Shokzといえば、骨伝導イヤホン・ヘッドホンのパイオニアとして知られるブランドですが、近年はオープンイヤー型の完全ワイヤレスイヤホンにも力を入れています。そのShokzが、サカナクションのフロントマンである山口一郎さんをブランドアンバサダーに迎え、コラボレーションモデル「OpenFit 2+ 山口一郎モデル」が本日2026年3月3日に発売されました。ベースとなるOpenFit 2+は、独自のDualBoost技術による2基のスピーカーユニットと、Dolby Audioへの対応により、オープンイヤー型とは思えないほど豊かなサウンドを実現したモデルです。
私は以前、ShokzのAS660という骨伝導ヘッドホンを購入し、「骨伝導で音楽なんてまともに聴けないだろう」という固定概念を完全に打ち砕かれた経験があります。今でも愛用しているAS660の衝撃があるからこそ、同社のオープンイヤー型にも大きな期待を寄せていました。実際にOpenFit 2+を試してみると、その期待をさらに上回る音質で、とくに低域の再現力には驚かされました。DTMユーザーとしては「これ、モニター用途に使えるのでは?」という視点でも検証してみましたので、山口一郎モデルならではのデザインの魅力とあわせて、詳しくレポートしていきましょう。
骨伝導イヤホンで受けた衝撃、そしてオープンイヤー型へ
私がShokzを初めて体験したのは、コロナ禍の5年前。骨伝導イヤホンでありながら、音楽鑑賞が可能らしいという話を聴いて、発売されて間もないAS660を購入したときのことでした。かなり昔から、骨伝導方式の補聴器というものはあったし、骨伝導を使えば中耳や外耳に問題のある方で、普通の補聴器では音が聴けない人でも聴くことができるという意味で、スゴイ技術だ、という認識はもっていました。
でも、正直なところ「骨伝導で音楽をまともに聴けるわけがない」と思い込んでいました。ところがAS660を実際に装着して音楽を再生した瞬間、その固定概念は完全に崩れ去りました。こめかみ付近に当てたトランスデューサーから伝わる音は、想像以上にクリアで、しっかりとした音楽体験を提供してくれたのです。耳を塞がないため周囲の音が普通に聴こえるのはもちろん、長時間装着しても耳が痛くならないし、外に音が漏れる心配がゼロというのもスゴイので、AS660は今でも現役で活用しています。
そんなShokzが近年注力しているのが、オープンイヤー型の完全ワイヤレスイヤホンです。骨伝導とは異なり、耳の近くに配置した小型スピーカーから空気伝導で音を届けるという方式で、耳を塞がないという開放感はそのままに、より本格的なオーディオ体験を実現しようというコンセプトです。Shokzは10年以上にわたるオープンイヤー型イヤホンの研究開発を重ね、2025年現在で5,100以上の特許を申請しているというから、その技術力の蓄積は相当なものです。今回レビューするOpenFit 2+は、そうした技術の集大成ともいえるモデルであり、さらに山口一郎さんとのコラボレーションによって、デザイン面でも特別な仕上がりとなっています。
山口一郎(サカナクション)がShokzアンバサダーに就任
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、先日2月25日、Shokzは山口一郎さん(サカナクション)がブランドアンバサダーに就任したことを正式に発表しました。山口一郎さんといえば、サカナクションのボーカル・ギターであり、音楽プロデューサーとしても活動するアーティスト。
今回のコラボレーションのキャッチコピーは「美しいメロディーも、聞こえてほしいすぐそばの声も。」というもの。メインビジュアルやCMにも共通して使用されるこのスローガンは、音楽への没入と周囲とのつながりを両立させるオープンイヤー型の本質を、詩的に表現しています。
3月3日の通常パッケージ販売開始に先立ち、2月25日から3月1日にかけてはShokz公式サイトにて300個限定の「山口一郎 限定スペシャルボックス」の抽選受付も実施されました。また、3月3日には山口一郎さん出演のCMも公開される予定となっており、プロモーション展開にも注目が集まっています。
平林奈緒美デザイン、「0106」に込められた遊び心
OpenFit 2+ 山口一郎モデルのデザインを手がけたのは、デザイナーの平林奈緒美さんです。平林さんは山口一郎さんと継続的に協業しているデザイナーであり、今回のコラボレーションでも山口さん自身が監修を務めています。
このモデルで特に目を引くのが、デザインモチーフとして取り入れられた数字「0106」です。これは「イチ(1)・ロ(6)」と読ませるもので、「一郎」を象徴するエレメントとして本モデルに刻まれています。なんとも山口一郎さんらしい、遊び心に満ちた語呂合わせです。
