CASIOの歌うシンセ、CT-S1000VをDAWでコントロールする方法

これまで、いろいろな角度から紹介してきたCASIOの歌うシンセサイザキーボード、CT-S1000VCeVIOと同様のHMMを使った歌声合成エンジンにより、日本語でも英語でも歌わせることができるシンセサイザであり、iOSやAndroidのアプリ、Lyric Creatiorを使うことで、歌わせる歌詞を自在に設定することも可能となっています。「そのCT-S1000VをDAWでコントロールできるのだろうか?」と疑問に思っていた方も少なくないと思います。

CASIOの製品情報ページを見ても、マニュアルを見ても、この辺の情報があまり記載されていないのですが、いろいろ試してみたところ、ある程度のことができることが判明しました。100%フル活用…というところまではいかないものの、それなりに歌わせることも可能だったのです。毎週更新しているCT-S1000VのYouTube番組、「江夏と藤本のオトトーク Powered by CASIO」の第24回~第26回でその手法を紹介しているのですが、ここでは、その概要を記事として取り上げていくことにします。

CASIO CT-S1000VをPCのDAWと連携する方法をオトトークの番組ないで紹介

今年、2022年3月に発売されたものの、需要に対して圧倒的な品不足で、入手困難な状況が続いていたCT-S1000Vですが、7月に入ってようやく流通数も安定してきて比較的購入しやすくなってきました。そろそろ楽器店の店頭でもデモ機を触れるようになっていると思いますが、「とにかくすぐ欲しい」という方は記事最後の販売店リンクからも購入可能なので、チェックしてみてください。

7月に入り、ようやくCT-S1000Vが楽器店などで購入できるようになってきた

さて、そのCT-S1000Vについて、これまで本体の機能や性能、仕組みなどについて、いろいろと紹介してきましたが、ほとんど触れてこなかったのがPCとの接続性です。DTMステーションとしては、もっと早く取り上げるべきでしたし、SNSなどを通じていろいろ質問も受けていいたのですが、CASIOの担当者から「ボーカルシンセシスのほとんどの機能がMIDI System Exclusive Messageを使わないとやり取りできない」ということを聞いていたため、キッチリ検証していませんでした。

CT-S1000VとCubaseを接続して、どういう連携をしているのかチェックしてみた

とはいえ、ある程度のことはできるだろう……と思って、先日チェックしてみたところ、思っていた以上のことができたので、「オトトーク」のネタとして取り上げてみたのです。その第1回目がこちらです。

ぜひ、YouTubeのほうも見ていただきつつ、具体的にどうなっているのかをチェックしていきましょう。

まずCT-S1000Vは、今どきのキーボードっぽくMIDIの入出力は装備していません。だからといってMIDIが使えないというわけではなく、microUSB端子を通してMIDIの入出力ができるようになっています。そのためWindowsでもMacでも、このmicroUSB端子と接続すると、とくにドライバをインストールする必要もなく、MIDIの入出力が可能になります。

まずCT-S1000VのmicroUSB端子にケーブルを差し込みPCと接続

たとえばWindows上でCubaseを起動して、MIDIポートの設定画面を開いてみると、「CASIO USB-MIDI」というポートが入出力ともにあります。ここを使ってDAWとCT-S1000V間でMIDIのやりとりができるのです。つまり、CT-S1000のキーボードを弾くと、その信号がDAWに入っているので、これをMIDI録音すれば、リアルタイムレコーディングでもステップレコーディングでも可能。

ドライバ不要で、CASIO USB-MIDIという入力ポート、出力ポートが見えるようになる

反対にそのレコーディングした結果を再生して、CASIO USB-MIDIに送れば、CT-S1000Vを演奏することができるのです。

MIDIの入出力にCASI USB-MIDIを設定

ここで、MIDIのプログラムチェンジ=音色番号を変更するとどうなるのか?もちろん、これによって音色が変わっていきます。この設定はDAWによって異なるので、ご自身のDAWの使い方を確認いただきたいのですが、Cubaseの場合、リストエディタのプログラムチェンジを使うことで設定できます。もちろんこの値は1~128ですが、CT-S1000Vの音色リストを見てみると128種類というわけではありません。全部で802音色もあるんですよね?

