ユニークでポップなUIのプラグインメーカーGoodhertzが生み出した80s、90sのサウンドにするコンプ、Vulf Compressor

80年代、90年代の特有な雰囲気は、単に音楽性や使っている楽器の音色だけではないようです。もちろん、シンセやドラムの音色に80年代風、90年代風のものを選んで組み合わせていくことは可能ですが「今一つピンとこない」…そんな風に思っている人も少なくないと思います。そうした中、アメリカGoodhertzグッドヘルツ)というメーカーが、普通に作った音を通すことでまさに80’sサウンド、これぞ90’sサウンドに変換してしまうユニークなコンプレッサを出しています。

国内ではフックアップが運営するソフトウェアダウンロードサイト、beatcloudで15,950円(税込)で販売しているもの。ポップな感じのUIが特徴ですが、GoodhertzではVulf Compressorのほかにも、ワウ・フラッターを再現するエフェクトや、かなり変わった効果を出すリバーブ、一風変わったステレオイメージャーなど、ユニークなプラグインを数多く出しています。どんなプラグインなのか紹介してみましょう。

シンプルなUIで、簡単に80年代、90年代のサウンドを作り出せるGoodhertzのVulf Compressor

今回紹介するプラグインメーカー、Goodhertzは、2014年に設立された比較的新しいアメリカのカルフォルニアの会社。”Simple Interfaces&Good Audio”をモットーにプロデューサー、エンジニア、ミュージシャン…とみんなに愛されることができるプラグインを開発しているとのこと。既存のハードウェアの良さを意識しつつ、あえてシンプルに使い勝手を優先したプラグインデザインが特徴となっています。

LAのバンド、Vulfpeckとのコラボで開発したコンプ、Vulfcompressor

同社では、Vulf Compressorを含め、全部で14種類のプラグインを公開しており、いずれもWindowsおよびMacに対応しています。WindowsにおいてはVST、VST3、AAXの環境で動作し、MacはVST、VST3、AU、AAXの環境で動作するようになっています。また好き、嫌いはありそうな気もしますが、全パラメーターを日本語にすることも可能で、英語、日本語、韓国語、中国語、スペイン語、ポルトガル語などから選択できるようになっています。

英語、日本語含め7言語の表示に対応

そのVulf CompressorはLAのミニマル・ファンク・バンド、Vulfpeckと共同開発したということから、Vulfcompresorという名前になっているそうですが、そのVulfpeckのドラマーのドラムにVulfcompresorを掛けるデモビデオがあるので、まずはこちらをご覧ください。

いかがですか?キック、スネア、ハイハット、タム、シンバル……と個別にコンプをかけて調整するとなるとなかなか大変ですが、これはドラムのマスタートラックにVulfcompresorをインサートしてプリセットを選んでいるだけ。ビデオでは生ドラムにVulfcompressorを掛けていますが、打ち込みの素っ気ないドラムでも、これによってグッとくる迫力のあるドラムサウンドに仕上げることができるのです。

基本的には、プリセットから気に入ったものを選んで、COMPのツマミを調節するだけでいい感じに仕上がります。プリセットとしても、結構豊富にあるので、まずは適当に選んで試してみるだけでも面白いと思います。

ただ、見てもらうと分かる通り、Vulfcompresorのパラメーターは他のコンプと大きく違っています。普通、コンプといえばスレッショルドとレシオが一番の基本となっていて、それにアタック、リリースといったパラメータがあるのですが、パッと見には、それらのパラメータが一つもないんです。

数多くのプリセットが用意されているので、まずはこれを選ぶだけでOK

一方で、普通コンプに見かけない、WOWやLOFIという見慣れないパラメーターが存在するのが面白いところ。WOWというのは、テープやレコードプレーヤーなどのモーターを使った機器で再生する時に発生するワウフラッターを再現して、ゆらぎを発生させることができというもの。ツマミを上に上げるほど、音がヨレた感じでピッチが揺らぐ効果を与えることができます。これがアナログの質感を感じる1つの要因になったりするのです。LOFIもツマミを上げれば、音質をざらついた感じにでき、プリセットにより、そのLo-Fi感が違うのも面白いところ。これらをうまく使うことで、80年90年代のサウンドを作りだすことができるわけですね。

WOWやLOFIでかなり音の雰囲気に色付けがされる

では、もう少し細かく調整したい場合にはどうすればいいのか?その場合はサイドバーのアイコン「…」をクリックすると、右側の画面が拡張され、詳細が表示されるようになります。こちらを見ると、アタックやリリースもありますね。

使い方としては、COMP ADVにあるアタックとリリースを調節することで、コンプの効き具合を調整できるというのは一般のコンプと同様です。一方のWOW ADVではワウフラッターのミックス値やステレオ位相のコントロールができるようになっています。これによってアナログレコード特有な雰囲気をうまく演出することができるのです。

またレコードの回転数もここで選択できるようになっています。LPレコードの33.3回転、EPレコードの45回転のほか、個人的には使ったことはないですがSPレコードの78回転にも対応しており、どれを選ぶかによって雰囲気も変わってきます。

レコードの回転回数の設定もできる

そしてLOFI ADVでは、全体の歪み感やノイズ量、Lo-Fiタイプを選択できるパラメータです。このLo-Fiのタイプには標準のアナログタイプに加え、1990年代の適度なエイリアシングを持つデジタルコンバーターや1980年代のデジタルコンバーターの劣化を演出することができます。つまりCDが登場した当時の、まだデジタルオーディオ技術が貧弱だったころのサウンドを作り出すことができるわけですね。これらをどう組み合わせるかによって80年代、90年代のサウンドを作り出すことができる、というわけなのです。

