すでに入手した人も少なくないと思いますが、7月26日、AHSから声優の井上喜久子(@atmanbow_staff)さんの声を元にしたVOCALOID5用のボイスバンクVOCALOID 桜乃そら」(ハルノソラ)および入力文字読み上げソフト「VOICEROID2 桜乃そら」が同時発売されました。井上喜久子さんの声で歌わせたり、しゃべらせたりできる、ということで、2週間前の発表以来、大きな話題になっていたわけですが、発売前日にAHSが井上喜久子さんを招いた製品発表会を行ったので、参加してきました。

この発表会に続いて行われたAHS公式生放送では、作曲家の田中公平さん、作詞家の畑亜貴(@akihata_jp)さん、そしてEHAMIC(@EHAMIC)さんもゲストに加わるなどかなり豪華な内容となったのですが、ここの発表会・生放送を中で「桜乃そら」誕生のエピソード、開発の裏話もいろいろと出てきました。なかなか普通は聞くことのない、興味深い内容もいっぱいだったので、記事として紹介してみたいと思います。


井上喜久子さん(中央)が「桜乃そら」制作秘話を語る


発表会の冒頭、まずはAHS社長の尾形友秀さんから、以下のような挨拶がありました。

「後世に残したい声」というのを当社ではかなり昔から議論していますが、当初からその筆頭に上がっていたのが井上喜久子さんでした。VOCALOIDやVOICEROIDを使うことで、それを実現することができます。5年くらい前から、そんな話をなんとなく打診していました。


田中公平さん作曲、畑亜貴さん作詞の「どんな言葉なら届きますか?」

一方それとはまったく別の話として、私自身も大ファンである田中公平先生、畑亜貴さんにVOCALOID用の曲・歌詞を書いていただきたいということを考えていました。ただ公平先生に作曲してもらうからには、それにふさわしい声のVOCALOIDが必要だ、という思いもあったのです。そんなことを各所にお話しをしてきた結果、2年半前から実際の制作をはじめることになったのです。企画・制作・発売まで5年のプロジェクト。それが、ついに明日、発売になります。

と尾形社長も感無量。


「桜乃そら」の発売を発表するAHSの尾形社長


井上喜久子さんは17歳だけれど、今年が声優人生30周年とのこと。偶然ではありますが、そのタイミングで「桜乃そら」を発売することができるのは、我々としてもとても嬉しいことです。きっと喜久子さんにも「やったー!」とおっしゃっていただけるのではないかな、と思っています。

そんな挨拶に続いて、井上喜久子さんが登場。さっそく「声優の井上喜久子、17歳です」、「おいおい」(会場)というお決まりの文句での自己紹介。発表会においては、ここから尾形社長と喜久子さんの「桜乃そら」制作トークが始まったので、そのまま紹介していきましょう(以下、敬称略)。

尾形:2年半ほど前、正式にお願いをしたわけですが、実際にこの話が来て、どう思われましたか?
井上:え?私でいいんですか?というのが最初の気持ちでした。VOCALOID、VOICEROIDというと、近未来的な感じがするし、若い人の声のイメージがあるじゃないですか。まあ、私、17歳だけど、相当揺れ動く17歳なので(苦笑)、私の声で本当にいいの?と。


尾形社長による井上喜久子さんインタビューがスタート


尾形:AHS社内のマル秘の機密文書として2009年から「後世に声を残したい人リスト」というものを作っています。そのリストの筆頭に、最初から井上喜久子さんのお名前は入っており、以前からぜひお願いしたいと考えていたんです。
井上:それはとっても光栄です。声優って、声があまり変わらないですよね。実際1つのキャラクターで何十年も続けるというケースもよくあります。とはいえ、人間、限界があるのも事実。でも、それがさらに進化して自分の声がVOCALOID、VOICEROIDになって、ずっと生き続けられると思うと、まるで夢のようですよね。私の人生のメインテーマは、「みんなを笑顔にしたい」ということ。私の声で、歌をうたわせてくれたり、しゃべらせてくれて、みんなが喜んでくれるとしたら、それはとっても嬉しいです。

