カワイの楽譜ソフトが歌うようになった!?どんどん進化するスコアメーカーZERO

国産の楽譜ソフトとして長い歴史を持つカワイスコアメーカー。その誕生は1995年12月とのことなので、23年目に突入するわけですが、そのタイミングでリリースされた新バージョン、スコアメーカーZEROは「スマホで撮る。楽譜が歌う。」というこれまでにない面白い方向での機能向上を果たしています。

実際、音符と歌詞を入力すれば歌わせることができるため、ボーカロイドとは異なる歌声合成ソフトの選択肢として面白そうな製品でもあるのです。「楽譜が音楽になる」の原点(ゼロ)に立ち返るという意味合いで、スコアメーカーZEROと名付けられたそうですが、契約形態も従来とは変わったことから、使用期間中に機能向上が図られていくというのもユニークなところ。実際どんなソフトなのか紹介してみましょう。

先日発売された、カワイのスコアメーカーZEROには、歌声合成機能が搭載された



細かい内容はともかく、まずは以下のビデオをご覧ください。

どうですか?まさに楽譜が歌ってくれていますよね。聴いてみると、男声ボイス、女声ボイスが交じり合う混声合唱になっています。スコアメーカーZEROはこんなことができてしまう前代未聞ともいえる楽譜ソフトになっているのです。

使い方的には、特に難しいことをしているわけではないんです。音符を入力し、そこに歌詞をひらがなやカタカナ、さらには英語で入力し、パートのプロパティ設定というところで「ボーカル使用」にチェックを入れるだけ。もうそれだけで、こんなキレイな歌声で歌ってくれるんですよ。

ボーカルの入っているパートの設定で「ボーカル使用」にチェックを入れるだけ
「でも、女声ボイスだったり、男声ボイスだったりと、声色がいろいろあるけど、どうやって設定するの?」という疑問が浮かぶ方もいるでしょう。そこも実に簡単。「ボーカル設定」の画面を開くと
・声種(女声-男声)
・声質(子供-大人)
・ビブラート深さ(浅く-深く)
・ビブラート速さ(遅く-速く)
という4つのパラメータが表示されるので、これを設定するだけで、かなりバリエーションのある歌声で歌わせることが可能なんですね。

ボーカル設定のパラメータ
ちなみに、このスコアメーカーZEROには最上位版から順に
・スコアメーカーZEROプラチナム
・スコアメーカーZEROスタンダード
・スコアメーカーZEROエディター
・スコアメーカーZERO(プレーヤー)
まで4種類ありますが、一番最下位で無料版であるスコアメーカーZERO(プレーヤー)まですべてのグレードで、この歌わせる機能を装備しているのです(プレーヤーのみは、予め「ボーカル使用」の設定がされているパートのみ歌わせることができます)。

4種類あるスコアメーカーZEROのラインナップ
さて、ここでちょっと気になるのが、このボーカルエンジンは何を使っているのか、という点です。カワイのWebページを見ると「名古屋工業大学/株式会社テクノスピーチの歌声合成技術が使われています」とあるので、「ああ!」と思われる方も多いと思います。そう、名古屋工業大学がWeb上で公開しているSinsyや、パッケージソフトとして販売されているCeVIOのエンジンの開発元を意味しているわけですね。そこで、以前にもDTMステーションでインタビューしたことがある、株式会社テクノスピーチの大浦圭一郎さんにメールでのインタビューをしてみました。

--今回の新製品スコアメーカーZEROにボーカル音源が搭載され、「名古屋工業大学/株式会社テクノスピーチの音声合成技術を利用しています。」との表記がありましたが、これはSinsyやCeVIOと同様の歌声エンジンであるという理解でいいですか?
大浦:はい、基本的なアルゴリズムとしては同じものです。

--SinsyやCeVIOで歌わせる場合のパラメータとして「声質」というものがありましたが、今回のパラメータを見ると、声種(女声-男声)、声質(子供-大人)となっており、だいぶ違う印象です。SinsyやCeVIOでは、ある人の声を選び、パラメータで少し変化させるという印象でしたが、スコアメーカーZEROでは、完全に違う人の声を作り出す感じです。これについてはどう捉えたらいいでしょうか?
大浦:SinsyもCeVIOもスコアメーカーも、「声質」に関しては同じチューニングパラメータ―です。これには声のフォルマントをワーピングするような効果があります。一方、スコアメーカーに搭載された「声種」というのは,音響モデル(声質や歌い方を学習したもの)の混ぜ合わせによって実現しています。スコアメーカーには男声女声それぞれ一つずつの音響モデルを搭載しているので、合成時にその二つを任意の割合で混ぜることができます。声質だけでなく歌い方も含めた「歌唱者補間技術」が製品として世に出るのは世界初かもしれません。

--歌詞をもとに歌う形になっていますが、CeVIOなどと比較して何か注意すべき点などはありますか?
大浦:ユーザー層の違いから、シンプルな使いやすさを優先し、CeVIOのような編集機能は搭載しておりません。

