先日、ドイツ人のボーカロイドPである、Kentai-Pのインタビューを掲載しました。海外ではまだマイナーな存在であるボーカロイドですが、これに可能性を感じ、ドイツで音楽制作を続けていることにちょっと感激しましたが、今回はアメリカ人のボーカロイドPであるTempo-Pを紹介してみます。

Tempo-Pはボストン生まれ、カリフォルニア育ちの日系アメリカ人。ルーマニアにいるピアニスト、NeutrinoP(ニュートリノP)とのVOCALECT VISIONSというユニットを作り、これまで80作を超えるという作品をYouTubeなどに発表しています。その一方で、初音ミクのホログラムを用いたコンサートイベントをアメリカを中心に展開するなど、幅広い活動を行っているとのこと。その活動内容などをいろいろと伺ってみました。


アメリカで幅広く活動しているTempo-P
--もともとボーカロイドと出会ったキッカケなどを教えてください。
Tempo-P:ボーカロイドを始めたのは2009年です。以前から自分もバンドでギターを弾いて歌ったり、そのバンドの曲を作ったりしていたのですが、誰も聴いてくれなかったんですよね。そんな中、10歳下の妹がなぜか初音ミクのパッケージソフトを買ってきたんです。ところがまったく使っていなかったので、これを使ってみたら結構面白かった。で、自分で曲を作ってYouTubeにUPしてみたところ、人が聴いてくれるんですよね。これは楽しいぞ……、と。

--そこからボーカロイドPとしての活動が始まったのですね。
Tempo-P:はい。当初Macを使っていたのでDAWはGarageBandでスタートし、Logicも使って作っていたのですが、アメリカにいて一人で作るのはなかなか大変でした。そこで、誰か一緒に制作活動をしてくれる人はいないだろうかと探してみたんです。ただ、当時アメリカでボーカロイドを使っている人を見つけることはできませんでした。そんな中、3年前にルーマニアにいるNeutrinoP(ニュートリノP)と出会ったのです。

 
アメリカのTempo-PとルーマニアのNeutrinoPのユニットVOCALECT VISIONSの楽曲「Lemon Ice Bar」

--NeutrinoP、あ、以前、AHSの尾形友秀社長から何度か話を聞いたことがありますね……。
Tempo-P:彼はルーマニアのプロのピアニストだったのですが、病気がキッカケで半身不随となってしまいピアニストとしては生きていけなくなってしまった。そうした中で、ボーカロイドに出会い、これを利用すればミュージシャンとしてやっていけるのでは…と活動を始めたところだったんです。そこで、僕が手伝うよ、一緒に曲を作らないかと持ち掛けた結果できたのがVOCALECT VISIONSというユニットです。NeutrinoPが曲を作って、僕が日本語か英語の歌詞を作るというスタイルで、2011年から活動を始めています。

--なかなかすごいストーリーですね。アメリカとルーマニアでやりとりして曲を作っているとは……。頻繁に会ったりもするのですか?
Tempo-P:これまで3年間いっしょにやっていますが、さすがに距離が遠いため、まだ1度も会ったことがないんです。実はこの後、初めて彼に会いに行くんですよ!すごくワクワクしますね。
※注:このインタビューは3月に行われたドイツ・フランクフルトのMusikmesseの会場で行いました。Tempo-Pはアメリカからドイツ・フランクフルトを経由してルーマニアに行っています。


Tempo-PにはMusikmesseの会場で話を伺いました

--VOCALECT VISIONSの曲を聴いてみると、結構いろいろなボーカロイドキャラクタが登場してきますね。実際のライブラリとしては何を使っているのですか?
Tempo-P:クリプトンの初音ミク、鏡音リン・レン、巡音ルカのほか、AHSの猫村いろはmiki結月ゆかり、またインターネットのGUMIの英語版やがくっぽいどなど、いろいろ使っています。NeutrinoPの楽曲での使い方としては、複数の異なるボーカロイドをミックスさせて使うケースが多いんですよね。

 
結月ゆかりを使った楽曲「Cosplay Day」

--そのVOCALECT VISIONSは、最近はどんな活動をされているのですか?
Tempo-P:これまで通り、NeutrinoPと曲制作を行う一方、ボーカロイドをもっとアメリカで広められないかと思い、コンサート活動をしています。というのも、2人で作った曲を発表しても、海外においてはどうしてもインパクトが弱いのです。やはりアメリカ人にとっては、日本語の曲だと歌詞が分からない上に、映像が画面の中でチョコチョコと動くだけでは楽しく思ってもらえないのです。また日本のクリエイターを待っているだけでは広がりません。こっちで作ると楽しい、それを味わってもらいたいという思いがあるんです。そこで、もっとダイナミックに動く、アメリカナイズされたボーカロイドが必要だろうと、コンサートを企画し、サンフランシスコ、LA、バージニア、テネシー……と全米を回っています。

--具体的にはどんなコンサートなのですか?
Tempo-P:かなりアメリカ風ですよ。まずはアメリカ人にボーカロイドのコスプレをして踊ってもらっています。そこで盛り上げつつ、そこからホログラムに入っていくという流れですね。MCも踊りもアメリカ人のチームで考え、行っていて、ボーカロイドをまったく見たことないという人たちにも楽しんでもらっています。


アメリカ人がボカロコスプレで踊ったり、ホログラムが踊ったりするコンサート
(写真はVOCALECT VISONSのFacebookページより) 

--実際、アメリカでのボーカロイドの認知具合というのはどうなのですか?
Tempo-P:一般的にはとても低いのですが、アニメ系のコンベンションなどにいくと、初音ミクなら95%の人たちが知ってますよ。そうしたところでVOCALECT VISIONSのイベントを行いながら、よくみんなに質問をしているのですが、ボーカロイドという名前はかなり浸透していますね。でも、ボーカロイドが何をするものなのかを知っている人となると30%程度、そしてボーカロイドを使ったことのある人となると、数パーセントといったところです。そこで、ボーカロイドの声を聴かせ、ホログラムでの踊りを見せると、「こんなハイテクなものがあるとは信じられない」といったコメントをいっぱいいただきますよ。いまはスタッフの数も増えてきて、テクニカルディレクタ、エンジニア、そして踊り子さん達といろいろいてVOCALECT VISIONSはプロダクショングループという感じになっています。


VOCALECT VISONSのアルバム「Vocaloid Vacation」、iTunes Storeでも扱っている 

--曲制作をしつつ、コンサートイベントも行っているというのは、すごいですね。
Tempo-P:これまで頑張ってこれたのは、NeutrinoPのおかげです。彼のストーリーに感動し、手伝えないかと思ったのがスタートで、その後いろいろな人たちと出会え、このコンサートなどアイディアも広がってきました。今後もこうした活動で、彼の生活が楽になってくれたら……と思っています。もっとも現状は、僕もゲームメーカーで働きつつ、休日などにVOCALECT VISIONSの活動をしているという、いずれはこれを本業にしたいんですけどね。


今後はヨーロッパにも活動の場を広げていきたいというTempo-P 

--今後はどのような活動をしていくのですか?
Tempo-P:現在はアメリカでの活動が中心ですが、今後はヨーロッパなどにも広げていきたいですね。またNeutrinoPは曲からスタートし、コンサート活動を支えてくれ、いずれはアメリカにも行きたい!と言っているので、ぜひいつかアメリカに呼んで、いっしょに仕事ができたらいいなと思っています。

--ありがとうございました。ぜひ、これからも頑張ってください。期待しています。

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