さらに、イヤホンの充電ケース上蓋の内側には「No Turning back – only the becoming of what’s yet to be」というメッセージがシルクプリントで記されています。これは「元に戻るのではなく、新しくなる」という意味を持つ言葉で、山口一郎さんが病からの回復後にたびたび語ってきた表現でもあります。本コラボレーションにおいて、彼の精神性を象徴するメッセージとなっており、イヤホンを手にするたびにその想いに触れることができるのです。
通常パッケージには、OpenFit 2+ 山口一郎モデル本体に加え、山口一郎アクリルカードとカスタム巾着が特典として同梱されます。一方、300個限定のスペシャルギフトボックスは、同じく平林奈緒美さんがデザインし山口さんが監修したもので、ブラックのラバーバンドを採用した、控えめでありながら力強さを感じさせる仕上がりとなっています。ボックスにはカスタムフラップポーチも付属し、コレクション性と実用性を兼ね備えた構成です。外装には「0106-XXX」と表記されたホログラム仕様のシリアルナンバーステッカーが貼付されており、300個すべてが一点物であることを示しています。
DualBoostテクノロジーとDolby Audioが実現するサウンド
OpenFit 2+の音質面での大きな特長は、Shokz独自のDualBoost技術にあります。これは17.3mmユニット相当の超大型低周波ユニットと、独立した高周波ユニットの2基のスピーカーを搭載するという技術で、オープンイヤー型でありながら豊かな帯域バランスを実現しています。
さらに、低周波強化アルゴリズムであるShokz OpenBass 2.0にアップグレードされたことで、より力強い低音再生が可能になりました。オープンイヤー型のイヤホンは構造上、どうしても低域が弱くなりがちですが、OpenFit 2+では物理的なユニット構成とソフトウェア処理の両面からこの課題にアプローチしています。
加えて、Dolby Audioにも対応。Dolby Audioが生み出す広がりのあるクリアなサウンドにより、音楽はもちろん、映画やエンターテインメントコンテンツのあらゆるディテールを臨場感たっぷりに再現します。耳を塞がないイヤホンでDolby Audioに対応しているという点は、まさにオープンイヤー型の新しい可能性を示しているといえるでしょう。
実際に試聴してみると、オープンイヤー型にありがちなスカスカした印象はまったくなく、むしろしっかりとした音像を感じられました。中高域のクリアさはもちろんのこと、とくに低域の再現力が印象的で、ベースラインやキックドラムの存在感がきちんと伝わってきます。「オープンイヤー型=低音が弱い」というイメージを持っている方には、ぜひ一度体感していただきたい仕上がりです。
バッテリー、操作系、ノイキャンなど基本スペックをチェック
音質面の特長を見てきましたが、ここでOpenFit 2+の基本的なスペックと使い勝手についてもチェックしておきましょう。
まずバッテリーについてですが、1回のフル充電で最大11時間のリスニングが可能です。イヤホン本体のバッテリー容量は56mAh(Min)、充電ケースは600mAh(Min)という構成で、ケースからの充電を含めるとかなり長時間の使用に対応できます。さらに10分間の急速充電で約2時間分のリスニングが可能という点も、忙しいときにはありがたい仕様です。なお、Dolby Audioを有効にした状態では、バッテリー駆動時間が約2時間短くなるとのことなので、この点は覚えておくとよいでしょう。充電ケースはUSB-Cによる有線充電のほか、Qi対応のワイヤレス充電にも対応しています。
ペアリングの方法はシンプルで、初回使用時は充電ケースの蓋を開けるだけで自動的にペアリングモードに入ります。インジケーターがオレンジとグリーンに交互に点滅したら、スマートフォンやPCのBluetooth設定から「OpenFit 2+ by Shokz」を選択するだけ。2台目以降のデバイスとペアリングする場合は、イヤホンをケースに入れた状態でケース内部のボタンを3秒間長押しすれば、再びペアリングモードに入ります。
操作は左右のイヤホンに搭載された物理ボタンで行います。1回クリックで再生・一時停止、ダブルクリックで次の曲、トリプルクリックで前の曲と、音楽コントロールは直感的です。通話の応答・終了もクリックで、着信拒否はダブルクリック。音量調整は左の物理ボタン長押しで音量ダウン、右の物理ボタン長押しで音量アップという割り振りになっています。タッチセンサー式だと誤操作が起きやすいですが、物理ボタンなので確実に操作できるのはポイントが高いです。なお、片耳だけでの使用にも対応しており、左右それぞれ独立してモノラル再生や通話が可能です。
