進化は止まらない。国産DAW、ABILITYが2.0へ大きくパワーアップだ!

インターネット社が開発してきた歴史あるソフト、Singer Song Writterの進化版として2014年に登場し、DTMステーションでも何度か取り上げてきた国産のDAW、ABILITY。そのABILITYが5月19日、メジャーバージョンアップし、ABILITY 2.0となります。

 

製品として登場するのは上位版のABILITY 2.0 Proと標準版のABILITY 2.0 Elementsの2種類。いずれもSinger Song Writerで培ってきた日本文化的MIDI数値入力の世界は継承しつつ、最新の64bitテクノロジーをベースに、高品位なサウンドクォリティを実現し、オーディオ、MIDIそれぞれの機能・操作性を大幅に向上させています。そのABILITY 2.0の発売前の直前バージョンを入手し、試すことができたので、どんなソフトになっているのかを紹介してみましょう。


大きく機能向上した国産DAW、ABILITY 2.0 Pro


名称からも分かると思いますが、ABILITY 2.0 ProはABILITY Proの後継、ABILITY 2.0 ElementsはABILITY の後継という位置づけであり、従来通りWindows専用(Windows 7、8/8.1、10をサポート)で、64bit、32bit環境それぞれネイティブで動作するDAWとなっています。


日本のDTMの伝統 、レコンポーザ方式の数値入力エディタは継承

 

これまでも海外勢のDAWと切磋琢磨しながら進化してきたABILITYなので、思いつく機能は、すでにほぼ網羅していたわけですが、今回また面白い機能がいっぱい搭載されてきました。そのDAWとしての機能自体はProもElementsも基本的に同じであり、主な違いは以下の表のとおり。

Pro Elements
ミキサー
AUDIOトラックのRecエフェクト
INSERTION EFFECT Pre/Post×各8 Pre×各8
同時使用可能なVSTi数 64 16
収録VSTエフェクト
Sonnox EQ / LIMITER / REVERB ×
Sonnox De-Buzzer / De-Clicker / De-Noiser ×
Guitar Rig 5 Player( KOMPLETE ELEMENTS) ×
8BAND EQ / IR REVERB / LINEAR PHASE EQ ×
MULTIBAND DELAY / MODULATION DELAY ×
LINEAR PHASE MULTIBAND COMP / VST Rack ×
F-REX / Vocoder / Vocoder SC / Loudness Meter ×
収録VSTインストゥルメント
BFD Eco / Grand Piano Model D ×
Kontakt 5 Player(KOMPLETE ELEMENTS) ×
Reaktor 5 Player (KOMPLETE ELEMENTS) ×
LinPlug SPECTRAL / CrX4 / RMV / Saxlab2 ×

 

つまり主な違いはバンドルされるVSTエフェクトとVSTインストゥルメントの違いと、ミキサー部で掛け録りできるか否か、同時使用可能なVSTインストゥルメントの数が違うだけなので、どちらを選ぶべきかはここから判断すると良さそうですね。

 

では、今回のバージョンアップのポイントを見ていきましょう。まずは音質向上という点についてです。いま、世の中のDAWは32bit-FLOATというのが話題になっています。日本語にすれば「32bit浮動小数点処理」というもので、これによってオーディオ処理による音質劣化をなくして高音質化を実現するというもの。しかし、ABILITYでは64bit-doubleという内部処理をしているんです。こちらを日本語化すれば「64bit倍精度浮動小数点処理」というもので32bit-FLOATを遥かに凌駕する仕様となっているんですね。

 

しかも最大24bit/192kHzまでのオーディオフォーマットをサポートするとともに、その処理スピードも64bit環境、32bit環境(混乱しそうですが、ここでいう64bit/32bitは先ほどのFLOATの話とは無関係で、OSやCPU処理の話ですね)で最適化が図られ、高速化しています。


ステップシーケンサを搭載 

 

