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なぜサンプリングにこだわるのか?世界中で評価の高いビンテージシンセ音源を数多く出すフランスUVIの戦略

「ビンテージシンセの音質が非常にいい」と評価の高い、フランスの音源メーカー、UVIminimoogOB-Xといったアナログシンセから、Emulator-IIFairlight CMIなどのサンプリング音源、またDX7などのFM音源ほかさまざまなソフトウェアを揃えており、世界中の数多くの楽曲でも活用されています。ユニークなのは物理モデリングではなく、サンプリングを利用しているという点。

 

UVIはシンセ音源だけでなく、ピアノ音源やオーケストラ音源など、さまざまな音源を揃えているのですが、なぜサンプリングにこだわっているのでしょうか?UVI富田家維さんにいろいろとお話を伺ってみました。


数々のビンテージシンセをサンプリングで復刻するUVI


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--まず、UVIはどんな会社なのか教えてください。
富田:当社はフランスのパリに本社があるソフトウェア音源を開発する企業で、創業から30年近くなります。もともと、Univers-Sonsという楽器店としてスタートし、フランス国内でMOTUやRODE、WALDORFやaccessのシンセサイザの代理店も行っていました。その会社がAKAIのサンプラーが流行ったころに音色ライブラリを作り、Ultimate Sound Bankというブランドで販売を始めたのが、音源作りのスタートです。WAVとACID loop、Apple loops、AKAIなどのマルチフォーマットで製品化し、これが60タイトルぐらいになりました。その後、サンプラーが廃れてきたときに、自社でサンプラーのプレイバックエンジンを作ったことで、単体のソフトウェア音源へと進化しました。PlugSoundという名前で製品化しましたが、このエンジンは他社にもOEMで供給されていきましたね。具体的にはSpectrasonicsのAtmosphere、Trilian、Stylusの最初のバージョンなどですね(現在の同社製品のエンジンはSpectrasonics製になっている)。サンプラーの再生エンジンとしては、業界最古といってもいいのではないでしょうか。その後、エンジンの進化や販売形態のトレンドにしたがって、ウェブサイトはUVI Sound Sourceに代わり、現在はブランド名とウェブサイトを合致させたUVIとなりました。エンジンはUVI Sound Sourceの公開とともに再生プレイヤーのUVI Workstationをリリースし、現在でもその名前が使用されています。名前は同じですが、フラッグシップのFalconとともに中身は第4世代に進化しました。なお、昨年UVIは他の事業は譲渡し、音源開発1本に集約しました。

UVIの富田家維さんに話を伺った

--そんな長い歴史のある会社だったんですね。現行の商品としては、どんなものがあるんですか?

富田:Falconをはじめ、ストリングスシンセサイザString Machines 2や、ピアノ音源Augmented Piano、ドラムマシン音源BeatBox Anthology 2、ビンテージシンセVintage Vault 2…などのよく使われる音源から、大正琴音源Nagoya Harp、スクラッチ音源Scratch Machine、最大級のミュージクトイ音源コレクションComplete Toy Museum…などの少しコアなところまで、エフェクト類も含め全部で61種類の製品があります。また、BeathawkというiOSで動作する音楽制作アプリや、Ravenscroft 275 Pianoというピアノアプリもありますね。Falconを除くすべてがサンプリング音源であり、そのことがUVIの大きな特徴でもあります。

--やはりサンプリングであることにこだわりを持っているわけですね。そのUVIで、富田さんはどういった仕事をされているのですか?
富田:フランスのUVIのチームの一員として日本常駐する形で仕事をしています。具体的な業務としては日本での業務全般の管理や、アジアの販売網のケアをしているほか、マニュアルの作成業務も行っています。これは既存のマニュアルを日本語に翻訳するというのではなく、ワールドワイドで使う英語のマニュアル自体を私が作成しているんですよ。UVIはトータルで30人程度の会社なので、日本に常駐しているとはいえ、全社的な業務もこなしていくわけです。そのマニュアル、基本的なフォーマットは決まっていますが、英語版から作ることもあれば、日本語版を作ってから英語版にしていくこともあります。だから、いわゆる翻訳マニュアルではなく、しっかりと日本語用に作ったマニュアルであるというのもぜひ多くの方に知っていただければと思います。そのほか、製品開発に意見したり、製品のアイディアを出しも行うし、サンプリング素材となる機材調達をすることもしばしばです。UVIの音源は、シンセサイザをサンプリングしたものが多く、中には日本でたまたま見つけられる機材などもありますからね。基本的には本社側でサンプリングを行っていますが、場合によっては私が日本でサンプリングを行うこともありますよ。ちなみにみんなが大好きなあの音は日本でレコーディングしたものですよ(笑)。

