7月23日、金沢で、CubaseファンミーティングPROが開催された
CubaseファンミーティングPROの主催者である、楽器店van vanの舟崎康介さん
「年々人数が少しずつ増えていったほか、4年前にはnishi-kenさん、3年前にはnishi-kenさんとGReeeeNのプロデューサーであるJINさんにも参加いただき、ゼロから短い曲の制作する実演をしてもらうイベントに発展しました。さらに昨年からはヤマハさんにも後援していただくとともに、Fresh!での配信を行うなど、かなり大規模になってきたんです」と舟崎さんは説明してくれました。
当日の様子はFresh!のSOUND ROASTERで配信され、今も約4時間にわたった内容をすべて視聴できる
ゲストが増えると、それだけ時間も長くなってしまうため、昨年からは生徒さんの発表会を「CubaseファンミーティングLE」そして、プロミュージシャンのゲストを交えてのイベントを「CubaseファンミーティングPRO」と分離し、日にちを分けての開催になったんだそうです。
トップバッターはロンドンでアルバムリリースしたというU-KOHさん
最初に登場したU-KOH(ユーコ @u_koh_musique)さんは19歳にして、ロンドンのネットレーベル「TIMESLAVE recording」からアルバムリリースをしたばかりという人物。80’sサウンドのリバイバルとして注目されている「シンセウェーブ」というジャンルの楽曲制作をしているとのことで、そのアルバムに収録されている曲のプロジェクトが披露されました。聴いてみると確かに80’sサウンドという感じで、シンセTOMにゲートリバーブを掛けた音、ベースにサイドチェインでキックを突っ込んだ音などを、その作り方を解説してくれました。
ヴィジュアル系ロック編として登場した立石恁さんは、VIENNA ENSEMBLE PROの活用術を披露
各発表内容に対してYUC’eさん(左)、鈴木ヒロトさん(中)、kors k(右)がコメント
[鈴木ヒロトさんPROFILE]プロデューサー/ビートニックス取締役メジャーアーティストへの楽曲提供、編曲、プロデュースを中心に、 CM音楽、劇伴、アートワーク、ついてはその全工程におけるディレクションまでこなす、気鋭のサウンド・プロデューサー。これまでに数多くのヒット作品を手がけ、2009 年には倖田來未「Lick me」で日本レコード大賞優秀作品賞を受賞。 2014年4月に音楽制作会社ビートニックスを設立。近年では都内のクラブを中心に DJ としても活動の幅を広げ、ジャンルを問わず数多くのプロデュースに携わっている。

CAFUNEの3人は全員がCubaseユーザーであるため、ネットを介した共作を行った
続いて3番目は、地元金沢の音楽制作集団、CAFUNE(カフネ)のメンバーのうち、ボーカルのLapuさん、ギターのKoji Kitayamaさん、ベース・プログラミングのshu-flatzさんの3人が登場。3人ともCubaseユーザーとのことで、ネットを使ってデータをやり取りしつつ、LINEでのコミュケーションで楽曲を作っていった過程を公開してくれました。今回の曲は、結局1度も顔を合わさず、それぞれ自宅での作業だったのだとか……。最初のプロジェクトから、どのように曲が変化していったのかなども見せてくれる面白いプレゼンテーションとなっていました。
今回の発表で最年少、15歳のGOROPIさんは、かなり激しいDUB STEPを披露
4番目に登場したのは15歳の高校生、GOROPI(ごろぴ @goropi_)さん。大人しそうな少年なのですが、飛び出してきたサウンドにビックリ。バッキバキなDUB STEPサウンドで、プロジェクトを見ると、音源にSERUMを使い、パラメータをオートメーションで動かしたり、SAUSAGE FATTENERで太い音にするなどの処理をしていました。
川本将史さんは、ほくりくアイドル部の17人のボーカル処理について解説してくれた
そしてユーザー作品発表の最後は川本将史(@sscmacchi)さんによるアイドルソング作りが披露されました。楽曲はドラム、ベース、ギター、ストリングス、キーボードにベルなどを組み合わせた爽やかなバンドサウンド。ここにご当地アイドル「ほくりくアイドル部」のメンバー17人のボーカルを録っていたのですが、各トラックにはメンバーの名前が。実は、レコーディング自体は、エンジニアさんがスタジオで行っていたのですが、これもCubaseで行っているため、そのプロジェクトデータを川本さんのプロジェクトにインポートする形で合体させたとのこと。その上でVariAudioでボーカル編集を行うなど、アイドルグループならではの制作術を見せてくれました。
Cubaseのプロジェクトをバックに、ほくりくアイドル部のメンバー5人が歌って、踊る
この川本さんの楽曲再生においては、麻里亜さんほか5人のメンバーがステージ上に登場し、歌って踊りながらの披露となりました。Cubase画面をバックにアイドルが躍るというのは、なかなかシュールな感じでもありましたが、会場は大盛り上がりとなりました。
Cubase Pro 9機能を余すとこなく使い、画面にも凝ったプロジェクトを舟崎さんが見せてくれた
後半はゲストのkors kさん、YUC’eさんがそれぞれのプロジェクトを公開し、解説
[YUC’eさんPROFILE]作詞・作曲・編曲・歌・ミックスまで1人で行い、ライブやイベントで都内を中心に活動。 高校時代に海外に留学し音楽の授業を専攻した経歴を持つ。2015年にYUC’eとしての活動を開始。2016年に発表したFuture Cαndyが大反響を呼ぶ。 2017年4月に新アルバム、macaron moonをリリース。今までに無いサウンドでお洒落なクラブトラックを作り上げた。 現在、トラックを作る傍らで、ヴォーカリストとしての活動も行い、徐々にその世界観を広げている。
