DSPパワーを大幅に強化し、音質も向上させたUniversal AudioのApollo第3世代製品、Apollo Xシリーズの実力

DSPを利用してビンテージ機材を忠実に再現する機能を持つオーディオインターフェイスで、ミキシングコンソール機能も備える画期的な機材として2012年に誕生したUniversal AudioApollo。その後もUniverasal AudioからはThunderbolt対応製品や小型のApollo Twinなどさまざまな機材がリリースされてきましたが、先日、次世代のスタンダードになるであろう、Apollo Xシリーズが発表されました。

これは、Apollo第3世代のラック型オーディオインターフェースで、6基のUAD DSPチップを搭載したことにより、DSPパワーが50%上がった強力な機材になっています。また、D/Aコンバータに関しては、業界トップクラスの性能を誇っており、サラウンドサウンドにも対応できるオールマイティーマシンなのです。この発売に合わせ、米Universal Audioからインターナショナル・セールスマネジャーであるユウイチロウ“ICHI”ナガイさんが来日していたので、Apollo Xについてお話を伺ってみました。

Universal Audioから第3世代となるApollo Xシリーズが登場

--今回Apollo Xシリーズが発売となりましたが、改めてApolloとは何なのか、簡単に教えてください。
ICHI:Apolloは、オーディオインターフェイスであると同時に、UAD DSPチップを搭載したシステムであり、ミキシングコンソールでもある、まさしくスタジオそのものといってもいいシステムです。また、数多くのビンテージ機材を忠実に実現するUAD-2システムは世界中に受け入れられ、音楽制作におけるスタンダードを築いてきました。さらに、UAD-2はCPUパワーを使わずに、搭載されているDSPによって処理されるため、パソコンへの負担を掛けずにビンテージ機材を自分の楽曲で使えるのです。エントリーユーザー向けにApollo TwinやArrowを出していて、今まで第1世代、第2世代と製品を発売してきましたが、今回は第3世代の製品としてApollo Xをリリースしました。

お話を伺ったUniversal Audioのユウイチロウ“ICHI”ナガイさん

--今回のApollo Xシリーズとはどんなものなのか、まずは概要を教えてください。
ICHI:Apollo XシリーズはApollo x16Apollo x8pApollo x8Apollo x6の全4製品のラインナップで、すべてのモデルに6基のUAD DSPチップを搭載しています。フラグシップモデルのApollo x16は業界トップレベルのA/D、D/Aコンバーターが装備され、入出力はD-SUBを用いたアナログ16in/16out、7.1chのサラウンドに対応しています。そして、Apollo x8pは多くのUnisonテクノロジーが使えるように8基のUnisonマイクプリアンプが搭載された、アナログ8in/8outで、x16と同じく7.1サラウンドモニタリングをサポートしています。Apollo x8はオールマイティーマシンと呼ぶのにふさわしい4基のUnisonマイクプリアンプと8つのLINE INPUTを兼ね備えたバランスのいい作りで、アナログ8in/8out、これも同じく7.1chサラウンドモニタリングに対応しています。そして最後に、ニューフェイスとなる2基のUnisonマイクプリアンプが搭載されたアナログ6in/6out、5.1chサラウンドモニタリング対応のApollo x6です。

上からApollo x6、Apollo x8、Apollo x8p、Apollo x16

--それぞれは、どんな人に向けた製品なのですか?
ICHI:Apollo x6は、EDMなどのビートメーカーやポストプロダクション、DTMユーザーにバッチリなスペックを持ったオーディオインターフェイスです。また、今回はサラウンドモニタリングが特徴でもあり、5.1chのサラウンドモニタリングが必要な方にも最適です。Apollo x6を開発するのにあたって、Apollo Twin関連で、どんなニーズがあるかを調査してみました。その結果、レコーディングするためのマイクプリよりも、ミキシングが重要というユーザーが非常に多くいたのです。そこで、こうした要望に応えつつ、できるだけ価格を抑える形で6基のUAD DSPのApolloを実現したのがApollo x6です。ほかの3機種は前モデルのアップグレードにあたり、Apollo 8はApollo x8、Apollo 8pはApollo x8p、Apollo 16はApollo x16になりました。


