小さなガジェット型シンセ、NUNOMO QUN mk2はシーケンサ、ルーパー、エフェクトも備えた超多機能、高性能なスーパーシンセだった

先日アメリカのガレージメーカー、NUNOMOからQUN mk2というコンパクトなシンセが165ドルで発売され、国内でもbeatsvilleを通じて22,800円(7月19日現在)で販売されています。NUNOMO LLCは、カリフォルニア在住の日本人、Ryan Kojimaさん(以下、小島さん)が運営するメーカーで、これまでかなり異色なギター用ペダル・エフェクトを複数種類、開発・販売してきたユニークな会社。2年前にQUNというシンセサイザを販売して話題になっていましたが、それを大幅に進化させたQUN mk2を開発し、販売を開始したのです。

私自身も先日、購入して試してみたのですが、その機能の豊富さ、高性能さに驚愕しました。価格からみてちょっとしたガジェットシンセなのかな……と思っていたのですが、信じられないほどの機能を持っているんです。ここには2つのオシレーターを持つバーチャルアナログシンセが中枢にあり、これは4オペレーターのFM音源やサンプラー、グラニュラーシンセにも変身する構造。そこに高機能なステップシーケンサが搭載されると同時に、ルーパーも搭載。ルーパーというよりは重ね録り可能な3トラック・5シーンを持つMTRで、録った音はmicroSDにWAVで保存されるという仕組み。またミキサーがあり、シンセ、ルーパーの各トラックをPANで調整することも可能。もちろん外部との同期も可能など、信じられないほどの機能を搭載しているのです。いろいろなことができすぎて、私自身まだ理解しきれていない面も多いのですが、実際どんなものなのか試すとともに、小島さんにもオンラインでお話を伺うことができたので、紹介してみたいと思います。

NUNOMOのコンパクトで超多機能・高性能なシンセサイザ、QUN mk2

3枚の基板を重ね合わせた小さなバーチャルアナログ・シンセ

QUN mk2は95mmx80mmという手のひらに乗るサイズの基板が3枚重ねになった機材。ここに鍵盤を兼ねたボタンや、液晶ディスプレイ、ノブとともにオーディオの入出力、MIDIの入出力、microSDスロット、電源用のmicroUSB端子などを備えたデジタルシンセサイザです。

シャーシはなく、3枚の基板を重ね合わせた構造になっている

どんな操作感なのか、どんなことができるのか、どんな音が出るのか、小島さんが作った2分のデモを見ると、その雰囲気、凄さが分かると思います。

いかがでしょうか?英語での解説となっていましたが、ここでの音はQUN mk2だけで作っているもので、DAWで加工するとか、DAWで録った音を重ねるといったことは一切していません。ここに搭載されているステップシーケンサで、さまざまなシンセサウンドを鳴らせて、リズムも使え、接続したMIDIキーボードでリアルタイムに演奏していくことができる……、QUN mk2はそんな機材なんです。

Play Pianoのモードにすると、8つのボタンが鍵盤の役割になり、リアルタイム演奏できる

小島さんによると「以前はアナログのエフェクトを作っていたのですが、フル機能を搭載したハードウェアのシンセが安い価格であったらいいのに……と思ったのがキッカケです。ソフトシンセだと、いろいろできるけれど、やっぱりハードとして使いたい。でも、自由度の高いシンセは、かなりすごいお金を出さないと入手できない。自分だったら、その隙間を埋められるのでは…と開発し始めたのがQUNだったのです」とのこと。ファームウェアをアップデートする形でどんどん機能を詰め込んでいき、さらにハードウェアを強化してmk2とし、さらにどんどん進化させているのです。

3つのモードを切り替えながら、操作、演奏する

では、もう少し具体的に見ていきましょう。QUN mk2には、

PLAY
SYSTEM
PARAM

という大きく3つのモードがあり、下にある3つのMODEボタンで切り替える形になっています。PLAYモードにすると、演奏したり、ステップシーケンサを組んでいくことができるのですが、SHIFT+ノブでPlay Pianoを選ぶと、8つあるボタンで演奏することができます。C4~G5まで半音ずつ割り振られているのです。が、SYSTEMモードのConfigでスケール設定をすると、さまざまなメジャー、マイナーはもちろん、ドリアン、ブルース……と数多くのスケールで演奏することも可能です。とはいえ、このPlay Pianoを選んでボタンで演奏するのだと操作性が悪いのも事実。そこでMIDI INにMIDIキーボードを接続すると、モードに限らず、演奏が可能になります。

