USB MIDI専用のコントローラーで、シンセサイザーやエフェクターなどハードウェアのMIDI機器をコントロールしたいと思ったことはありませんか?普通はコンピュータ上のDAWを経由してMIDIをルーティングするしか、方法はなさそうですが、かなり大がかりなシステムとなってしまい、持ち歩きなどを考えるととっても不便です。
そんな問題をスマートに解決するのが、ハンガリーのIntech Studioが開発した小型USB MIDIホスト「KNOT」(ノット)です。数年前に発売され、海外では大きな話題になっていましたが、先日、日本でもメトロ科学模型が取り扱い開始し、価格は17,050円(税込)と手ごろな価格になっています。今回そのKNOTを入手し、実際に試してみたので、どんなことができるデバイスなのか、紹介していきましょう。
KNOTとは——USB MIDIホストをポケットサイズに凝縮
以前、DTMステーションで「磁石で自在に拡張する新世代MIDIコントローラー、Intech Studio「Grid」シリーズが日本上陸」という記事で紹介したIntech Studioが、Gridシリーズとともに展開しているのがこのKNOTです。Gridは磁石で複数のモジュールをドッキングさせて使うフィジカルコントローラーシステムですが、KNOTはGridなどのUSBコントローラーとアナログMIDI機器をつなぐためのスタンドアロンUSB MIDIホストという位置づけの製品です。
サイズはわずか60mm×60mm×10mm、重量は約120gというコンパクトさで、手のひらにすっぽりと収まります。発売当初、イギリスの雑誌Sound On Soundにおいて「この10年で最高のMIDIユーティリティかもしれない」と評されたことでも話題になりました。
MIDIクラス準拠のUSBコントローラーであればGridに限らず幅広く接続できるし、もちろんいわゆるUSB-MIDIキーボードなども利用できるので、お気に入りのUSBコントローラーを持っているユーザーにとって、非常に導入しやすいデバイスでもあります。
端子構成とモードを確認する
KNOTの端子構成はシンプルです。
前面にはMODEボタンと3つのステータスLEDがあり、各ポートのMIDI送受信状態と現在の動作モードを視覚的に確認できます。また3.5mmのTRS MIDIの端子においては、メーカーによって配線規格が異なるものがあります(極性が逆になっている)。そうした場合でも、通常の3.5mmのTRSケーブルで接続できるよう、A/B切替スイッチというものも用意されています。
動作モードはMODEボタンで2種類を切り替えられます。
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Greenモード:USB HOSTのMIDIデータのみをTRS MIDI OUTへ送信。TRS MIDI INのデータはマージしません
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Blueモード:TRS MIDI INとUSB HOSTの両方のMIDIデータをマージして、TRS MIDI OUTへ送信
電源投入時は3つのLEDが一瞬パープルに点灯し、USBデバイスが接続された状態では一番左のLEDがグリーンに点灯します。
またこの3つあるLEDのうち真ん中はHUST HOSTから入ってきた信号を示すもの、一番右はTRS MIDI INから入ってきた信号を示すもので、それぞれMIDIメッセージを送受信するたびにホワイトの点滅が入るので、データが流れているかどうかが一目でわかるのは便利です。
MIDIノートやMIDIコントロールチェンジはもちろんのこと、MIDIクロックも通すことができるので、シーケンサなどを同期させるといった利用方法も可能です。
実際に接続して試してみた
今回はさまざまな機器を接続して動作を確認しました。
USB-HOSTポートにIK MultimediaのiRig Key 2 miniを接続
まずUSB-HOSTポートに、「とっても小さなMiniも誕生。モニター出力機能も備えた多機能キーボード、iRig Keys 2シリーズが超便利」という記事でも紹介したことのあるIK MultimediaのUSB MIDIキーボード「iRig Key 2 mini」を接続してみました。iRig Key 2 miniはもともとスマートフォンやPCとの接続を前提としたUSB MIDI鍵盤ですが、KNOTに接続することでスタンドアロンのMIDIキーボードとして機能します。