 

--日本支社というわけではなく、フランスの会社の日本駐在員というわけですね。そうなるとフランスへも頻繁に行くわけですか?
富田:通常は日本国内にいるのでフランスに行くのは、基本的に年に1回。この時は各国のメンバーがパリのUVI本社に集まってミーティングをすると同時に、みんなでフランスの伝統的な施設などに行って食事をしたりするんですよ。ちなみに昨年はエッフェル塔、今年はベルサイユ宮殿でしたね。


フランスに社員全員集合するのは年に1回

--富田さんご自身は、いつからUVIにいるのですか?
富田:私は学生時代から楽器店の店員をしていましたが、その後いくつかの代理店を経て、4年前にUVIに入社しました。ただ仕事上でのUVIと付き合うようになり、十数年経つので、開発リーダー達と同じぐらいか、それ以上。経営陣以外ではかなり古株といってもいいかもしれませんね。ちなみに社員の内訳はUVI JaponのFacebookページに掲載している共同創設者のAlain Etchartのほか、開発リーダーが2人、サウンドデザイナー、マーケティングチーム、ウェブチーム、セールスチーム、サポートチームのメンバーなどがいます。全員がパリにいるわけではなく、地方にいたり、僕のように海外にいたりしますよ。FacebookページにはAlain以外の人のインタビューも掲載していますので、ご興味ある方はぜひご覧ください。


UVIのさまざまな情報が掲載されているFacebookページ

--UVIの製品についてお伺いしたいのですが、それぞれの製品のアイディアはどのように出てくるのですか?
富田:製品のコンセプトは基本、Alainのアイディアが多く、そこからスタートしています。彼自身、作曲家であり音楽プロデューサーでもあるため、アイディアも豊富で、そこに実用性やユーザーニーズを加えています。一部オーケストラ音源やピアノ音源など、アコースティックなものもありますが、大半はシンセサイザ音源。実際UVIというと、シンセサイザ音源のイメージが強いのではないでしょうか?賛否両論ありますが、そのシンセサイザをサンプリング音源で実現しているのです。

 

--いま、ビンテージシンセをソフトウェア音源で実現するものは各メーカーから出ていますが、主流は物理モデリングとなっています。
富田:シンセの音源なのにサンプリングであるというご指摘をよくいただくのですが、音源開発を始めた当初はそれが主流でした。物理モデリングはCPUへの負担が大き過ぎて現実的でなかったこともあり、サンプルベースのシステムを採用したのです。ただ技術の進歩とともに、CPU負荷の問題は解消されていきましたが、UVIとしてはサンプルへのこだわりは一層強くなりました。理由は簡単で、実際のレコーディングと同じ音になるからです。実機とまったく同じ挙動、同じ操作感が欲しいのであれば、実機に勝るものはありません。要は作る音楽に合った音、あるいは音楽を作る際にインスピレーションにつながる音、それが実機から出たのと同じ質感であれば、それで良いというフランス人らしい合理的な考え方です。コピーやクローンではなく、基本的な機能を押さえつつ、実機の音の魅力に今時な機能や風味を加えていった方が扱い易いとも思います。そういった思想は音色プリセットにも色濃く反映されており、今風の音色も多く用意されています。また、これらのプリセットはそのまま使えるのと、自分だけの音作りをする際の参考になるように配慮され、プログラミングされています。そのためUVIの音源を通して実機の良さを知ってもらえれば、幸いです。


