AIシンガーレーベル&メディア「GEMVOX(ジェムボックス)」から、新たなキャラクターが登場します。11月1日に発表されるのは、VOCALOID 6のボイスバンク「乙辺サファイア」とVoiSonaのソングボイスライブラリ「乙辺ヒスイ」。両キャラクターは姉妹という設定で、声を担当するのはシンガーのYun*chi(ゆんち)さんです。
これまでにない、同一声優による姉妹キャラクターが異なるプラットフォームで同時発表されるという、業界初の試みとなります。サファイアは11月1日からGEMVOXサイトで先行販売、11月4日から正式発売。一方、ヒスイは12月15日の発売予定です。さらに、11月1日・2日に開催される東京楽器博2025のGEMVOXブース(0301)で実機展示が行われるほか、11月1日からはテラーノベルで両キャラクターが登場する小説の連載もスタート。GONZOとの協業により、将来的なアニメ化も視野に入れた、本格的なメディアミックス展開が動き出します。
姉妹キャラクターが異なるプラットフォームで登場
まずは、GEMVOXが公開した15秒のティーザー映像をご覧ください。11月5日から毎週水曜24時にテレビ放送されるCM映像です。
また、浅田祐介さん制作の「瑠璃色のコンチェルト」がこちらです。
このキャラクタービジュアル、そしてその歌声からも、サファイアの魅力が十分に伝わってくるのではないでしょうか。それでは、詳しく見ていきましょう。
今回の最大の特徴は、姉の「乙辺サファイア」がVOCALOID 6、妹の「乙辺ヒスイ」がVoiSonaという、異なる歌声合成プラットフォームでリリースされることです。同じ声優が演じる姉妹キャラクターが、別々のエンジンで同時期に登場するというのは、これまでに例がありません。
乙辺サファイア(VOCALOID 6)
キャラクター設定
どこまでも澄みきった声を世界に響き渡らせる歌姫。蒼い空を渡る風のように軽やかな歌声は、聴く人の心に蒼い光を灯します。
サファイアは海辺で生まれ育った少女。潮騒のリズムを真似て歌っているうちに、気づけば音と心を繋ぐ力を持っていました。その透き通る声は人の涙を蒸発させるとも、眠っていた想いを呼び覚ますとも言われています。彼女自身はそんなことを気にせず、ただ「今日も空は蒼くてきれいだね」と笑います。
かつて一緒に歌っていた妹の存在を大切に想いながら、サファイアは今も、遠い空の向こうに届くように歌い続けています。明るさの中にどこか深い蒼を秘めた存在です。
好きなものは「朝焼けの海」と「波打ち際の泡」。夢は歌で世界を優しい蒼色に染めること。
プラットフォーム:VOCALOID 6
発売日:11月1日(GEMVOX先行販売)、11月4日(正式発売、VOCALOID STOREでも販売開始)
価格:単品11,000円(税込)、VOCALOID 6エディターセット24,200円(税込)
CV:Yun*chi
開発:GEMVOX(Studio ENTRE株式会社)
乙辺ヒスイ(VoiSona)
キャラクター設定
どこまでもやわらかく、包み込むような声を持つ少女。森を渡る風のように穏やかなその歌声は、聴く人の心に静かな翠の光を灯します。
ヒスイは深い森のそばで生まれ育ちました。木漏れ日やせせらぎの音に耳を澄ませているうちに、彼女は”音には命を癒す力がある”ことを知りました。その声は枯れた花を蘇らせるとも、心の奥に小さな芽を育てるとも言われています。
けれど本人はそんなことを気にせず、ただ「今日も森がやさしく笑ってるね」と呟きます。遠く離れた海辺の姉を想いながら、ヒスイは今日も森の奥で歌います。その旋律は木々を抜け、やがて空へと溶けていきます。静けさの中に生命の強さを秘めた存在です。
好きなものは「朝露に濡れた葉」と「木漏れ日の道」。夢は歌で世界をやさしい翠色に満たすこと。
プラットフォーム:VoiSona
発売日:12月15日
CV:Yun*chi
開発:GEMVOX(Studio ENTRE株式会社)
CV担当はシンガーのYun*chiさん
両キャラクターの声を担当するのは、シンガーのYunchi(ゆんち)さんです。Yunchiさんは2012年11月にメジャーデビューし、2013年、2014年にはTVアニメ「ログ・ホライズン」第1シリーズ、第2シリーズのエンディングテーマ「Your song」「Wonderful Wonder World」を担当(第2シリーズでは声優としても出演)。2015年にはTVアニメ「うーさーのその日暮らし 夢幻編」主題歌「Lucky Girl」を担当するなど、アニメソングを中心に活躍してきました。
また、世界最大級のビジネスとコンテンツの祭典「SXSW2016」(アメリカ・テキサス州)への出演をはじめ、ロンドン、ミャンマー、ジャカルタ、NY、マレーシア、台湾など世界各地のステージで活躍。2022年にはメジャーデビュー10周年を迎え、デジタル・アルバム「TEN.~Yun*chi 10th Anniversary Request Best〜」をリリースしています。そのコケティッシュで透明感のある歌声が、サファイアとヒスイの個性を見事に表現しています。