この鍵盤を弾けばTRS MIDI OUTに接続したシンセを演奏できるのはもちろんですが、プログラムチェンジボタンがあったり、4つのノブ(5-8ボタンをONにすることで8つのノブの役割を果たす)にMIDI CCが割り当てられているので、これを用いることで、シンセのフィルタなど各種パラメータを動かすことも可能となっています。
TRS MIDI OUTにNUNOMOのQUN2とKORGのNTS-1 DIGITALを接続
続いてTRS MIDI OUTには、「小さなガジェット型シンセ、NUNOMO QUN mk2はシーケンサ、ルーパー、エフェクトも備えた超多機能、高性能なスーパーシンセだった」という記事で紹介したことのあったNUNOMOのシンセサイザー「QUN2 mkII」や「手のひらサイズのシンセが大幅に機能強化して帰ってきた!KORG NTS-1 digital kit mkIIの威力」という記事で紹介したことのあったKORGの「NTS-1 DIGITAL」を接続してみました。USB HOSTに接続したiRig 2 miniからのデータをKNOTが受け取り、TRS MIDI OUTを経由してこれらの機器を直接コントロールできます。
鍵盤を弾けば演奏できるし、ノブを回せばフィルターなどをコントロールすることができます。QUN2の場合、受け取ったCCが何番であるかを表示することもできるので、わかりやすいですね。
なお、接続する機器がTRS MIDIのType AとType Bのどちらに対応しているかによって、前面のA/Bスイッチを切り替える必要があります。KORGもNUNOMOもType Bを採用しているため、NTS-1 DIGITALを接続する際はスイッチをB側に設定します。MIDIが通らない場合はまずこのスイッチを試してみると動作するようになります。
TRS MIDI INにKORGのvolca fmを接続
この状態でさらにTRS MIDI INには、「DX7を再現するvolca fmが6音ポリ対応、リバーブ搭載でより強力に。DTMとの親和性をチェックしてみた」という記事で紹介したKORGの「volca fm」を接続しました。というのも、ちょうど手元にMIDI OUTを持つ鍵盤がなかったので、贅沢にもこのvolca fmを鍵盤替わりに使っただけなのですが…。
このTRS MIDI INに入ってきた信号はUSB HOST側に届く一方、MIDI OUTに送るということも可能になっています。それがKNOTに用意されているMODEボタンです。このボタンを押すと3つ並んだ一番左のLEDを青のBlueモードか、緑のGreenモードに切り替えることができるのですが、BlueモードにするとUSB HOSTに接続したデバイスからのMIDI信号と、MIDI INに接続したデバイスからのMIDI信号をマージしてMIDI OUTを鳴らすことができるようになります。一方、Greenモードの場合は、USB HOSTからの信号だけがMIDI OUTに送られる形になるのです。
Intech Studio GridシリーズとKNOTを組み合わせる
KNOTは当然ながら、同メーカーのGridシリーズとの組み合わせで真価を発揮します。今回はVSN1、PBF4、EF44の3モジュールを接続して試しました。GridシリーズにはUSB Type-C端子があるので、それぞれをUSB Type-A-USB Type-Cのケーブルで接続して使うこともできるのですが、ユニークなのは以前の記事でも紹介した通り、それぞれを磁石でくっつけることが可能であり、自分の好きな形状にセットして使うことができるという点。
もちろん磁石でくっつけると電気的、デジタル的にも接続され全体としては1つのモジュールのようになるのです。したがって、USB HOST端子に複数のものを一挙に接続して利用することができるわけです。以下にそれぞれについて紹介しておきましょう。
VSN1
スクリーン、ジョグホイール、8つのメカニカルスイッチを備えたVSN1は、ビジュアルフィードバックを持つ唯一のGridモジュールです。KNOTを介してアナログ機器と組み合わせると、DAWなしでもパラメーターの現在値を画面で確認しながらコントロールできます。