QUN mk2のMIDI端子にBluetooth-MIDIのモジュールWIDI Masterを取り付け、microKey Airと接続

そこで、今度はPARAMボタンでパラメータモードに切り替えると、音色をエディットしていくことができます。たとえばOSC1、OSC2と2つのオシレーターをいじれるので、まずOSC1を見てみると、まずShapeで波形を選択することが可能になっています。ノブを回しながら見ていくと、

Saw(ノコギリ波)
Sine(サイン波)
S&H(サンプル&ホールド)
Squar(矩形波)
Trian(三角波)
WNoiz(ホワイトノイズ)
PNoiz(ピンクノイズ)
Saw(ノコギリ波)
FM(FM音源)
AUXR(AUX入力のRチャンネル)
AUXL(AUX入力のLチャンネル)

という選択肢があります。もう、これを見たあたりで、「わぁ、これ、ヤバいヤツだ!」って分かりますよね。さらに、このOSC1にはShapeのほかにもPluse Width、Tune(MSB)、Octave、Mod Tune、Mod Width、LFO Tune、LFO Widthといった具合にパラメータが用意されており、それぞれ細かく設定していくことが可能です。

ノブは可変抵抗型のものが採用されており、なめらかに回せる

各パラメータの値は、ノブを回して調整する形になっているのですが、これがロータリーエンコーダではなくボリュームになっているのも小島さんのこだわり。

シンセの操作感でいうと、パラメータの調整は絶対に普通の可変抵抗=ボリュームだと思うんです。ソフトシンセのMIDIコントローラでいまいちな理由はエンコーダー部分にあると感じていました。カットオフとか触るときに、ピューっと回したときに、可変抵抗なら確実にその位置に行くし、スピードも意のままで、すごく気持ちいい。だから、これも可変抵抗であることにこだわって設計しました」とのこと。

シンセのパラメータは100以上で、音作りは自由自在

さらに、先ほど鍵盤に使った8つのボタンの下をみるとパラメータモードの項目として

OSC1
OSC2
MIX
ENV1/2
SWITCH
LFO
VCF
OTHER

とあります。説明しているとキリがないのですが、ここで各パラメータとも、この可変抵抗で細かく調整できるようになっており、そのパラメータの種類は100以上。エフェクトの設定などもできるようになっています。ちなみにエフェクトはMIX=ミキサーで設定できるようになっており、Delay、Chorus1、Chorus2、Flanger1、Flanger2、Crush、Reverbのそれぞれが用意されいる……といった具合です。

FM音源の4つのオペレータの接続アルゴリズムを選択可能

なおFM音源のほうは4オペレータで、各オペレータともにサイン波で合成される形になっています。その接続アルゴリズムも数多く用意されており、A~Dのオペレータの音量、周波数を調整して音作りができるなど、思いつく機能は何でも詰め込まれているという感じです。

少々ややこしいですがENV3/4のサブモードいってButton4のEnv3 Connを触ると、一部オシレータだけEnv3・4のエンベロープにしたがいます。たとえば最初だけ金属音にして、あとは柔らかい感じなどにできます。さらにOSC1とOSC2の間にもFM変調をかけることが可能です。まあこれは飛び道具的用途がメインですが、いろいろな使い方が可能となっています」と小島さん。掘れば掘るほど、いろんな機能が出てきそうです。QUN mk2をブロックダイアグラムで表すと以下のようになっています。

QUN mk2のブロックダイアグラム

最大64ステップのパワフルなシーケンサを搭載

一方、シーケンサのほうは液晶ディスプレイを使ってパターンを組んでいきます。小さな画面で組んでいく形ではありますが、UIがとっても優れているんです。基本的には16ステップで、

となっているとすべて休符で、

とすると「ピピピピピ……」と16ステップフルで、つまり16分音符x16という形で鳴ってくれます。なんでこれが8ステップじゃなくて16ステップかというと、1つの丸が2ステップで、半円で1ステップになるため、

