DTMステーションでも昨年紹介した、ギターを湿度管理しながら保管しておける専用のキャビネット、SoundMaker(サウンドメーカー)の保管庫。Makuakeのクラウドファンディングで8,068,600円を集めたMMF-1、MMF-2に、新しいモデルが加わりました。登場したのは、ギター用の全自動恒湿保管庫MLG-10と、ベース用のMLB-10の2機種。価格はMLG-10が218,000円(税込)、MLB-10が238,000円(税込)で、8月10日から順次出荷が始まっています。除湿と加湿の両方を自動で行い、庫内を楽器に適した45〜55%の湿度に保ち続けるので、梅雨でも冬でも同じ環境のまま楽器を置いておけるのが一番の特徴となっています。
実はこのMLG-10、単に型番が変わっただけの製品ではなく、中身がかなり作り替えられています。最大の変更は、ギターをネックだけで吊るす方式から、ネックとボディの底で支える方式になったこと。さらに暗証番号式の電子ロック、ドアを開けても本体が前に倒れないスタンド、上下にも左右にも並べて繋げられる構造と、前のモデルを買ったユーザーから届いた声が1つずつ反映されています。価格を見ると、併売されている前のモデル、MMF-1が168,000円(税込)なので5万円の差。ただ、その差の分だけ手が入っていて、外から見て分かる部分から庫内の見えないところまで、改良は広い範囲に及んでいるのです。実際どんな保管庫になったのか、紹介していきましょう。

反り、割れ、錆び…。ギターを傷める湿度を自動で管理するSoundMaker MLG-10
クラファンで大反響だった保管庫シリーズの新モデル
MLG-10そのものの話に入る前に、ここまでの経緯を振り返っておきましょう。SoundMakerのギター保管庫は、昨年7月30日まで実施されたMakuakeのクラウドファンディングから始まりました。個人でも手が届く価格で、家庭に置けるサイズの調湿キャビネットを作る、というプロジェクトです。
結果は、目標金額300,000円に対して8,068,600円という着地でした。達成率は2689%で、サポーターの数は42人。1人あたりに直すと約19万円分を購入した計算で、保管の環境に切実な問題を抱えているギタリストがそれだけ多かった、ということなのでしょう。
このときのモデルが、1本用のMMF-1と3本用のMMF-2。ギターはネックキャッチャーで吊るす方式でした。詳しくは、以前、「除湿も加湿も自動制御!SoundMakerの次世代ギター保管庫がMakuakeでクラファン実施中」という記事でも紹介しているので、ぜひこちらも参考にしてみてください。
そして実際に使ったユーザーから届いた声を受けて、作り直されたのが今回のMLG-10です。前のモデルで指摘された点は、ほぼすべてが手直しされています。なお前のモデルのうち、1本用のMMF-1は168,000円(税込)で引き続き販売されていますが、3本用のMMF-2は販売終了品となりました。MLG-10もMLB-10も1本用のモデルなので、ギターを3本まとめて収める保管庫は現行のラインナップにはありません。何本も収めたいという場合は、後で触れる連結の機能を使って、台数のほうを増やしていく形になります。
なおMLG-10の実機は、イケシブGRANDY、ハートマンギターズ、サウンドハウス成田ショールーム、あぽろんなど、全国の取扱店にて展されています。20万円クラスの買い物なので、実物を見てから決められるのは安心です。
ちなみにSoundMakerは、2025年に東京で立ち上がった、楽器とともに暮らすためのstudio家具ブランド。現在は保管庫と、DTMデスクやチェアといったスタジオ用品の2本柱で製品を展開しています。デスクは、以前「SoundMakerから本格的なDTMデスクが登場。19インチラックマウント搭載で4サイズ展開」という記事でも紹介しているので、ぜひそちらも参考にしてみてください。横幅は140cmから220cmまでの4サイズ。180cmと220cmのモデルには合計32Uものラックスペースが組み込まれていて、パッチベイやオーディオインターフェイスといった機材ごと、制作環境を1台の机にまとめられる使い勝手のいいデスクとなっていますよ。
日本の気候から楽器を守る恒湿保管庫という選択肢
ご存じの通り、木で作られたギターやベースは、湿度の変化にとても弱い楽器です。湿気が多すぎればネックが順反りし、指板がふくらみ、フレットやサドルといった金属パーツが錆びてきます。逆に乾きすぎれば、トップ板が割れたり、フレットの端が浮いて手に当たったりするのです。日本の場合、梅雨から夏にかけては湿度が80%を超えますし、冬に暖房を入れれば20%台まで落ちてしまいます。1年の間に、これだけ湿度が動く環境へ楽器を置いているわけです。
