M-Audio(エムオーディオ)のエントリー向けオーディオインターフェイス「M-Track Duo」が、より高音質かつ機能的に進化し、新モデル「M-Track Duo HD」として登場しました。価格は13,800円(税込)ながら、約17万円(1200ドル)相当のソフトウェアが付属するという、驚きのコストパフォーマンスを実現しています。近年、2in/2outクラスのオーディオインターフェイスはどのメーカーも値上がり傾向にあり、低価格の2in/2out製品相場は2~3万円。そうした中でこの価格設定は非常に魅力的。しかも付属するのは、おまけ的なものではなく、Ableton Live LiteをはじめとしたDAWやシンセ、エフェクトなど、すぐに本格的な音楽制作を始められる充実の内容となっています。
そんなM-Track Duo HDは、Mac、Windows、iOS、Androidに対応した2in/2out仕様で、24bit/192kHzの高解像度録音に対応。付属のUSB Type-Cケーブルで各デバイスに接続し、バスパワー駆動で使用可能です。さらに、M100コンデンサマイク、HDH41モニターヘッドホン、XLRマイクケーブルまでがセットになった「M-Track Duo HD PRODUCER PACK」も同時リリース。こちらは24,800円(税込)で、まさにこれからDTMを始めたい人にぴったりのオールインワンパッケージとなっています。実際にエントリーモデルとして最適なM-Track Duo HDを試してみたので、どのような仕様になっているのか紹介していきましょう。
アメリカ発の老舗ブランドM-Audio
アメリカ発のM-Audioは、DTM界において長い歴史を持つ老舗ブランド。かつては独立系メーカーとしてスタートしましたが、その後Avid Technology傘下となり、現在はAkaiやAlesisなどをようするinMusicグループの一員として展開されています。2021年には、M-Track DuoとM-Track Soloをリリース。両製品ともそのまま販売は継続され、今回はM-Track Duoのみがアップデートされているようです。
M-Audioの人気オーディオインターフェイスM-Track Duoがアップデートされ、M-Track Duo HDに
筐体のサイズは、高さ5.33cm、横幅19.05cm、奥行き11.18cmと2in/2outのオーディオインターフェイスとしては、一般的な大きさとなっていますが、重さは360gと樹脂製のボディーでかなり軽量に仕上がっています。デザインは、フロントにインプットとヘッドホン端子、リアに出力とUSB端子、トップパネルにボリュームツマミが付いているタイプ。この価格帯のオーディオインターフェイスでは、フロントパネルに操作ツマミが集約されている製品も多く見られますが、M-Track Duo HDはトップパネルに配置されているのが特徴。デスクに常設して使う場合、手を伸ばして直感的に操作できるので、ミックス中の調整やゲインの微調整が非常にスムーズ。日常的な使いやすさという点でも、よく考えられた設計ですね。
PCとの接続は、旧モデルであるM-Track DuoはUSB Type-Bだったのに対し、M-Track Duo HDは付属のUSB Type-Cケーブルを使用します。バスパワー駆動に対応しているため、別途電源アダプタなどを用意する必要はありません。これにより、ノートPCと一緒に気軽に持ち運べるだけでなく、デスクまわりもスッキリとまとめることができますね。シンプルながら機動力が高く、自宅から外出先まで幅広いシーンで活躍してくれますよ。エントリーモデルとして、DTMをこれから始める方の最初の1台としてはもちろんのこと、出先での録音やサブシステム用としても活用できる汎用性の高さが魅力です。
搭載されている2つの入力端子は、いずれもXLRとTRS/TSに対応したコンボジャック仕様。XLR接続では、ダイナミックマイクはもちろん、+48Vファンタム電源の供給にも対応しているため、コンデンサマイクの使用も可能です。加えて、ギターやベースを直接接続できるTS入力、シンセなどのライン機器を受けるTRS入力にも対応しており、これ1台でさまざまなレコーディングシーンに柔軟に対応できます。内部には、M-Audio独自のCrystalプリアンプを搭載。最大55dBまでクリアかつノイズの少ないゲインを確保できる設計となっており、レベルの低いマイク信号でもしっかりと持ち上げることができます。
