ヤマハミュージックジャパンが、英国ROLI製品の国内取り扱いを2026年6月(予定)からスタートします。ROLIといえば、感圧式のシリコン鍵盤Seaboardシリーズや、光るキーボードLUMIなど、独自の発想で音楽表現の常識を変えてきたブランド。日本市場では、これまで代理店が変遷しており、2021年8月末以降は約4年半にわたって正規流通が途絶えていたのですが、今回の提携によって本格的な国内展開が再スタートとなりました。
今回登場する5機種は、ハンドトラッキングデバイスAirwaveが69,300円(税込)、フラッグシップのSeaboard 2が249,700円(税込)、コンパクトなSeaboard Mが66,000円(税込)、フルサイズ49鍵のROLI Pianoが108,900円(税込)、24鍵のROLI Piano Mが49,500円(税込)です。中でもAirwaveは、赤外線カメラで両手それぞれ27個の関節を毎秒90フレームでトラッキングし、空中の手の動きをそのまま音色変化に変える完全な新製品で、ヤマハMONTAGE M/MODX Mとの公式連携も実現しています。実際にどんな製品なのか、Airwaveを中心にSeaboard 2、Piano Mまで、日本で取り扱われる全ラインナップを紹介していきましょう。
ヤマハとROLIの提携で約4年半ぶりの本格再上陸
株式会社ヤマハミュージックジャパンは、英国のLuminary ROLIの製品輸入および販売元として、2026年4月21日に国内取り扱いを発表し、6月(予定)から販売を開始します。発表の同日には、都内のYamaha Sound Crossing Shibuyaにて記者発表会が実施されました。
この発表会のMCを務めたのはYouTuberであり音楽評論家でもある、みのミュージックのみのさんで、音楽プロデューサーのShin Sakiuraさんによる実際のパフォーマンスも披露されました。
販売チャネルは、ヤマハ銀座店、ヤマハミュージック 横浜みなとみらい、ヤマハミュージック 名古屋店、ヤマハミュージック 大阪なんば店といった直営店のほか、全国のヤマハ特約店となっています。また、Yamaha Sound Crossing Shibuyaでは実機の展示が行われ、各店舗で随時試奏が行えるようになります。初年度は直営店とシンセサイザに知見のある特約店を中心に展開し、2年目以降に販売網を拡充していくという段階的な計画を立てているとのこと。
現在のROLIの製品は、Seaboard、Piano、そしてAirwaveという3つの軸で構成されており、AirwaveはヤマハのMONTAGE MやMODX Mとの公式連携が実装されるなど、今回の提携は単なる代理店契約の刷新にとどまらず、技術協業を伴う本格的な連携となっています。
音楽を解放するという理念を掲げて17年、ROLIブランドの歩み
ここで簡単に、ROLIというブランドそのものの歩みについても触れておきましょう。ROLIは2009年にローランド・ラムさんがロンドンで創業した音楽テクノロジ企業。ローランド・ラムさんは、高校卒業後に日本で禅仏教を実践し、その後ハーバード大学で古典中国哲学とサンスクリット哲学の学位を取得したという異色の経歴の持ち主です。さらにロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートでプロダクトデザインの修士号を取得しており、在学中に従来の離散的な鍵盤の制約に不満を抱いた経験から、感圧式の連続表面というSeaboardのコンセプトを発明しました。
製品ラインナップの歴史は、2013年9月に発表されたSeaboard GRANDから始まりました。その後、2015年のSeaboard RISE、こちらは10年前にDTMステーションでも「5次元で操作する、まったく新たな楽器、ROLI Seaboard RISEはDTMに何をもたらすのか」という記事で紹介しましたね。2016年から2017年にかけて展開されたBLOCKSシリーズ、2019年のLUMI Keys、2022年のSeaboard RISE 2、そして2024年のAirwaveへと続いていきます。映画「インターステラー」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」などの劇伴を手掛ける巨匠Hans Zimmerさんや、「Oblivion」などのヒットで知られる気鋭のアーティストGrimesさんらが愛用者に名を連ねています。さらに、世界的な大ヒット曲「Happy」知られるトッププロデューサPharrell Williamsさんは、2017年秋から最高クリエイティブ責任者としてブランドに関わっています。
順調に見えるブランドの歩みですが、その道のりは決して平坦ではありませんでした。2019年と2020年に赤字を記録し、2021年9月にROLIは日本の民事再生手続きに相当する法定管理を申請しています。しかし、同年にROLIから知的財産や資産を引き継ぎ、Luminary ROLIとして再出発。今回ヤマハと契約した正式社名Luminary ROLIは、この経緯から来ています。その後、同社はハンドトラッキング技術のリーダーであるUltraleapの技術を活用して今回の主役となるAirwaveを開発。その密接な連携と成功を経て、2025年11月にはUltraleap社そのものを買収するに至ったのです。