もちろん、ケースに乾燥剤や調湿剤を入れて対策している方も多いでしょう。ただ、これはあくまでも受け身の対策であって、調湿剤が吸ったり放したりできる量は、その袋が持っている水分の範囲に限られます。梅雨に部屋が80%を超え続ければ早々に飽和してしまいますし、冬の乾いた部屋なら数週間で使い切ってしまうので、環境が厳しいときほど、交換の手間が増えていきます。
そこで出てくるのが、除湿と加湿の両方を自動で行って、庫内を設定した湿度に保ち続けるキャビネットです。これが恒湿保管庫と呼ばれるもので、MLG-10では庫内の湿度を数値で指定できます。数値を決めてから約3時間で目標の湿度に到達し、その後は自動で安定する仕組みです。
中でも木製の楽器に向いているのは、50〜55%です。バイオリンやビオラ、チェロ、エレキギター、ベース、古筝も、ギターと同じこの範囲での保管が適しています。ギター用の製品でありながら、ほかの弦楽器や木管楽器にも対応できる理由は、ここにあります。
庫内の温度と湿度は、本体の前面にあるタッチコントロールパネルに出ています。水滴マークのボタンを1回押せば今の設定湿度が表示され、3秒間の長押しで設定モードに入ります。付属の赤外線リモコンからも同じように操作でき、数値を確かめるためにドアを開ける必要がないので、庫内の環境を乱さずに済むのもポイントでしょう。
その温度と湿度の管理をするためにSoundMakerではSensirion(センシリオン)社製の温湿度センサー「SHT20」というものを採用しており、高い測定精度と安定した性能を実現しているとのこと。Sensirion社は、スイスに本社を置くセンサー技術企業で、1998年に設立された老舗メーカー。湿度・温度・ガス・空気品質センサーなどを開発し、家電や車載、医療、IoT分野で広く使用されています。独自のCMOSens技術により、高精度かつ低消費電力の小型センサーを提供している点が強みです。そんな高性能なセンサーがこの保管庫にも搭載されているというわけなのです。
もう1つ、保管庫という選択肢には、湿度の管理とは別の意味もあります。ケースにしまうと弾かなくなる、という問題です。ケースを開けて、取り出して、チューニングして……という手順が1つ挟まるだけで、ギターに触る回数は目に見えて減っていきます。しまい込んだまま何週間も弾いていない1本に、心当たりのある方も多いのではないでしょうか。
その点、ガラスのドアが付いた保管庫であれば、楽器はいつでも見えていますし、開ければすぐ手に取れます。湿度を保つことと、楽器を身近に置いておくこと。相反しそうなこの2つを同時にかなえてくれるのが、恒湿保管庫という製品なのです。
最大の変更点はギターの支え方、ネックとボディの2点支持
さて、MLG-10で一番大きく変わったのが、庫内でのギターの支え方です。従来はネックキャッチャー、つまりネックの部分だけで保持する方式でした。ハンガー式のギタースタンドを庫内に取り付けたような形です。MMF-1では自動でロックがかかり、MMF-2では手動でロックする違いはあるものの、いずれも支えているのはネックの1点。ボディの下側までは固定されないので、地震などで揺れたときに楽器が振られてしまう弱点がありました。
そこでMLG-10では、ネックに加えてボディの底でも受ける2点支持に変わりました。上下の2箇所でしっかり固定されるため、地震のような横揺れに強くなっています。
さらに、ネックを受けるサポートは4方向調整式楽器サポートという部品で、複数の調整穴を使って上下にも左右にも位置を動かせます。ネックの位置に合わせて高さを合わせられるので、長さも形も違う楽器を、1本ずつ安定した状態で収められる仕組みです。
ボディの底を受ける面も変わりました。従来はクッション材が敷かれていて、ラッカー仕上げのようなデリケートな塗装の楽器のために保護布を開発中、という段階でした。それがMLG-10ではラッカー塗装保護クロスという部品になり、はじめから標準で装備されています。ラッカー塗装はゴムや化学繊維に長く触れていると、その部分だけ変色したり溶けたりすることがあるので、楽器が触れる面に何を使うかは意外と重要なポイントです。
楽器が直接触れるのは、ネックを受けるサポートと、ボディの底が載るこのクロスの2箇所です。MLG-10では、そのどちらも作り直されました。ヴィンテージのギターを収めたい方には、見逃せない変更だと思います。
筐体は、アルミフレームガラスと側面ガラスの組み合わせ。さらに内部の配線も作り直され、処理に難のあった部分は全部整え直されました。おかげで中身はすっきりと片付き、ガラス越しに見たときの印象もずいぶん変わっていますね。