各コンボジャックの隣には、LINEとINSTの切り替えスイッチが搭載されています。これはTRSまたはTSケーブルを使って接続する際の入力モードを切り替えるためのもので、たとえばギターやベースを直接つなぐ場合はINSTを、シンセサイザやオーディオプレイヤなどのライン機器を接続する場合はLINEに設定して使用します。また、②のコンボジャックの隣には、+48Vファンタム電源のON/OFFスイッチが搭載されています。これをオンにすることで、CH1とCH2の両方の入力でコンデンサマイクの使用が可能になります。片側だけでなく両チャンネルに同時に電源が供給される仕様なので、ステレオペアのマイクを使った収録などにも対応しています。
さらにその右隣には、6.3mmのステレオ標準ジャックによるヘッドホン端子を搭載。モニタリングの方式は、その右にある「OUTPUT」スイッチで切り替えることができます。スイッチは「DIRECT MONO」「DIRECT STEREO」「USB」の3つのモードを備えており、用途に応じて選択可能です。
「USB」を選べば、DAWを通した通常のソフトウェアモニタリングが行え、「DIRECT MONO」や「DIRECT STEREO」を選択すれば、入力音をレイテンシーなしにそのままモニター可能。特に「DIRECT MONO」ではCH1とCH2の信号をミックスしたモノラルで聴くことができ、「DIRECT STEREO」ではCH1が左、CH2が右とチャンネルが分かれてステレオでモニタリングされます。録音時のパフォーマンスにも安心して集中できる、実用的な切り替え機能ですね。
出力端子はリアパネルに配置されており、6.3mmの標準ジャックを2基搭載。この出力は3端子のTRS仕様となっているため、ノイズに強く、スタジオ用のモニタースピーカーなど、プロフェッショナルな機材との接続にも対応できる設計となっています。エントリーモデルでありながら、モニタリング環境もしっかりと整えられる点は大きな魅力です。
トップパネルには、INPUT①、INPUT②、PHONES、MONITORの4つのボリュームノブが搭載されており、シンプルながら直感的に操作できるレイアウトとなっています。また、+48Vファンタム電源の動作状態がひと目で分かるインジケーターランプも用意されており、各入力には信号が入力された際やクリップした際に点灯するLEDも備えられています。PHONESとMONITORのノブが独立していることで、ヘッドホンとスピーカーそれぞれの出力音量を個別に調整できるのもポイントです。
実際にPCと接続してみると、M-Track Duo HDはUSBクラスコンプライアント仕様となっており、Macであればドライバのインストールなしですぐに使用可能です。Windowsにおいても、ドライバなしでの動作は可能ですが、本格的なDTM用途では低レイテンシーで安定動作するASIOドライバの導入が前提となります。M-Track Duo HD専用のASIOドライバは、M-Audioの公式サイトにてユーザー登録後にダウンロード可能となっているので、使用環境に合わせて事前に準備しておくとよいでしょう。なお、旧モデルのM-Track Duoが16bit/48kHz対応だったのに対し、今回のM-Track Duo HDは24bit/192kHzに対応。エントリークラスながらも音質面での進化がしっかりと感じられる仕様となっています。
M-Track Duo HDには豪華な付属品が付いている
また、オーディオインターフェイス選びにおいて重要なポイントのひとつが、付属するソフトウェアの内容です。単体での機能はもちろんですが、すぐに音楽制作を始められる環境が整っているかどうかは、特に初心者にとって大きな違いになりますよね。その点、M-Track Duo HDには、以下のように充実したソフトウェアがバンドルされています。
Ableton Live Lite
MPC Beats
Reason+ (6-month subscription)
・Effects
Vocals: Antares AutoTune® Unlimited (2-month access)
Guitar: HeadRush ReValver
Drums: BFD Player + Dark Mahogany
Mixing: AIR Creative FX Collection Essentials
Production: AIR Jura Chorus
Production: AIR Multiband Filterbank
・Instruments
AIR Essential Keyboard
AIR Xpand!2
AIR Bassline
AIR OPx-4
AIR Tubesynth
・Samples
Splice (2-month access)