--そのほか、スコアメーカーZEROのボーカル機能ならでは、という点などありましたら教えてください。
大浦:英語が混じっている日本語曲のために、日本語英語で英語の歌詞部分を歌うことができます。

--最後にユーザーやDTMステーション読者へのメッセージ、アピールポイントなどあればお願いします。
大浦:スコアメーカーは合唱と親和性が高いソフトウェアと感じています。歌声合成を搭載することで、男女が各パートを歌う合唱を再現することができました。教育機関や合唱団にて活用していただければと思います。

という、大浦さんのお話を伺っても、かなり応用範囲の広い歌声合成ソフトになっているのが分かりますよね。

さて、今回のスコアメーカーZEROの新機能は、もちろんこの歌う機能だけではありません。非常にユニークなのは、スマホやデジカメで撮影した楽譜を認識してくれるという機能です。

以前「譜面PDFの認識率100%を実現!?世界に誇るカワイの技術力」という記事を書いたことがありましたが、スコアメーカーの楽譜認識性能は驚異的なものがあります。ただ、紙の楽譜を読み取るには、従来スキャナで取り込む必要があったため、結構面倒な面もありました。でも、今回のバージョンでは、カメラで撮影すればOKであり、しかも完全に平面の状態でなく、本を開いた状態の少し歪んだ形で取り込めるようになったのです。

スマホなどで撮影した写真を元に楽譜認識してくれる

実際、ホントにそんなことができるものなのか、手元にあるピアノの楽譜をピアノの譜面台上で広げてカメラで撮影して認識させてみました。が、試してみたら本当にビックリでした!

手元にあったピアノの楽譜をカメラで撮影して取り込んでみた

ファイルメニューから「楽譜認識」を選択し、「スマホモード」を指定した上で、撮影した写真データを読み込みます。するとトリミングするように、と指示されるので、不要な部分を除く処理をしただけ。あとは、手順に従ってクリックを繰り返すだけで、写真の方向、画像の歪みもキレイに調整した上で楽譜が出来上がってしまいました。

操作は指示通りに順番にクリックしただけ

見た感じほぼ楽譜をそのままコピーしたような感じです。画面左側の指示にしたがい、最後に認識実行した後、試しにプレイボタンを押してみると、ピアノ音で完ぺきに演奏してくれ、音符の認識ミスはゼロですよ。ちょっと、これはスゴすぎますね!これがカワイの技術力なんですね。恐れ入りました。

認識させたのち、再生ボタンを押したら、ミスなく、完ぺきな演奏をしてくれた
ところで、今回のスコアメーカーZEROから、ライセンス形態がいわゆるサブスクリプション型になっています。つまり、買い切りの永続ライセンスではなく、月間または年間の使用料を支払って使うという形になっています。詳細の価格などは、カワイのサイトでご確認いただきたいのですが、たとえば、スタンダードなら月々1,980円(2年目からは980円)、認識機能無しのエディターなら月々わずか120円(いずれも税別)という設定です。サブスクリプション型の特徴としては、契約期間中に追加される新機能をどんどん取り入れることができるというメリットがありますよ。

すでに歌う機能や、カメラ撮影データの認識機能があるほか、スラーとアーティキュレーションなどの衝突を自動的に回避するスマートレイアウト機能などが搭載されていますが、今後もさまざまな新機能が計画されています。具体的に予定されているものとしては、他社の楽譜作成ソフトで作成したデータをインポート可能となる「MusicXMLインポート機能」、スコアメーカーで作成した楽譜の演奏をMP3で書き出す「MP3エクスポート機能」、ほかのDAWと有機的に連携することを可能にする「ReWire対応」などなど。こうした点も今後期待できそうですね。


15日間はフル機能を無料で試すことができる

なお、スコアメーカーZEROは、購入する前に誰でも15日間、無料でフル機能を試すことが可能です。カワイのサイトからダウンロード可能で、インストーラーは1つ。起動すると、どのバージョンにするかを選択できるようになっており、15日経過した後もスコアメーカーZEROプレーヤーとしては引き続き無料で使うことが可能になっています。まずはこの試用版を試してみてはいかがでしょうか?

【関連情報】
スコアメーカーZERO製品情報
スコアメーカーZEROラインナップ比較表

【試用版ダウンロード】
スコアメーカーZEROプログラムダウンロード

Commentsこの記事についたコメント

2件のコメント
  • 加藤嘉美

    スマホの写真で撮影された楽譜の認識が100%に近いと驚いていますが、従来のコピー機にある
    スキャナー機で取り込んだ楽譜でも認識率が同じように高くなっているのですか。それとも
    スキャンでの認識率は従来と同程度ですか。

    2017年12月28日 4:48 PM
  • 藤本健

    加藤嘉美さん
    スキャナーよりもスマホ写真のほうが、認識率が高いというわけではないと思います。手書きの楽譜だと、やはり写真でもスキャンでもまともに認識できるわけではないので、楽譜次第ということかもしれません。

    2017年12月29日 3:46 PM

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