ICHIさんは、日本国内でのApollo Xシリーズの発表会のために今回来日

オールマイティーな構成をしている、Apollo x8はバランスがいいのでさまざまなシチュエーションをカバーすることができます。ミュージックプロダクションのエンジニア向きのシステムですね。今までもオールマイティーマシンが一番売れているので、おそらくこれが一番の売れ筋になると予想しています。次にApollo x8pですが、これはUnisonマイクプリをたくさん使いたいユーザー向けで、バンドものや中小規模のスタジオに最適です。そして、Apollo x16は、ハイエンドスタジオの世界的なトレンドに対応していて、アナログとデジタルが混在したハイブリットスタジオ向けの製品になっています。今回のシリーズの中で一番高いオーディオスペックを持っているので、Pro Toolsのコンバータの置き換えとしても使用できます。


Apollo x6はApollo TwinではDSPパワーが足りないというDTMユーザーにピッタリの製品

--価格的に、またスペック的にもDTMユーザーであればx6は魅力的ですね。すでにApollo Twinなども持っている人もいると思いますが……
ICHI:Apolloシステムの最大の強みは拡張性があることです。既存のApolloシリーズとカスケード接続もでき、Apollo Twin Mk2を繋げれば、デスクトップモニターコントロールとしても使用することができます。カスケードは最大4台まで可能で、最大64chの入力に対応しています。


Apollo XシリーズにApollo Twin Mk2をカスケード接続した際、モニターコントロール用にも便利に使える

--接続する順番の決まりはありますか?またThunderbolt 2とThunderbolt 3は混在しても大丈夫なのでしょうか?
ICHI:カスケードする際の接続は適当でよく、後からソフト側で順番を決めることができます。また、今までのApolloシリーズを接続する場合は、変換器を使うかThunderbolt3オプションカードを使えば問題なくカスケードすることができますよ。ただし、WindowsのサポートはThunderbolt3が搭載されたマシンでWindows10からになります。同じ種類のApolloを繋げていてもIdentifyという機能で分かるし、モニターマスターを何にするか、どの順番にするかを簡単に操作できるようになっています。

ApolloシリーズをコントロールするConsole。ここで接続の順番なども自由に変更できる--

x16は業界トップレベルのコンバーターを搭載している、という話がありましたが、もう少し具体的な話を聞かせていただけますか?
ICHI:Apollo x16はダイナミックレンジ 133dB、最小のTHD+N -129dBを誇っていて、D/Aコンバーターの中では敵はいないといっても過言ではありません。これまでApolloシリーズは、いろいろな現場で使われていたのですが、最終的な出力で、他社製品が置かれているのを目にしていて、とても悔しい思いをしていたんですね。具体的にはSymphonyやHD I/O、40、50万するコンバーターの数々、ブティック系の2chものなどです。そうした他社製品のコンバーター性能を大きく超える、最高のものを作ろうと開発したのがApollo x16で、次の価格帯を狙った製品となっています。今回のシリーズで一番いいオーディオスペックを持っているので、カスケードする際はApollo x16をマスターユニットとして使ってくださいね。


Apollo x16のD/Aコンバーター性能は、ほかに敵はいないと語るICHIさん

--先ほど出てきた、+24dBuオペレーションといういうものについて、もう少し詳しく教えていただけますか?
ICHI:昔のアナログ時代、テープやミキシングコンソールなどの信号レベルは+24dBuが標準であり、現在の+20dBuの機材とは信号レベルに違いがあったんですね。今のデジタル機材ですべて制作している人にとっては特に気にするものではないですが、これまで新旧機材を混在させる場合は、そのレベルを意識して接続、調整する必要がありました。なので、それを解決するために+24dBuオペレーションを選択可能し、ユニティーを保ったまま接続できるようになりました。