という形だと、8分音符x8となるわけです。さらに

というように縦縞丸、縦縞四角があり、これらを使うことで、もっと細かく刻むことが可能になっているんですね。

それが4ページあるので、最大で64ステップまで組んでいくことが可能。その上で、各ステップごとにTune、Velocity、Width……とパラメータを設定していくことができるので、かなり自由度高くシーケンスパターンを組んでいくことが可能となっています。

シーケンスパターンのVelocity設定画面

QUN mk2の肝は3TrのMTRであるルーパーにあり

さて、実はこのQUN mk2でシーケンサを鳴らしたり、MIDIキーボードで演奏において、初期設定ではモノフォニック=単音になっています。が、PARAMのOtherモードでVoiceモードを変更することで、最大4音ポリまで鳴らすことが可能になります。とはいえ冒頭のデモビデオでは、リズムも含め、複数の音が重なっていましたよね。それは、どうしてなのか?実は、ルーパーを使うことで、実現していたのです。

QUN mk2の右下にあるルーパー機能

普通、ルーパーというと、重ね録りができる簡易レコーダーで、タイミングをうまく合わせれば、キレイにループするけれど、ちょっとズレると、うまくいかない……という印象がありますよね。ところが、このルーパー、ちょっと不思議なほどにうまくできているんです。まず、Track A、Track B、Track Cと独立したトラックがあり、別々に録音することが可能になっています。たとえばTrack Aにリズムを入れ、Track Bにベース、Track Cにメロディといった感じで録れば、まさに3TrのMTR的に使え、それぞれ最大で30秒程度録音することが可能です。

A、B、Cあるトラックを選択して録音していくことができる

シーケンサで作ったパターンをバウンスするようにルーパーに入れていくことが可能で、ここに別パターンを重ねていくことができます。しかも、タイミングを狙いすましてボタンを押す……といったことは不要で、だいたいのタイミングで押せば、キレイに同期してくれます。もちろんBPMは固定しておく必要がありますが、従来のルーパーとはまったく違うものという印象。

小島さんによると「イメージとしては、シーケンサが指揮者で、ルーパーは演奏者。シーケンサを必死に見ながら手で録音、再生、巻き戻しを“今だ!”と指揮者に遅れないようにやっている形です。実はルーパーは内部ではテンポもわかっていないんです。普通のルーパーは、ルーパーがタイミングのマスターであることが多いと思います。そうしないと再生サンプル単位で合わせられないからです。それを無理やり合わせるために、MPCやAbleton Liveなどでは、微妙にタイムストレッチをするなどしているようです。ただ、これだと非常に大きなCPUパワーが必要になるし、音が劣化するのも事実です。それに対し、QUN mk2はルーパが指揮者を見ながら動いているイメージなので、タイムストレッチしなくても小節の頭で合わせることができ、音も劣化しません。厳密には微妙に途切れたり重なったりしていますが、そこは巧妙にフェードインアウトを入れて自然な形にしているんです」とのこと。相当、この部分に力を入れているようですね。

ルーパーにレコーディングされた音はmicroSDの中に48kHz/16bitのWAVファイルで保存される

ちなみにルーパーで録った音はmicroSDのフォルダにWAVファイルとして保存されていきます。フォーマット的には48kHz/16bitのモノラルとなっています。実際、これをPCに持って行って再生しても、かなり高品位な音になっているんですよね。

マスタリングまでいっているデータだと区別しにくい差ですが、シンセのように派手に編集をする時は明らかな差があるので、頑張って48kHzにしています。内部の演算は音源部はすべて32 bit floatで処理しており、ルーパーに入ってから32 bit fixedです。最後の出力の段階で48kHz/16bitに落としているため、高級な機種と比べても音質面でも見劣りしないようにしています」(小島さん)と音の面でも徹底的にこだわっているようです。

KORG volcaとSYNC信号で同期させてみた

こうしたシーケンサ、ルーパーを含め、QUN mk2をDAWと同期させたり、volcaやPocket Operatorなどの外部機器と同期させることができるのも、よくできていると感心するところ。SYSTEMモードのSYNCを見ると、QUN mk2側を設定をいろいろ変更できます。

MIDI Clockとして外部から入ってくる信号に同期する設定

デフォルトではOFFになっていますが、MIDIを設定するとMIDI Clockで外部から同期するようになります。また2PPQ、4PPQ、24PPQを選ぶと、AUX INに入ってくるクリックに同期するため、volcaなどからのSYNC信号を受けることができるのです。反対にMOUTを選択すると、QUN mk2側から外部へMIDI Clockを送って同期させる形になる、といった具合です。