空中の手の動きを音楽に変える注目のデバイス、ROLI Airwave
それではAirwaveから紹介していきましょう。Airwaveは、ROLIが提唱する「Spatial AI for music(音楽のための空間AI)」というプラットフォームの中核となるハードウェア。簡単にいえば、両手の動きを赤外線カメラで捉えて、その動きを直接サウンドのパラメータに変換する楽器。グローブやウェアラブルセンサのようなものを一切装着せず、机の上に置いたAirwave本体の前で手を動かすだけという手軽さが大きなポイントです。
技術的な核となっているのは、デュアル赤外線カメラとROLI Vision技術によるハンドトラッキングです。両手それぞれ27個の関節を毎秒90フレームという速度で追跡し、手の動きを精緻に捉える仕組みになっています。ハードウェアとしての仕様を見てみると、本体サイズは221(幅)× 122(奥行き)× 369(高さ)mmで、重量は812gです。インターフェースには3.5mm TRSヘッドホン出力、3.5mm TRSペダル入力、データ用と電源用の2基のUSB Type-Cポート、そして対応ハードウェアを連結するための磁気USBポートを備えています。クラスコンプライアントのMIDIデバイスとして機能するだけでなく、Airwave自体がオーディオインターフェースとしても機能する設計になっており、電源には付属の65W USB Type-C PDアダプタを使用します。
冒頭にも書いたように価格は69,300円で、発売日は2026年6月(予定)。製品にはクリエイタ向け(Airwave Create)と学習者向け(Airwave Learn)の2系統が用意されています。今回国内で展開されるクリエイタ向けのバンドルには、Airwave本体に加えて専用プラグインのROLI Airwave PlayerやROLI Studio、さらにはUSB Type-Cケーブル3本、65W電源ブロック、サスティンペダル用の変換ドングル、2個の磁気アダプタ、クイックスタートガイド、カメラ部分のクリーニングクロスが含まれています。
導入にあたっては、対応OSの制限に少し注意が必要。Mac環境ではmacOS 13 Ventura以降を搭載したApple Silicon(M1以降)モデルが必須となり、Intel製Macはサポートされていません。また、Windows環境ではWindows 11およびAVX2対応プロセッサ(IntelまたはAMD)が必須となり、Windows on ARMには非対応となっています。互換キーボードについては、現行のROLI Piano、Seaboard 2、Seaboard M、Piano Mはもちろん、他社製のMIDIキーボードとも幅広く組み合わせることが可能です。ただし、ROLI製品でも初代モデルであるSeaboard GRANDのみ非対応となっています。
6つのジェスチャで音色をコントロール
Airwaveの最大の特徴は、カメラが捉えた両手の動きを6種類のジェスチャに分類し、それぞれをMIDIコントロールチェンジとして送信できる点にあります。
| ジェスチャ名 | 説明 |
| Air Raise |
両手を上方に持ち上げる動作。
音の初期動作やレイヤの追加などに使用します。 |
| Air Tilt |
手を外側に回転させる動作。
フィルタ周波数など物理的なノブの操作に最適。 |
| Air Glide |
鍵盤上で手を左右に滑らせる動作。
既存ノートの音質変調やステレオ感の調整などを行います。 |
| Air Slide |
鍵盤の手前から奥へ手を移動させる動作。
ほかのジェスチャで生成された音に変調を加えます。 |
| Air Flex |
手のひらを下に向ける、または手首を曲げる動作。自然な手首の動きを音に反映させます。
|
| Air Grasp |
拳を握りしめる動作。
ノートの段階的または完全なカット、スタッカート的なリズムの生成に有効。 |
これらのジェスチャには、デフォルトでMIDI CCの21〜31番の範囲が割り当てられます。たとえば「左手の傾き(Air Tilt)にCC 28番」「右手の傾きにCC 29番」といった具合です。両手の動きが独立して信号として送信されるため、一度に複数のパラメータを立体的かつ同時にコントロールできるわけです。
これを使えば、たとえばコンデンサマイクと連携させて、リバーブやピッチシフターといったエフェクトを掛け、そのパラメータをAirwaveの各MIDI CCにアサインすることで、自分の声を手の動きで音色コントロールを行うことができます。また、シーケンストラックと組み合わせた場合、シーケンサで音を鳴らしながら、両手を動かすことで、直感的に立体的で多次元なパラメータコントロールも可能。発想次第で、視覚的にも面白いパフォーマンスが行える、無限の可能性を秘めた機材となっているのです。