マニュアルの音色表を見ると、プログラムチェンジ、バンクセレクトMSB、バンクセレクトLSBの表記がある

が、よく見てみると、バンクセレクトMSB、バンクセレクトLSB、プログラムチェンジの3つセットで音色を設定する形になっているのです。だから、たとえば音色番号457のSYNTH-STRINGS 1の音を出すなら

バンクセレクトMSB  36
バンクセレクトLSB  64
プログラムチェンジ  50

と設定すればいいのです。ちなみにバンクセレクトMSBはMIDIコントロールチェンジ 0、バンクセレクトLSBはMIDIコントロールチェンジ 32です。

3つのパラメーターを設定で設定

さらに、トラックを複数作り、トラック1の出力をMIDI 1ch、トラック2の出力をMIDI 2ch、トラック3の出力をMIDI 3ch……とした上で、それぞれでバンクセレクトMSB、バンクセレクトLSB、プログラムチェンジで音色を別々に設定して鳴らすと……、それぞれを同時に鳴らすことができるんですね。そう、CT-S1000VはMIDI 16chのマルチティンバー音源として使うことができるのです。

3トラックの出力先MIDIチャンネルを変えることでマルチティンバー音源として利用できる

ちなみに初期設定の状態においてMIDI 10chはドラムとなっています。が、ドラムがMIDI 10ch固定というわけではなく、先ほどの音色表を見るとバンクセレクトMSBを120に設定するとドラムになり、プログラムチェンジを使うことで、合計36種類のドラムキットを切り替えることができるようになっています。

バンクセレクトMSBを120に設定することでドラム音源として使えるようになる

こうしたマルチティンバー音源として使う方法については、第25回目の「オトトーク」でも紹介しているのでご覧ください。

なお、CT-S1000VのSETTING項目にMIDI Sync Modeというものがあり、初期設定ではOffになっています。これをSlaveにしてDAW側からMIDI Clockを送ると、CT-S1000Vのフレーズモードでの発音やアルペジエーターなどは、そのテンポに追従する形になりますよ。

MIDI Sync ModeをSlaveに設定することで、DAWのMIDIクロックに同期する形になる

さて、ここからが本題です。実は、いろいろ試していて気付いたのですが、DAWとCT-S1000Vの連携において、先ほどのようにマルチティンバー音源としてシーケンス制御できるだけでなく、LYRICSモード、つまり歌うシンセサイザ=ボーカルシンセシスとして制御することが可能かことが判明しました。

どうして気づいたかについては、上の「オトトーク」の第26回目をご覧いただきたいのですが、LYRICSボタン、INSTUMENTボタンを押したときのMIDI信号を録音したら分かったんですね。

LYRICSボタン、INSTRMNETボタンを押すタイミングでMIDIレコーディングしておく

結論からいってしまうと、先ほどのバンクセレクトMSBにおいて108、バンクセレクトLSBで0を送ってやると、歌うようになるのです。ただし、先ほどの音色設定のときもそうでしたが、バンクセレクトMSBを送っただけでは切り替わってくれず、バンクセレクトLSB、そしてプログラムチェンジを3つセットで送ることで切り替わるのです。

バンクセレクトMSB  108
バンクセレクトLSB  0
プログラムチェンジ  1

では、このプログラムチェンジは何の意味を持つのでしょうか?ここを1に設定した場合、「Do you hear the music?」と歌ってくれます。そう、いつも聴くフレーズですよね。では、プログラムチェンジに2を設定するとどうなるのか?「I know you see me」となるのです。そう、普通プログラムチェンジは音色を切り替えるのに使うものですが、CT-S1000VのLYRICSモードにおいては、歌詞を切り替えるのに使うようになっているんですね。

ボーカルシンセシスを利用するための設定

確かにマニュアルを見ると、「歌詞音色リスト」というタイトルで、歌詞一覧が掲載されており、これを見るとプログラムチェンジ番号とともに記載されています。そしてバンクセレクトMSBが108、バンクセレクトLSBが0という情報もキッチリ記載されていたんですね。

歌詞がプログラムチェンジに割り当てられている

とりあえず、現在のところ分かったのはこの辺まで。これ以上突っ込んだことはMIDI System Exclusive Messageを使わないと制御できないようで、この辺の情報の記載はマニュアルにもないため、一筋縄ではいかなそうです。が、なんとかコントロールチェンジでもう少し制御でいないか、CASIOの担当者に聞いたところ、「今いろいろ検討しているところで……」という話を聞くことができました。「なんとかお願いしたい!」と伝えてきたのですが、今後どうなるのか……。CT-S1000Vはファームウェアを更新する仕組みも搭載されているので、ぜひ、今後のアップデートでもう少しPCとの連携性を高めてくれると嬉しいと思っているところです。

【関連情報】
CASIO CT-S1000V製品情報
DTMステーションPlus! YouTubeチャンネル
CT-S1000V Challange情報

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【番組情報】
江夏と藤本のオトトーク・YouTube再生リスト

【価格チェック&購入】
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