このような点を見ても、Vulfcompressorが普通のコンプではないことがよくわかると思います。ちなみに、Vulfcompressorはサイドチェーンにも対応しており、サイドチェーンのオン/オフやどの程度サイドチェーンを効かせるかの設定も可能になっているほか、HQモードというスイッチがあり、これをオンにすることで、より高音質の処理を可能にするといった機能も用意されています。

そのほかA・Bでの切り替え機能が搭載されており、Aの設定とBの設定をスイッチ一つで切り替えて音を確認できるのも便利なところだと思います。

画面右下のHQモードのボタンをONにすることで高音質化が可能

Goodhertzのプラグインはほかにも、ステレオイメージャー系のM/Sプラグイン「Midside GHZ-0013」や従来DAWに搭載されているパンとは違った定位のさせかたができる「Panpot GHZ-0009」、ヘッドフォンで聴いている音をまるでスピーカーから出ている音に変換できる「CanOpener Studio GHZ-0001」といったものがあり、これらをセットにした「Stereo Imaging Bundle」というものが発売されています。

さらにアナログ機器特有の再生のモジュレーションに焦点を当てた「Wow Control GHZ-0030」、リアルタイムでのパラメーターの変更を気軽にスムーズに行えるシンプルなフィルター「Lohi GHZ-0006」、直感的で幅広い使い方ができるトレモロ「Trem Control GHZ-0004」、ビットクラッシャー系の飛び道具プラグイン「Lossy GHZ-0005」などユニークなプラグインがあり、これらをセットにした「Creator Bundle」という製品もあります。

Goodhertzからは現在14種類のプラグインエフェクトが出ている

そして「Vulfcompresor」を中心としたミキシング向けのバンドル「Mixing Bundle」も用意されていて、その中にはシンプルで新しいタイプのチルトEQ「Tiltshift GHZ-0015」やPeter J. Baxandall のオリジナルの回路を念頭に設計されたイコライザ「Tone Control GHZ-0003 V3」、ダイナミクスを保ちつつ温かなテープサチュレーションが心地よいリミッター「Faraday Limiter GHZ-0007」など、汎用性の高いプラグインもありますよ。

これらのバンドル製品はbeatcloudから購入することができ、全部入りのEverything Bundle V3には、最新Goodhertzプラグインで80年代のリバーブをエミュレーションした「Megaverb」が付属しています。もちろん、個別に1つ1つ購入することも可能です。Goodhertzプラグインは14日間デモバージョン試すことができるので、一度ダウンロードしてみてはいかがでしょうか。

Goodhertzインタビュー

Goodhertzの営業・マーケティング担当者に、オンラインチャットでインタビューしてみたので、紹介してみましょう。

ーーGoodhertzは、どういう経緯で、どんなメンバーが集まって設立した会社なんですか?
Goodhertz:当社は2014年にスタートした会社です。もともと大学で音楽や音響などを勉強してきたメンバーが中心になって、自分たちが満足でき、ほかの人たちにも役立つソフトを作りたい、必要であればハードも開発してみたいという思いで設立しました。

ーーインストーラを見てみると、全部で14本のソフトがありましたが、これまで14本を開発したという理解でいいですか?

弊社Webサイトの右下を見てもらうと、ソフトの一覧があり、確かに14本並んでいるのですが、その横に番号があるのに気づくと思います。一番大きい数字が0036となっていますが、これは開発したソフトの順番なんです。つまり、間が抜けているのですが、これらはまだリリースしていないものなのです。私たちのモノ作り精神は、完璧なものに仕上げることにあります。そのため、欠番になっているのは、まだその完璧な域に達していないものなんです。普通であれば十分リリースしていいモノがいっぱいありますが、納得いっていない、と。今後ブラッシュアップを重ねていくので楽しみにしていてください。

GoodhertzのWebサイトの右下にある製品名の前に番号があるが、これが開発順を表している

--世界中に数多くあるプラグインメーカーの中でGoodhertzのならではの特徴は何ですか?

完璧なものを作るというのも一つですが、一方で、とにかく簡単で効果が絶大なものを作っています。ディスプレイの4K化などが進む中、ウィンドウサイズの調整が可能になっているのも大きな特徴だと思います。そのうえ、とにかくプログラムが軽いんです。ぜひ多くの方に使っていただきたいですね。そのほか、コーライティングなど、共同制作をしている人にとっても使いやすい機能を搭載しています。

ーー共同制作用に便利な機能とはどういうことですか?

下のビデオをご覧いただくとわかりやすいと思います。つまり、AさんとBさんが同じプラグインを使って共同で制作する場合、Aさんがパラメータ設定した情報をBさんに簡単に送って、反映させることができるのです。

--最後に社名のGoodhertzというのは、どういう意味なのでしょうか?

いろいろな意味は込めているのですが、平たくいえば、「いい響き」といったところでしょうか?ぜひ、多くの日本のみなさんにGoodhertzのプラグインの面白さを体験していただければと思います。サポートにおいては代理店であるフックアップが担当しているほか、Goodhertzに直接連絡いただければ、日本語で対応することも可能なので、安心してお使いいただければと思います。

--ありがとうございました。

【関連情報】
Goodhertz製品情報
Vulf Compressor GHZ-0002 V3製品情報

【価格チェック&ダウンロード】
◎beatcloud ⇒ Vulf Compressor
◎beatcloud ⇒ Mixing Bundle V3(ミックス系プラグイン6本入りセット)
◎beatcloud ⇒ Everything Bundle V3(全部入り)

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