通話品質についても触れておくと、各イヤホンに2つずつ、計4つのマイクを搭載し、アクティブノイズキャンセリングに対応。AIアルゴリズムによる高度なノイズ低減処理と組み合わせることで、周囲の環境ノイズを大幅にカットし、クリアな通話を実現しています。オンライン会議の多いDTMerにとっても、これは見逃せないポイントではないでしょうか。
防水性能はIP55で、汗をかくワークアウトや小雨程度であれば問題なく使用できます。ただし、IP55は充電ケースには適用されないので、ケースの取り扱いには注意が必要です。
Shokzアプリで細かなカスタマイズが可能
OpenFit 2+は、iOS/Android向けに提供されている「Shokzアプリ」と連携することで、さまざまな設定をカスタマイズすることができます。
まず注目したいのがDolby AudioのON/OFF切り替えです。前述の通り、Dolby Audioを有効にすると臨場感のあるサラウンドサウンドが楽しめますが、バッテリー消費が増えるため、シーンに応じてアプリからワンタッチで切り替えられるのは便利です。
イコライザ(EQ)の設定もアプリから行えます。プリセットとしてはスタンダード、ボーカル、低音強化、トレブル強化といったモードが用意されていますが、DTMerとしてとくに注目したいのがEQカスタマイズ機能です。これを使うと5バンドのグラフィックイコライザーとして機能し、自分好みの周波数バランスに細かく調整することが可能。モニター用途で使う際に、特定の帯域を少し持ち上げたり抑えたりといった微調整ができるのは、制作者にとって嬉しいポイントです。
マルチポイント接続のオン/オフもアプリから設定できます。マルチポイント接続をオンにすれば、たとえばPCとスマートフォンに同時に接続しておき、PCでDAWの音を確認しつつ、スマートフォンに着信があればシームレスに通話に切り替える、といった使い方が可能になります。
さらに、物理ボタンの機能をカスタマイズすることも可能。デフォルトの割り当てが自分のワークフローに合わない場合、好みに応じて機能を変更できます。そのほか、ファームウェアのアップデート、プロンプト音量の調整、イヤホンを探す機能なども、すべてこのShokzアプリから利用できます。
DTMのモニター用途として使えるか検証してみた
DTMステーションの記事として、やはり気になるのは「モニターヘッドホンの代わりに使えるのか?」という点です。結論から言えば、条件付きで「十分にアリ」だと感じました。
まず構造的な話をすると、OpenFit 2+は耳元で鳴る小型スピーカーという位置付けです。耳道を塞がない開放型であることは、モニタリングの観点からも興味深いポイントです。密閉型のヘッドホンでは再現しにくい、スピーカーで音を出したときの空間的な感覚に近いものがあり、ミックスのバランスチェック用途としては開放型ならではの使い勝手の良さがあります。
音質面では、前述のDualBoost技術とOpenBass 2.0による低域再生が効いており、モニター的に使っても低域が足りないということはありませんでした。もちろん、スタジオモニターヘッドホンのような超精密なモニタリングを期待するのは酷ですが、ラフミックスの確認や、曲の全体的なバランスのチェック、あるいは他の人が作った楽曲を分析的に聴くといった用途には十分な実力を備えています。
ただし、注意すべき点もあります。OpenFit 2+はBluetoothイヤホンですので、DAWからリアルタイムでモニターする用途には制限があります。通常、DTM環境ではオーディオインターフェイスを介してヘッドホンに出力しますが、OpenFit 2+はBluetoothでの接続となるため、このルートは使えません。
とはいえWindowsでもMacでも、Bluetoothオーディオデバイスとして接続すれば、オーディオインターフェイスを介さずに音を鳴らすことは可能です。対応コーデックはSBCとAACの2種類。残念ながらaptXやLDAC、LE Audioといった低遅延・高音質コーデックには対応していませんが、AACはiPhoneやMacとの組み合わせで標準的に使われるコーデックであり、音質的にも十分実用的。Windows環境ではSBC接続が基本となりますが、再生して聴く分には想像していた以上にいい感じではありました。
もっともBluetooth接続だとレイテンシーが200〜300msec程度発生するため、MIDIキーボードで楽器をリアルタイムに演奏したときには明らかな遅延を感じてしまいます。これはSBC/AACいずれのコーデックでも避けられない問題で、Bluetoothオーディオの構造的な制約です。