YUC’eさんが、この日、プロジェクトを公開したのは2016年にリリースしたアルバム、「ToyFrappe」に収録されている楽曲「Summer Lover!!」。当時、Cubase 7で作っていたそうですが、これをCubase Pro 9に取り込んだ上で、リアレンジしたという未公開のもの。
FutureBassと呼ばれるジャンルの楽曲で注目されているYUC’eさんですが、1曲中にスネアだけで10種類以上使うこともあるのだとか。この曲でも4種類を使っていて、イントロ、ボーカル部、サビ…などシーンによって使い分けているワザを見せてくれました。同様にキックも2種類使い分けていて、イントロでは強いビートのものを、ボーカルが始まってからはベースと合わせたキックベースに切り替わり、目まぐるしい展開を演出しているのだとか……。
サンプラートラックを活用して、スネアのピッチ変化を演出
さらに、Cubase Pro 9にしたことでサンプラートラックを活用したスネアも披露されました。この楽曲では、1小節の中でスネアを連打しつつ、そのピッチがだんだん上がっていくという部分があるのですが、Cubase 7のときはスネアの波形をオーディオトラックにいっぱい張り付けた上で、ピッチシフトをかけていたそうです。しかしCubase Pro 9では、スネアサウンドをサンプラートラックにドラッグするとともに、MIDIで音程を上げていくだけで済むので、非常に効率よくできる、という点を実演してくれました。
よく見てみるとボーカルのOKテイクに「サマラバ歌_まる」なんていう表記も発見!
また、このボーカルはYUC’eさんの自宅で録ったそうですが、ハモりパートは、別録りではなく、あえてVariAudioを使って生成しているのだとか。その生成された音だけを聴くと、まさにロボボイスという感じなのですが、全トラック一緒に鳴らすと、FutureBassのサウンドにおいては、妙にキレイに溶け込んで、不自然さがまったくなくなるんですよね。
[kors kさんPROFILE]プロデューサー、アーティスト、DJ。ハードダンスミュージックを主軸としているものの、カバーしている音楽スタイルに限りはない。ハイクオリティで斬新な音作りに魅了されるファンが各国に多数存在する。 「beatmania」を始め、各種リズム 音楽ゲームのシーンにおいて絶大な人気を誇るトラックメーカー。その傍ら、アニメ関連の楽曲やJ-POPのリミックス、国内外のレーベルからのリリースなどその活躍範囲は広く、トータルで500曲以上におよぶ楽曲群を世に送り出している。teranoidやEagle、StripE、といった名義でも活動。現在はDJとしてクラブやイベン0.7のステージでも活躍しており、国内のみならず北米~アジア各国~ドイツなどでもライブを重ねている。 自らのレーベル「S2TB Recording」から多数のCDをリリース。 遂には2014年6月に、アルバム「Let’s Do It Now!!」をリリースしメジャーデビューを果たした。
続くkors kさんが公開したのは「Xenna EP2 -Dark One-」というアルバムに収録されている「Alive」という結構激しいテクノ。kors kさんによるとGabba(ガバ)と呼ばれるオランダ発祥のハードコアテクノの1つのジャンルなんだとか。
ちょとその手順を追ってみましょう。まずは、先日の「これってモデム!? レトロ方式でPCと通信するドラムマシン、Pocket Operater PO-32[tonic]を買ってみた」という記事でも取り上げた、Sonic Chageのリズムマシン音源、Microtonicを使って元となるキックを生成。さらに、Tone2 AudiosoftwareのFilterBank 3で歪ませて、いったん書き出します。
チューナーも使いながらSERUMで作り、ディストーションで歪ませたベース音を加える
さらにSERUMでサイン波を重ねたベース音にOhmicideというマルチバンドディストーションで歪ませたものを、キックと組み合わせて、キックベースにします。ここで驚いたのは、このベースサウンドを作る上で、チューナーを立ち上げて、細かくチューニングを行っていた点。この曲では、このキックベースが非常に重要であり、これで音程も作っていくから、ここでのチューニングが大切なのだとか。
このまとめたキックベースにEQをかけて、さらにディストーションで歪ませてから、ステレオ化し、そのあと再度2種類のディストーションで歪ませ、FabfilterのPro-Q2で、周波数特性を整えた上で、最後にマルチバンドコンプ&マキシマイザでまとめるというもの。これだけの作業をして1つキックベースを作っているんですから、すごいこだわり方ですよね。
ようやくできたキックを前半と後半に分けた上で、リズムを組み立てていく
しかもこのキックベース、頭のアタック部分と、後半のリリース部分では音のニュアンスが異なるので、これを2つに大胆に切ったうえで、前半と後半を並べてリズム構築していくそうです。2つに切る際、あとで音がキレイにつながるように、サンプルエディターでゼロクロスポイントの設定をしているのも重要なポイントだそうです。
なかなか見ることができない、プロのCubaseプロジェクトと、それに関する詳細な説明を聞けるとういのは、なかなかないことですよね。舟崎さんは「今後もCubaseファンミーティングを続けていきたい」と話していましたが、ある意味金沢がCubaseユーザーの中心になっているのかもしれません。今後、どう発展していくかも楽しみです。
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CubaseファンミーティングPRO
Cubase製品情報
kors kさんWebsite
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