では機能のほうはというと、新たに追加されたのがステップシーケンサ。EDM系の楽曲を作る上で重要ということで、DAWへの搭載も増えてきているステップシーケンサがABILITYにも搭載されました。基本的には16ステップのシーケンサだから、ステップのボタンをクリックしていくだけで、簡単にリズムやシーケンスパターンを作っていくことが可能です。最小32音符の細かな音符入力も可能になっており、各ステップごとにGate TimeやDeviation、Velocityの設定も可能。そうして、作ったパターンはソングに入力してループ素材として利用できるなど、非常にスピーディーな制作が可能になっているのは嬉しいところです。


レコーディングしたオーディオデータをアシッダイズできる機能を新たに搭載 

 

ステップシーケンサでパターンを作るだけでなく、録音したオーディオデータもループ素材として活用可能にするアシッダイズ機能が搭載されたのもABILITY 2.0の大きなポイントです。リズムでもベースでも、ピアノでも、場合によってはボーカルでも、1小節分とか2小節分を切り出して、アシッダイズを行うと、ループ素材化されるので、テンポを変更してもそれに追随するし、キーを変更すれば、それに合わせて音程も自動的に変わるので、かなりいろいろと活用できそうですよ。


ビートエディタにクォンタイズ機能が搭載された 

 

このリズム関連でいうと、オーディオのリズムの乱れの修正やミスタッチ部分の差し替えなどの編集が行えるビートエディタにクォンタイズ機能が追加された、というのも見逃せない点です。ジャストなタイミングや自然なニュアンスを残しながら発音タイミングの補正や修正が簡単にできるようになっています。


複数のエフェクトのチェインを1つのVSTのようにして管理できるVST FXラック

一方で複数のエフェクトを1つのエフェクトとして扱えるVST FXラックというものが搭載されました(Proのみ)。「まずコンプで潰した上で、ディレイをかけて、EQで調整して、コーラスをかける…」など自分で編み出したエフェクトチェインのワザを持っている人も少なくないと思いますが、最大8つまでのエフェクトをラックにマウントした状態で1つのエフェクトとして扱える機能が搭載されたのです。しかも各エフェクトは個別にオートメーション操作ができるなど、非常に融通が利く仕様となっています。


ボーカルエディタにビブラートを調整・付加する機能が搭載された 

 

そのほかにもボーカルエディタへのビブラート機能の実装やMIDI編集機能の強化、自動バックアップ機能の搭載……とさまざまな機能強化がされているのですが、やはり目立つのはプラグイン部分の充実なので、この点についても見ていきましょう。


ABILITY 2.0 Proにバンドルされるドラム音源、BFD Eco 

 

目玉となるのはfxpansionのドラム音源として人気の高いBFD3のライト版ともいえるBFD Eco。BFD3についてはDTMステーションでも何度か記事にしているので、そちらも参照いただきたいのですが、ロンドンのエアースタジオで収録された音源を中心に、40種類のプリセットが入ったというものです。国内で単体で購入すると15,000円程度の音源がABILITY 2.0 Proにバンドルされているんですね。

UVI Grand Piano Model Dもバンドルされる
さらにSteinway Concert Grand Model Dのバーチャルピアノ音源であるUVI Grand Piano Model Dがバンドルされたのも重要な注目ポイントでしょう。マイクにNeumann U67を使用してマルチサンプリングされた高精度の音源。こちらは単品で9,500円程度で販売されているものです。


コンプレッサとゲートを統合したCompGate

一方、インターネット社オリジナルのプラグインエフェクトも9種類追加されました。もともと、評判のいいエフェクトが数多くありましたが、そこにさらに以下のものが追加されたわけです。個人的には、IR REVERBなどがかなりよくできているな、という印象でした。


実際の場所での音の響きを再現できるサンプリングリバーブ、IR Reverb

さて、ここで興味を持った方にお知らせしておきたいのが現行版のABILITYや旧製品となるSinger Song Writerなどからバージョンアップに関して。いずれも優待販売がされるのですが、価格の面で重要になるのが申し込み時期なんです。飛行機の早割のように通常割引のほかに早割があり、さらにすぐに申し込めば超早割という制度があるんですね。具体的には以下の表のとおりとなっているので、買うつもりがあるのなら、早く申し込むのがよさそうですよ。