また、同梱される専用プラグイン「ROLI Airwave Player」には、160種類ものサウンドプリセットが内蔵されています。これらのプリセットは、最初から6つのジェスチャに直感的に反応するようにマッピングされているため、面倒な設定なしですぐに空間演奏を楽しむことができます。もちろん、汎用的なMIDIコントローラとしても優秀です。このROLI Airwave Controlという専用ソフトを使えば、サードパーティ製のソフトシンセやDAWに対しても、各ジェスチャを任意のMIDI CCに手動でマッピングすることが可能です。
ヤマハMONTAGE MおよびMODX Mとの公式連携を実現
前述しましたが、ヤマハの最新シンセサイザであるMONTAGE MおよびMODX MシリーズとAirwaveの連携が公式に実装されています。従来はシンセサイザ本体のノブやスライダを操作する必要があったサウンドコントロールを、空中での手の動きだけで直感的に行うことが可能となり、演奏表現の自由度が大幅に向上しています。
この連携プロジェクトのために、世界トップクラスのサウンドデザイナであるDom SigalasさんやMarcus Levy-Chanceさん、そして湯川敦夫さんらによる32種類のAirwave専用プリセットが制作されました。オーケストラやアナログベースなどのプリセット名が並んでおり、MONTAGE Mシリーズを所有しているユーザーは無料でダウンロードできます。連携の世界初デモは2025年11月からロンドンのYamaha Music Londonで行われており、今回の日本展開でもこのヤマハ製シンセサイザとの組み合わせが大きな見せ場になっています。
5D Touchの真価を引き出すフラッグシップ、Seaboard 2
続いてはSeaboard 2を紹介していきましょう。Seaboard 2は、もともと「Seaboard RISE 2」として発表されたモデルがブランド統合に伴い改名されたもので、基本的なハードウェア性能は同一。シリコン製の「Keywave2」と呼ばれる表面素材により、単なる押鍵だけでなく、指を滑らせる、揺らす、押し込むといった動作で音を連続的に変化させられます。
本体は49鍵仕様で、寸法は幅83.4cm、奥行き21cm、高さ2.3cm、重量は5.5kgで、アルミニウム製の堅牢なシャーシを採用しています。インターフェースには3.5mm TRS MIDI出力、標準フォンプラグのペダル入力、データと充電を兼ねたUSB Type-Cポートを備えるほか、Bluetooth MIDIにも対応。内蔵バッテリーによって最大8時間のワイヤレス駆動が可能です。内蔵音源は持たない純粋なMIDIコントローラとなっています。
ROLIが提唱する5D Touchは、従来の鍵盤における打鍵の強さという一次元の表現に対し、5次元の連続的な表現を可能にするというコンセプト。打鍵時の強さを意味する「ストライク」、鍵盤を横に滑らせてピッチを操る「グライド」、指を縦方向に動かして音色やフィルタを変化させる「スライド」、押し込みによるポリフォニックアフタータッチとなる「プレス」、そして離鍵時の速度を検知する「リフト」。これら5つの要素を、すべての鍵盤で独立してコントロールできるというわけです。
そして、この5D Touchの真価を引き出すのがMPE(MIDI Polyphonic Expression)です。MPEは和音の各音に対して独立してビブラートなどの表現を加えられるMIDIの拡張規格であり、ROLIはこのMPE規格策定の中心企業として、Seaboardを史上最も売れたMPEコントローラへと押し上げてきました。対応DAWもCubaseやLogic Pro、Ableton Liveなど主要なソフトをしっかりと網羅しており、MPE対応のソフトシンセも今や数多く存在します。
旧モデルである初代Seaboard RISEからの大きな進化点としては、鍵盤の表面にギターのフレットボードから着想を得た「プレシジョン・フレット」という細い突起が追加されたことが挙げられます。これによって、指先の感覚だけで鍵盤の中心を見つけやすくなり、演奏の安定感が格段に向上しました。さらにバンドルソフトも豪華で、1,400以上のプリセットを内蔵したフラッグシップ音源のEquator2や、ROLI Studio、Ableton Live Liteなどが同梱されています。
持ち運べる24鍵モジュラー版のSeaboard M
Seaboard 2と同じ思想を、もっとコンパクトに持ち運べる形にまとめたのがSeaboard Mです。もともとは「Seaboard Block M」として発売されていたモデルで、24鍵のミニチュアサイズのKeywaveを搭載した携帯版という位置付けになります。
寸法は幅282mm、奥行き141mm、厚さわずか25mmで、重量は650グラムという軽量な設計です。Bluetooth接続に対応し、バッテリー駆動で最大10時間使用できます。標準のピアノ鍵盤より狭いキー幅でコンパクトにまとめられていますが、Seaboard 2と同じ5D Touchによる豊かな表現力をしっかりと実現しています。