今回発売になった「VOCALOID 桜乃そら」と「VOICEROID2 桜乃そら」のパッケージ

尾形:ようやく「桜乃そら」を発売することができますが、かなり長い制作期間がかかりましたよね。実際に製品になったものの声を聴いてみていかがでしたか?
井上:そうですね。声を録るのに半年以上かかりました。VOICEROIDのほうは、数日で終わったように思いますが、VOCALOIDのほうは毎週1日3~4時間録音するスケジュールが半年続きましたから。できる限りの低い声、そこからちょっと上がった声、もちろん一番高い声など、あらゆる声を録っていきました。なんかね、私これを録っているときに『声のMRIみたい』って思ったんですよ。まさに自分自身のすべての音を満遍なく丁寧に録ってもらったので、声優としてこんなにありがたいことはないな、って。できあがった製品の声を聴いてみて、「これは私の声だ!!」って嬉しくも、とても不思議な感覚でビックリしました。

尾形:声のMRIって、ってもユニークな表現ですが、確かにそういう面もあるかもしれませんね。
井上:作る作業がこんなにも大変だとは思ってもいませんでしたが、こんなにも丁寧に録りこんでくれるというのが驚きでした。また、録りながら、「あー、私って、ここの音がこんなに出るんだ、この音はこんなに出ないんだ」なんて再認識したこともいっぱい。こんなに自分の声に向き合った半年はなかったと思います。VOCALOID、VOICEROIDの制作で、とってもいい経験をすることができました。


コスプレイヤーさんも交えて記念撮影


尾形:今回、できあがった「桜乃そらNatural」と「桜乃そらCool」を用い、田中公平先生作曲、畑亜貴さん作詞でのミュージカルっぽさを出した作品を作ってみましたが、実際聴いてみていかがでしたか?
井上:公平先生の曲は、サクラ大戦で何十曲も歌わせていただきましたが、まぁ、難しい。先生のイジワル!という感じの曲ばかりで、まさに声優泣かせなんですよ(笑)。果敢に挑戦しつつも、なかなか先生の希望に沿った歌い方ができず、もっと自分が歌がうまければ……と苦しんできたんですよ。でも、このVOCALOIDさえあれば、私何でも歌えちゃう(笑)。私、こんなに歌がうまいんだ、ってね(笑)。もう何でも歌えちゃうので、ワクワクが止まりません!


発表会後にAHS公式生放送が行われた。左からEHAMICさん、畑亜貴さん、田中公平さん、less北山さん、尾形社長

そんな尾形社長と喜久子さんの対談形式の製品発表会の中、桜乃そらNatural、桜乃そらCoolに扮するコスプレイヤーさんが登場して記念撮影をするなどしていましたが、発表会終了後、AHS公式生放送スタートまでの間に、喜久子さんにインタビューする時間をいただけたので、私からも少し話を伺ってみました。

--喜久子さんの事務所であるオフィスアネモネには、7年前に「結月ゆかり」でVOCALOIDデビューしている石黒千尋(@chihiro_ishi)さんが所属していますよね。きっとそういうこともあって、早くから喜久子さんにもAHSから打診があったわけですよね。
井上:はい、結月ゆかりで、すごい世界観を作り上げてきているのを間近で見てきました。私は、ちいちゃんも大好きだし、ゆかりさんも大好き!今回、それの親戚になれたような気がしてます(笑)。なんか血が繋がったみたいですね。確かに、かなり以前から打診はいただいていたのですが、なかなかタイミングが合わなかったのと、声を録るのが、とにかくハードなので、仕事が立て込んだりすると、なかなか受けることができませんでした。が、ようやく昨年の半年を使って作ることができて、ホッとしているところでもあります。


「VOCALOID 桜乃そら ナチュラル」のインストーラ画面

--先ほどの話で、1日3時間くらいという時間が示されていましたが、これはどういう意味なのですか?
井上:もっと長時間、声を出し続けることは可能ではあるのですが、ベストコンディションでの声が出せるのが3~4時間なんです。できる限り、いい声で録音したいので、期間は長くかかってしまいましたが、そんな録り方をしていました。その大半はVOCALOIDの収録でしたね。