+24dBuの設定ができるので、アナログ機材とのハイブリッドのスタジオでも使いやすくなる

--x16は結構高価なので、DTMユーザーにとって導入はなかなか難しいところですが、、x6やx8であっても音質の向上は見込めるのですか?
ICHI:もちろんです。理由の一つとしては、クロッキングシステムを新しくして、2クリスタルのシステムを採用していることが挙げられます。多くの製品が44.1kHzか48kHzを選ぶ形になっていますが、Apollo xシリーズではどちらにも対応しているので、たとえば88.2kHzならを44.1kHz使うし、192kHzなら48kHzのクロックを使うというようになっています。そのため、より正確なクロックを実現できるようになり、より音質が向上しています。


パワフルなDSP環境により、多くプラグインを同時に活用することができる

--今回の製品、サラウンドモニタリングも特徴とのことですが、サラウンドは海外の制作現場でのニーズはあるものなのですか?
ICHI:ラックの製品を使うユーザー層は、スタジオやいろいろな仕事を受ける方が多いんですよね。そうなってくると、ライブDVDやライブミックス、ゲームや映画、テレビなど、音楽だけに限らず、いろいろなメディアの仕事になってくるんですよ。実際にサラウンドに対応してほしいという声があり、ニーズがあったのでサラウンドモニタリングに対応しました。基本的にサラウンドサウンドのシステムはキャリブレーション機能が必要で、こういった機能を持つ周辺機器は大体8万~60万円するんです。もちろん外部機器なので音を劣化させる可能性があるので、Apolloの中に入ったことはかなり大きいと思います。さらに5.1chなどをステレオに落とすという機能も搭載されます。設定に関しても、できるだけ早く、簡単にできるようにPro Toolsのプロファイルをプリセット化していたりもするので、Apollo Xシリーズはフルファンクションを持つサラウンドモニターコントローラーになるといえますね。これらのサラウンドサウンドのサポートは、まだ対応していないのですが、2018年のQ4のアップデートで扱える予定ですので、ぜひ楽しみにしていてください。


今年10月~12月の予定でサラウンドにも対応する

--今日はありがとうございました。

 

【製品情報】
Apollo Xシリーズ製品情報(フックアップ)
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Commentsこの記事についたコメント

3件のコメント
  • aketmn

    せっかくの新しいWEB構成ですが・・・。
    非常に見にくいです。

    記事を時系列でみるのがつらいのもありますが、
    各記事の内容を見る前にその記事の画像が
    拡大されたり、縮小されたり、非常に記事を読むのに疲れます。

    ヘッダも出すなら出すで固定の方がいいです。

    スクロールを下げると消えて、あげると出る感じなんですかね。

    記事の表示領域が変動するのは、非常に負担が大きく、
    またヘッダにあるリンクをたどりたくても上スクロールが必要で
    一瞬でたどり着けません。

    記事を読みたいのに周りの部品類が勝手に表示されたり、
    消えたりするのが目に入るので気持ち悪いです。

    前の形でリファインされる程度で十分だったと思います。

    過度にリッチなページは、利用者に疲労感を与えるため、
    昨今では避けられています。

    もうちょっと抑える方向で再考ねがえないでしょうか。
    (一応官公庁系のWEBシステムを開発している自身としてのコメントです)

    2018年10月6日 8:59 PM
    • 藤本 健

      aketmnさん

      ありがとうございます。
      ご意見、参考にさせていただきます。

      2018年10月6日 11:00 PM
  • goddem123

    E-MUの名物?だった永井さんですね。お元気そうで何よりです。
    エンソニックジャパン時代に一度、サンプラーの操作で問合せの電話をしたときに出てくださったことがあるのですが、たいへん丁寧・親切に教えてくださいました。
    懐かしいです。

    2018年10月8日 1:31 PM

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