数多くのプロを輩出する山口ゼミが10周年。誰もがプロになれる場所、山口ゼミ10年間の軌跡

業界標準、完全プロ仕様」をテーマに、著名な作曲家、アレンジャー、エンジニアなどを講師に招いて実践的で少数精鋭のセミナーを実施している山口ゼミNexTone Award2019 Gold賞受賞者やレコード大賞受賞者を輩出するなど、数多くの実績を上げている山口ゼミが、今年10周年を迎えました。2013年には23人だったゼミメンバーは、2023年時点で609人に増え、この10年で制作された楽曲総数は4672曲と、活発に活動を続けているのです。

そんな山口ゼミは、最近国内でも増えてきたCo-Writingコーライティングを日本で最初に提唱しており、コーライティングが一番早く成長することができる手法であり、同時にプロへの近道、そして、やる気さえあれば、プロの入り口に立てるというメッセージを発信し続けてきました。実際、毎年実績を出しているのがその証拠ですね。その山口ゼミでは10周年記念トークイベントとしてLAで活躍する作家、ヒロイズムさんをゲストに「デジタルとグローバルの時代に作曲家が成功するために必要なこと〜グラミー賞最優秀楽曲賞受賞に向けて〜」という無料のオンラインイベントを11月11日に開催するとのこと(※要事前登録)。これまでDTMステーションでも、その進化を追ってきましたが、改めてこの10年を振り返ってどうだったか、オーガナイザーの山口哲一(@yamabug やまぐちのりかず)さんに伺ってみました。

「業界標準、完全プロ仕様」山口ゼミが10周年

多数の実績を残してきた山口ゼミが10周年

--山口ゼミ10周年おめでとうございます。この10年間振り返ってみてどうでしたか?
山口:山口ゼミを10年間運営してきて、成果をしっかり上げることができたかな、と思います。レコード大賞やヒット曲を出しているので、多くの人にとっても分かりやすい実績が作れました。現在受講生は600人を超えていて、Co-Writing Farmは約150人、10年前は誰もコーライティングをしていなかったのに、僕らが震源地になってコーライティングを広げることもできたと思います。

山口ゼミを主宰する山口哲一さん

ゼロからコーライティングを広げた

--山口ゼミでは、最初からコーライティングを掲げていましたよね。
山口:そうですね。10年前は、誰もコーライティングの存在自体知らなかったですから、世界では普通に行われているコーライティングを日本に浸透させることができたのは、1つの成果だと思います。山口ゼミを10年運営してきて思うことは「誰でもプロの作曲家になれるプログラムができたな」ということです。才能とかDAWが得意とか関係なく、やる気さえあれば誰でもプロフェッショナルな作曲家になれる育成プログラムになったなと。すぐに音楽で食えるようになるという意味ではないですが、コーライティングを活用したデモ制作で継続的にコンペに参加していけば、1〜2年でコンペ採用には繋がりますから、プロ作曲家の入り口には立てる訳です。これは作家事務所にデモを送って悶々としたり、ボカロPで作品を発表し続けるのとは違って、自分のスキルを向上させながらチャンスに挑むことができます。また、コーライティングを上手に活用すれば、複業的な活動も可能ですから、会社勤めをしながらとか、他にもやりたいことがあるフリーランスとかインディーズのアーティストにも有効な方法ですね。実際、多種多様な人がいますよ。

プロ作曲家への近道

--とはいえ、山口ゼミextendedの卒業生の中で、プロとしての実力を認められたメンバーが所属できるクリエイタ集団のCo-Writing Farmに残れる人は全員なわけではないですよね。
山口:まず山口ゼミ修了者だけが参加可能な、徹底的に実践的な上級コースの山口ゼミextendedは、お金を払えば受けることができます。この上級コースに進む人数は追加で15万円掛かるにも関わらず、6割以上が受講してくれていますね。そしてCo-Writing Farmに入るのは、人数で絞っているわけでなく、コンスタントにコンペに参加できるクオリティのデモが出せる人という基準にしており、直近の38期extendedからは、受講生7人中5人が加入しました。平均でもextended受講生の半分以上はCo-Writing Farmに所属しています。

Co-Writing Farmのクリエイターによるリリース楽曲のプレイリスト

半年間で届かなかった場合の入会試験や割引再受講の制度などもあるので、やる気さえあれば誰でもプロになれるというのは、真実です。Co-Writing Farmメンバーには、年間100曲コンペに出しましょうと呼びかけているのですが、コーライティングを活用すれば十分可能です。これらが総合的にプロのキャリアを始められるインキュベーションの仕組みになったなと感じています。

個人の時代だからこそ、音楽家同士のコミュニティが重要

--なるほど。この仕組みが作れたのも、やはりコーライティングの影響が大きいですか?
山口:もちろん、コーライティングという手法によるものもありますが、その副産物としてのコミュニティパワーの凄さに驚くこともあります。「疑似コンペ公開添削」という山口ゼミの中核的講座があります。副塾長の伊藤涼(※近況についてはこちら⇒note記事)が作成した「疑似コンペシート」に対してデモ作成を行い、全員の前で聴いて、1人ずつ伊藤涼が本音でアドバイスしていくのですが、他の人のデモや助言が聞ける機会は非常に貴重ですね。そこで与えられた課題に取り組もうとした時に、Co-Writing Farmメンバーを始めとした卒業生は、同様の経験をしていて伊藤涼や僕のアドバイスの真意が理解できますから、相談相手も無数にいるわけです。一緒にコーライトすることもできる。これがコミュニティパワーということなのでしょうね。成長が早く確実です。