--製品版の「桜乃そら」の中には、別途exVoiceというフレーズなどを収録したWAVファイル集であるexVoiceも収録されていますよね。これはいつごろだったのですか?
井上:VOCALOIDやVOICEROIDの収録は2年ほど前でしたが、exVoiceは、製品発売直前のつい先日ですよ。キャラクターがどんなデザインなのか、NaturalとCoolの雰囲気の違いも十分把握した上でのレコーディングとなりました。


「VOCALOID 桜乃そら クール」のインストーラ画面

以上、桜乃そらの制作エピソードをいろいろと伺いました。その一方で、実際に「VOCALOID 桜乃そら」を使ってみると、従来のVOCALOIDの常識を覆すようなリアルな歌声を簡単に出せることに驚きます。VOICEROID2の相変わらずのリアルさと合わせて、時代がまた進んだなと感じるところでもあります。

この喜久子さんインタビューの後に、田中公平さん、畑亜貴さんにもそれぞれお話を伺ったので紹介します。

(田中公平さんコメント)

作曲家の田中公平さん

 VOCALOIDは初音ミクが出た当初から、すごい可能性は感じていて注目はしてきました。ただ、仕事で使うツールなのかと考えたとき、疑問を感じていたのも事実です。良くも悪くも素人っぽさが出てしまうという点が気になっていたからです。ただ、この10年で技術もかなり進化してきたし、VOCALOIDのバリエーションも増えてきていたので、何かやってみたい、と思っていたところにAHSさんから声をかけてもらいました。しかも喜久子ちゃんの声で、非常に声の完成度の高いものを作るということだったので、お受けしたのです。でも、プロとして仕事をするからには、ほかの人と違うことをしたい。そう考えた中、これまでのVOCALOIDの曲は4拍子ばかりなので、ワルツはほとんどない。またミュージカル調のものもまったくといっていいほどなかったですね。そしてバラードも非常に少ない。そこでこれらを組み合わせたものを作ったのがこの作品です。千本桜に対抗する曲を書くのではなく、誰も挑戦していない分野をやろうと思ったわけです。
 もっとも曲を書いて、弦のレコーディングにも立ち会い、仮歌まで入れて納めたのが2年以上前。どうなっちゃったんだろう…と思っていたところに、完成したという連絡をもらって聴いてみて驚きましたね。みろんPさんが調声したと聞きましたが、よくこれだけのことをしたな、と。ツールとしての能力を十分に引き出していると思います。ただTDに突き合わせてもらえたら、もうちょっと面白くなったんじゃないかなと。左右で歌声をズバっ分けるとか、出たり引いたりするとか、もっといろいろな演出ができたと思うので。
 今回の「桜乃そら」を見て、VOCALOIDが非常に大きな進化をしたことを実感しました。ただ、まだまだ改善の余地はあるな、という思いもあるので、今後の技術のさらなる発展を期待しているところです。

(畑亜貴さんコメント)

作詞家の畑亜貴さん

 VOCALOID用の曲はこれまでいくつか作ったことがあります。最初は初音ミク Project DIVAのお仕事で作詞・作曲でセガさんに提供したものだったと思います。今回の話は、かなり前に尾形さんから依頼をいただき2年以上前に作っていたので、もうすっかり忘れていましたよ(笑)。先日、その完成した曲を聴き、動画を見て、素敵に仕上がったな、と感激しました。今回、直接、田中公平先生とのやりとりがあったわけではないのですが、公平先生とは過去にアニメの「暗殺教室」などを一緒に作ったことことがありました。今回「桜乃そら」のおかげで、また素晴らしい作品に携わることができて嬉しいです。
 私自身、普段はDigital Performerを使っているのですが、CubaseやLogic Proも使ってみたり、環境移行の試行錯誤中です。今回の「桜乃そら」もぜひじっくり使ってみたいですね。
【AHS公式生放送アーカイブ】
FRESHLIVE 7月25日放送分

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