暗証番号ロックと前倒れ防止スタンドを新たに搭載
MLG-10を外から見て、すぐに分かる追加の要素が、ドアに付いた電子オートロックです。従来のモデルにはなかったもので、追加のきっかけになったのは、子どもが触ってしまうという声でした。ガラスのドアの向こうに高いギターが並んでいれば、小さな子どもが興味を持って開けてしまうことはあるでしょうし、その先で何が起きるかを考えると、鍵はやはり欲しい装備ですね。
採用されたのは、番号を入力して解錠する暗証番号ロックです。番号を入れてOKボタンを押すと電子音が鳴って緑色のインジケータが点灯し、3秒以内にハンドルを右へ回すと開く、という手順。閉めるときはハンドルを左に回すだけで、暗証番号はユーザー自身で好きな番号に変更できます。解錠のときにブザーが3回鳴ったら、番号の入力ミスの合図です。
物理的な鍵にしなかったのには、2つの理由があるそう。1つは鍵そのものを紛失してしまうリスクがあること、もう1つは複数の台を並べて使う場合に、台数の分だけ鍵を管理しなければならず手間になること。後で触れる通り、MLG-10は複数台での運用をかなり意識した作りになっているので、この判断は理にかなったものとなっています。
細かいところまで作り込まれていて、暗証番号を4回続けて間違えるとアラームが鳴り、キーパッドが60秒の間ロックされます。電源にはCR2450というボタン電池を使い、残量が減ってくると赤色のインジケータが点灯して知らせてくれます。電池が切れて開けられなくなったときのために、ロックの本体にはUSBポートが用意されていて、モバイルバッテリーなどの外部電源から非常用の電力を送り込むことも可能です。
暗証番号そのものを忘れてしまったときは、本体のシリアルコードを添えてカスタマーサービスに問い合わせれば対応してもらえます。施錠したままの状態なら、専用のピンでロック背面のリセットボタンを押して、工場出荷時の設定に戻す方法も用意されているので、いざというときも安心ですね。
そしてもう1つの新しい装備が、前倒れを防ぐスタンドです。この保管庫のドアはガラスでできていて、それなりの重さがありますし、本体そのものは縦に細長い形をしています。つまりドアを開けると、重いガラスが本体の前方に張り出す形になり、重心がぐっと前に動いてしまいます。従来はこれが原因で、本体が前に倒れてしまうことがありました。そこで追加されたのが、足元から前方に伸びる支持脚です。この足を付けておけば、ドアを開けても本体は倒れないので、細かいことを気にすることなくギターの出し入れを行うことができますね。
また設置にあたっては、いくつか条件があります。壁の近くに置く場合は、蒸発と除湿の効果を確保するため、壁から50mm以上を空けること。また本体の背面には放熱用のアルミの部分があり、ここを物で覆ってしまうと動作の性能に影響が出るそう。対応する電圧は100〜240Vで、熱源のそばや直射日光の当たる場所も避けるようにとのことです。
加湿の音がほぼ消えた静音化と、月に1回で済む給水
前のモデルで、買ったユーザーからうるさいと言われていたのが、加湿の機能から出る動作音です。この声を受けて、MLG-10では設計が見直されました。ドアを閉じた状態では、動作音はほとんど感じられないレベル。ちょうど冷蔵庫が動いていても音が気にならないのと同じ感覚ですね。保管庫は、電源を入れたまま一年中動かし続ける機器です。しかも楽器を置く部屋は、寝室や作業部屋と兼用になっていることが多いはず。動作音は、仕様表の数値以上に、毎日の暮らしのなかで効いてくる部分だと思います。
静音化と並んで、日々の使い勝手を一番変えるのが給水の頻度でしょう。従来は水のタンクが庫内にあり、連続運転できるのは1週間程度でした。対してMLG-10は目安が約1か月に1回と、給水の間隔がおよそ4倍に延びています。手を掛ける回数がそのまま減るので、使っていて一番体感しやすい改良かもしれません。
水は水道水で問題なく、給水口の近くには水位確認窓があるので、残りの量もひと目で分かります。ただし約1か月という数字は目安です。この保管庫は加湿と除湿の両方を持っていて、季節に応じて必要なほうだけが働く仕組み。加湿で水が減るのは主に乾いた時期なので、実際の給水の間隔は使用環境によって前後します。
給水のタイミングは、本体のほうから知らせてくれます。庫内の湿度が設定した値より5%以上低くなると、給水を促すアラートが作動する仕組みです。それでも給水されないままだと、アラートが作動してから1時間後以降は、59分ごとに1分間のブザー音と画面の点滅で知らせてくれます。この低湿度アラームは、照明ボタンの3秒間の長押しでオンとオフを切り替えることも可能。
