SPIREというソフトシンセをご存知でしょうか?EDM系の世界では、ここ最近よく話題になる音源であり、SERUM(Xfer Records)、Nexus2(reFX)、Massive(Native Instruments)、Sylenth1(Lennar Digital)などと並んで評される定番音源。WindowsおよびMacのVST、AU、AAXの64bit/32bitで動作する、まさに今風なシンセサウンドを出せる音源です。

突き刺さるようなリードサウンドから、FutureBASSのキラキラ系サウンド、図太いシンセベースなど、EDMの即戦力としてすぐに活用できるものとして、使われています。すごく音作りがしやすい音源であるだけに、EDMに限らずさまざまなジャンルでの活用が可能なのですが、これまでは海外サイトからドル決済で購入するしかなかったのです。しかし7月からディリゲントが輸入代理店として取り扱う形で、国内で正式発売され、日本語でのサポートも受けられるようになりました。価格も23,000円(税別)と手ごろなSPIREを使ってみたので、どんな音源なのか紹介してみましょう。


Reveal Soundのソフトシンセ、SPIRE
SPIREは2013年にリリースされたソフトシンセで、Reveal Soundというメーカーが開発・販売しているものです。ちなみに冒頭の画像は、3Dレンダリングしたフェイクであって、本物は以下のような画面ですよ!


Windows、Macのプラグインとして動作するSPIREの画面はこんな感じ

画面の色は5種類のテーマが用意されていて、以下のようなものもあります。


テーマを変えると、こんな感じの画面にもなる

機能的な話はともかく、まずは以下のデモサウンドを聴いてみてください。



どうですか?なかなかグッとくる攻めているサウンドですよね。これはファクトリープリセット1の128音色の中からいくつかの音色を用いたデモなのですが、ファクトリープリセット2のデモが以下のビデオです。



これを聴いただけでも、「すぐ欲しいかも!」なんて思ってしまいますよね。こんなサウンドを作り出すReveal Soundって、どこのメーカーだろう…と同社サイトを見ても情報がないんですよ。ディリゲント担当者に聞いてみても「実によくわからないんです。が、調べてみたところ中南米のベリーズに登記されている会社みたいですね。ただ、開発はどうやらロシアみたいですよ」、とのこと。


ディレゲントが扱う形で国内正式発売となった

ベリーズってどこにあるんだっけ…!?」と地図で調べちゃいましたが、なんとも怪しい感じですよね。おそらくは、実体はロシアだけど、カモフラージュのために中南米を経由して発売しているのでしょう。とはいえ、そんな得体のしれない会社と取引できるのだろうか…と思ったら、「実は、間に1社入っているんですよ。だから、Rveal Soundの人とは直接会ったことはないし、やりとりはメールで、しかも担当者名を一切記載しないんですよ。あくまでもチームとしてのコミュニケーションなんですよね…」とディリゲント担当者。

まあ、会社の実態がどうであれ、イイものはイイ!この音源自体は、実際に使ってみても、すごく使いやすい音源なのです。


約800種類の使えるプリセットサウンドが用意されている

まずは前述の通り、プリセットが充実していて、即戦力となる音色がいっぱい。現時点で、ファクトリープリセット1~7の計約800種類の音色が用意されており、ちょっと選んで、キーボードを弾いて鳴らすだけで、グッと来てしまいます。プリセットを鳴らしているだけで、楽しくてすぐに1日終わってしまいそうです。基本的にポリフォニックのシンセサイザですが、誰もが最初に鳴らすであろう攻めたサウンドプリセット、001番、002番はモノフォニックなってますね。


SPIREでの信号の流れは左から右へ

構造としては左から右へと信号が流れる形になっているので、その流れを追っていけば音作りが可能です。シンセを使った経験のある方なら、すぐに理解できると思いますが、簡単に紹介してみましょう。


INITボタンをクリックして、初期化し、ゼロから音を作っていく

まず音作りを学ぶ上でポイントとなるのが、MENUの隣にあるINITボタン。うっかり押してしまいそうな、こんな場所に、初期化ボタンがあるのもSPIREの面白いところ。ユーザーに音色を作らせたいという意思の表れなんでしょう。これを押すと、ブーというシンプルなノコギリ波サウンドになります。


6種類のモードを持つオシレーターが4つ搭載されている

最初にいじるべきが、左上にあるオシレーター。これはOSC1~OSC4まで4つ同じものが独立して存在しています。それぞれにClassic、Noise、FM、AMSync、SawPWM、HardFMの6種類のモードがあり、この切り替えによってまったく違う音源になります。たとえばClassicはノコギリ波と矩形波をモーフィングしていくもの、FMはDXのような周波数変調、SawPWMはノコギリ波に矩形波のパルス幅で変調をかけるかなり攻めたものですね。普通FMというと、なかなか音作りが難しいのですが、このオシレーターではFMに限らず、基本的にCtrlAとCtrlBの2つのパラメータを動かすだけで、イイ感じに音が作れてしまうのが、SPIREの特徴。そのため、あまり理解しなくても、適当に触ってみるといいですよ。