同じシンガーが演じながらも、姉のサファイアは海辺の明るさと蒼い透明感を、妹のヒスイは森の静けさと翠の優しさを、それぞれ異なる魅力として表現しているのが特徴です。
GEMVOXとは? これまでのキャラクター展開
GEMVOXは、「AIシンガー レーベル&メディア」をキャッチコピーに掲げる、ユニークなプロジェクトです。運営するのは、プロ作家への登竜門として知られる山口ゼミの山口哲一さん、音楽プロデューサーでJSPA(日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ)代表理事の浅田祐介さん、そしてアニメ制作会社GONZOの代表取締役である石川真一郎さんという、異色の組み合わせ。運営会社はStudio ENTRE株式会社です。
これまでGEMVOXは、Synthesizer Vのキャラクター「紫門トパーズ」(2024年11月)、VoiSonaのキャラクター「白岬ジャスパー」(2024年12月)をリリースしてきました。今回のサファイアとヒスイは、その第3弾・第4弾という位置づけになります。
従来のキャラクター展開との大きな違いは、複数の歌声合成プラットフォームを横断してキャラクターを展開していること。そして、GONZOとの協業により、単なるボイスバンクの提供にとどまらず、キャラクターの世界観を小説、そして将来的にはアニメへと展開していく本格的なメディアミックスを目指している点です。
東京楽器博2025で実機展示
11月1日・2日に東京国際フォーラムで開催される「東京楽器博2025」において、GEMVOXもブース出展(ブース番号:0301)します。ここでは、サファイアとヒスイの実機展示が行われる予定です。
発売前に実際にキャラクターの声を確認できる貴重な機会となりますので、興味のある方はぜひ足を運んでみてください。会場でしか体験できない魅力があるはずです。
なぜ異なるプラットフォームで? 開発陣に聞いてみた
ここで素朴な疑問が湧いてきます。なぜ姉妹キャラクターを、異なる歌声合成プラットフォームでリリースするのでしょうか? 開発を手掛けるGEMVOXの山口哲一さん、浅田祐介さんに話を伺いました。
――まず、GEMVOXがどういうプロジェクトなのか、改めて教えていただけますか。
山口:歌声合成という、日本発のカルチャーを産んだ技術が、閾(しきい)値を超えたなと。いわゆるボカロカルチャーがグローバルに拡張する機会でもあるなと思ったんです。この歌でコンペにも出せるからプロの作曲家も日常的に使うようになり、そのフィードバックも生まれる。人間の声と区別がつかないから、これまで使われなかった企業CMとかドラマ映画の劇音楽とかでも活用させる。一方で、人間ではできない利便性はあって、クリエイターのトライアルに無限に付き合ってもらえる。機会的に強引に音程や音質を変えたりできるし、声がかれない、風邪引かないみたいなことも含めて、表現の現場をクリエイティブの質も変えていくと思うんです。そんな認識があった上でn次創作作品で全クリエイターに適切に分配していくような仕組みを作っていくとか、クリエイターエコノミーのビジネス実装がAIシンガーを通じてやりやすくなるだろうなと。クリエイターに便利だし、シンガーも自分の声を学習データとして提供して、収益分配をを得るとようなことを始めています。まさに「ゲームチェンジング」のタイミングなんじゃないかと。そういうムーブメントとして自分たちで関わってみようと思ったんです。
――今回、姉妹キャラクターを異なるプラットフォームでリリースするというのは、これまでにない展開ですよね。
浅田:一つには、それぞれのエンジンの特性があるんです。それが表現の幅として広がるといいなと思っています。Synthesizer Vがすごく人間的な癖が強い音像ができるとしたら、割と楽器的、音楽的な音に近いのがVOCALOIDだと思っていて、その中間にいるのがVoiSonaという認識なんです。もう一つは、VOCALOIDもVoiSona、そしてSynthesizer Vも日本の技術なので、そこを応援したいという気持ちがありますね。
――なるほど。GEMVOXのボイスライブラリの技術的な特徴についても教えてください。
浅田:今まで使ってきたライブラリって、上の音域で張ると、もともとのデータセットを使っていて、張った時にマイクから離れちゃうんですよね。ボーカリストは大きい声で力込めて歌わなきゃいけない高い音域の強い声で、マイクから離れちゃう。そうするとちょっと音像が離れちゃうんです。使っていて、サビのところで高いところでガンと前に出てきたいのに、ちょっとなんか半歩、4分の3歩下がったなーっていう感じがしていたんです。
――それを解決したと。