つまり、リアルタイムの演奏やレコーディング中のモニタリングには限界がありますが、ミックスの聴き比べや楽曲のチェック、あるいは完成した楽曲の最終確認といった「再生して聴く」場面では、モニター用途として十分に活用できます。DTMerにとっては、制作のすべてのフェーズでメインのモニター環境として使うというよりも、セカンドモニターとして手元に置いておくと便利な存在といえそうです
一日中つけていられる快適さとワイヤレスの自由
モニター用途の話に加えて、DTMerにとって大きなメリットとなるのが、装着感の快適さとワイヤレスであることです。
OpenFit 2+には、Shokz独自開発のUltra-Soft Silicone 2.0素材が採用されています。イヤホンが耳により柔らかく、しっかりとフィットする設計で、長時間装着してもほとんど痛みを感じないとのことですが、実際に使ってみると、本当に装着していることを忘れてしまうほどの軽さと快適さです。イヤーフックは人間工学に基づいて最適化されたカーブを持ち、内部にはニッケルチタン記憶形状合金が使われているため、弾力性と耐久性を兼ね備え、激しい動きにもしっかりとフィットします。
DTMの作業は長時間にわたることが多く、密閉型のヘッドホンだと耳が蒸れたり、側圧で痛くなったりすることがあります。その点、OpenFit 2+は耳道を開放しているため通気性が良く、圧迫感もありません。長時間の作曲やミックス作業でも快適に使い続けることができます。
そしてワイヤレスであることの自由度も見逃せません。作業中にちょっと席を立ってコーヒーを淹れに行く、資料を取りに行くといった場面でも、いちいちヘッドホンを外す必要がありません。Bluetooth 5.4による安定した接続で、10メートルの範囲であればシームレスに音楽を聴き続けることができます。マルチポイント接続にも対応しているため、PCとスマートフォンなど複数のデバイス間をシームレスに切り替えることも可能です。
バッテリーもフル充電で最大11時間のリスニングが可能で、10分間の急速充電で2時間分のバッテリーを確保できるため、長時間の作業セッションにも対応できます。IP55の防水性能も備えているので、汗をかくような環境でも安心です。
物理的な多機能ボタンによる操作も特長のひとつです。タッチセンサー式のイヤホンでは誤操作が起きやすいですが、物理ボタンであれば確実な操作が可能です。Shokzアプリからはボタンの機能をカスタマイズしたり、5つのプリセットEQモードや2つのカスタムEQモードで音質を調整したりすることもできます。
OpenFit 2+ 山口一郎モデル 製品情報まとめ
最後に、OpenFit 2+ 山口一郎モデルの製品情報をまとめておきます。
製造元はShokz(ショックス)、製品名はOpenFit 2+(オープンフィット ツー プラス)山口一郎モデルです。発売日は2026年3月3日で、販売価格は27,880円(税込)となっています。なお、本コラボレーション製品は数量限定での販売ですので、気になる方はお早めにチェックしてください。
通常パッケージにはOpenFit 2+ 山口一郎モデル本体のほか、山口一郎アクリルカードとカスタム巾着が特典として付属します。300個限定のスペシャルギフトボックスについては、2月25日から3月1日のShokz公式サイトでの抽選受付で販売が行われました。
なお、OpenFit 2+は骨伝導イヤホンではなく、空気伝導方式のオープンイヤー型完全ワイヤレスイヤホンです。筆者のようにShokzの骨伝導ヘッドホンに馴染みのある方は混同しやすい点ですので、あらためて記しておきます。骨伝導とはまた異なるアプローチで「耳を塞がない」音楽体験を実現しているのが、このOpenFitシリーズの特長です。
サカナクションの山口一郎さんの美学が随所に反映されたこのモデルは、音楽を愛する人にとって特別な一台になるはずです。「美しいメロディーも、聞こえてほしいすぐそばの声も。」というコラボレーションのスローガンが示すように、音楽に浸りながらも日常とのつながりを大切にする——そんなリスニングスタイルを体現するイヤホンとして、DTMerにもぜひ注目していただきたい製品です。
もちろん、通常版のOpenFit 2+も販売中。価格的には同じく27,880円(税込)で、機能・性能はまったく同じです。デザイン的に好きなものを選ぶのがよさそうです。
【関連情報】
OpenFit 2+ 山口一郎モデル製品情報
OpenFit 2+(通常版)製品情報




















コメント