KORGから世界初となるMIDI2.0対応のキーボード、KORG Keystageが発表されました。これはMIDI 2.0のプロパティエクスチェンジに対応したもので、49鍵盤タイプ(税込み:87,450円)、と61鍵盤タイプ(97,900円)の2種類。このKeystageにはMIDI 2.0対応のソフトウェア音源、wavestate native LE(Win/Mac対応)もバンドルされており、このwavestate native LEをはじめとするMIDI2.0対応の音源を立ち上げると、即座に自動でパラメーターのマッピングを行い、8つのサブスクリーンとノブで直感的に操作可能。面倒なMIDIマッピングを行うことなく、手元で瞬時にコントロールできるのが大きな特徴です。
また、チャンネルアフタータッチ、ポリフォニックアフタータッチ、MPEにも対応しており、通常のMIDIキーボードよりも豊かな表現を行えます。オーディオインターフェイスを内蔵しているので、PCとKeystageさえあれば、そのままライブパフォーマンスも可能。ほかにも、アルペジエーターやコードモードを搭載し、wavestate native LEやAbleton Live 11 Lite、KORG Gadget Producer Bundleも付属。MIDI2.0対応という部分を除いても、完璧なMIDIキーボードとなっています。そんなKeystageについて、開発者の金森与明さん、中島啓さん、上野智子さんにお話しを伺ったので、Keystageの概要とともに紹介していきましょう。
10月25日に発表されたKORG Keystage 49鍵盤モデル(上)と61鍵盤モデル(下)
- 世界初MIDI2.0のプロパティエクスチェンジを搭載したMIDIキーボードKORG Keystage
- MIDI2.0によって変わる音楽制作
- 面倒だったパラメーターアサインが一瞬で完了
- ポリフォニック/チャンネルアフタータッチ、MPEに対応したセミウェイテッド鍵盤を採用
- オーディオインターフェイス機能を搭載しているので、PCとKeystageでライブパフォーマンスも可能
- MIDI IN/OUT、ペダル類の端子、ステレオ出力、ヘッドホン出力を搭載
- ユーザビリティを意識した、取り外し可能な拡張プレート
- PCを触らなくてもDAWをコントロールするトランスポートボタンなどを完備
- 強力なアルペジエーターやコードモードを搭載
- MIDI2.0対応の音源wavestate native LEをはじめとする、豊富なバンドル製品
- コントローラは連携が命。最適だったのがプロパティエクスチェンジだった
- ユーザーは意識することなく使えるMIDI2.0
- Macはドライバーをインストール必要はなし
- ほかのMIDIキーボードを超えるコードモードやアルペジエーター
- 基本はバスパワーで駆動。Lightning端子のデバイスと接続する際はACアダプターが必要
世界初MIDI2.0のプロパティエクスチェンジを搭載したMIDIキーボードKORG Keystage
KORG Keystageは、世界初となるMIDI2.0プロパティエクスチェンジを搭載したMIDIキーボード。最近続々とMIDI2.0対応や将来のアップデートでMIDI 2.0に対応させることを表明したMIDIキーボードやシンセサイザが発売されています。そうした中、KORGのKeystage実際に製品として流通するMIDIキーボードとして初めてMIDI 2.0機能を搭載した製品になりそうです。MIDI2.0については以前「日米合意でMIDI 2.0が正式規格としてリリース。MIDI 2.0で変わる新たな電子楽器の世界」という記事で紹介しているので参照いただきたいのですが、一言でMIDI 2.0といってもかなり多岐にわたる機能があるので、すべてに対応させるというのは現状実質不可能ですが、今回のKeystageはそのMIDI 2.0の機能の中で、プロパティエクスチェンジに対応させた、というものです。
世界初MIDI2.0のプロパティエクスチェンジを搭載したKeystage
MIDI2.0によって変わる音楽制作
ちなみにMIDI2.0について簡単に説明しておくと、MIDI2.0は1983年に誕生したMIDI1.0の次世代規格。MIDI1.0が片方向コミュニケーション、ベロシティやコントロールチェンジなど、かなり粗いデータのやりとりであり表現力という面でも限界が来ていたので、誕生したのがMIDI2.0です。MIDI 1.0との互換性を完全に保ちつつ、双方向性を実現したり、データのハイレゾ化を実現した表現力豊かな情報のやりとりが可能となっているのです。
MIDI2.0では、伝送速度を高速化したり、チャンネル数が増えたり、分解能が上がったりしているのですが、その中にプロパティエクスチェンジというものがあります。プロファイルでは、あらかじめ規格としてメーカー共通の定義を行っておくのに対し、プロパティはその機種が持っている情報をMIDI機器間で要求したり、回答するというもの。たとえば、音色リストを要求すると、それを答えてくれるような仕組みを設けることで、接続した音源の音色一覧をDAWで表示する…なんてことが簡単にできるようになるわけです。さらに、これまで各DAWで1つ1つMIDIマッピングなどを行っていたものの、プロパティーのやり取りにより、簡単に使えるようにする、といったことも可能になわけですが、これがKeystageでは採用されています。
