作っていく途中経過での話だと思っています。人間にしかできないこと、声優だからこそできることは、まだまだいっぱいあると思っています。それなら、どうやってAIと協調していくか、ですよね。私はぜひ、そらちゃんと一緒に歌いたいですね!

--歌声だけを聴いて、自分の歌声なのか、Synthesizer V AIの歌声なのか、判別はつくものですか?
井上:私のほうが音痴だから、聴くと分かるかな(笑)。そらちゃんは、まさに私の進化版なんですよ。私がおばあちゃんになっても、さらには死んでしまったとしても、この声が、この幸せな音色がずっと生き続けてくれるのって、すごく嬉しいことだ、と思っています。この収録がもし5年後だったら、できなかったかも…と。声がすごくいい状態で録音できたし、10年前にはできなかった奥行きもつけられたと思うし、まさに声優として一番いいときの声がデータにできたと思っていて、尾形さん、カンルさんにはとっても感謝しています。

--Synthesizer VそしてVOICEPEAKの開発者であるカンルさんは、喜久子さんのことはご存じだったんですか?
カンル:もちろんですよ。ちょうど5年前はヤマハにインターンで行っていたころで、ちょうどVOCALOID5が発売されたタイミングでした。そこにリリースされたのが、井上喜久子さんの桜乃そらだったので、ご一緒させてもらえたらいいな……って、憧れの目で見ていました。それが実現できたという意味では、本当に嬉しいですね。

--今回のVOICEPEAK、Synthesizer Vの桜乃そら、本当にリアルな喜久子さんの声であり、とっても自然に感じますが、何かポイントはあったのでそうか?
尾形:キャラクタに寄せて演じてもらうというよりも、喜久子さんの一番自然な声で収録したというのがポイントかもしれません。
カンル:たいてい「自然に歌ってください!」っていうと、みなさん固くなってしまって、あまりいい結果にならないのです。だから、好きに歌ってもらうようにしていますが、今回それがピッタリうまく行ったように思います。

--最後に喜久子さんから、DTMステーション読者のみなさん、VOICEPEAK 桜乃そら、Synthesizer V AI 桜乃そらのユーザーのみなさんに向けて一言お願いします。
井上:Twitterなどの反響を見てみると、みなさん、そらちゃんを怒らせたいようなんですよね。そらちゃんの声で罵られたい…という人もいっぱいいて、驚きました。変なセリフを言わせようとしている人もいっぱいで、ちょっぴり心配ではあるけれど、私の声で楽しんでもらえるようなら、とっても嬉しいですね。でも、ちゃんと節度を守ってね。おねえちゃんからの、お願いよ!

 

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