浅田:そうです。張った時にはちゃんと張った時で音質とか音像が変わらないような感じでデータアセットを準備しました。サビでちゃんと音像がパンと前にいるものが作れるということです。
――多言語対応もされているとか。
浅田:はい。日本語、英語、韓国語のデータを学習させています。日本のクリエイターがグローバルに展開していくきっかけになればと思って。特にSynthesizer Vの文脈で言うと、僕らがあまり身近にいないネイティブのイングリッシュシンガーっていうのが簡単に手に入るというのは、日本のクリエイターにとってメリットだなと思いました。
――実際の反響はどうですか。
山口:海外からの反響は結構ありますね。特にSynthesizer Vがバージョン2になってからは、韓国のクリエイターからの問い合わせが非常に増えています。僕らのメッセージは、外国の新しいことを言いたいクリエイターには届いているなという感じはありますね。ただ、いわゆるボカロP的なクリエイターへの訴求は、率直に足りないなと思っているので、そうした方にもぜひ知ってもらいたいと思って、今回も楽器博に出展するんです。
――今回のサファイアやヒスイ、どんな人たちに使ってもらいたいですか。
山口:プロの使用にも耐えるし、コンペの仮歌では使ってもらえると思いますが、やっぱり自分の楽曲をグローバルに広めていろんな人に聴いてもらいたいと思っているクリエイターに活用してもらえると一番嬉しいですね。でも、ボイスバンクとしてのクオリティも高いはずだし、キャラクターも魅力的で、権利も緩やかに使いやすくしていきますので、多くの人にいろいろな使い方をしてもらいたいですね。そのユースケースから僕たちが学びたいと思っています。
小説連載、そしてアニメ化へ
GEMVOXのもう一つの大きな特徴が、GONZOとの協業によるメディアミックス展開です。10月31日からテラノベルでGEMVOXのキャラクターが主人公の小説連載がスタートします。毎週金曜日更新です。
「キャラクターをGONZOで作って、世界観をしっかり作ってクリエイターの人に活用してもらおうという思いがあり、GONZO的には数年後のアニメ化っていうのを見据えています。テラーノベル連載の小説では、登場する主要キャラクターはAIシンガーが務めている、るので、クリエイターは自分の作品を歌っているAIシンガーへの感情移入がしやすくなるのではと期待しています」と山口さん。
物語の内容については詳細は明かされませんでしたが、「音楽を武器にして戦う学園もの」とのこと。主人公はシンセサイザー部に所属するというユニークな設定で、全体のクリエイティブプロデュースは浅田さんが担当しています。浅田さん自身も主人公たちをサポートする教師としてキャラクター化して登場するとのこと、楽しみですね。
※テラーノベルのリンクURLはこちら
「トパーズやサファイアで曲を作ると、それがアニメで使われる可能性がある。グローバルな競争力があるもので、いろんな人にチャンスを与えることができるんじゃないか」という展望は、単なるボイスバンク提供を超えた、新しい創作エコシステムの構築を目指すものと言えるでしょう。
10月期MXTVで水曜24時で放送されているアニメ「カクリヨの宿飯」の枠の中で、GEMVOXのシンガーのTVCMも流れます。YouTubeでの配信も予定されているので、こちらもぜひチェックしてみてください。
新しい時代のキャラクターボイス
以上、VOCALOID 6「乙辺サファイア」とVoiSona「乙辺ヒスイ」について紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?同じYun*chiさんが声を担当する姉妹キャラクターが、異なるプラットフォームで同時期にリリースされるという、前例のない展開です。
それぞれのエンジンの特性を活かした音作り、プロクオリティを目指した高音域の安定性、多言語対応、そしてGONZOとの協業による本格的なメディアミックス展開。GEMVOXの取り組みは、単なる新キャラクターのリリースにとどまらず、歌声合成文化の新しい可能性を切り開こうとしています。
サファイアは11月1日からGEMVOXサイト(https://gemvox.ai/)で先行販売、11月4日から正式発売。ヒスイは12月15日発売予定です。11月1日・2日の東京楽器博2025では実機展示も行われますので、興味のある方はぜひ会場で確認してみてください。
プロもアマも、垣根を越えて使える高品質なボイスライブラリ。そして、キャラクターとともに広がる物語の世界。新しい時代のキャラクターボイスが、ここから始まります。
【関連情報】
GEMVOXサイト
乙辺サファイア製品情報
乙辺ヒスイ製品情報

 
  
  
  
  








 
      
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