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Steinbergの楽譜作成ソフトの新バージョン、 Dorico 6登場。完璧なスコアをより素早く

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2025年4月30日、Steinbergから楽譜作成ソフトウェアDoricoの最新バージョンDorico 6が発表され、5月1日より販売が開始されました。今回のバージョンアップでは「完璧なスコアをより素早く」というコンセプトのもと、校正機能や浄書機能が大幅に強化されています。ルトスワフスキやベリオ、ストラヴィンスキーらの作品で用いられたようなカットアウェイ(非表示)譜の作成機能や、コード記号の複数行表示と延長線の対応など、特に記譜・浄書に関する新機能が充実。また、楽譜の編集中に自動的に記譜内容をチェックして問題点をハイライトする校正パネルが搭載され、リハーサルや録音現場で疑問になりそうな箇所を事前に発見できるようになりました。

さらに、任意の範囲をループ再生しながら編集結果をリアルタイムで確認できるサイクル再生機能や、ウィンドウの幅と高さに応じて組段を無駄なく表示するフィルビュー機能なども追加され、制作ワークフローが大幅に効率化されています。前作のDorico 5が再生機能の強化に重点を置いていたのに対し、Dorico 6では楽譜作成の核心となる機能に立ち返った印象です。本記事では、この進化し続ける楽譜作成ソフトウェアの最新機能を詳しく見ていきましょう。

SteinbergからDorico 6がリリースされた

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Dorico 6の主な新機能

ではさっそく、Dorico 6になって新たに追加された主な機能をチェックしていきましょう。

1. 校正機能

Dorico 6では新たに「校正機能」が搭載されました。この機能は、Write(記譜)モードで新しい「校正パネル」として提供され、スコアやパートの問題点を自動的にフラグ付けしてくれます。従来のソフトウェアでは特別なプラグインを実行してさまざまなエラーや不整合をチェックする必要がありましたが、Doricoの校正パネルは編集していないときにバックグラウンドで自動的に実行されます。

Dorico 6の目玉機能として搭載された校正機能

校正機能は以下のような問題をチェックします。

– 拍子記号に関する問題(小節が長すぎる、短すぎる、不審なピックアップ小節など)
– マーキングの欠落や余分なマーキング(同じ楽器に対する連続した同一のダイナミクス記号など)
– 楽器変更に関する潜在的な問題
– その他多数

この校正機能はDorico製品ファミリーの全メンバー(無料版のDorico SEやDorico for iPadを含む)で利用可能です。

 2. カットアウェイスコアと調整線

カットアウェイスコアは1960年代から1970年代にかけてBerioやLutoslawski、Stravinskyなどの作曲家によって先駆的に使用された記譜法です。カットアウェイスコアでは、楽器が演奏していないとき、その譜表が完全に消えます。

カットアウェイに関する設定画面

Dorico 6では、たった1クリックでこのカットアウェイスコアを実現できるようになりました。他の楽譜作成ソフトウェアでは非常に労力のかかる作業が必要なこの機能が、Doricoではシンプルなチェックボックスで有効/無効を切り替えられます。

演奏されない部分を空白化することができる

調整線(Coordination lines)も新たに追加されました。これは2つの譜表を結び、特定のエントリーや同期のポイントを強調するために使用されます。特にカットアウェイオーケストラスコアでは、エントリーが垂直方向に大きく離れている場合、これらの調整線が指揮者のパフォーマンスのコーディネートをシームレスに行うのに役立ちます。

このカットアウェイスコアと調整線はDorico Proでのみ利用可能となっています。

 3. コード記号の強化

コード記号は一見シンプルに見えますが、音楽記譜の中でも複雑な領域の一つです。Dorico 6では、Dorico 1.1でのコード記号導入、Dorico 2でのギターコードダイアグラム拡張以来、おそらく最大の改良が施されています。

複数行のコード記号表示や延長線表示も可能になった

主な改良点:
– カスタムコード記号の定義が可能に
– コード記号の外観を調整すると、そのタイプのコード記号(すべてのルート音)に変更が適用される
– コード記号専用のカーニングペアエディタの追加
– 複数行のコード記号を簡単に作成可能
– コード記号の延長線の表示

複数行のコード記号とコード記号延長線はDorico製品ファミリーのすべてのメンバーで利用可能です。カスタムコード記号と新しいコード記号カーニングペアエディタはDorico Proでのみ利用可能です。

コード記号専用のカーニングペアエディタ

 4. 浄書(エングレービング)の改良

Dorico 6では浄書に関しても、以下の大きく2点の改良が施されています。

ルーラーとグリッド

浄書モードでは、水平・垂直ルーラーとカスタマイズ可能なグリッドが追加されました。ルーラーはページ上のアイテムの位置を正確に特定するのに役立ちます。スコア上にカーソルを合わせると、各ルーラーの読み取り値がページ上のアイテムの正確な位置を示します。

グリッド表示が可能になっている

持ち替え楽器の設定

凝縮機能は2019年にDorico 3で初めて導入され、その後のリリースで継続的に改良されてきました。Dorico 6では、ダブリング奏者(複数の楽器を持ち替える奏者)の凝縮が可能になりました。例えば、B♭とAの両方のクラリネットを持つ2人のクラリネット奏者が1つの動きの中で楽器を切り替える必要がある場合、Doricoは1つの譜表にそれらを凝縮することができます。

