先日、知人から「ユニークなスピーカーを作っている会社がある」と紹介され、面白半分でビフレステックという会社に行ってきました。ビルの入り口でフロアを確認すると、1フロア違いでCDマスタリング・システムなどで有名なスタート・ラボが入っていたので、「おや?」と思ったのですが、聞いたところ、ここはスタート・ラボから分離独立した会社なんだとか…。たった15人の小さい会社ではあるのですが、会長はCDの父中島平太郎さんで、メンバーの大半はソニー出身者。長寿命のDVD-RメディアやDVDライターを開発するほか、リチウムイオン・キャパシタの応用技術を開発するなど、R&Dに特化したユニークな会社です。

その事業の一つとしてスタートさせたのが、タマゴ型のスピーカー。ソニーでスピーカー開発を長年行ってきたという茶谷郁夫さんが開発したものなのですが、ユニークな見た目と同時に、そこから飛び出す不思議な音場にビックリ。実際お借りして、ウチのDTM環境でも試してみたのでちょっと紹介してみましょう。


とっても不思議でいい音がするタマゴ型スピーカー、TGA-1B1
私自身、そんなにオーディオに詳しいわけではありませんが、一般的にいい音の条件として、スピーカーでもアンプでも“重い”ことが常識になっていますよね。だから場合によってはコンクリートや鉄を使ったりもするわけですが、このタマゴ型スピーカーTGA-1B1は、とても軽く、今までの常識をすべて覆すような不思議な製品です。


タマゴ型スピーカーを開発した茶谷郁夫さん

お客さんから、箱鳴りのしないスピーカーを作ってくれ、と言われ、何かいい方法はないかと考えていたのです。そもそも四角い箱だから箱鳴りするわけなので、タマゴ型に思い当たったのです。昔からタマゴ型は軽くて丈夫な形としても知られていますし、以前からタマゴ型のスピーカーというのをいくつか見かけていたので、自分の木工技術を駆使して試作してみたところ、とても面白い結果が現れました」と茶谷さん


後ろ側を見てもキレイなタマゴ型。大きさは恐竜のタマゴサイズだそうです。

長年のスピーカー開発経験の中で見たことがないほど、剛性が高く、Qが低い振動だったのだとか…。「タマゴ型にしたことで、キャビネットの鳴きが少なく、高域になるにしたがって共振が減る。静かでキャビネット臭さがなく、気持ちいい響きを実現できました」(茶谷さん)

さすがに手作りの木工スピーカーでは限界もあるので、これをプラスチック製にするとともに、社内のアイディアもあって形も黄金比に従って作り直したそうです。それより、見た目で不思議に感じたのは、音が出る部分がカバーでふさがれているように思えること。コーンがどこにあるのだろう、と茶谷さんに聞いてみると。
 

音の出口がふさがっているのかと思ったら、実はこれが振動版だった!

この正面の丸い部分がスピーカーの振動板なんですよ。触っても大丈夫です」と言われ、音を出している最中にちょっと触れてみると、なるほどここが震えています。構造的にみて、振動板まで含めてタマゴ型を実現しているのです。聞いてみると、振動板の表面にはスクラッチシールド塗料(引っかき傷をつけても、自然に修復されてしまう塗料。以前、私もテレビで見たことがあります)なるものが塗られており、人間の皮膚に近いものになっていて、その結果音質もよくなっているそうです。また、大きさ的には恐竜のタマゴのサイズに仕上げるとともに、1Wayのフルレンジのスピーカーになっているとのことです。


東和電子のスピーカー(左)もタマゴ型スピーカーの仲間です。
ただ普通のコーン型のスピーカーが入った形なので、タマゴ型の本領は発揮できていないのだとか 

実際に音を聴かせてもらって、さらにビックリ。2つのスピーカーの間にふんわり浮かんだ音の空間ができあがっているんですよ。「何だこれ!?」というのが最初の印象。音質的にもすごくいいのですが、その空間の中に頭を持っていくと、すごい立体感が感じられます。

いま、多くの人がMP3などの音で満足し、音に広がりが出ないヘッドホンで音楽を聴いています。でも、それではせっかくの耳が退化してしまいますよ。もっと広がりのある、音場というものを多くの人に楽しんでもらいたいとの思いで、このスピーカーを作ったんですよ」と茶谷さんは力説します。



タマゴ型スピーカーを私のDTM環境に設置してみた 

この音の空間があまりにも面白いので、お願いして1週間ほど貸してもらいました。改めて持ってみるととっても軽く、本体が1つ0.9kgで、スタンドをセットにしても約1.0kg。私が普段使っているモニタースピーカー、YAMAHAのMSP5 STUDIOと比較してもとてもコンパクト。まあ、パッシブスピーカーなのでアンプが必要ではありますが、これで音を出してみると、やっぱり、目の前に不思議な音の空間が浮かび上がります。こんなスピーカーほかにないですね……。


MSP5 STUDIOと比較するとかなり小さく軽い

15W+15Wのスピーカーシステムだから、家で音を出す分には十分な音量。かなり音量を上げていっても箱鳴りというのはまったくありません。MSP5 STUDIOと比較すると低域のボリュームは少なめですが、解像度はめちゃめちゃ高いので、モニタースピーカーとしても最適ですね。ミキサーでパンを動かしたりときの左右の動き、リバーブをかけていったときの前後の動きがすごくリアルなのが面白かったです。

個人的には、これのアクティブスピーカーができたら、さらに嬉しいなと思った次第。生産量が少なく、ほぼ受注生産に近い状況なため2本セットで105,000円といいお値段ではあります。「もっと数が出せれば、価格も落とせるのですが…」と茶谷さん。値段は少し張りますが、このタマゴ型スピーカーで実現できるサウンドの世界は十分それに見合う魅力を感じます。

なお、都内では視聴する場所もあるそうですから、興味のある方はぜひ、音を聴いてみてくださいね。