機能面の最後は、庫内の照明です。従来のモデルにも、暖色系から寒色系まで調色できるLEDが入っていました。MLG-10ではこれが3色LED演出という機能になっていて、ライトが点いている状態でパネルかリモコンの上下のボタンを押せば、色を切り替えられます。冷たい色に振ればシャープな見え方になり、暖かい色に振ればサンバーストやナチュラル系のボディが温かみのある見え方になります。配信をしていたり、楽器の紹介動画を撮っていたりする方なら、背景に置くだけで画作りに使えるはずです。
この照明も湿度の設定も、付属の赤外線リモコンから操作できます。台数が増えるほど、1台ずつ前面のパネルを触って回るのは手間になるので、これがあると管理はずいぶん楽になります。リモコンに並ぶのは、電源、湿度設定、増加と減少、そして照明と低湿度アラームを兼ねるスイッチの5つとなっています。
連結して増やしていける保管庫と、3つのラインナップ
ギターを何本も持っている方なら、保管庫を複数台そろえるという選択もあると思います。MLG-10もMLB-10もどちらも1本用なので、2本目以降は保管庫ごと買い足していく使い方になりますね。前のモデルでも複数台をまとめて買うユーザーは少なくなく、そこから出てきたのが、台同士を連結したい、積み重ねても地震で倒れないようにしてほしい、という要望でした。
これに応えて、MLG-10は上下にも左右にも隙間なく繋げられる構造を備えています。連結に使う上下キャビネット連結部品と左右キャビネット連結部品は本体に同梱されていますし、作業に使うレンチも付属するので、金具を後から買い足す必要はありません。
上下の方向、つまり積み重ねる場合は、上に載せる側の脚を外し、脚が付いていた穴の位置を使って4点で固定します。左右の方向については、側面取り付けプレートと呼ばれるパーツを外すと連結用の穴が現れ、そこで隣の台と繋がる仕組み。付属のご利用ガイドには、上下と左右それぞれの手順が図解で載っていて、確かめながら進められます。
連結がまず効いてくるのが、置き場所です。2台を縦に積めば、床に必要な面積は1台分のまま、ギターは2本収まります。横に広げるのではなく上に伸ばしていけるので、置き場所の限られる日本の住宅事情には合っていますね。
もちろん、個人のコレクターだけの話ではありません。同じ筐体を隙間なく並べられるので、楽器店のショーケースにも、スタジオや音楽教室の楽器保管にも向いています。どちらの場合も最初から台数をそろえる必要はなく、1台ずつ買い足しながら増やしていけますよ。
最後に、ラインナップと価格を整理しておきましょう。SoundMakerの保管庫シリーズは、ギター用のMLG-10、ベース用のMLB-10、そしてバイオリン用のVC-2という3つのライン。VC-2にはブラックとホワイトの2色があり、こちらは最大で3挺のバイオリンを収納できます。出荷はギター用・ベース用と同じ8月10日からで、価格はどちらの色も198,000円(税込)です。ブラックはブラックガラスの筐体で楽器の存在感を引き立てる仕上げ、ホワイトは明るい空間に馴染む仕上げという位置付けになっています。
| 製品名 | 対象楽器 | 収納数 | 価格(税込) |
| MLG-10 | ギター | 1本 | 218,000円 |
| MLB-10 | ベース | 1本 | 238,000円 |
| VC-2 ブラック | バイオリン | 最大3挺 | 198,000円 |
| VC-2 ホワイト | バイオリン | 最大3挺 | 198,000円 |
| MMF-1 | ギター | 1本 | 168,000円 |
いずれも配送は無料(離島を除く)で、2年間の保証と国内サポートが付きます。保管庫は一度買えば何年も使うものだけに、国内に相談の窓口があるのは心強いところです。
収納の目安は、MLG-10がギター1本、MLB-10がベース1本となっています。ギターとベースではボディの形も長さも違うので、収めたい楽器に合わせて選ぶ必要があります。前回の記事でも触れた通り、この保管庫はギター専用というわけではありません。バイオリンには専用のVC-2がありますが、形とサイズさえ合えば、湿度に敏感なほかの楽器の置き場所にもなりそうです。
以上、SoundMakerの全自動恒湿保管庫、MLG-10とMLB-10について紹介しました。2点支持の固定構造、暗証番号式の電子オートロック、前倒れ防止のスタンド、上下と左右の連結、そして1週間から約1か月へと延びた給水の間隔。前のモデルで指摘された点を1つずつ潰した結果が、今の形となっています。大切な1本の置き場所に悩んでいる方は、検討してみてはいかがでしょうか?
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