フランス・パリにあるUVIの社内

--でもFalconだけは、サンプルベースの音源ではないというお話でしたよね。
富田:開発着手当初は、サンプルベースの再生エンジンでしたが、需要や技術の進歩にともない、モデリング系のフィルターやエンベロープを足したり、内蔵エフェクトを充実させていきました。現在ではサンプル再生、加算、減算など、15種類のオシレーターがエンジンに盛り込まれています。それを製品として販売しているのが、Falconです。Falconを使えばサンプルもシンセオシレーターもいっしょに扱えますので、1つの音色を作るのに複数のトラックとシンセを使って重ねる必要はなくなります。また、FalconはいうなればUVIエンジンそのもので、UVI音源の開発環境とも言えます。つまり、Falconはアイディアとスキルがあれば、UVIのデベロッパーとして、自分の音源を世に出すチャンスがあるということです。こういう風に言うとFalconは難しいとか、使いこなす自信がないとかご指摘をいただくかもしれません。批判を恐れずにいえば、それは考え過ぎです。シンプルに気に入った音を一番シンプルな構成で出せるようになれば、それで良いのではないかと考えています。Falcon = UVIエンジンは、今後も進化していきます。新しい製品の誕生に必要な機能があれば盛り込まることでしょう。また、みなさんのご要望が反映されることもあります。

 

UVIのフラグシップ音源、Falcon

--たしかに、Falconを完全に使いこなそうと思ったら大変だと思いますが、それこそプリセットから始めてみても十分楽しめますよね。ところでUVI製品のコピープロテクトについて少し教えてください。
富田:もちろん、コピープロテクトなどはないのが一番望ましい形です。もしmacOS専用のApp Storeのみで販売をするなら、それ自体がプロテクションになるので、必要ないでしょう。でもマルチプラットフォームで展開する以上、共通のプロテクションシステムが必要になります。そのシステムに当社ではiLokを使っております。このiLokについてネガティブなご意見もいただいていますが、現状これ以上よくできたシステムはないと考えています。まず社外の企業ですので、ユーザーの方の権利が二重に守られます。またUSBドングルが盗難にあった場合、ライセンスの再発行だけではなく、無くしたiLok上のライセンスが不正利用されないようにロックがかかるのも重要なポイントだと思います。もちろん、iLokというUSBドングルがなくても、PC自体にライセンス情報を置くこともできますよ。また、弊社はiLokを提供するPace AP社に利便性の面で働きかけていますので、3デバイスの同時利用など、完璧とは言いませんが、初期のiLokシステムと比べたら利便性はだいぶ良くなっています。ただ、一番大きなネックはiLokに日本語のサービスがないことだと思います。iLokを採用している各社がそれぞれ、自前のサイトでiLokの対応をしていますので、そこが共通になるとだいぶ認識が変わってくると思います。ちなみに、UVIのサイトでは製品登録と一緒に、iLok IDを取得できるように組み込まれています。ここの部分もローカライズしていますので、UVI製品は初iLokにチャレンジする良いきっかけになると思います。


UVI製品はUVIのWebページからのダウンロード販売となっている

--現在のUVI製品はダウンロード販売のみなんですか?

富田:はい。UVIの製品はすべてダウンロードです。理由は、物理パッケージを作るコストや輸送コストを省くことで、お届けする時間の短縮と製品コストを抑えることができるからです。あと、ゴミが出ない、CO2排出がないので、地球にも優しいですね。これは国内の販売店でも基本は同じです。ただ、流通システムの関係で、販売店によっては独自に簡易パッケージで販売しているところもありますが、基本はメールでシリアル番号をご案内する形になっています。そのシリアル番号を受け取って登録をすれば、ダウンロードできるようになるシステムです。販売店をご利用いただくメリットは、もちろん店員さんと相談できることや、実際のデモを見ることができる点。地方の方だと、なかなか来店いただくことは難しいかもしれませんが。行ける方はぜひ行ってみてはいかがでしょうか?なお現在、UVIは輸入代理店を経由する販売形態を世界的に廃止しました。代理店を経由するメリットはありますが、自社直販と販売店のみにした方が、セールへの素早い対応などのメリットが大きいからです。価格に関してはどこでお求めいただいても、同程度になるように配慮しているので、海外のショップなどから購入するメリットはまったくといっていいほどないと思います。

富田さんによると、今年はほぼ毎月新製品を出していく予定とのこと

--最後に今後の予定について教えてください。
富田:戦略的なこともありますので、明言できることは少ないのですが、引き続き製品を色々リリースしていく予定です。今年はほぼ毎月、製品をリリースをしてきましたが、このペースはもう少し続くと思います。そしてそれと並行して、来年以降、何かしらの驚きと感動とともに新しい製品を引き続きご案内できればと考えていますので、ぜひご期待ください。

 

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