楽器系のサンプリング波形もある程度、用意されている

また、この下にミックスしたりかけ合わせたりするための、ウェーブテーブル音源も用意されています。ピアノ、ギター、オーボエ、オルガン……とオーソドックスなサンプリング音を使うこともできるわけです。


ユニゾン機能では複数のボイスに割り振り、detuneパラメータでピッチをズラすことで音を厚くする

こうして作ったオシレータを、さらに味のあるものに仕立てるのが右にあるユニゾン機能。オシレータ部で作った音を2つとか3つとか、同時に鳴らしたうえでそれぞれのピッチを微妙にズラすデチューンを行うと、厚く奥行きのあるサウンドに変化します。この際、オクターブをズラすなんてこともできるんですね。


wideパラメータで音に広がりをつけていく

さらにシグナルコントロール部にあるwideというパラメータを上げていくと、ユニゾンサウンドが左右に分かれ、まさに広がりのあるステレオサウンドになっていきます。いわゆるイメージエンハンサーとも違うし、PANでもない、おぉ!と感激する音の拡がり方。SPIREの要の機能の一つかもしれません。


独立した2つのフィルターを装備

そして、その右には音色づくりの主要部分を司るつのフィルターがいます上がFILTER 1、下がFILTER 2で、基本的にそれぞれのカットオフと、レゾナンスの2つのパラメータをいじるだけなので、使い方はいたって簡単です。なのに、これが、またすごいサウンドを作り出すんですよね。その理由は、ここに単なるローパスだけでなく、5種類のフィルターモードがあり、2つのフィルターで別々に設定できるようになっているのです。


5種類のまったく異なるタイプのフィルターを搭載

その5種類のフィルターとはPerfecto、Acido、Infecto、Scorpio、Comboのそれぞれ。でも聞いたことない名前ですよね!?私もちゃんとは理解できてないのですが、たとえばPerfectoについて、マニュアルの説明を見ると「アナログとデジタルフィルタータイプの最高の特性を組み合せたユニークなアルゴリズムです。幅広いサウンドに最適です」とあり、これを選ぶと、さらに LP4、 BP4、HP4、Peakというタイプ選択ができる構成になっているんです。どれを選べば、どんな音作りができるのか、少し研究してみたいとわからないですが、かなり面白そうですよね。


画面下にはエンベロープジェネレーター、LFO、ステップシーケンサ、アルペジエーターなどがある

一方で、下にもさまざまなモジュールが並んでいます。そうボタンで切り替えることができるようになっているのですが、エンベロープジェネレータが独立して4種類、LFOも独立して4種類があります。さらに、シーケンサが2種類、アルペジエータが1つと、並んでいて、これらを使っていくことができるのです。


マトリックス機能を使い、ソースとターゲットを自由自在に決めていくことができる

でも、どうやって使えばいいのでしょうか?それを決めるのがマトリックス機能です。ここれは、エンベロープジェネレーターの1をオシレータ2にかけるとか、LFO3をフィルター1にかけるとか、ソースとターゲットを自由自在に割り振ることが可能なので、音作りはまさに自由自在となっているのです。


音を歪ませるShaper

そして一番右にあるのが、エフェクトです。「エフェクトなんて、DAWでかければいいのに…」とも思うところですが、SPIRE内蔵エフェクトがあるからこそ、この今風のサウンドに仕立て上げられるというのも否定できない事実。


テンポとのSync機能もあるディレイ

具体的にはShaper、Phaser & Vowel、Chorus & Flanger、Delay、Reverbが用意されていて、それぞれを組み合わせて使えるほか、最終段にはマルチバンドコンプと3バンドイコライザが用意されていて、これで最終的な音を決めるんですね。


最終段のマルチバンドコンプと3バンドイコライザ。画面は3Dレンダリングしたイメージ画像

使い方はシンプルで分かりやすいけれど、ものすごく奥が深い音源という感じですね。でも、プリセットを使えば、即実践的に使えるし、Reveal Soundからは音色データ集も販売されているので(これは直接購入になる)ので、これらを使ってみるのもいいかもしれません。

なお、このSPIREの無料体験版も配布されています。この体験版もソフト自体は製品そのものなのですが、30秒ごとに「ザーー」というノイズが乗るようになっています。購入して得られるキーファイルを読み込ませれば、このノイズが止まる仕掛けになっているんですね。まずは、この体験版を試してみてはいかがでしょうか?

【関連情報】
Reveal Sound SPIRE製品情報

【購入サイト】
◎ディリゲント・オンラインショップ ⇒ SPIRE
◎beatcloud ⇒ SPIRE
◎サウンドハウス ⇒ SPIRE

【体験版ダウンロード】
SPIRE体験版