Grid Editorを使うことでジョグホイール、各メカニカルスイッチはMIDI CCでもプログラムチェンジでも自由に割り当てることが可能。この割り当てはコンピュータを使って事前に行っておく必要がありますが、かなり高い汎用性を持ったコントローラとして利用可能です。
PBF4
4つのポテンショメーター、4つのボタン、4つのフェーダー(30mm)を搭載したPBF4は、汎用性の高いコントロールサーフェスです。これもGrid Editorを使い、各ポテンショメータにMIDI CC 71、MIDI CC 74などを割り当てておくことで、フィルターのレゾナンス、カットオフフリケンシーなどを動かすことが可能になります。
4つのボタンはデフォルトではMIDIノートに割り振られているので、とりあえず鍵盤のようにして使うことも可能。シンセコントローラーとしては大きな威力を発揮してくれそうです。
EF44
4つのエンコーダーと4つのフェーダー(60mm)を搭載したEF44は、ロングストロークのフェーダーによる繊細な操作が特長です。ミキサー的な使い方にも向いています。
それぞれのフェーダーをGrid EditorでMIDI CC 7のボリュームに割り当てつつ、MIDIチャンネルを変えることにより、マルチティンバーの音源のミキサーとして使っていくことが可能です。どう利用するかはアイディア次第ではありますが、便利に使えるアイテムです。
コラム:KNOTのファームウェアをアップデートする
KNOTはリリース以来、ユーザーのフィードバックをもとに継続的なファームウェアアップデートが行われています。そのファームウェア自体は、intech-studio.jpのサイトのDownloadのところから入手できるのですが、そのアップデート方法がわからず、最初戸惑いました。Intech Studioの本国サイトも内容はほぼ同様で、パッと見で記載されていないし、本国サイトのオンラインマニュアルにも記載がありません。
が、調べていくとIntech StudioのGitHubページ(https://github.com/intechstudio/knot)というものがあり、ここにその方法が記載されていました。
このGithubのページを見てもらうとわかりますが、このKNOT自体はオープンソースとなっており、ファームウェアのソースまで公開されているだけでなく、ハードウェアの設計もすべてオープンになっています。やる人はいないとは思いますが、基板もシャーシもすべて作れるように公開されているんですね。
そして、ここにはナイトリービルド(開発中の早期リリース版)も公開されているので、若干リスクはあるものの、試してみるのも面白そうです。
その肝心のファームウェアのアップデート方法ですが、実際にはとっても簡単。ダウンロードしたZIPファイルを解凍し、ファームウェアファイル(拡張子.uf2)を用意しておきます。次に、KNOTのMODEボタンを押しながらUSB-CケーブルでPCと接続すると、「KNOT-S3」という名前のUSBマスストレージデバイスとして認識されます。このドライブに先ほどの解凍したuf2ファイルをコピーするだけでアップデートが完了し、3つのLEDが白く点滅したら完了のサインです。
なお、ドライブ内の「CURRENT.UF2」ファイルをテキストエディタや16進数エディタで開くと、現在インストールされているファームウェアのバージョンを確認できます。また「INFO_UF2.txt」はブートローダーのバージョン情報であり、ファームウェアのバージョンとは異なる点に注意が必要です。
DAWを使わないセットアップの可能性を広げる一台
KNOTは機能をシンプルに絞り込んだデバイスですが、そのシンプルさこそが魅力です。DAWを立ち上げることなく、USBコントローラーとアナログMIDI機器を直結できる環境が、わずか17,050円(税込)で手に入ります。
「DAWless」のライブパフォーマンスやスタジオセッションへの関心が高まっている昨今、KNOTはそのシステム構築における重要なピースとなり得る製品です。GridシリーズはもちろんのことMIDIクラス準拠のUSBコントローラーであれば幅広く対応しているため、すでにお気に入りのUSBコントローラーを持っているユーザーにとっても導入しやすい製品といえるでしょう。
【関連情報】
KNOT製品情報
KNOTスターターズガイド(英語)
【価格チェック&購入】
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