5. ワークフローの改善

Dorico 6では、ワークフローに関してもさまざまな改善が行われています。

フィルビュー

Cubase 14で導入されたDorico搭載のスコアエディタ用に開発された特別なビューが、Dorico 6本体にも導入されました。フィルビューでは、スコアは常にウィンドウの幅に応じて動的にレイアウトされ、各システムが次のシステムの上に配置されるため、垂直方向にスクロールして作業中の音楽の完全な領域を見ることができます。

スコアを常にウィンドウの幅に応じて動的にレイアウトされるフィルビュー

サイクル再生

頻繁にリクエストされていた機能の1つであるサイクル(ループ)再生がDorico 6で導入されました。サイクルロケーターがスコアまたは下部ゾーンのキーエディタやPlayモードのルーラーに表示されます。ドラッグして位置を決め、ツールバーのミニトランスポートまたはPlayメニューでサイクルを有効にして、再生を開始するだけです。

ループ再生が可能になった

ジャンプバー

ジャンプバーは2022年にDorico 4で初めて導入され、Doricoのワークフローの隠れた便利機能の1つです。Dorico 6では、ジャンプバーがライブラリメニューの5つの主要なオプションダイアログ(レイアウトオプション、浄書オプション、記譜オプション、音符入力オプション、再生オプション)で利用可能なコマンドのほぼ全領域をカバーするように拡張されました。

ジャンプバーが機能強化された

Dorico 6のその他の改良点

ここまで見てきた通り、Dorico 6では、さまざまな新機能が搭載されるとともに、機能UPが図られていますが、そにほかにもさまざまな改良が施されています。主なものとしては、以下のようなものが挙げられます。

– 前のシステムがダブルバーラインで終わる場合にダブルシステミックバーラインを表示するオプション
– システミックバーラインでのバー番号の中央揃え
– タイ付き音符でのビームグループを分割する新しいオプション
– コード記号のルート音と6/9の外観に関する新しいオプション
– タイ付き音符上のハーモニクスやその他の演奏技法の表示オプション
– ライブラリ > 線エディタでのテーパー付き曲線のサポート
– 編集可能な歌詞の長さ
– 括弧付き演奏技法
– テンポ表示にパラグラフスタイルを使用(フルスコアとパートで異なるサイズに設定可能)
– 連符の新しい配置オプションと、Engraveモードでの括弧と数字の位置のより細かい制御

もちろん、以前のバージョンのDoricoで報告された問題の修正も多数含まれています。

 Dorico 6の入手方法

Dorico 6はパッケージ版の販売を終了し、DAC(ダウンロードアクセスコード)による販売に移行しました。以下の製品ラインナップが用意されています:

– DAC Dorico Pro 6 Retail(通常版)
– DAC Dorico Pro 6 CG Retail(クロスグレード 通常版)
– DAC Dorico Pro 6 Education(アカデミック版)
– DAC Dorico Pro 6 CG Education(クロスグレード アカデミック版)
– DAC Dorico Pro 6 Education Multi License(マルチライセンス アカデミック版)
– DAC Dorico Pro 6 Education UD Multi License(マルチライセンス アップデート アカデミック版)
– DAC Dorico Elements 6 Retail(通常版)
– DAC Dorico Elements 6 Education(アカデミック版)

既存のDorico Proユーザーは、Steinberg Online Shopからアップデート・アップグレードを購入できます。

クロスグレード版は、Sibelius (Retail, Professional, Educational, Academic)およびCapellaの正規ユーザーを対象としています。なお、Sibelius FirstやSibelius Studentなどの下位グレード版のユーザーは対象外です。Finaleユーザー向けには、Steinberg Online Shopで特別クロスグレード版が提供されています。

Doricoのパッケージ販売がなくなり、すべてオンラインでの販売に切り替わった

特別優待期間(グレースピリオド)として、2025年3月27日以降に「Dorico Pro 5/4/3.5/3/2」「Dorico Elements 5/4/3.5/3/2」をアクティベートした方は、MySteinbergを通じて無償でDorico 6を入手できます。

また、無料の「Dorico SE」(8パートまで作成可能)や「Dorico for iPad」も引き続き提供されています。Dorico Pro 6とDorico Elements 6の60日間の無償体験版もSteinbergウェブサイトからダウンロード可能です。

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以上、Dorico 6について見てきましたが、校正機能、カットアウェイスコア、コード記号の強化など、記譜や浄書機能に焦点を当てた多くの新機能が追加されました。前バージョンのDorico 5が再生機能の強化に重点を置いていたのに対し、Dorico 6では楽譜作成の核心となる機能に立ち返り、より完璧なスコアをより素早く作成できるようになっているのが大きなポイントです。

Doricoは直感的なワークフローと美しい楽譜印刷によって、作曲・編曲・演奏に集中したいというニーズに応える本格的な楽譜作成ソフトウェアです。シンプルで無駄のないユーザーインターフェース、ショートカットキーによる入力と編集、柔軟なページレイアウト機能、複数の楽曲・楽章を一元管理できる「フロー」により、効率よく快適に楽譜を作成できます。

DTMと楽譜作成の両方の要素を持つDoricoは、従来のFinaleやSibeliusといった楽譜作成ソフトとは一線を画す独自の道を歩み続けており、今回のバージョン6でさらにその地位を確立したと言えるでしょう。

【関連情報】
Dorico 6製品情報

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