面倒だったパラメーターアサインが一瞬で完了
具体的には、KeystageをPCに繋いだ状態で、付属しているMIDI2.0対応音源wavestate native LEを立ち上げると、自動的にパラメーターが、Keystageに搭載されているサブスクリーンに表示されるとともに、その上の8つのノブでコントロールすることができます。
8つサブスクリーンとノブで即座にアサインされるパラメーターをコントロールできる
また、OLEDスクリーンにもプリセットの名前が表示されるといった、数ステップ必要だった面倒な作業がいらなくなっているのです。
MIDI2.0の双方向性により、音源の名前もKeystageに反映される
ただ記事の後半で書いた、インタビューにもありますが、32bitの分解能といったものには対応していません。というのも、MIDI2.0のインフラや仕様がまだ整っていない部分があったこと、ハード側に対応させるシステムを搭載するにはかなりの時間がかかるということから、連携というコントローラにとって命ともいうべきところに注力したからとのこと。MIDI2.0の記事でも書いていますが、お互いコミュニケーションをとることで連携するシステムであるだけに、1メーカーの1機種が出ればOKというものではないのです。
ポリフォニック/チャンネルアフタータッチ、MPEに対応したセミウェイテッド鍵盤を採用
もちろん、KeystageはMIDI2.0をサポートしていないものでも動くので、ほかにも重要なのはそもそもMIDIキーボードとして、どのぐらい優秀かということですよね。では、MIDI2.0以外の部分についても紹介していきましょう。まず、Keystageは新開発のセミウェイテッド鍵盤を採用しているためタッチレスポンスがよく、それに加えてチャンネルアフタータッチ、ポリフォニックアフタータッチ、MPEに対応しています。これにより、膨大な数のソースをコントロールし、通常のMIDIキーボードよりも繊細なニュアンスを演奏したり、豊かな表現を行うことが可能となっています。
鍵盤を弾いてから押し込むことでさまざまな表現をつけることができる
オーディオインターフェイス機能を搭載しているので、PCとKeystageでライブパフォーマンスも可能
また44.1kH/16bitのオーディオインターフェイス機能を搭載しているため、PCやiPadといったタブレット、スマホに接続するだけで、ライブパフォーマンスを行うこともできます。また基本的にはバスパワーで駆動し、電源供給が足りないデバイスと接続する場合は、外部電源を使って動作させます。
MIDI IN/OUT、ペダル類の端子、ステレオ出力、ヘッドホン出力を搭載
リアパネルには、MIDI DIN端子がイン/アウト搭載してあったり、エクスプレッションペダル、ダンパーペダルの端子も装備。オーディオインターフェイス機能はアウトのみとなっているので、ステレオの出力とヘッドホン端子、そしてPCと接続するためのUSB端子が、ここに搭載されています。
リアにはMIDI IN/OUT、ペダル類の端子、ステレオ出力、ヘッドホン出力、USB端子が搭載されている
ユーザビリティを意識した、取り外し可能な拡張プレート
また地味に便利なのが、拡張プレートの部分。取り外し可能となっており、61鍵盤のKeystageの中心位置に斜め、並行につけれる一方、右端にも同様に取り付け可能なので、PCを置く位置として最適。しっかり考えられてデザインされているなと感じます。
PCを触らなくてもDAWをコントロールするトランスポートボタンなどを完備
もちろん、再生・停止といったDAWをコントロールするためのトランスポートボタンも搭載していますよ。
シンプルなので操作に迷うことなく、Keystageはコントロールできる
強力なアルペジエーターやコードモードを搭載
そのほか、アルペジエーターやコードモードも搭載。アルペジエーターは非常にパワフルで、ほかのMIDIキーボードをはるかに超えた機能となっています。豊富なパターンセレクションに加えて、アフタータッチがトリガーとなるラチェット、ランダム、ゲートなど、カスタマイズオプションが用意されています。さらにコードモードには、32のコードセットが用意されているので、そのまま使ったり、カスタマイズして最大32のユーザーセットスロットに保存可能。各セットには、1オクターブの半音階ごとに1つのコードを割り当てできるので、コードが足りなくなることもなし。ギターのように演奏する、ストラミングといった、さまざまな方法で再生することもできます。
MIDI2.0対応の音源wavestate native LEをはじめとする、豊富なバンドル製品