オーディオ入出力のための3.5mmの端子があるが、その入力にクリック信号を入れて同期させることができる

おそらく、ここまでに紹介した機能はQUN mk2の持つ機能のさわりのところであって、おそらく全体の5%も紹介できていないと思います。シンセのパラメータは100以上あり、触れば触るほど面白さが見てくる感じ。それらのパラメータは基本すべてMIDI CCでコントロール可能となっているので、外部にMIDIコントローラを接続したり、DAWを介すことで、より自由度高く調整することが可能です。「パラメータを編集するときに、そこのパラメータでボタン長押しすればMIDI Learningモードになるので、その状態で押しっぱなしにしながらMIDIキーボードのダイアルをひねればCCがアサインされます。ほぼ全てのパラメータは演奏中に手やオートメーションで触っても音楽的に変化するようにしてあります」(小島さん)

マニュアルには、MIDI CCとして何が割り当てられているかの一覧も記載されている

英語ではありますが、小島さんによるQUN mk2のチュートリアルビデオが2本UPされているので、これを見ながら操作していくことで、だいたいの使い方のコツをつかめると思いますよ。

ファームウェアアップデートで日々進化するQUN mk2

小島さんによれば、さらに機能強化をしていきたいとのことで、ファームウェアの新バージョンが数日ごとに公開されています。それをmicroSDに入れてQUN mk2をアップデートすると機能強化されるのです。ちなみに7月19日現在のバージョンは、v3.27。どこまで強化されるのかわかりませんが、機能強化とともに、プリセット音色が追加されたりもするので、QUN mk2を入手したら、まずファームウェアのアップデートをお勧めします。

ファームウェアの新バージョンはGithubからダウンロードできる

なお、これだけの機能を持って、165ドルという低価格なこともあり、かなり品薄な状況。いま増産中とのことですが、早めに注文しておくのがよさそうですね。

売り切れ状態の場合は「再入荷通知をご登録」ボタンを押しておくと、入荷数も増えて入手しやすくなる

なお、beatsvilleの場合、在庫がなくなると「売り切れ」表示になって購入できませんが、「再入荷通知をご登録」ボタンでメールアドレス登録しておくことで、入荷するとすぐに通知がくるようなると同時に、入荷数も増える仕組みになっているとのこと。NUNOMOから直接購入することも可能ですが、その場合は個人輸入となり、送料が38ドル(約5,200円)ほどかかってしまうようです。

別デザインのバージョンも間もなく発売に!?

一方、まだ発売はしていないけれど、一番上の基板というかパネルを着せ替える新デザインパネルを作ったとの情報も得られました。これは日本人アーティストのHermippe(@komiya_ma)さんがデザインしたものとのことで、ネジを外して一番上のパネルだけ差し替えることで、大きく雰囲気を変えることができます。価格、発売日は未定ですが、詳細が分かったら、追記する形でお知らせします。

※追記 2022.7.26
先ほど、Firmwareのv3.30が公開されたので、アップデートしてみました。今回エフェクトがステレオ化が実現され、ディレイ、コーラス、フランジャーでの音の広がりが出て、サウンドの聴こえ方が大きく向上しています。それに伴いプリセットも更新されているので、併せてダウンロードしてみてください。

※追記 2022.8.28
先週、開発者の小島さんからファームウェアを3.5にアップし、UIを大きく向上させた旨の連絡があったので、先ほど最新の3.51にアップデートしてみました。すると、アイコンを使ったポップな感じで分かりやすいUIに進化し、操作性が向上していました。基本的な使い方は変わらないものの、見た目がわかりやすくなっているのです。また、このタイミングでシーケンサにリアルタイムレコーディングが可能になています。SEQ PLAY+RECでシーケンサがライブモードになり、外部接続したMIDIキーボードなどからの入力を記録可能になっているので、ぜひ試してみてください。

波形がグラフィカルに表示されるなど、より扱いやすく進化している

【関連情報】
NUNOMO QUN mk2製品情報 (日本語:beatsville)
NUNOMO QUN mk2製品情報 (英語:NUNOMO)
QUN mk2日本語マニュアル
QUN mk2 Github

【価格チェック&購入】
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