バンドルされているDAWのひとつ、Ableton Live Liteは、ループベースの作曲スタイルに特化した、非常に直感的でスピーディーな制作が可能な音楽制作ソフト。国内外の多くのプロデューサーにも愛用されており、特にエレクトロニックミュージックやヒップホップ、Lo-fiなどとの相性が抜群。Lite版ながらも、オーディオ録音、MIDI打ち込み、エフェクト処理といった基本機能はしっかり備わっており、作曲からミックスまで一通りこなすことができます。また、MPC Beatsに関しては「AKAIの無料DAW、MPC beatsで誰でもビートメイキング。多機能ミニ鍵盤MPK mini MK3との連携で威力は最大化する」という記事でも紹介しているので、こちらも参考にしてみてください。
今年リリースされたばかりのAIR Essential Keyboardsや、FM音源の進化系として人気を集めているOPx-4など、付属するソフトウェアはおまけの域を超えた本格派揃い。合計すると約17万円相当にもなる内容で、単体で購入するよりもはるかにお得です。DAWから音源、エフェクト、サンプルパックまで一通り揃っているため、M-Track Duo HDを手にしたその日から、本格的な音楽制作を始めることができるのも大きな魅力といえますね。
なお、実際にiPhone 16 ProとM-Track Duo HDをUSB Type-Cケーブルで接続してみたところ、特に問題なく動作しました。iPhone 16 ProはUSB Type-Cポートを搭載しているため、変換アダプタなどを介す必要もなく、直接接続するだけで使用可能。外部電源が不要なバスパワー駆動で、+48Vファンタム電源を使ったコンデンサマイクも問題なく動作しました。ただし、この構成ではiPhoneの充電が同時に行えないため、長時間の収録や配信を想定する場合には、PD(Power Delivery)対応のUSB-Cハブを間に挟むことで、充電しながら安定して使用することが現実的な選択肢となりそうです。
コンデンサマイクとヘッドホンがセットになったM-Track Duo HD PRODUCER PACK
冒頭でも触れたとおり、オーディオインターフェイス本体に加え、マイクとヘッドホンがセットになった「M-Track Duo HD PRODUCER PACK」も同時にラインナップされています。こちらに含まれているのは、M-Audio製のコンデンサマイク「M100」。付属品として、マイクスタンドに取り付けるためのホルダー、XLRケーブル、持ち運び用の専用ケースも同梱されています。
実際に使用してみたところ、M100は非常に標準的な特性を持ったコンデンサマイクで、クセがなく扱いやすい印象。ボーカル録音はもちろん、アコースティックギターの収録にも対応できる性能を備えており、DTM初心者のはじめの1本としては十分なクオリティだと感じました。
さらに、セットに含まれるヘッドホン「HDH41」は、密閉型でモニタリングに適した設計となっています。接続端子は3.5mmのミニジャック仕様で、6.3mmへの変換プラグも付属。仕様上のインピーダンスは公表されていませんが、実際に使用してみた限りでは比較的低めに設定されているようで、M-Track Duo HDを介さずPCやスマートフォンに直接接続した場合でも、十分な音量で再生が可能。音質面では、価格帯を考慮しても満足できる仕上がりで、特に低域の鳴り方がしっかりしていました。
オーディオインターフェイスやDAW、コンデンサマイク、ヘッドホンまでが一式揃うこの「PRODUCER PACK」は、これからDTMを始めようと考えている方にとって、非常に心強いスターターセットといえるでしょう。なお、もし「歌ってみた」など、ボーカル録音を想定している場合は、別途マイクスタンドとポップガードを用意しておくと、録り音のクオリティをさらに高めることができますよ。
以上、M-Audioの新製品「M-Track Duo HD」について紹介しました。オーディオインターフェイスをはじめ、あらゆる音楽機材が値上がり傾向にある中で、13,800円(税込)という価格で24bit/192kHz対応の高音質I/Oを手に入れられるのは、非常にコストパフォーマンスが高いですね。さらに、プラス11,000円でコンデンサマイクとヘッドホンがセットになった「M-Track Duo HD PRODUCER PACK」も展開されており、「PC以外なにも持っていないけど、これからDTMを始めたい」という方には特におすすめ。
もちろん、サブ機としても十分に活躍できる性能を備えており、エントリーモデルから次のステップに進んだ後でも、配信、外出先での録音、モバイル制作など、さまざまな場面で頼れる1台になるはずです。はじめての1台として、あるいは2台目のサブとしても。ぜひこの機会に、M-Audioの「M-Track Duo HD」をチェックしてみてはいかがでしょうか?
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