バンドルしているソフトウェア製品は、wavestate native LEとAbleton Live 11 LiteとKorg Gadget Producer Bundleのほかにもいろいろ。MIDI2.0に対応しているwavestate native LEは、チャンネル/ポリフォニックアフタータッチにも対応しているので、買ったその日からKeystageのポテンシャルを最大限引き出すことができます。なお、現時点ではMIDI2.0はスタンドアロン版のみ対応となっています。DAWとしては、Ableton Live 11 Liteが付属しており、音楽制作・ライブパフォーマンスが可能です。またAbleton LiveのDriftシンセはMPEに対応しているので、これを使って表現豊かな演奏を行うことができます。また40種類を超えるさまざまな小型シンセやドラムマシーンが収録されたKorg Gadgetの、ほぼすべての機能を使えるKorg Gadget Producer Bundleも付属しているので、かなりの数の音色を演奏することができますね。
DAW、各種音源もバンドルしているので、音楽制作やライブパフォーマンスをすぐに始めることができる
KORG Keystage開発者インタビュー
さてここからは、機種リーダーの中島啓さん、開発担当の金森与明さん、MIDI2.0システム開発担当の上野智子さんに、Keystageについて伺ったので紹介していきましょう。
左から開発担当の金森与明さん、機種リーダーの中島啓さん、MIDI2.0システム開発担当の上野智子さん
コントローラは連携が命。最適だったのがプロパティエクスチェンジだった
--いつごろからMIDI2.0対応のハードウェアであるKeystageの開発をスタートしたのでしょうか。
中島:プロジェクト自体は、3年前ごろにスタートしました。それこそ、藤本さんのMIDI2.0の記事を見て、可能性のある規格ですので、MIDI2.0を取り入れた機材を開発してみようとなったのが最初ですかね。もともとMIDIキーボードを作ろうというのは、MIDI2.0とは別で考えていたので、もしそこにMIDI2.0を取り入れるのであればなにができるかというのを考えるのが、一番初めの段階でした。MIDI2.0すべての機能を実装するには、インフラや仕様がまだ整っていない部分もあったので、まずなにを搭載するかを考えました。たとえば、プロトコルになってくると、ドライバー関連も必要になってきますし、技術的にも時間が掛かりそうと思ったんですよね。そこで目をつけたのが、プロパティエクスチェンジでした。コントローラは連携が命だと思っているので、その連携という分野が一番得意であり、もともとそういう意図で考えられたプロパティエクスチェンジが製品性的にもあっているかと思い、これを取り入れたのです。すべてに対応できれば、もちろんよかったとは思いますが、一部だけでも十分役立つ機能かなとは思います。
ユーザーは意識することなく使えるMIDI2.0
--これまでMIDI2.0に対応した機材が登場してこなかったこともあり、ほとんどのユーザーはMIDI2.0に触れる初の体験となると思います。実際に繋ぐとして、ユーザーはなにか気にすべきポイントなどはありますか?
中島:そういった細かい部分はユーザーさんに考えさせたくないので、接続すれば自動で繋がります。
上野:システム側がMIDI1.0なのかMIDI2.0なのか判断し、信号が切り替わるので、ユーザーさんはどっちが繋がっているかを知らなくても勝手に最適化されるようになっています。もしMIDI2.0で繋がっていることを確認したければ、Keystageの画面が自動で同期するので、それを見ていただければと思います。
Macはドライバーをインストール必要はなし
--面倒な設定なしにすぐ使えるのはいいですね。ちなみにKeystageを使う上でドライバー必要ありますか?
中島:Macは特にインストールするドライバーはありません。WindowsはもともとKORG USBドライバーという機種に関係なく汎用的なものを出しているので、そちらをお使いください。またオーディオインターフェイスを搭載していますので、用意しておりますASIOドライバーのインストールも必要です。
ほかのMIDIキーボードを超えるコードモードやアルペジエーター
--MIDI2.0が目立っていますが、コードやアルペジエーターもなかなか魅力的な機能に仕上がっていますよね。
金森:アルペジエーターには、ラチェットといった変わった機能も搭載していまして、加えてアルペジエーターのパターンというものを持たせています。またポリフォニックアフタータッチでアルペジエーターをコントロールすることもでき、たとえばある鍵盤だけ速くさせたりすることも可能です。音源関係なくMIDIコントローラとしても面白い見せ方ができるのではないかと思い開発しました。
基本はバスパワーで駆動。Lightning端子のデバイスと接続する際はACアダプターが必要
--ちなみにPCと接続する際は、バスパワーで駆動すると思いますが、iPhone/iPadではどうでしょうか?
中島:新しいiPhone 15や最近のiPadなど、USB-C接続であれば、バスパワーで動きます。Lightning端子のものについては、ACアダプターが必要です。
--ありがとうございました。
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