--思ったよりコミュニティが大事だったと。
山口:山口ゼミをスタートさせた時からやる気のある人さえ集まればプロの作曲家に育てることに関しては最初から自信がありました。ですが、5割以上がプロになれたり、何百人集まるということは全然想像できなかったですね。コミュニティのパワーの凄さは想像以上でした。DTMが広がったことによって、作曲が孤独な作業になり、だからこそみんなすごく仲良くなるし、仲間を欲しているんだなと思います。山口ゼミを始めて、9ヶ月後にCo-Writing Farmを作ることになるのですが、それはコミュニティの力に気づいたからですね。これが功を奏し、どんどん大きくなって、クリエイティブの質が上がっていったことに関してはびっくりしてます。 Co-Writing Farmメンバーは今でも、「山口ゼミ」のゲスト講師回の聴講やリアル懇親会などには参加することが多いので、受講生にとってはコーライト相手を見つける機会にもなっていますね。

--この10年で、音楽を取り巻く状況も変わりましたが、その点については想像通りでしたか?
山口:マクロでいうと、想像通りでしたね。音楽ビジネスは専門分野なので、今後こうなるよ、と予言していた側なのですが、もっと細かい作曲家がどういうあり方をするかというところまでは、考えていた訳ではないです。個人で完結するものになっていくからこそ、コミュニティが大事というのは、運営を続けて気づいた点ですね。個人へのパワーシフトがどんどん進んでいって、自宅のPCで完パケできて、ディストリビュータを使えば世界に配信できるからこそ、レコード会社と仲良くするのではなく、音楽家同士が信頼関係を持って活動することが大事なんですよね。

--10年間続けていると、さまざまな人と出会ったと思いますが、みなさんは現在どういった活動をされているのでしょうか?
山口:作曲家に関しては、コンスタントに著名アーティストの表題曲コンペで採用されるようになりました。そんな中で、Da-iCE /「CITRUS」はデジタルヒットして、レコード大賞2022を受賞しています。それから、山口ゼミが面白いのは、A&Rやプロデューサーとなって活躍している人も出ていることですね。業界慣習やコミュニケーションの大切さを伝えているので、スタッフ側に立っても役に立つのでしょう。海外だとA&Rとソングライターはグラデーションで繋がっています。日本もそうなっていくと思います。A&R育成をレコード会社ができなくなっているので、今だと作家でコーライティングして、リリースを重ねていく経験を踏まえて、適性がある人がやる仕事になってきているなと感じています。

この先は、グローバルヒットを増やしていく

--最後に今後10年について、山口さんはどう考えていますか?
山口:日本の音楽業界がもっと元気になっていくことに貢献していきたいです。10周年記念パーティには会員外の作家や業界関係者もたくさんいらしていただいたのですが、その場で僕は「TV発でお茶の間ヒットを狙う時代はもう終わりました。ここに集まった皆さんでグローバルヒットを連発しましょう!」と、挨拶しました。そういう気持ちで山口ゼミもCo-Writing Farmも続けていきたいですね。カナダ・トロントに生活拠点を移した副塾長の伊藤涼ともそんな風に話しています。あと10年といわず、まずは5年を目標に、グローバルで知られている日本の曲をもっと増やしていきたいです。そのためには、外国人とコーライティングすることが重要なので、機会を増やしていく、そういったマインドセットを持った人を増やしていきます。これからの音楽はデジタルとグローバルが前提だという認識を広めていくのが僕の役割ですね。

--10周年である2023年ももうすぐ終わります。

山口:グローバルな活動という意味で先駆者である、LAで活躍するヒロイズムとのトークイベントを、山口ゼミ10周年の締めくくりとしてやるので、ぜひいらしてください(イベント詳細はこちら)。彼は本気でグラミー最優秀曲賞を狙っているし、可能性は十分あると思います。たとえるなら作曲家界のイチローですね。ヒロイズムが音楽界に与えてくれる刺激はとても強いと思っています。連携を続けるつもりです。

--ぜひ、これからの展開も楽しみにしています。ありがとうございました。

【関連情報】

「山口ゼミ」10周年記念トークイベント「デジタルとグローバルの時代に作曲家が成功するために必要なこと〜グラミー賞最優秀楽曲賞受賞に向けて〜」 ゲスト:ヒロイズム
【2024/1/10(水)開講!】音楽をライフワークにしよう! 『プロ作曲家養成オンライン講座 〜山口ゼミ〜 第42期』受講生募集中!
CWFのこれまで10年と、これからの作曲家の10年

【関連サイト】
山口ゼミ オフィシャルページ
Co-Writing Farm オフィシャルページ

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