このSeaboard Mで個性的なのは、側面に独自のマグネット式「DNAコネクタ」を搭載しており、最大4台まで連結して96鍵まで音域を拡張できる点。ユーザーのワークスタイルやデスク環境に合わせて柔軟に拡張できる設計思想が貫かれています。バンドル内容としてはROLI Studioなどが付属しますが、上位機種に付属するEquator2は同梱されない点がSeaboard 2との違いとなります。MIDIキーボードの中でも際立って薄く、デスク上でまったく場所を取らない設計は、まさに現代のDTMネイティブに向けたデバイスが登場したと感じさせる洗練された仕上がりですね。
LUMIから生まれ変わった光るMPE鍵盤、Piano MとROLI Piano
最後に紹介するのは、Piano MとROLI Pianoという2つのキーボードです。これらはかつてLUMIブランドとして展開されていたシリーズが進化したもので、全鍵盤に鮮やかなRGBバックライトを搭載しているのが特徴です。
Piano Mは24鍵のミニ鍵盤モデルであり、独自設計のレンズによって均一に発光します。標準のピアノ鍵盤より12.5%狭いコンパクトな設計ですが、キーストロークはグランドピアノに近い10mmを確保しています。重量は677gで、バッテリー駆動で最大6時間使用できます。押し込みによるポリフォニックアフタータッチや各鍵盤独立のピッチベンドに対応しており、Seaboard Mと同様に側面のマグネット式DNAコネクタで複数台を連結して音域を拡張することも可能です。
Piano Mには、バックライトの光り方をカスタマイズできる4つのモードが用意されており、音楽制作のナビゲーションとして活用できます。
| モード名 | 特徴 |
| Piano Mode |
エボニーとアイボリー配色のシンプルな設定
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| Pro Mode |
ピッチベンドとアフタータッチを有効化し、音階のルート音をハイライトする設定
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| Stage Mode |
フルカラーRGBで打鍵時にフラッシュする光の演出を行う設定
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| User Mode |
数百万通りの色から完全にカスタマイズできる設定
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一方のROLI Pianoは、Piano Mをあらゆる面で発展させた上位機種にあたります。フルサイズのセミウェイテッド鍵盤を49鍵搭載し、すべての鍵盤にRGBバックライトと各鍵独立のピッチベンド、ポリフォニックアフタータッチを備えています。寸法は幅700mm、重量は約3.5kg。サスティンペダル入力や3.5mm TRS MIDI出力端子なども装備しており、ROLI Pianoの充実したバンドル内容は以下のようになっています。
・ROLI Studioソフトウェア
・ROLI Dashboardソフトウェア
・USB Type-Cケーブル2本
・30W電源アダプタ
・MIDI変換ケーブル
・サスティンペダル変換アダプタ
・クイックスタートガイド
これらの製品は学習用アプリであるROLI Learnとの連動も視野に入れて設計されています。さらにAirwaveと組み合わせることで、「ROLI Vision」技術が演奏時の指のフォームや手の位置を3D空間で精緻に捉え、AI学習コーチである「AI Music Coach」がリアルタイムでフィードバックを返すという、まったく新しい音楽学習のシステムも提供される予定です。
なお、すべてのROLIハードウェアはROLI Connectという専用ソフトで統合管理されており、各ハードウェアに付属するROLI Studioは複数のサウンドエンジンを統合した楽曲制作スイートであり、和音の演奏をサポートする機能やアルペジエータ、ドラム音源などを備えています。これらソフトウェア群の充実も、ROLI製品の大きな魅力ですよ。
以上、ヤマハミュージックジャパンによるROLI製品の国内取り扱い開始と、国内初登場となるAirwaveを中心とした全5機種のラインナップについて紹介しました。両手の動きで音を操るAirwave、5D TouchでMPE時代の表現を切り拓くSeaboard 2、持ち運びに便利なSeaboard M、光る鍵盤で新たな体験を提供するPiano MとROLI Pianoなど、それぞれ異なるアプローチで音楽の自由度を高める構成となっています。とりわけAirwaveとMONTAGE MやMODX Mとの公式連携は、ハードウェアと空間コントロールの融合という新しい形を示していますね。これらの製品は2026年6月(予定)から発売され、ヤマハ直営店や特約店で購入可能です。気になる方はぜひ店頭で実際に触れてみてはいかがでしょうか?
【関連情報】
ROLI公式ページ



















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