<ABILITY 2.0 Proへのバージョンアップ・優待販売価格(税抜き)> 

  ABILITY 2.0 Proパッケージ版へ ABILITY 2.0 Proダウンロード版へ
所有ソフト 通常 早割(2W) 超早割(2W) 通常 早割(2W) 超早割(2W)
ABILITY Pro 19,000 17,000 15,000 18,000 16,000 14,000
SSW10Pro 24,000 22,000 16,000 23,000 21,000 15,000
SSW9Pro 25,000 23,000 18,000 24,000 22,000 17,000
Singer Song Writer 9 Pro 12ヶ月 32,000 30,000 24,000 31,000 29,000 23,000
SSW80VS/60V/50VS 32,000 30,000 24,000 31,000 29,000 23,000
ABILITY 32,000 30,000 24,000 31,000 29,000 23,000
SSW10/9Std 32,000 30,000 24,000 31,000 29,000 23,000
SSW80/70/60/50/40 32,000 30,000 24,000 31,000 29,000 23,000
SSWLite4/5/6/7/8/9 32,000 30,000 24,000 31,000 29,000 23,000
その他(VOCALOIDなど) 32,000 30,000 24,000 31,000 29,000 23,000


<ABILITY 2.0 Elementsへのバージョンアップ・優待販売
価格(税抜き)

  ABILITY 2.0 Elementsパッケージ版へ ABILITY 2.0 Elementsダウンロード版へ
所有ソフト 通常 早割(2W) 超早割(2W) 通常 早割(2W) 超早割(2W)
ABILITY Pro 14,000 12,000 10,000 13,000 11,000 9,000
SSW10Pro 16,000 14,000 12,000 15,000 13,000 11,000
SSW9Pro/80VS/60VS/50VS 18,000 16,000 14,000 17,000 15,000 13,000
ABILITY 14,000 12,000 10,000 13,000 11,000 9,000
SSW10Std 16,000 14,000 12,000 15,000 13,000 11,000
SSW9St/80/70/60/50/40 18,000 16,000 14,000 17,000 15,000 13,000
SSWLite4/5/6/7/8/9 18,000 16,000 14,000 17,000 15,000 13,000
その他(VOCALOIDなど) 18,000 16,000 14,000 17,000 15,000 13,000

 

超早割期間 4月19日~5月6日15時まで
早割期間 5月6日 15時~ 5月19日15時まで
通常期間 5月19日15時以降

ちなみに「つい先日ABILITYを買ったばっかりなのに……」なんてガッカリしている方も大丈夫。今年の3月16日以降に旧バージョンであるABILITY ProもしくはABILITYを購入した人(バージョンアップや優待版も含む)は無償でABILITY 2.0 Pro、ABILITY 2.0 Elementsにアップグレードされるますよ。ただしパッケージを購入した人も、ダウンロードでの対応となるそうです。

なお、これとは別にちょっと面白いサービスもあります。それはDTMステーションでも何度か取り上げてきたRolandのマルチ音源、Sound Canvas VAのセット割です。ABILITY 2.0 ProおよびABILITY 2.0 Elementsとセットで購入すると、5,000円で買えちゃうんですね。Rolandから直接購入すると14,000円ですから、かなりお得ですよね。


今回のバージョンアップに加え5,000円でSound Canvas VAのWindows版がGETできる

ただし、このセット割で購入できるのはWindows版のみでMac版はバンドルされていません。もちろんABILITYとの相性はすごくいいので、これで使えるほか、ほかのソフトでもVST環境であれば使うことが可能ですよ。
Windows版のみで、それもABILITY専用バージョン。とはいえ、ABILITYで使うことが目的であれば、すごいお買い得。このチャンスにセットで購入するというのも良さそうですね。
※内容に誤りがあったため上記、修正しました。ご迷惑をおかけしました(2016.4.25)

【関連情報】
ABILITY 2.0製品情報
ABILITY 2.0バージョンアップ、優待販売

【関連記事】

 

Commentsこの記事についたコメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です